NVDAとCRWD決算後の身の振り方
8月28日は今期で最高にドキドキする決算日だった。私はNvidia (NVDA)とCrowdstrike (CRWD)の株を両方持ってる。NVDAはまた今回も天下分け目の関ヶ原。CRWDはシステム障害後初めての決算。引け後はNVDA6.87%の下落、CRWD 3.83%の下落。なぜ?これは売り?買い?私の独断と偏見を披露。Let's go!
NVDAの決算で私が思う事
来期のガイダンス
これは私がおととい投稿したポストに載せた私の「負けない勉強会」で作った予想のまとめに今日の結果を足したもの。
これを見ると分かるように、実際の結果はコンセンサスや私の予想より高かった。でも株は下がった。なぜか。
おとといの投稿で私はこう言った:
ここで大事なのは、決算はすでに7月28日付けで終わったことなので、もう変えられないが、ガイダンスは未来のことなので、コンセンサスの推移を見て決算前に変えられるのだ。
私はアナリスト歴が長いので、NVDAのCFOが会社幹部たちと決算直前までガイダンスの数字を議論してる光景が目に浮かんでくる。
私が8月18日に勉強会でガイダンス予想を決めた時はコンセンサスは$31.4billionだった。その場合$32billionでも良かったと思う。だから私達も予想を$32billionにした。
でもコンセンサスが$31.7billionの場合、四捨五入すると$32billionになってしまう。これでは弱い。
だから、おととい、投稿した時に「コンセンサスは超えてなんぼなので、$32.5か$33billionを出してくるかもしれない」と言ったのだ。
で実際に蓋を開けてみたら来期ガイダンスは$32.5billionだった。
これはなんとも微妙な数字。なぜならガイダンスは23年4月期に$10billionを超えて以来、ずっと1 billion単位だったから。
ここへきて0.5billion単位のガイダンスが出た。なぜ$33billionではなく、$32.5なのか?ここが私には引っかかる。
NVDAみたいなグロース株はガイダンスは超えなくてはならない。かなり安心なマージンで超えられる自信がある数字を出す必要がある。
しかも最近は決算に近づくにつれてコンセンサス予想が上方修正されるので尚更だ。
となるとガイダンスは少しでも低く設定したい。$33billionはちょっときつい。でも$32billionではおそらく低すぎる。よって苦渋の判断で$32.5billionだったのではないか。
先日の投稿でも言ったけど、この7月期から前年同期の比較が難しくなった。成長率の鈍化が如実に現れる。
アナリストが数字を上げても上げても軽々とその上を行っていたNVDAは、ここへきてコンセンサスの上方修正を恐れるNVDAになってしまったような気がする。
それが$0.5という数字に感じ取れてしまった。だから、ガイダンスは予想よりずっと高かったのに、私の言っていた「シナリオ2」の反応になってしまったのだと思う。
決算は良かったのに株は下がる。これは正に株主が遅れていた相場の反応だ。
さらに今回のNVDAの決算にはもう一つ大きな問題があった。
マージンが下方修正
前回の決算で発表されたガイダンスで今期のGross Margin(粗利率)が下がることは予告されていた。
今期(7月期)のガイダンスは74.8%だった。そして結果は75.1%。たったの0.3%のビート。
4月期のGroos Marginは78.4%でガイダンスは76.3%だったので、約2%のビートだった。つまり、今期のガイダンスに対してのビートが非常に弱かったのだ。
私のモデルは76%を想定していた。もおそらくアナリストのモデルもそうだっただろう。
そして10月期のガイダンスはさらに下がって74.4%。
NVDAは需要が供給を大幅に上回っていて、顧客は列を作って商品を奪い合い、NVDAは言い値でチップを売れるはずではなかったのか?
その状態でなぜGross Marginが下がるのか?何かおかしい。
さらにコンフェレンスコールで言及されたマージン低下の理由が私的には今ひとつ納得がいかない。
Blackwellの売り上げが伸びれば伸びるほどマージンが下がるらしいが、最新で最も高級なチップのマージンがなぜひとモデル前のものより低いのか?
チップの値段が高過ぎて、値段を下げないと売れないのか?それもおかしい。
多くの機関投資家は何か辻褄が合わないと、とりあえず売って、そのあと調べる。リサーチの結果、納得がいけば、たとえ売った値段より高値になっていたとしても平気で買い戻す。
なぜなら機関投資家は大きく上がること期待するより大きく下がることを恐れるから。「未知」が一番怖い。機関投資家は「負けない投資」を目指すのだ。
リスク管理は機関投資家にとって何よりも大事な要素。だからグロスマージンのトレンドに疑問を持って決算後売った投資家もいたのではないかと私は思う。
Blackwellの遅れは問題なし
散々噂されているBlackwellの納品遅延は株価にはほぼ関係ないと私は思う。2−3ヶ月売り上げがずれたくらいではファンダメンタルに影響はない。
明日株はどうなる?
NVDAの決算後の株の動きはファンダメンタル投資家よりは投機的な投資家たちによって牛耳られている。彼らは超短期のオプションなどを使って一攫千金を目論む。
短期で上がることを期待してロング(買い)で決算に臨んだ投機家たちはおそらくもうすでに売ったか、明日売るだろう。
開場後、下げトレンドが確認できれば、そこにトレンドをフォローするアルゴリズムのトレードが畳み掛けるのでその場合、明日は2桁下げてもおかしくないと思う。これは私がおととい予想したシナリオ。
決算自体は良かったので明日、上げに転じる可能性はゼロではない。でもそれにはファンダメンタル投資家たちが買いに来ないと上がらない。
ファンダメンタル投資家たちには、上記で述べたちょっと弱気な来期ガイダンスの$0.5と辻褄の合わないGross Marginの下方修正がネックになるのではないかと私は思う。
私はどうする?
私は8月5日に株を買ってしまっているので、私の会社のルールで9月5日まで売れない。でもNVDAの株を持ち過ぎているし、持っている株は3倍4倍になっているので、そろそろタイミングをみて半分くらいまで減らそうかと思っている。
まだ株は上がるだろうし、長期で見ればおそらく$200は硬いと思うので全部は売らないけど、お魚の一番美味しい所はすでに食べてしまった気がする。あとは骨を取りながら食べる感じ。つまり注意が必要。
CRWDの決算で私が思う事
システム障害のインパクト
この投稿はすでに長くなってるので大事な所だけ書く。
今回のCRWDの決算は今期の売り上げとかマージンとかは私は気にしてなかった。
今回の注目はAnnual Recurring Revenue (ARR: 毎年更新される売り上げ)とRemaining Performance Obligation(RPO: バックログ)がどれだけ影響を受けたか、つまりすでに契約してたアカウントがどれだけサービスをキャンセルしたか。
そしてシステム障害事故後の修正された今年度のガイダンス。
それらの情報のサマリーは以下の通り。
ARRもRPOも驚いたことにどちらも下がっていなかった。
私は1割から2割くらいの顧客がサービスをキャンセル。残った顧客も最大で4割くらいの値下げ交渉をしたのではないかと思っていたのでこの数字には驚いた。
私が数字を読み間違っていない限り、これらの数字が物語ることは顧客たちのほとんどは事件後、サービスをキャンセルしなかったし値下げ交渉もしなかったことになる。
にわかには信じがたい。まだ1ヶ月ちょっとしか経っていないので、まだ交渉してないだけかもしれない。
そしてガイダンス。4月期の2025年度の売り上げガイダンスは$4,011 millionだった。それが $3,902 millionに下方修正された。
これはたったの2.7%の下方修正だ。
2025年度のEPSガイダンスは$4.03から $3.65に下方修正されたのでこちらは9.4%の下落だけど、それにしても大したことはない。
事故の業績へのインパクトは私が予想よりずっと少なかった。
株はどうなる?
今のCRWDの株価はシステム障害の起こった7月19日の前日の株価からまだ25%下げてる。
このARRとRPOとガイダンスが正しいなら(今後さらに下方修正されないなら)CRWDは買いなんじゃないかと思った。
ARRとRPOとガイダンスが間違っている可能性はどれくらいあるのだろう。
私が思うに、株はすでに25%下がってるし、今回の決算はキッチンシンクできたはずだ。
(キッチンシンクとは英語の言い回しで ”everything but the kitchen sink" どうしても動かせない台所の流し台だけは残してあとは大きなものも小さいものも全て含める、みたいな意味。)
別の言い方をすれば、今回たとえば、ガイダンスをもし20%下げたとしても株価には対して影響がなかったと私は思う。
期待が低ければ、今後の決算で期待を超える数字を出すのが簡単になるから、私だったらかなり保守的な、絶対に超える自信のある数字をガイダンスとして出したと思う。
だとすればこの数字は大丈夫なのではないか?
私的にはなんでCRWDの株価が閉場後下げたのかよく分からない。
明日出てくる他のアナリストたちのリサーチを読んで何か大事なことを見過ごしていないか確認する。そして納得できたら株を買い足すかもしれない。