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DeepSeek ショックとNVDAへの影響

土曜の投資雑談会で話したDeepSeekAIモデルとNVDAや株相場への影響の話が週末に尾ひれをつけて広がり、今Nasdaqの先物が2%近く下げてるので、月曜はNVDAの株は大幅に下がる可能性が高い。そこで今の時点で私が集めた情報に基づき、中長期の株価に対する私見と今持ってる株をどうする予定かを書く。

DeepSeek って何?

DeepSeekまるで一夜のうちに出てきたシンデレラのように報道されているけど、実は2023年から色々なモデルを発表している。2023年といばLLM元年。つまり初めの頃からエンジニア達を使って研究してきた。

Deep Seekは2015年に創業したHigh Flyerという中国のHedge Fundのサイドプロジェクトとして2023年4月に発足し、今でも100%High Flyerが株主のスタートアップだ。

High Flyerは中国、浙江省に本社を置く運用資産$8billion(80億ドル)のコンピューターアリゴリズムに基づいて投資をするいわゆるQuant ヘッジファンド。

アルゴリズムを走らせるためにたくさんのエンジニアを雇い、
GPUを所有していたため、AI元年の2023年に自社でLLMを作り始め、2023年末、最初に発表したモデルは主にコンピュータープログラミング用だった。

Deep Seek ショック

そのDeep Seekが去年の11月にLLMを発表し、1ヶ月後のクリスマスにはDeepSeekバージョン3(V3)を発表した。

V3それほどニュースにならなかった。なぜなら、V3はLlama3.1 (Meta)、 Claude 3.5 (Anthropic)、 GPT-4o (OpenAI)と比べても引けを取らなかったけど、これらのモデルは最新のものから約6ヶ月から1年遅れていたから。

でも今年に入って1月20日、ちょうどトランプの大統領就任の日、つまりV3を発表して1ヶ月も経たないうちに、DeepSeekは推論(reasoning)を加えたR1モデルを発表した。V3をクリスマスに、R1を就任式の日に発表するあたり、アメリカを意識しているのは間違いない。

この6日前に発表されたR1がなんと、昨年12月にリリースされたばかりのGPT 最新のo1より優れている、しかもV3のトレーニングに費やした費用がGPTの100分の1以下(たったの$5,567,000)らしい、というニュースがシリコンバレーや投資家界隈を旋風のように駆け抜けた。

そんなに安く、そんなに速くトレーニングできるのなら、最新のNVDAのGPUを買わなくてもいいのではないか?つまりこれはNVDAバブル、ついてはAIバブルの崩壊?と投資家達はパニクっている。

しかもDeepSeekのLLMはオープンソースで、ウェブでもアプリでもAPIでも無料で使える。私も試しにPerplexityと並べて同じプロンプトで色々試して見たけど、結果はほぼ引けをとらなかった。

Deep Seekについては今朝(日本時間の日曜21時)やったSuper Meetingで実際に使ってみたデモをしているので、XかYouTubeをサブスクしている方はぜひそちらの動画をみて欲しい。

オープンソースで無料となると、影響はNVDAだけでなく、OpenAi、Google、Anthropic、PerplexityなどLLMを有料で使わせている企業にも及ぶだろう。

さらにNVDAのGPUが要らないならサーバーの冷却装置を作る企業やサーバーのラックや設置など、データセンター関連の企業、半導体製造に必要な機械を作る会社、半導体を作る会社、全てに影響が出かねない。

これがDeep Seekショックの概要。

これがAIバブルのピーク?

このショックが業界を駆け巡ったちょうどその日、トランプがStarGateのジョイントベンチャーでOpen AI、Soft Bank、Oracle、Microsoftなどの企業が参加し、2025年に$100billion、トランプ政権の4年間で合計$500billionのAIインフラ投資を行うと発表。

さらに同じ日、METAのCEO、ZuckerbergがMETAは2025年に$65billionのAI設備投資を行うと発表。

アメリカの企業達が大金を湯水のように使うと宣言したその日に、中国のスタートアップがそれを嘲笑うかのように100分の1以下の費用で同じレベルのAIを作ったと発表したのだ。

5年後、私たちはこの日を振り返り「あのトランプとザックの発表の日がAIバブルのピークだったね」と言っている可能性は充分にある。

ここから先は私の見立て

ここから先は私の意見、偏見、憶測、なのであまり真剣に聞かないで欲しい。私はエンジニアでもテクに明るいわけでもないので、あくまで眉唾で無責任な見解とエンタメとして聞いてほしい。

中国の数字は信用できない

まず、このモデルを作るのに必要だった費用は本当に正しいのか怪しいと思う。上のトレーニングに必要だった費用のくだりには、この費用はV3をトレーニングするために必要だった費用だけでそれ以前に研究に使った費用は含まれない、とある。

巨額な設備投資をしているアメリカの企業達も一つ一つのモデルにかける費用はそれほどではないかもしれない。何せバージョンが次から次へと出てくるのだから。

さらにDeep SeekはLlamaやその他のオープンソースのモデルをコピーしてそれを進化させているだけだと思う。以前、Googleの内部書類が出回ったときに、Llamaを使って個人や中小企業がとても少ない費用でLLMをトレーニングできると話題になったことを覚えている人も多いだろう。

大体、中国企業が実際にNVDAの最新のGPUを実は密輸で何台も何台も持っていても全くおかしくない。もし持っていたとしたらそれを持っていると言うはずが無い。だって違法なんだから。

中国側としては「俺たちはお前らのチップなんてなくたって同じくらい凄いものを自力でしかもお前らより速く作れるんだぜ」と言いたいインセンティブ満載だ。

Deep Seekのモデルが驚くほど凄い、という事実は変わらないけど、その驚きの程度がかなり誇張されている可能性はおおいにある。

Deep Seekは言語だけ

Deep Seekはプロンプトも出力も言語のみ。アメリカの最新モデルはみんなマルチモーダル、つまり、動画や音声、画像にも対応する。マルチモーダルにするためにはやはり多数のGPUが必要かもしれないし、コストも増大するだろう。

コストが下がるのはAI業界にとっていいこと

LLMのトレーニングコストが下がるのはおそらくいいこと。Deep Seekはオープンソースなんだから、そのコスト対価の秀悦さはすぐに盗めるはず。

例えばMETAは「あれ?$65billion使う予定だったけど、$20billionで済んじゃった!」となる可能性もある。となるとMETAの株は上がるだろう。

PLTRやTWLOなどのLLMを使う側のSAAS会社にも追い風になるだろう。LLMのコストが下がればマージンが上がる、あるいは値段を下げることによって需要が増える。

AIのコストが下がることによって、AIへの需要がさらに高まり、最終的に結果としてNVDAのチップへの需要がさらに上がる、という可能性もある。

Jensenは蘇る

NVDAのCEO、Jensen Huangはこれまでも何回も変身を遂げてきた。ゲームのチップ、クリプトマイニングのチップ、AIのチップとその時代が求めるものを先見の明を持って作り出す。

今後の10年間で私たちの住む世界はガラッと変わることは間違いない。一家に1台、人型ロボットがいる時代。お店の店員はほとんど全て人型ロボットになる。工場や工事現場で働くのも10台のロボットに対して人間が1人、という状態になるだろう。路上を走る車も半数は運転手のいないロボタクシー。

そのそれぞれのエッジ(スマホ、スマートグラス、人型ロボットやロボタクシー等)でAIの推論がリアルタイムで行われることになる。そのチップをNVDAは今作ってる。

Jensenやイーロンには私達には見えない未来が見えていると私は信じてる。

短期と長期

NVDAの株に限らず、短期的にはおそらくテク関連は全て下げると思う。それがどれくらいの期間続くかは誰にもわからないし、NVDAの株がどこまで下げるかも分からない。1週間程度で戻ってくるかもしれないし、2025年は下げ続けて株価は半分になるかもしれない。

短期でボラを利用してトレードして利益を上げたい人はおそらく売るべきだろうし、あんまり自信がなくてNVDAの株価が半分になったら怖くて投げ売りしちゃいそうな人はできるだけはやく売ってしまった方がいいかもしれない。

おそらく今NVDA株を持ってる人のほとんど全員が含み益なので利確してもいいと思う。私も去年の12月17日のパウエルセールで買った分くらいは売るかもしれない。

そしてもうかなり前から言ってるけど、AIの半導体ブームのフェーズは終わりに近いかな、と思う。だからたくさん持ってた半導体の株はNVDAを除いて全て売ってしまった。AMD, AVGO, CDNS, QCOM, AMAT, LRCX, MU, 全部売った。

でも6ヶ月以上のスパンで見た場合、私の相場に対する意見は変わらずBuy the Dipだ。経済は強いし、AIのコストが下がるのは特にソフトウェア側の企業には良いことだと思う。

そしてNVDA株を全部売るつもりはない。In Jesen I trust.

Deep Seekショックの勝ち組・負け組

これからのAI投資はエッジや推論の方が主になるのではないかと思う。AIを使った機械やデバイス、ソフトウェアを作る会社はAIのコストが下がるのは追い風のはず。

だから私が好きなTSLAやPLTRは勝ち組なのではないかと思う。あまりトレーニングやGPTに投資してこなかったAAPLもAIを使う側なので勝ち組だろう。

逆にGPUを沢山買い込んだハイパースケーラーのAMZN、MSFT、GOOGはGPUパワーのレンタル需要が落ちれば逆風になりそう。でもMETA同様、設備投資の削減につながれば株への影響は半減されるかも。METAはGPUパワーを貸し出していないので業績への直接影響はハイパースケーラーより少ないと思う。

負け組はNVDAを含む半導体関連会社全体だろう。自社の製品をいかに推論とエッジ向けに切り替えられるかが明暗を分けると思う。

中島聡さんと28日(火)日本時間正午から対談決定!

不定期で対談させていただいている中島聡さんは日本が誇るスーパーエンジニア。2月28日にはご自身の投資法を紹介した本も出版されます。中島さんはテク関連は日本で一番信頼できる、一番の情報通の方です。Deep Seekの件で中島さんのご意見を伺いたいとお願いしたら、快く引き受けていただけました!中島さんはNVDAの株主でもあります。今後をどうお考えなのか突っ込んだ質問もさせていただきます!乞うご期待!

YouTubeライブ、Xスペース共にライブも録画も一般公開になります。お昼休みの時間にぜひ聴きに来てください。ライブで参加できない方はぜひ録画で聞いてね!



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まりーさん@USA🇺🇸YOLO(You Only LIve Once)
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