NVDAは今回もまた天下分け目の関ヶ原
NVDAの決算は水曜閉場後。去年5月、度肝を抜くガイダンスでNVDA株は25%上げた。あれ以来、NVDAの決算は毎回米株相場を牽引してきた。今回も指数はちょうど最高値を更新した所。ここからさらに上がれるかはNVDA次第。でも最近カリスマ投資家達がNVDAを売った。なぜ?今日はNVDAの決算注目点を深掘り。
今日の話はポイントが3点
まずは決算の注目すべき数字と私の思う「これ以上の数字出さないと株は下がる」レベルの話。
次にどのカリスマ投資家がどれくらい株を売ったのか。その理由も独断と偏見で解説してみる。
最後に、今私の周りの投資家の間で話題になっているAIにおける「学習」と「推論」の差とNVDAの優位性について。
NVDA決算の注目すべき数字
このチャートは去年の2Qから毎回決算の度に出してるのでお馴染みだと思うけど、今回も私の予想をアップデート。
さらに今回は4月から始めた株の業績予想を作る勉強会でちょうど5月19日にNVDAを取り上げ、参加者みんなと一緒に業績予想を作った。そのモデルの一部がこちら。
この「株はトントン」の数字が私が思う「影のコンセンサス」。ウォール街のアナリスト達はこのくらいは出して来るだろうと思いつつも、NVDAのガイダンスに近い数字しかレポートに書かない。
なぜならコンセンサス予想というのは「超えてなんぼ」だからだ。バーが必要以上に高くなることは企業にもアナリストにもありがたくないのだ。
でもみんながコンセンサスを超えることを想定しているのでこの程度の数字では株価は上がらないのだ。つまり織り込み済み。株価が上がるためには「株は上げる」の数字以上の結果を出さないとダメだと思う。
今回もバーは高い。私の予想はちょうど「トントン」と「上げる」の間くらいだ。もし、「上げる」に近い、あるいは超える数字を出したにもか関わらず、株が下がったりしたら私はまた買い足すかもしれない。
でもそれも水曜日に向けての株価の動きにもよる。4Qの時は決算前の数日株価がグッと下がったので決算後上がりやすかった。
でも今週は月曜は2.5%、火曜も0.64%株価が上げた。水曜も株価が上がればハードルはさらに高くなる。織り込み済みの数字だけですでにハードルが高いのに、決算に向けて株価がさらに上がるのは私的にはちょっと意外だった。できれば下がって決算を迎えてほしかった。
とにかくどうなるか、水曜日が楽しみでワクワクする。
鯨達のトレード
アメリカで相場を動かすような資金力も影響力もある投資家達のことを鯨(Whale)と呼ぶ。鯨の長はもちろんバフェット氏だろう。
でもバフェット氏は自分がよく理解できない会社には投資しないポリシーなのでNVDAには投資していない。
バフェット氏以外の名だたるカリスマ達の間ではNVDA投資はとても人気がある。このチャートは私がWhale Wisdomのデータを元に作成した。Stan DruckenmillerやSteve Cohen、Brad Gerstnerなどの名前は聞いたことがある人も多いだろう。
その人たちの多くがNVDAを1Q24に少なからず売却した。特にカリスマ中のカリスマ、伝説のDruckenmillerがずっと推していたNVDAを持ち株の7割以上売ったことはかなり話題になった。ポートフォリオの比重が9.1%から3.6%まで下がった。
でもこのチャートの数字をよく見て欲しい。DruckenmillerのNVDAは買ったタイミングからして、おそらく約4倍になってる。つまり、含み益だった部分を売って、オリジナルの元本と同じ額くらいを残したのかもしれない。
ポートフォリオ比重の3.6%は決して少ない数字ではないし、ヘッジファンドマネージャーの最も大事な仕事はリスク管理だ。だから私の本も「負けない」というタイトルにした。
David ShawとIzzy Englanderは1Qに3割以上売ったのに、ポートフォリオにNVDAが占める比重が4Qに比べて上がっている。それは1Qに株価が3割以上値上がりしたからだ。だから私はこれらもリスク管理の売りだと思う。
Steve Cohenは持っている銘柄数は6,000を超えるし、売り買いも激しい。1Qで半分売ったことはわかるけど、その後、彼がどう取引したかは全く分からない。45日経った今の時点ではもう全て売ったかもしれないし、もしその後、2Qの終わりまでに全額買い戻したら、私たちが知れるのは2Qのどこかで買った、という事実だけ。つまりあまり参考にはならない。
だから、鯨たちが1QにNVDAを売ったのは事実だけど、全額売り払った人はほぼいない、という事実の方が注目すべきなんじゃないか、と私は思う。
学習 vs. 推論の議論
最近のNVDAやAIにまつわる投資家間の話題で一番注目を集めているのは学習(Training) vs. 推論 (Inference)の違いだ。
学習とは要するにAIを育てること。推論とは要するにAIを使うこと。
例えば、ネット上にある膨大なデータを食わせてGPT4やLlama3を作ること、これが学習。ものすごい量のデータを食わせる必要があるので高性能なGPUが必要となる。
一旦学習が終わり、そのAIを使って質問に返事をしてもらう、動画や画像を作ってもう、PDFの要約をしてもらう、データの分析をしてもらう、などなどが推論。要するに私たちがAIを使う時は全て推論だ。
私も今勉強中なので、よく分かっていないのだけど、学習の方では圧倒的にダントツ1位で2位に大差をつけて先頭を走り、さらに差を広げてるようなNVDAも、どうやら推論の方の競争優位性は学習ほどすごくないらしいのだ。
学習がこれからもずっと必要なのは分かるけど、ここ1年ほどの爆発的な伸びはもうないのでは。これはOpen AIの新しいモデルがGPT5じゃなくて4oだったことからも推測できるのかもしれない。
例えるならば、小さい子供だったLLMがもう青年期をすぎ、成人しつつあるような感じかも。成人してからも学ぶことは山のようにあるけど、赤ちゃんから成人までの成長に比べたらスピードが違うのは当たり前だ。
となると、これから高成長が期待できるのは推論に必要なチップであって、学習に必要なチップではない、という考えがどうしても浮かんでくる。
NVDAは推論の方でも圧倒的に強いって言ってる人と、NVIDAの推論側のモート(堀)は全く深くないって言っている人がいて、私は今の所、どちらに誰がどう転ぶのか全く分からない。
学習・推論の質問はおそらくアナリスト達からJensenにコンフェレンスコール中に出ると思われる。今回の決算はJensenがいかにこの「これからは推論の時代だから、NVDA一強の時代は終わった」ストーリーを根本的に否定できるか、もかなり大きな焦点だと思う。
TLDR(Too Long Don't Read長すぎでしょ、全部読めないよ)
株が上がるためには来期売り上げガイダンス$28Billion必要。
鯨達はまだNVDAを見限ってない。
JensenがNVDAの推論における立ち位置を明確にするのは今回の決算では売り上げガイダンスと同じくらい重要。
さあ、NVDAの決算、楽しみましょう!