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【ラノベ作家・田花七夕インタビュー】ホラーの設計から執筆・投稿のヒントまで
インタビュー第一回は
友人であるライトノベル作家・田花七夕氏にお話を伺いました。
第3回HJ小説大賞後期を受賞し、HJ文庫より書籍「まきなさん、遊びましょう」が発売された件を主軸に、経緯や出版までの流れ、作品概要、影響を受けた作品や、執筆のコツや、新人賞受賞を目標に送っている人へのヒントなど、ライトノベル自体をよく知らない人にも楽しんでいただける記事になったと思います。
◆プロフィール
インタビューされた人:田花七夕(たばな・たなばた)
自己紹介:小説を書く怪異。おおむね無害である。
話を聞いた人:マリエリ
田花氏の友人であり、ライター。別名で小説執筆。怖い話が好き。
◆受賞から出版へのお話
マリエリ:
一般的なラノベ読者に向けてのインタビューにするよりは、
「賞をとって小説でやっていこうとする人への体験談」
としてのインタビューにしたほうが、実用的な記事になると思うので、そっちにターゲットを寄せてお話を伺おうと思います。
受賞したのは、出版した2024年5月の、1年くらい前になりますか?
田花:
受賞したのは、2023年の7月24日に発表の
「第3回HJ小説大賞後期」です。
エンターテイメント作品、キャラクター作品ならばジャンルは不問で、例えばホラーやギャグでも応募できます。
わたしの知る限り完全なノンフィクションは受賞していないので、ライトノベル寄りの賞とみてもらったほうがいいと思いますが。
マリエリ:
作品を送るまで、どのくらいの期間、準備しましたか?
田花:
そもそもこの賞がインターネット上の投稿サイトに投稿したものに、応募用のタグを付けて応募する形の賞で、その前から書いて発表してあったものでも、タグを後付けして応募することもできる賞で。
「二次創作ではなく、80,000文字以上であればOK」というのが応募資格でした。
なので、いつから準備というのには答えにくいのですが、投稿を始めたのは2022年の1月で、応募したのは2023年ということになります。
マリエリ:
サイト上に上げていたのは、1巻部分だけ? 2巻も含めて上げていた?
田花:
受賞時点で言うと、既に2巻を超えたところまで、WEBでは発表済みでした。
そもそも話が分岐しちゃっていて、WEB版の2巻相当部分と、書籍の2巻相当部分は全然違う話を書いているので、どこまでというと難しいんですけど。
1巻を超える部分まで投稿してあって、受賞して、1巻が本になった、という経緯になります。
マリエリ:
前に伺った話で、「WEB版と、本になっている版と、だいぶ内容と人物像が違う」ということがあったかと思うのですが、本にするにあたって、内容を全体的に書き直した、ということになりますか?
田花:
そうですね。ただ、1巻については編集者さんからあまり修正を求められませんでした。
WEB版は今も公開しているので、書籍版と見比べていただければ「なるほど、こんな風に修正されるのか」となるかもしれません。
マリエリ:
受賞から本を出すまでは、直しというか、忙しかった?
田花:
新作を一気に発売すると読者さんにも不都合なので、ある程度発売時期を調整するみたいです。
編集者さんから「このくらいの時期を目指したいのですが、いいですか?」という風に訊いてくれるので、思ったよりはゆとりがあったという印象です。
初めての出版ですし、自分で入れ込んで一生懸命やっていたという意味では忙しかったですけど、スケジュールは過密ではありませんでした。
マリエリ:
余裕がない人は「近々で来月出します」みたいなパターンもある?
田花:
編集・出版は専門外なので断言できませんが、翌月出版というのは修正が全然なくて誤字も脱字もない、完璧な原稿じゃないと物理的に無理じゃないかなと思います。
そもそも、本文が良くてもイラストレーターさんの作業が間に合いませんし。
来月とかっていうのは、時事問題の本――選挙の話とか、経済的な事件の話とかだけで、小説ではほとんどないように思います。早くて数か月後になるんじゃないでしょうか。
◆ホラーの設計について
マリエリ:
作品を読んでない人にも向けて、ざっくり概要と見どころを記事内で紹介しようと思うのですけども。
1巻目は高校生の主人公が、身近な友達の「俺の部屋に化け物が出る」という相談を受けて、怪異研究会の部室に行って、まきなさんと出会うところから始まって。
まきなさんと仲間になり、身近な怪異を謎解きするにあたり、登場人物が増えて、そこから吸血動画になり、ブラッディ・マリーの話になり、都市伝説と学園ものというか。
田花:
技術的な設計としては「怪異と戦えるライトホラー」を志向しています。
ホラーって、
①脅威と戦えないし交渉できない、絶望的なもの
②何らかの方法で一時的に退散させられる程度で、終始劣勢なもの
③主人公が十分強くて、脅威を倒せるもの
……と、3パターンありますが、自分は意図して③を書いています。
厳密な方は、これはホラーではないと鑑定すると思います。
わたし自身も投稿サイトのジャンルを「ホラー」や「ミステリー」ではなく、現代ファンタジーに設定しています。
①はホラー映画のほとんどがそうだと思っています。クトゥルフ神話みたいに相手が強大すぎるものも、大抵は①でしょうか。
船で突撃されて一時撤退、なんていう作品は②に近くなりますけど。
マリエリ:
封じ込めるのは倒すに入りますか?
田花:
対処法があって、繰り返し使えるなら、勝ってるほうに入れていいかなと。
マリエリ:
例えばホラー映画の「エクソシスト」は戦うじゃないですか。あれは倒せているになります?
田花:
あれは……どうなんでしょう。
悪魔の本体が滅んだとは解釈しにくい気がしますが、きちんと研究したことがないので保留させてください。
③の例は「地獄先生ぬ~べ~」とかですね。
怪異の問題をきちんと解決することもあるけれど、相手がどうしようもなく邪悪なら単に殴り倒しちゃうこともあるという。
テレビアニメ版の「ゲゲゲの鬼太郎」もエピソードによっては力業で解決しますか。
相手が非常に強くて一応封印はできるけど勝てない、というものではなくて、主人公が完全に勝ち切っちゃっている話を、これは自分の好みとして、敢えて目指しています。
マリエリ:
もともとそっちの作品に影響を受けて、「怖がって逃げまくるだけのホラー」ではなく戦って倒せちゃうという作品を志しているということですね。
田花:
敵が人間由来であるなら、人間を大きく超えるものではないだろうと考えています。人間をはるかに超える存在は人間を滅ぼそうとしないんじゃないかなって。
宇宙を自由に旅しているような存在が来たら人類は問答無用で滅んじゃうし、逆に人類といい勝負をしちゃう程度の存在ならよそを襲った方が効率的ですし。
人類も「なんとか島のなんとかという虫を絶滅させよう」とは敢えてしないじゃないですか?
マリエリ:
山梨のタニシの。
田花:
あれは有害だからでしょう。
人間にとって寄生虫は脅威です。人間は弱い……というか、ちゃんと動物ですから。その人間も、無害なものに執着して絶滅させようとはしません。そういう意味で、敵が強すぎないほうが個人的には好みです。
怪異と無関係な陰謀ものでも、強大な悪の組織が地球を支配していて、世界中のだれでも簡単に殺せるとすると、悪の組織に気付いた主人公はどうして殺されないのか? という問題が生じます。
相手が強すぎないほうがリアル、という思想に基づきました。
マリエリ:
作品内のモチーフで出てきている「花子さん」とか、一般的には戦えない、怖がるだけのアンタッチャブルというか関わったら呪いがかかってどうしようもないという属性を持ってきていますよね。
田花:
作中に登場する怪異はある程度弱点があるものばかりです。
いわゆる対抗神話ですが、花子さんにも「優等生に手を出せない」「100点の答案が苦手」みたいな限界がありますし。
それに、お化けに対して主人公もお化けで対抗していますから。
一般的な怪談では対処不能とされる相手を倒してしまっても不自然ではない構成にはしてあります。
……この辺の話は、オカルト物を書こうとするニッチな話になっちゃうのでは?
マリエリ:
作品の概要として、「怖い話が好き」な人に届けられれば、面白く読んでもらえると思うんですよ、このあたりの話。
田花:
もっとざっくり言ってしまうと、今回わたしが出版した本は「怖いものが好きだけど、苦手な人」向けな怪談になっています。
基本的な設計思想としては、やっぱり「ぬ~べ~」や「鬼太郎」に近いです。わたしの作品は教訓性・寓話性を薄めていますが。
マリエリ:
怪異を取り扱う作品って、一気に日常から逸脱するものが多いと思うんですが、この作品は日常の延長として、日常から逸脱しないまま、日常に足を置き続けているなと思っていて。
非日常に転じていない、日常を拡張して足を置き続けながらも、話が進むよねという。
田花:
これはどちらが良い・悪いではないですけど、「身の回りにそういう不思議な話があるかもしれない」くらいの加減が怪談向きかな、と。
そういう意味では、例えば役所として「怪異対策省」というものがあって、公式にゴーストバスターを公務員として雇って、警察などと並ぶ一機関として戦っているという話になると、それは「現実じゃないじゃん」と断絶してしまう。
ポストアポカリプスものもそうで、今我々が生きている世界がいずれポストアポカリプスを迎えるという考えはできるけれど、「世界が妖怪に滅ぼされて」という話を始めちゃうと「今滅んでないじゃん」になるし、異世界転生も「転生してないです」になっちゃう。
そうならない、「もしかしたら、世の中でこういう話もあるのかもね」という物語の規模とか、内容とかを意図しました。
現実と大きく断絶している物語もそれはそれで好きですし、実際、近々挑戦するつもりですけど。
マリエリ:
1巻は東京が舞台で、2巻は石川県の温泉街で。
本を出す前から書きわけというか、全然違う場所を舞台にしようと最初から決めていたのか、あとから付けたのかを聞きたいです。
田花:
WEB版の時点で石川県に行っています。
2巻部分についてはWEB版と書籍版で全然違う話を書いているんですけど、舞台は一緒で、どっちにしろ、主人公たちは東京を離れていました。これは設計思想的に言うと、劇場版です。
つまりドラえもんの普段の話は街の中、大長編になるとどこかへ出かけているという。
1巻とは違って、敢えて全然違う場所に行っているし、話の規模を大きくしています。
マリエリ:
登場人物の、瑠璃、珊瑚、山姫、イレアナという登場人物の構図は同じ?
田花:
書籍版の重要な登場人物の山姫ですが、WEB版には存在しないんですよ。
事件の性質も全然違って、書籍版は主人公たちが介入しなければ人が大惨事になりかねませんが、WEB版は主人公たちが一切かかわらなかったとしても大したことにはなりません。それくらい温度が違います。
この改稿についてはわたしの希望もありますし、編集者さんの考えも影響しています。
マリエリ:
じゃあ2巻1冊分の原稿を総とっかえで書き直したのって、どのくらい時間がかかりましたか?
田花:
2・3カ月かなと思います。
細かい直しを無視すると、2・3カ月で書いていると思いますけど。
(1巻の出版が2024年5月で2巻が11月だから、ちょうど5カ月)
話の原型というか、設定は同じで、パラレルワールドで事件が違うという形ですね。
◆怪異研究会の部室って
マリエリ:
細かい設定の話を聞きたいんですけど、主人公が怪異研究会部室に行ったじゃないですか。まきなさんがいて、まきなさん幽霊だから学籍ないでしょう。誰が部長?という。
田花:
公には存続していないので、廃部です。
壊そうとすると祟りがあるので誰も手を付けられない、先生も誰も手を出せないという状態ですね。
マリエリ:
誰かが部の手続きをして、部室を確保し続けているわけではない?
田花:
あそこは、制度ではなくて暴力によって保持されています(笑)。
マリエリ:
それを知らない主人公が訪ねて行ったという。
田花:
偶然通りかかって見かけて。
もし主人公が事前に話を知っていれば、「ここかあ」というリアクションをとったと思います。
◆大惨事にならない『コープスパーティー』
マリエリ:
話が戻るんですけど、もともとの作家ルーツとか戦えるタイプの怖い話が好きだったという。
田花:
割と、現実と離れたところじゃない場所に何か夢があるかもしれない恐怖があるかもしれないことに憧れがあって。
マリエリ:
よく見かける異世界ファンタジーではなくて。
田花:
それはそれで好きなんですけど、「異世界に行かなくても、どこかに不思議なことがあるかもしれない」という憧れに基づいています。
マリエリ:
ミステリーや謎解きに惹かれるというのも、日常の中の不思議という構造は一緒ということですよね。
田花:
そうですね。
マリエリ:
シャーロック・ホームズも、化け物出てこないですよね。
田花:
正典だと、非現実なものは徹底して出てこないですね。
マリエリ:
影響を受けているとおもうものって、例えばシャーロック・ホームズと仮面ライダーはそうだろうなと思うんだけど、そのほかには。
田花:
一番直接的に影響を受けているのは『コープスパーティー』かもしれません。
といっても、「コープスパーティー」の世界はわたしの作品とは全然違って、敵は強いし状況は絶望的だし、どうにもならないタイプのホラーですけどね。
あの学校、ただの閉鎖空間なんて生易しいものじゃありませんし。人知を超えかけてますし。
マリエリ:
酷い目に合いまくるホラーというイメージです。
田花:
そうですね。
大好きなんですけど、すごく過酷な展開が続く作品なので、ああいう世界観で被害は小さめ、大惨事にならない「コープスパーティー」みたいなものを理想にしている……かもしれません。
マリエリ:
『コープスパーティー』好きな人には刺さる可能性が。
田花:
どうなんでしょう……
「コープスパーティー」のファンは登場人物がひどい目に合うことを恐れつつ楽しんでいるような気もするので、この仮定に基づくと、むしろダメなんじゃないかなと。
今回の作品は「少年誌に載せても問題ない程度」を目安に自主規制しているので、登場人物もかなり保護されています。
ですから、「コープスパーティー」の影響を受けてはいるんですが、その遺伝子をちゃんと受け継いでいると言えるかというと、ちょっと……そんなことを言ったらご迷惑になりそうです。
◆作家志望の人へのヒント
マリエリ:
作家志望で投稿している人、文学フリマに出している人などに向けて、ライフハックじゃないけど、ヒントなどありますか。
ぶっちゃけ「こうしたら続けられるよ」とか、「何を気にしたらいいよ」とか。
田花:
いかなる意味においても、わたしは成功者ではないので、人様にアドバイスすることはできないんですけど……。
マリエリ:
アドバイスっていう上からのものじゃなくても、たとえば、
「そのうち本出したい」と言ってる人、たとえば私に対して、賞の選び方とか、こんな方法があるよとか、そういう助言というか、あれば。
田花:
わたしは「売れている作品は全部面白いけど、面白い作品が全部売れているわけではない」と思ってます。
もちろん、いわゆるノット・フォー・ミーはあるので、売れている作品を例外なく楽しめるという意味じゃないですよ。
で、それを裏返すと、「当たりくじを引くまで投稿し続けるしかない」ということになっちゃうと思うので。
マリエリ:
出して落ちても凹まないようにするということ。
田花:
そういうことになるんでしょうか。
マリエリ:
凹む必要がないということ?
田花:
うーん、そう聞かれると困るんですけど……
わたしが大作家なら「その通り」って言ってもいいのかもしれませんが、そうではありませんし。
マリエリ:
いやいやいや。
私の目から見て格上ですから。ちゃんと賞をとって、本を出すというのは、人生の実績として、未達成な人から見ると達成者にはなるので。
達成のラインが「バカ売れ」だったら、達成してないって話にはなるけど、賞をとって本を出すという達成ラインは一つ確実にあるわけで。
「凹む必要がないから、当たりくじを引くまで出す」というのは前に送ってもらったインタビューで「他の人の作品が素晴らしかったから、自分の作品が否定されたわけではない」と言ってたなと思い出しますが、そういうことですよね。
田花:
まさにその発想で行くしかないと思っていて。考えようによってはただ残酷な話になって「どんなにいいもの書いてもダメな時はダメ」っていうことになっちゃうんですけど、高みからじゃなくて、低みから見るとそういう真理がありそうです。
マリエリ:
それはむしろ救いになりますよね。
賞に落ちたとしても、「作品自体は否定されない」「価値がないと言われたわけではない」という。
田花:
このくらいしか言えないですが。
マリエリ:
十分です。
あと「賞とのマッチング」は絶対ありますよね。文学に出すか、エンタメに出すか。
田花:
それはそうですね。求められていない賞に出すのは絶対に損なので。
マリエリ:
どんなに質が良くても無理ですよね。
田花:
編集者さんに「この賞に限って言えば、夏目漱石とあなたが競ったとしてもあなたが受賞すると思う」と言っていただいたことがあります。
どんな文豪でも、合わない賞に応募すれば不利を強いられるということですよね。
いや、まあ、本当は、わたしと漱石なら作風が合ってなくても漱石の新作を出版した方がいいと思いますけど。
マリエリ:
手当たり次第に送るっていうのは上策ではないと、賞とのマッチングは。
田花:
既存の受賞作品に似ているのも逆に不利でしょうから、難しいところですけど。
大ヒット作品と雰囲気が似たものを応募しても埋もれがちになるでしょうし。「涼宮ハルヒの憂鬱」のころは、特にそんな例が多かったと何かで読みました。
マリエリ:
賞が、今売れているものと同タイプのものを求めているわけではなくて、賞自体の求めているものを見極める必要があるということ。
田花:
いわゆる傾向と対策は難しくて、わたしも全然できません。
でも、そのレーベルから本になることを想像できないほどミスマッチだと、やっぱり損だと思います。
マリエリ:
これはすごく有益な話なんじゃないですか。
田花:
同じことを先輩方がおっしゃってますから……。
マリエリ:
言うことに価値があると信じましょう。
田花:
とにかく合ってない所に送るのはもったいないので、意識した方がお互いの為かなという気はします。
マリエリ:
「作品に価値があればどの賞だってとれるわ、みたいなことはマジでない」のでっていうことですよね。
田花:
そんなワイルドカードな作品があったら格好いいと思いますけど、難しいかなと。
マリエリ:
それぞれの出版社や雑誌についてる読者層も違うしということですよね。
面白い、勉強になりました。
◆次の作品の方向
マリエリ:
では、「次はこういうのが書いていきたいです」みたいなものありますか。
田花:
お化けと、まじめに頑張る男の子・女の子が好きなので、そういう話を書きたいと思っています。
マリエリ:
どういう人に読んでもらいたいか決まってます?
田花:
基本的に作家は自分の望むものを書いているという仮定に基づくのであれば、「お化けが好きで、でも怖がり」な人な気がします。
マリエリ:
お化けが好きで怖がりな人が、『コープスパーティー』見るのは良くないっていう。
田花:
動画を見てからホラーゲームをやる。
ちゃんと自分で遊ぶんですけど、「なるほど、こういう怖い目に合うのか」と知った上でやる人というか。
マリエリ:
ホラーに対してちょっと防御が働いちゃってる人に、楽しんでもらえそう、という。
田花:
怖すぎないホラーを求めている人に届けばうれしいです。
◆キャラクター二次創作について
マリエリ:
まきなさんとか、透明人間とか、珊瑚、瑠璃ちゃんとかの、女の子要素、誰が人気とかありますか?
田花:
人気投票したわけでもなく、何も観測していないので、正直全くわかりません。
マリエリ:
ファンアートとか。
田花:
ないんじゃないですか?
マリエリ:
ファンアート来たらうれしいですか?
田花:
それは嬉しいです。
わたしの夢の一つは、自分の作品の二次創作同人誌が出ることです。
マリエリ:
同人誌があったら教えて欲しい?ファンアート見せて欲しい?
田花:
あるならぜひ見たいですね、それは。
マリエリ:
歓迎なんですね。
じゃあハッシュタグとかリプライとかで教えてくださいみたいな。
でも、ハッシュタグは自分で見に行かないと気付かないので、それなら作者のアカウントにリプライで教えてもらったほうが。
田花:
出版社さん公式のハッシュタグは #まきなさん遊びましょう ですね。
今、書名でX(旧Twitter)を検索したら「2024年の本ベストテン」にわたしの本を挙げてくださっている方がいてびっくりしました。うれしいです。
マリエリ:
良かったじゃないですか。
「2024年の本ベストテン」とかわざわざツイートしないですよね。
すごい。喜んでいいんじゃないですか。
田花:
透明人間を気に入ってくださった方は見かけました。
透明人間は、結構ダメなお姉さんなんですけど。
マリエリ:
なかなかダメな人ですよね。
田花:
妹をヒロインと呼んでいいんでしょうか……?
マリエリ:
父が違うとかって話がありましたが。
田花:
でも、家族でしょう。
マリエリ:
確かにそう。家族。
父が違うとかっていうエピソードって何か意味ありますか?
お父さんが居ない理由の説明って言うこと?
田花:
主人公と妹は、両親の不仲について「どうしようもないものはどうしようもない」と達観しているので、あれは既に解決済みの問題なんです。
もっと長く続いたら、あらためてもっと分かりやすく解決されるかもしれませんが。
マリエリ:
なるほど。続いて欲しいですけどね、ここまで読んだからには。
海外行くとか。台湾行って戦ったりしてほしい。
それこそ吸血鬼ルーツのルーマニア行くとか。
WEB連載で続ける見込みとか、可能性とかは?
田花:
WEB連載続いてます。
マリエリ:
えっ。ごめんなさい、失礼しました。
田花:
書籍版とはパラレルワールドですけど。
マリエリ:
完結してないということ?
田花:
一応完結しています。
マリエリ:
本になってない原稿としては何冊かぶんはWEBのほうにあるっていうこと?
田花:
一、二冊分あります。
もともとWEBで連載を始めた話ですから、書籍化はとてもうれしいですし、光栄だと思っていますが、WEB版はWEB版で、自分が満足するまで書くつもりです。
マリエリ:
なるほど。でも完結してるんでしょ?WEB版は。
田花:
説明が難しいんですけど、完結した後の続きを書いています。
マリエリ:
どういうこと?
完結ってシリーズ終了っていう意味じゃなく?
田花:
ダウンロードコンテンツというか……。
マリエリ:
本編自体は終了している?
田花:
マリエリさんに通じないと思いますけど、ペルソナ5(P5)でいうとP5Sですね。P5Rじゃなくて。
本筋の事件は解決後の主人公たちが別の事件に取り組んでます。
マリエリ:
それはセカンドシーズンでは?
妹も戦う?
田花:
戦うというか、調査に参加します。
マリエリ:
でハーレム状態?
田花:
ハーレムものを書いているつもりはないので、どうでしょう。
マリエリ:
そういえばさっき影響受けたところでペルソナ出なかったですが。
田花:
名作なので無意識に影響を受けているかもしれませんが、意識はしていません。
ペルソナは結構メッセージ性があって、社会派のRPGという側面がありますけど、わたしはもっとエンターテイメントに寄っているので……。
マリエリ:
高校生と怪異という共通点はある?
田花:
「学校の怪談」という定型がある通り、基本的に怪異は青少年のものでしょう。高校生と怪異の組み合わせで切り出すと、類似作品が無限に増えちゃいます。
そもそも現代怪異ものは「ペルソナ」じゃなくて「デビルサマナー」ではないかと。
あれは現代社会に悪魔が潜んでいるという世界観なので。これは完全に脱線ですけど。
◆執筆について
マリエリ:
仕事しながら生活していて、一日何時間くらい、執筆時間を取るようにしてます?
毎日書くとか、週に何回は書くとか決めていたりしますか?
田花:
平日は1、2時間、なるべくまとまった時間を作るように努力してます。
30分ぐらいでは集中できないので。得意な人は短時間でもできるそうなんですけど。
プロットのような大事な作業は土日にやっておいて、地道に書くところを平日の隙間時間に進めています。
マリエリ:
集中しやすい時間帯とか、タイミングとかって何を整えてから集中するとか、決めてたりしますか?
洗い物と、洗濯物と、家事を全部終わらせて、部屋を全部綺麗にしてからやることにしているとか。
とりあえず時間をとるのを最優先にしているのか。
田花:
生活を破綻させないことは大切なので、一応、仕事や家事を優先します。
やらなきゃいけないことの次に書きものですね。
マリエリ:
じゃあ日中仕事をして、仕事後に家事をやって、夜9時10時から、1・2時間とるという感じ?
田花:
プロットのように大きな設計は土日に集中してやり、
物語が進む中くらいの文章は平日の夜に書き、
表現の推敲や「この台詞からこの台詞までの地の文はどうしよう?」というような些細な作業は隙間時間にやる
――と、大・中・小に切り分けてます。
マリエリ:
隙間時間って本当に、電車に乗ってる時みたいな?
田花:
はい。電車の中でスマホに打ち込んだ文章を原稿に組み込むことはよくあります。五分の一くらいはそういう感じかもしれません。
マリエリ:
仕事がめっちゃ大変だった日はやらない、書かない、書けない日とかはありますか?
田花:
「絶対書くんだ」みたいな義務感でやっているわけではないので。
マリエリ:
〆切が迫っていない時期なら、平日の夜の自由時間でゲームしたりもするわけでしょう?
田花:
しますが、原稿の合間にゲームするのは得意じゃないので。
文章を切りのいいところまで仕上げちゃって、一週間はバイオハザード……みたいな感じにしてることが多いです。
マリエリ:
じゃあ「今日はやりたいゲームあるから原稿なしで」とかそういう風にはならない?
田花:
あまりなりません。
WEB版は規則正しく投稿すると決めていたので、再来週の分まで書いてから、というようにメリハリがつきました。
もっとも、こういうことはそれぞれの人の生活に合った形があるでしょうから、これがコツだと主張するつもりはないです。
マリエリ:
書き続けるのが本当に偉いと思います。
これ、ちゃんと纏めたら、すごい有益ないい記事になる気がするので頑張ります。
田花:
もっと自信満々な話しぶりの方が、実際に役に立つかどうかはともかく、インタビューとしては面白かったと思うんですが。ごめんなさい。
マリエリ:
そんなことないんじゃないですか?
賞に送る努力をしている人の中で、賞をクリアしたという一歩先に行った人として実体験、具体的な話聞けることってまずないから、すごい参考になるし、有益な話が伺えたと思います。
ありがとうございました。
インタビュー 2025/2/11 14:00~15:30
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— HJ文庫公式アカウント (@HJbunko) May 17, 2024
明日発売の『まきなさん、遊びましょう』2巻は殺人事件を扱っている上に、刀を使う登場人物がいるのでチャンバラ多めになってます。daichi先生の素晴らしい表紙を目印にお探しください。Web版をご存じの方に冒頭10ページで「ええ……?」と思っていただけるのも、ひそかに楽しみにしてます。👻 pic.twitter.com/TmUcRatYMF
— 田花七夕 (@tabanatanabata) October 31, 2024