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【筋肉少女帯(シーズン1)】音楽を用いて小説を書く天才大槻ケンヂの仕事


◆筋肉少女帯とは

大槻ケンヂの率いるナゴム系出身ロックバンド・筋肉少女帯です。
80年代から活躍して、めちゃくちゃいろんなミュージシャンに影響を与えているので名前だけ知ってる方も多いと思います。

バンドというか、前期は特に音楽を使いながら小説を書いているようなものが多くて、日本の文学系ロックバンドの元祖とも言えるかもしれないと思います。

アングラ、サブカル、猟奇、退廃、少女趣味、江戸川乱歩、オカルト、ホラーなどが好きな人は、筋肉少女帯を知っておいて損はないかなと思います。
あと、孤独で生きづらい少年少女にも。

時期によって、テーマや作風が異なりますが、私が詳しいシーズン1(活動休止前)までについて、歌詞世界を中心に紹介していこうと思います。
(選曲偏りますが、ご容赦いただけますと幸いです。)

筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)は、日本のロックバンドである[1]。1980年代後半から1990年代後半にかけて活躍し、2006年に活動を本格再開した。

◆筋肉少女帯で1曲選ぶなら

機械

髪かきあげ 図面引いて 奇妙な話を熱く語った
あの男は 狂っていた 本当に人を救う気でいた

「ホラごらん 天使呼ぶための機械さ これで消せる 人の哀しみを」
空へ…

今、彼女が空へむける機械は 誰にも愛されぬ彼の思い出
彼女だけが一人男を信じた きっと 彼女だけには見えるのでしょう
天使、翼が

迷ったけど、一番ピュアなラブストーリー(と思う)「機械」に一票で。
マッドサイエンティストの作った「天使を呼ぶ機械」と
彼を信じた恋人の話です。


◆代表曲たち

蜘蛛の糸

友だちはいないから ノートに猫の絵をかく
友だちはいないから やせた子猫の絵をかく

背中ごしに笑うあの娘 あなただけはとても好きだよ
くだらない人達の中で 君はどうして明るく笑うの

蜘蛛の糸を昇って いつの日にか 見おろしてやる
蜘蛛の糸を昇って いつの日か 見おろす

蜘蛛の糸を昇って いつの日にか 見おろしてやる
蜘蛛の糸を昇って いつの日にか 燃やして焼き尽くしてやる

学校に友達のいない孤独な男の子の歌です。
これ、代表曲だと思います。なんでMVないんだ。
私にとっての筋肉少女帯はこれ。
こんな中学生女子でした、私は。


踊るダメ人間

「踊ってる場合か!お前の思い言ってやろう」
この世を燃やしたって 一番ダメな自分は残るぜ! 3, 2, 1, 0 !

ダメ、ダメ、ダメ、ダメ人間
ダメ!人間 人間

蜘蛛の糸と並ぶ筋肉少女帯の代表曲だと思います。
ダメダメ パパパヤー

釈迦

足が滑りアンテナ売りは屋根から落ちる
まちかまえてた娘の上に音をたて落ちる
月の光あびてアンテナがさびる
屋根の上のアンテナから 飛び出る電波が
シャララ シャカシャカ

けっこうイイ人だったから 恋してあげてもよかった
けっこうイイ人だったから 好きになってもよかったけどね
ドロロのノウズイ

これメジャーデビューシングルなんですね。なんで。いいけども。
青森県の地名の「大釈迦」のせいで、この物語は舞台青森なのかなってずっと思ってしまっていますが、多分関係ないと思います。


サンフランシスコ

さようなら さようなら こんなに遠い 異国の果てで
お別れするなんて 本当に辛い

空気女と小人を連れて 街にサーカスが来る前に
ぼくら終ろう お別れしよう 夏の来る前に

サーカスが来ると 二人ドキドキして
まだぼくは君を 恋してるのかもしれないなんて
思いちがいをして

ノウズイは ものを思うに ものを思うにはあらず
ものを思うは ものを思うは むしろこの街
サーカスが来ると二人ドキドキして
「まだぼくは君を」なんて
「きっとうまくいくわ」なんて
綱渡りみたいに

「さようならさようなら~お別れしするなんてほんとに辛い」
は元ネタ中原中也の「別離」ですね。



◆物語系

レティクル座行超特急

僕を乗せて さあ!レティクル座へ列車が突き進む
遠い星座へ自殺者だけたくさんつめこんで

レティクル座行超特急 薔薇のように赤い目の
乗り合わせた少女が うっとりと笑った

「え~御乗車ありがとうございます。
ここで突然ですが、罪を背負った人間、ならびにつまらない人間は今すぐ、
飛び降りていただきますのであしからず。お出口は左側でございます。」
悲鳴

銀河鉄道の夜とか、天国行鉄道とかを踏まえてると思うんですが
本当に残酷。


サボテンとバントライン

少年はサボテンが好きだった サボテンは彼の神様だった
屋根裏部屋の隠れ家で それは緑に輝いている
少年はネコが好きだった ネコの名前はバントライン
バントラインとサボテンと 映画を見ている時だけが幸せだった

ホーイサボテン 緑の光り バントラインと僕を照らしていて
少年とネコの第二の犯行は 街の大きなムービーシアター

アメリカンニューシネマ「真夜中のカウボーイ」が上映されていた
バントラインがバクダン仕掛け 犯行は大成功と思われたが
映画に見とれていた少年は ムービーシアターもろともふっとんだ

映画を愛する孤独な少年と猫の友情ってだけで泣ける。
「真夜中のカウボーイ」この歌で知って見ました。


イワンのばか

楽しんでも苦しんでも 三年の日は流れてゆく
イワンの奴は前者を選んだのさ イワンのばか!

「イワンのばか」元ネタはロシア民話です。


風車男ルリヲ

風車を早く止めなさい 風車男を殺しに行きなさい
今すぐバスに飛び乗りなさい ルリヲを殺しに行きなさい

ねえ君、だけどルリヲは見つからないよ
聞いたんだよ 風車男には首がないんだよ

素晴らしい、詩世界が美しい。


少年、グリグリメガネを拾う

あの娘 あの娘 あの娘の中を覗こう
グリグリ グリグリ グリグリメガネで覗こう
見えるよ 見えるよ あの娘の中が見えるよ
ひしめきあってる そいつは無数の目玉さ
その目玉が涙に濡れ 君をギョロリといっせいに見た
何か嫌な物を見ても それは人生の修行さ 喝!

ネコ ネコ ネコの中は薔薇
老人 老人 老人の中は釘
サラリーマン サラリーマン 彼の中はネズミ
姉さん 姉さん 彼女の中はクレヨン
そんな物がギッチギチと みんなの中に詰まっていたよ
何か嫌な物を見ても それは人生の修行さ

猫のおなかはバラでいっぱい!


◆人生戦う系

タチムカウ 狂い咲く人間の証明

何故来たか不思議でしょ? 勝てるわけもないのに
僕達の哀しさは あなたがたにわからない
僕達弱いんだな 弱いから来たのだな
犬死にと笑うんだね 誇り高き人間の証明

あなたがたは強くて 頭もおよろしくて
リンゴでも潰す様に 僕等などは一捻りでしょう
リンゴ売りの窓の外 窓の外は春ですね 狂い咲きの様です
てめーら コラ なめるなよ 「オー!」

僕ら ガタガタ震えてタチムカウ ビクビク怯えてタチムカウ

この気持ちで生きて行こう2025。

トキハナツ

だがな犬よ お前がいるから僕は生きてく
さあガブリとやってくれよ
アイ・アム・ア・トップ・オブ・ブリーダー
トキハナツ この獣

だがなOK!お前は僕の最愛の友さ
「憂鬱」よ お前がいるから負けはしない
さあ噛みつきに行こうぜ
アイ・アム・ア・トップ・オブ・ブリーダー
トキハナツ トキハナテ

「人生はね、バスカヴィル家の犬だ」
「恐ろしいのが当たり前なんですよ」
最高です。大好き。解き放って噛みつきに行こうね。


221B戦記

「やめろー!人生は最期の武器だ 無駄弾を撃つんじゃない」
「しかし、死んでゆきます」
「だから なんだというんだ!?逃げるのか?あきらめるのか?
一生を闇の中ですごすのか?」
「いやです」
「少年の頃、お前はテレビを見なかったのか?」
「見ました」
「思いだせ、彼らは絶対の危機の時にどうした?
もうダメだ!というその時、彼らはどうした? 答えろ!」
「タチムカッタ」
「ならばお前もそうすればいい、それをやれ!」

参加者がめっちゃ豪華。
水木一郎がゲストボーカル、セリフは神谷明、宮村優子です。
「221B」はシャーロックホームズの住所番地です。


サーチライト

やあ!みんな 聞いてくれるかい?
この世にはさ なりたくもないのに時々ね、
暗ーくなっちまう奴っていうのが たくさんいてね
随分面倒な目にあっているんだよ
それは本当にやっかいでね オレもその一人だったんだ
だからさ、俺はサーチライトになりたいんだ
俺はポッケのないネコ型のロボットで 何もできんのだけど
歌う事と、ものを書く事だけはできるのさ
俺の歌とペンがサーチライトになるんだ
俺みたいになるなよ お前は 考えてやるのさ
俺みたいになるなよ 俺みたいになるなよ
俺みたいにはなるなよ 俺みたいにはなるなよ

なんか 賞でも欲しいのかい?
あんた 何様のつもりだい?
サーチライトのつもりかい?

大学の時の友人が、この曲を「人生の戒め」と言ってて
「本当にそうだな」と感嘆して私も倣った曲です。
文章書いてる身として
「なんか賞でも欲しいのかい」「あんた何様のつもりだい」が刺さる。

ペテン

あのね、死もね、ペテンだね、生も死もペテンだ
悲しい別れと思っても いつかはまた出会う

究極の救いはこれかなって思います。
生も死もすべてペテンでありますように。


◆ラブストーリー

君よ!俺で変われ

カフカ、フェリーニ マザーグース それより不思議な彼女
どうしても Don't open your mind! ハッ!
つまらないのよ エヴリデイ いやになるわね 人生
誰も私を Don't understand me!

ここに理解者が一人いるんだけどな 気付けよ

やがて洪水がすべて夜の青の色に
染めていくように 君よ!俺で変われ! ハーッ!

大好きです。サビが最高。それにしてもビデオが若い。
好きな人の理解者になりたい心理、影響与えたい心理、めっちゃわかる。


香菜、頭をよくしてあげよう

香菜、君の頭僕がよくしてあげよう
香菜、生きることに君がおびえぬように
香菜、明日 君を図書館へ連れていこう
香菜、泣ける本を 君に選んであげよう
香菜、いつか恋も終わりが来るのだから
香菜、一人ででも生きていけるように

若い頃は、こういうこと言ってくれる大人の恋人に憧れたものです。
全く無責任なバカ扱いされて愛されたい心理ありましたが
完全に相手に甘えてる関係性だなあと大人になった今思います。


ザジ、あんまり殺しちゃだめだよ

暗い夜の歩道を白い手袋 手をつないで逃げようずっと
疲れちゃったら休もう 君はケーキが食べたいね?
そしたら僕が お祈りをしてやるよ
悲しい人を、君が見ないように 笑えるようにね
「バカ」って言うかな ああ、バカだよ

隠れ名曲だと思う。本当に好き。
サビが最高すぎる。超ロマンチック。
殺人鬼の少女と、それをかばう男の逃避行。美しい。最高。


境目のない世界

アタシとアナタが金属であったなら
ドロリ一つ溶け合えたから
ああいっそハンダゴテで溶かしてしまおう
境目のない世界に ドロリとひとつ

筋少でメロディーで言えば一番好きです。
カラオケでよく歌います。


僕の歌を総て君にやる

大好きだよ君が 初めてさぁ言うが
僕の歌を総て 君にやるよ
どうも俺は 長く生きてけないような
気がするから だから総てやるよ

お前の声なら この先 いつまでも唄えるだろ
夜間飛行の速さで 十六夜の 闇の空を 流れ行けよ

個人的な感傷で申し訳ないんですが、
2024年に応援してたバンドのボーカル(LIPHLICHの久我さん)が
死んじゃった立場として、
亡くなった後しばらくこれ聴いてました。
12年間、活動を見守ってた客の一人としての感傷で
この歌があってよかったと思います。
久我さんも大槻ケンヂのファンでした。


◆女の子系

ノゾミ・カナエ・タマエ

ノゾミ・カナエ・タマエ
総て燃えてしまえ みんな同じになれ
誰もが漂う 灰になるなら
冷めた風に吹かれ 忘れた歌のように
ノゾミ・カナエ・タマエ
遠く高く広い空を 飛べるよ

レティクルの神様
ただ一つのお願いがあります かなえてください
人も虫も夢も 月も靴も街も 薔薇もエメラルドも
悪い人も やさしいあの人も
総て燃えてしまえ みんな同じになれ
ノゾミ・カナエ・タマエ
誰もが漂う みじめな 灰に 還れ

いじめられっ子の女の子の葬儀に神様が天使を遣わして
偽善の涙を流す同級生たちを焼き尽くす歌です。大好き。
いじめられっ子少女復讐譚のお手本。


ハッピーアイスクリーム

アー死者よ 「アッハッハッハッハ」
ちゃんと教えてほしいんだ
ノゾミ! 「ハイ!」
カナエ! 「えっ?」
タマエ! 「な~に」
桃子! 「うん!」
いつかは俺も消えるのか
死ぬか? 「死ぬわ」
死ぬか? 「死ぬわ」
死ぬか? 「死ぬわ」
死ぬか? 「死ぬわ」
怖い 「平気」
怖い 「平気」
怖い 「平気」
怖い 「平気」
闇に帰るだけだろ

ウオーキングデッドになった女の子たちに死の恐怖を煽られる歌。


さらば桃子

「その日桃子は世をはかなみ 生まれ変わるべく 空へと飛んだ
少女はニーソックスを はいていた」

加速、 今や、 誰も、止めるは不可能 クツの底 桃子 空映し 桃子

飛び降り自殺をした桃子が頭上から降ってくる歌です。桃子~!!


ノゾミのなくならない世界

それから6年後 ノゾミはポルカのパーティーで
カリスマミュージシャンがいるの見た 声かけた

「あなたあたしの青春だった」
「どうもありがとう それより踊りましょう
想いは冷める 気にすることないよ 誰だって同じさ」
踊るポルカの夜

その夜ノゾミはカリスマと夜通しポルカを踊ったよ
いつしかノゾミは腕の中 カリスマはくちづけをせまる

ノゾミは冷めていた
ノゾミはひとみを閉じたけどそれでも世界はなくならない
なくならない

憧れのバンドマンと会ったバンギャが、迫られて冷めきっている歌です。
夢が壊される瞬間、世界がなくなることを望むってつら。


マタンゴ

マタンゴというキノコは人に寄生いたします
あまねく全ての人がお庭にキノコを植えたら
キノコ人間になってしまった君の家のタマミちゃんが
目立たなくなるからいいねぇ
おめかしをして ドレスを着せて
パーティーにも連れて行けるからいいねぇ
いくら頭が良くたって かわいくたって キノコ人間じゃねぇ

呪いの館には行っちゃいけねぇ

楳図かずおリスペクトだと思うんですけど、違うのかな、タマミちゃん。
あれは赤んぼ少女だから違うか。


ゴーゴー蟲娘

(動画がないんですが、歌詞が素晴らしいので歌詞だけ)

あの娘は自分が蟲だと気づいた日
D坂にしゃがんで土下座をしたという
ごめんね あたし蟲だから 愛されないの きっと
ねえ!あの娘の世界は鏡地獄 どちらを見たって蟲だらけさ
蟲娘のくせにナルシストで 糸を紡ぐぜ

◆ステーシー系

再殺部隊

あのね、あたしたち好きな人に もう一度会うため歩いただけよ
でもね、許されないのならば どうぞ、メチャクチャにして欲しいな
だって あたしは好きな人が 血まみれだって抱いてあげるワ
だって あたしの好きな人は 血まみれだって抱いてくれるワ

大槻ケンヂのホラー小説「ステーシー」の原型。
15~17歳の少女が突然死を迎え、ゾンビとして起き上がる話の
ゾンビ(ステーシー)となった少女視点の歌。

タイトルになっている再殺部隊は、
起き上がった少女たちをチェーンソーで
再度165分割の肉塊にするため組織された部隊です。

、、、ある日、少年は屍の中に恋人を見つける


リテイク

愛していた君を ずっと守ってあげたかった
守って守って守りぬいて それで一生が終わったって
どうして崩れ落ちるのかな 夢は

これから先 君が動き回る屍となって ギクシャクと夜を歩いたり
まるでクモのように地面を這いずる姿を見るのはあまりに忍びない
ごめんなさい!ゆるしてください!ごめんなさい!ごめんなさい!

再殺部隊に続く「ステーシー」の歌です。
人生をやりなおし、映画として撮りなおすと心に決める歌。



◆小説家としての大槻ケンヂ

小説も詩集もエッセイも、いっぱい出しています。
私自身、筋肉少女帯を聴く前に、エッセイの読者でした。
好きなのは「僕はこんなことを考えている」です。

代表作は小説「グミチョコレートパイン」だと思います。


◆公式サイト


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