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COVID-19 によるサラワク州のロングハウス・ロックダウン 2021年上半期ピックアップ — 5 Cases of Longhouse Lockdown @Sarawak, Malaysia(Jan - June 2021)


パンデミック2年目の2021年。それまでは比較的うまくいっていたと思われたサラワク州の新型コロナ対策は年明けから大きな試練を迎え、特にロングハウスとして知られる現地の住民の昔ながらの生活様式が色濃く残る田舎で、大流行を目にすることとなりました。

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2021年上半期のロングハウス・ロックダウンを追いかけた今、特に記憶に残る5つの事例を紹介。最後に感想を残しておきます。

Case 1 :  パサイ・クラスター(Pasai cluster)

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期間: 2021.01.08 〜 2021.04.13
最初の症例: 2021.01.06

地区: シブ省シブ郡→リンバン/ラワス省を除くサラワク州全土へ
推定田舎度: シブやパン・ボルネオ道路にほど近いロングハウスが震源地

クラスター原因: 西マレーシアから入州後ロングハウス内で14日隔離+葬儀

総検査人数: 42100名
総感染者数: 2693名

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ロックダウン: 公式は58。自主ロックダウンを含めると最盛期は3桁?

経緯: 発端は2020年12月29日にジョホール・バル→クアラルンプール→クチン→シブと3便のフライトを乗り継いで父親の葬儀のため帰省した女性。サラワク入州時のクチン空港での検査では陰性。入州後の義務である14日間隔離を自宅(ロングハウス)ですることを許可されるも葬儀で人の出入りは激しく、入州8日目の2度目の検査で感染が判明した時にはすでにスーパースプレッダーとなっていました。

このクラスターがサラワク州に及ぼした影響は甚大で、シブ市や近隣のエリアでがっつりと市中にウイルスを拡め、なおかつロングハウスだらけの奥地のエリアにウイルスを飛ばしてしまいました。特にそれまでほとんど感染者が出ていなかったサラワク州最大の川ラジャンの上流域に及ぼした影響は甚大で、これ以後大きなクラスターが連鎖的に発生していきます。当時州全体で1日2500件しかPCR検査処理能力がなく検査が追いつかなかったことが被害を大きくしたので、政府はこれ以降医療リソースに多くの予算を投入して、現在は1日5500件ペースにまで上げています。



Case 2: ジャラン・ムヒバー・クラスター(Jalan Muhibbah cluster)

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期間: 2021.02.23 〜 2021.05.05
最初の症例: 2021.02.16

地区: ベトン省ベトン
推定田舎度: 大都市までは遠いものの、田舎の町になら車で1時間かからずとも行ける普通の田舎。

クラスター原因: ロングハウスでの闘鶏

総検査人数: 3354名
総感染者数: 370名 

ロックダウン: ロングハウス3軒以上

経緯: 最初に感染が判明した50歳の男性は陽性確定する6日前にロングハウスで行われた闘鶏に参加しており、これがクラスター要因となりました。
闘鶏はSOPに反するだけでなくそもそも法律上禁止されているのですが…闘鶏を飼ってないロングハウスなんて滅多に見ませんね😂。



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Case 3: ジャラン・セリリッ・クラスター (Jalan Selirik cluster)

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期間: 2021.04.23 〜 2021.07.09
最初の症例: 2021.04.15

地区: カピッ省カピッ
推定田舎度: カピッは辺鄙な場所ではありますが、町の規模は比較的大きくそんなに田舎ではありません

クラスター原因: 公立学校

総検査人数: 401名
総感染者数: 301名

ロックダウン: ?

経緯: カピッの町中にある中等学校で起きたクラスター。最初に見つかった患者が寄宿舎にいた15歳の生徒で学校再開直前の4/4の共同作業がクラスター原因だったとのことから、ロングハウスからの行き来があったのは確実とみて記録に含めています。生徒・スタッフを含めて検査を受けた人の75%が陽性という大変なクラスターでした。

マレーシア全体でも教育機関でのクラスターが相次いだことから学校の再開については慎重な検討がなされており、現在のところ8月末までは学校の授業はリモート形式となっています。

カピッの町内では、パサイ・クラスター発生後の2月にもお葬式が原因となって296名もの感染者を出したクラスターがあり、これが2つ目の大規模クラスター。パサイ以後1月から周辺地域の患者を引き受け続けてきたカピッの公立病院もついに耐えられなくなり、5月には保健省がマレーシア軍に要請して野戦病院を開設。現在に至っています。



Case 4: プタイ・クラスター (Putai cluster)

期間: 2021.04.25 〜 継続中
最初の症例: 2021.04.19

地区: カピッ省ブキッ・マボン郡
推定田舎度: 陸路なし。カピッの町からボートで推定3時間くらいの超奥地

クラスター原因: Baleh水力発電所ダムの工事現場

総検査人数: 2212名
総感染者数:448名 (陽性率19%)

経緯: サラワク州最奥の地の一つ。最初に感染が判明した女性はパサイ・クラスターの被害者と接触歴あり。休暇を地元で過ごした後、キャンプに戻る前に受けた検査で陽性発覚。そしてキャンプの全員を検査したところ1回目で67%が陽性…って誰がインデックスケースかわからんやつです。ロングハウスからの出稼ぎ従業員が多いと思われるのでフォローしていました。6/19にも新規に4名の報告あり。



Case:5 ルニム・クラスター (Lunyim cluster)

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期間: 2021.06.22 〜 継続中
最初の症例: 2021.06初旬

地区: ミリ省ミリ郡ロン・ラマ支郡
推定田舎度: 伐採道路を使えばオフロード車でミリまで推定8時間の超奥地。病院スタッフは消防のヘリを使用 (上の写真)

クラスター原因: 不明。Penan族の定住化政策で設けられた定住地の複数で同時多発的にクラスターが発見された

総検査人数: 218名
総感染者数:177名 (陽性率81%)

ロックダウン: Penan族のsettlement 2つ

経緯: Penan族はサラワク州北部のジャングルに住む狩猟民族。以前はノマドでしたが、現在は政府の政策により定住化が進んでいます。

6月初め、ミリから葬儀のために定住settlementに行った人がミリに戻ってから陽性判明、という事例が立て続けに2つあり、消防のヘリが現地に赴いて濃厚接触者となる人をミリに移送して検査開始。その後、互いにかなり離れた複数のsettlementで新型コロナウイルスの陽性者が出ていることが判明。陸路の伐採道路を使うとミリまで最短でも7時間、遠い場所では12時間かかる奥地なゆえ、保健省は濃厚接触者を繰り返しヘリでミリまで移送して検査、隔離、入院措置をとっています。

未だ経験したことのないPCR検査や注射への恐怖心、遠いミリへ移送されることへの心配から、当初は濃厚接触者と認定された人たちが病院スタッフが来る前にジャングルへ逃げ込んでしまう例が多発。志ある人たちの懸命な説得と働きかけによって、徐々に住民が検査の必要性を理解するようになりました。現在ではワクチン接種の必要性も強く訴えて一気に接種率を上げる作戦中です。


以上、上半期で気になったクラスター TOP 5 でした。


…以下は私的感想

○ どんなに予防線を張っても、ウイルスはジャングルの奥地まで行ってしまう。パンデミックとはこういうものなのか、と現実を突きつけられました。交通の不便なTelang Usan と Baram というサラワク州の最奥地でも大規模クラスターが起き得た以上、デルタ株だってこれからジャングルの奥へ向かうことでしょう。今はインドネシアから新たな変異株が出現しないことを願います。

○ 本州の半分ほどの大きさがあるサラワク州内で新型コロナウイルス患者に対応出来る公立病院はわずか9つ。幸いにも今までずっと大きな医療崩壊がおきていないのは、人口の年齢層が若く無症状患者が全体の9割を占める特殊性に恵まれているからと思われます。サラワク人強し。

○ 行動制限をかけるために、あなたは濃厚接触者ですよと言うために、十分な検査能力を持つことは大切。そして残念ながらサラワク州、今も十分とは言えない状況にあると見受けられます。ですが逆に限られた医療リソースを有効に使うために割り切っていくのが上手かもしれません。最近の検査結果待ちの人を抱えたままクラスターが終了するケースなどを見るにつれ、田舎など人の移動が止め易い場所では選択的に検査結果を積み残して、むしろ緊急性の高いエリアでの検査やワクチン接種の方にマンパワーを割いているような印象があります。

○ 2021年6月末までにサラワク州で検査を受けたのべ人数は1,162,200名。陽性者は64,851名、そのうち83.5%にあたる54,183名が治癒。保健省・病院や医療スタッフ、関連するすべての人たちに、本当によくやってくれてます、どうもありがとうございますと感謝を伝えたいと思います。👏🏼👏🏼👏🏼

○ サラワク州はマレーシア国内でも優先的にワクチン接種が進められており、7/16現在成人の40%が2回目の接種を終えています。10代の若者にまでワクチン接種が進んだ時に、州全体がレッドゾーン続きの今の状況から抜け出せることを希望しています。がんばれ、サラワク州。

#LindungDiriLindungSemua #自分を守りみんなを守ろう

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そして最後に
がんばれ、インドネシア。がんばれ世界。

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