Please Place Me④僕と一緒に行かないか?
ジョンとポールが出会ったSt Peter’s Churchを離れて、次なるスポットへ向かいます。St Peter’s Church/Hallのレポートはこちらからどうぞ。
さて、ジョンがかつて住んでいたWooltonにはもうひとつでっかいビートルズスポットがありますね。ほら、メロントロンのイントロから始まるあの曲…
僕と一緒に行かないか?
Strawberry Fieldsへ…
というわけで、リクエストをいただきました次なるスポットは名曲「Strawberry Fields Forever」のインスパイア元となった場所、Strawberry Fieldです!
この内田久美子さん訳詞好きなんですよね。直訳したら「Strawberry Fieldsに行くから連れてってあげる」なんですけど、「一緒に行かないか?」てのが良い。
では行きましょう。
イチゴ畑をもう一度
名残惜しかったですが、St Peter’s Churchを出発します。
教会からStrawberry Fieldへは、ゆるっと上り坂→長い平坦→ゆるっと下り坂の道のりを20分ほど歩きます。ちなみに平坦な道の名前はQuarry St.というのですが、こちらはQuarry Bankがあった通りではありません。でも何か関連があるのかないのか、どっちなんだい?
着きましたよ、Strawberry Field!!
おなじみの赤いゲートがお出迎え。古めかしいゲートではありますが、暖かい季節は赤いゲートが周囲の緑と青空にビビッドに映えて、とても綺麗です。
このゲート左の柱の根元、何かがあるの見えますか?これ数年前から突如出現した謎のミニミニドアなのですが、けっこう芸が細かいんですよ。
気づくか気づかないかの間際サイズ、でも気づいてしまうほど超カラフル、というせめぎ合いが好きで毎回このドアを確認してから中に入っています。では、今日もミニドアちゃんの確認を終えたところで中に入りましょう。
え、中に入れるの?と思った方、ここ入れますよ。
Strawberry Fieldは2019年、サポートが必要な人への職業訓練や学習支援を行う福祉施設として、またカフェやミュージアムを併設したコミュニティー施設として再オープンしました。2005年に孤児院を閉鎖して以来、14年ぶりに敷地内に賑わいが戻って来たんですね。
この赤いゲートを開けて入る、のではなく、横っちょに設置された小さいゲートから入ります。
外観はこんな感じ。まだまだ新築です。
では中に入りましょう。館内は入場無料です。
普通に施設案内
ギフトショップ
施設に入ってすぐにあるギフトショップ。品数は充実しているものの、個人的にデザインがイマイチ…なんですよね。慈善団体が運営しているので、あまりデザイン重視というわけではないのが理由だと思いますが。ではその一部を見ていきましょう。
過去、キャバーン、アビーロード第2スタジオ、カスバが取り壊しや改修工事を行った際に出たオリジナルの建物のレンガを販売してきましたが、Strawberry Fieldもその伝統に則り、孤児院のレンガを販売中。ひとつ£75也。
ジョンがお気に入りだったキャスケットのレプリカも売ってます。お値段£159也。これ本革100%なのでモノは良さそうです。
Tシャツはえらく充実しています。どれも大きめなので、女性でタイトにTシャツを着たい方は大きめキッズサイズがおすすめ。
Strawberry fieldで買ったイチゴジャムはお土産に良さそうですね。
お土産の定番、ペン、ノート、キーホルダーなどはひとつ£1~5くらい。お土産のまとめ買いには最適だと思います。
デザインについて文句言うとりますが、私は過去に一度ここでトートを買いました。これ良くないですか?こういうシンプルなやつで良いんですよ。ゲート自体が素敵なデザインなので、これだけでもう十分完結してますよね。ちなみにこのトート、店頭には緑地と青地の可愛くない色しか残ってなかったです。1枚£5也。
これらの商品は一部オンラインで販売中。国際発送も受け付けているようですが、アジア圏は送料一律£20と割高なので、それならもう飛行機代出してStrawberry Fieldに来て直にお買い物した方が総合的にお得感あると思いませんか?(暴論)
オンラインショップはこちら。
カフェ
ギフトショップのお隣にはガーデンを見下ろすとても明るいカフェ。軽食やランチはこちらでどうぞ。テラス席もありますよ。私はこの日完全に服装を誤っていたので、スムージーをがぶがぶいただきました。
ちなみにこれ、2019年のオープン当時にStrawberry Fieldを初訪問した際、カフェで注文したトースト&スクランブルエッグなのですが…場末のgreasy spoonで見るような一品が出てきたので面喰らいました。
新築のカフェではなかなかお見かけできませんよ。せめてトースト2枚ともにスクランブルエッグ乗せてくれても良いじゃない。ちなみにこの1品はもうメニューにありません。さらば幻の逸品。
それ以降、微妙な時間に訪問することが多くなり、あまりこのカフェで食事をとらなくなったのですが、ほかのお客さんのお食事を見ているとなかなか美味しそうですよ。フィッシュ&チップスも提供があるようでした。メニューにはありませんがケーキも充実。もちろんコーヒー、ティー、ソフトドリンクなどもあるのでお茶だけ休憩にはもってこい。
メニューはこちらのウェブ内「Click here to download our menu」から。
カフェを奥に進むとトイレがあり、こちらも無料。1人であちこち回っていると困るのがトイレなんですよね。コンビニにトイレなんてもちろん無いし、公共トイレは絶対避けたいしで、スポッティングルートから大きく外れて、トイレ目当てに郊外の大きなスーパーに行ったこともあります。でもStrawberry Fieldがオープンしてからはもう安心!本当に助かってますよ。
トイレ前になんか可愛い針金アート。
ガーデン
ではガーデンに下りてみましょう。
ガーデンにはぐるりと1周できる遊歩道があります。1周とろとろ歩いて5分かかるかかからないくらいですかね。つまりガーデンには見るようなものはない………………いや、実はそんなことないのだ!
足を止めるべきスポットが結構あるのに、ガーデン内にそんなキャプションや説明がないんですよね。非常にもったいない。ということで見かねた私からみどころ紹介しちゃうのだ。
まずはこちら。ガーデン内の謎の物体。スクリーンをよく見てみると透かし絵のように洋館が浮かび上がってきます。これStrawberry Fieldのもともとの邸宅、ジョンが遊びに来ていた当時の孤児院の建物なんですね。で、もちろん職員さんに聞きました。このスクリーン何なの?
職員さんによれば、「この位置からスクリーンを覗くと、かつての洋館があった風景を見ている疑似体験ができる」とのことで、言われてみれば今の風景とぴったりサイズがハマっているようにも見えますよね。小さいジョンが見ていた風景なのかもしれません。
そしてこちらのガーデンに下りる石段も当時のものなのだそうです。
こちらもオリジナルのブロック。もともとは石垣か石塀の一部だったようで、今はジョンの名曲から生まれた金言がちりばめられ、ガーデン内に無数に設置されています。触ったり座ったりしてもOK。
お好きなジョンのフレーズに腰を掛けてみてはいかが?
ところで2019年公開の映画「Yesterday」ご覧になりました?ダニー・ボイル監督による "ビートルズを知っているのはなぜか世界で僕だけ?!" をテーマにしたビートルズフィーチャー映画なのですが、もちろんStrawberry Fieldでも撮影が行われました。撮影時は現在の新しい施設を建設している最中だったようで、その様子が映画のメイキング映像に収められています。
孤児院だった当時は遊具もあったみたいですね。現在のガーデンのあたりだと思います。
例のブロックもどっさり。
このメイキング、主演のヒメーシュ・パテルもコメントを残していますが、終始なにかに怯えながら話をしているんですね。最後はぽろっと「気味が悪い場所だ………」と本音が。まずいと思ったのか「でもここに来られてとても光栄」って、付け足してはいましたけど。それよりも何をそんなに怯えていたのかが気になる。
怯えるヒメーシュ・パテルの動画はこちらからどうぞ。
Yesterday | Behind The Scenes | Liverpool
2つのゲート
さて、ガーデンを歩いているとこんなものが見えてまいります。ご存じStrawberry Fieldの赤いゲートですね。ん?でも我々は既に赤いゲートを通過しましたよね、この敷地内に入る時に。と、いうことは、そうです、赤いゲートは2つ存在するのです。もちろん職員さんにこの謎も聞きました。なぜゲートは2つあるのか?
結論から言いましょう、ガーデンにあるこのゲートこそ、小さなジョンが遊びに来ていた当時に設置されていたオリジナルのゲート、入口にあるのはレプリカのゲートなのだそうです。では、なぜレプリカが必要だったのか?これがなかなか面白い話でした。
ビートルズが「Strawberry Fields Forever」を発表してから、この孤児院には多くのビートルズファンが訪れるようになります。2000年代になっても訪問の足は絶えず、ついに起こってしまいました。窃盗です、そうですゲート窃盗です。なんという根性、こんなでっかくて重いもの盗もうなんて思いついて、そして実行に移したわけですからね。当時大きなニュースになったそうですよ。
で、その盗まれたゲート、ジャンク屋に売り飛ばされたのですが、ジャンク屋のご主人がそれが何たるゲートであるかに気づき、すぐに警察に通報。無事に返却されたそうです。そしてこのことを機に、土地の所有者はレプリカゲートの制作・設置に踏み切りるんですね。
その際、オリジナルのゲートは別の場所で保管されることになったのですが、2019年にこの新施設がオープンするにあたり再度日の目を見ることになったんですね。オープニングイベントとして、このオリジナル君はリバプール中を凱旋パレードで駆け回りました。微笑ましいけど若干シュール。
ちなみに、レプリカのゲートを設置してもなお窃盗が続いたそうで、レプリカを制作した鉄工所の方は「俺、盗みたいくらい良いもん作ったんやなぁ、俺やるやん」と鼻高々だったそうです。
そういう面白エピソード絶対キャプションにすべき!と職員さんにも一応お伝えしておきましたが、「ウェブサイトにのってるよ」と、あまり良い反応はいただけませんでした。いやいや現物と一緒の方が良いって。
でもせめてこちらがオリジナルという旨はこのゲート周辺で説明つけるべきですよね。なので周囲もなんでまたゲートあるん?で通り過ぎて行く人がほとんどでした。
このゲート、デザイン性高いですよね。すごく素敵、惚れ惚れする。赤ってのがまた良い。前出の鉄工所は個人発注でもこのレプリカ制作を受けているらしいですよ。本気で欲しい、の前にゲート構えられるような家がない。
ガーデンの隅の方では何やらステージらしきものを建設中。ガーデンをイベント特化型にしていくぽいですね。
最近はStrawberry Fieldでもライブイベントが増えているようなので、ステージ設営は良いかも。今年6月のジュビリーホリデーに訪れた際はこんな人が弾き語りライブをしていました。
キャバーンクラブのビートルズトリビュートバンドで10年以上ジョン役を務めていたジミー・コバーン氏です。声似てるでしょ?10年前初めてのキャバーンでステージ上の彼を見た時「ジョン!生きとったんかワレ!!」と思ったほどです。ロックダウン中にジョン役降板を発表して以降、動向が不明でどうしたのかなと心配していましたが、この日ばったりで嬉しくて嬉しくて!嬉しさ余ってこの後声をかけてしまいました。「もうジョンは十分やったから、今は家族で旅行行ったり、こんな風に好きな時にライブやってるよ」とのことで元気そうで良かった。Strawberry Fieldでまたジミーに会えるかも!
ジミーの降板後、有名なビートルズトリビュートバンドでジョン役を務めてきたアダム・ヘイスティングス氏がキャバーンジョンに就任しましたが、似すぎ!怖い!似すぎ!!!このツイの日は2021年ロックダウン明け一発目のキャバーンギグ、兼アダムお披露目ギグでしたが、みんなアダム見てずぅっとザワザワしてた。
でも、私にとってキャバーンジョンはジミーだ、永遠にジミーだ!ちなみにちょっとプラスサイズなポール役の彼、トニー・コバーン氏は前出のジミーの実弟です。かつて兄弟でジョンとポールだったのすごい話ですよね。
話がそれましたが、ガーデンは一通り見終わったので再び施設内に戻りましょう。Strawberry Fieldの目玉が待っていますよ。
ミュージアム
Strawberry Fieldの施設はほとんど無料ではありますが、1か所だけ有料ゾーンがあります。それがこのミュージアムです。
料金は大人£10.95。はっきり言って割高です。というのも非常に小さいミュージアムの上に、8割がStrawberry Fieldの歴史について、ジョンにまつわることが2割という感じ。なのでジョン関連の内容を期待されている方にはあまりおすすめしません。Strawberry Fieldの成り立ちについて興味がある方向けですね。
ミュージアムはオーディオガイドによる案内で進みます。でも日本語がないの…。
ほとんどがこのようなパネルや映像展示で、オーディオガイドを自分で操作しながらその詳細を聞いて回るという感じです。こちら↓画像内のモニターに映っているのは左から、Strawberry Fieldで育った女性、ジョンの旧友の男性、さらにその横にはジョンの妹ジュリアも。彼らのStrawberry Fieldやジョンにまつわる証言などもオーディオガイドで聞くことができます。ちなみにStrawberry Fieldの名誉館長はジュリアが務めているんですよ。
あとはジョンの少年時代と「Strawberry Fields Forever」についてと、「Strawberry Fields Forever」がいかに世界で愛されているかーみたいな展示と、ジョンの「Strawberry Fields Forever」直筆の歌詞のレプリカ展示もありましてぇ。終わりです。結構無理くりにスペースを埋めたような展示の仕方で、あまり£10の魅力はないです。
オーディオガイドは先ほど歩いたガーデンでも使用可。ガーデンのあのレプリカゲートの説明をしてくれるのかと思ったら、普通に "ジョンの名曲を聴きながらガーデン散歩してね" という意図のみで、ジョンの楽曲を数曲流してくれるだけでした。
Strawberry Fieldにジョンが遊びに来ていたのは事実ですが、そのことをビジュアル化できるような記録などが無く、全てジョンの記憶、周囲の証言、そして楽曲「Strawberry Fields Forever」しか無いんですよね。材料がもともと少ないので、"ジョンとStrawberry Field" を展示に反映するというのはやはり難しいのだと思います。
目玉とは!
しかし、このちょっと「うーん」なミュージアムにも目玉があります。それがこちら。ジョンがImagineのレコーディングに使用したピアノ!
映画「Gimme Some Truth」にも登場していたこれですね。別シーンでは寝ぐせ全開でニヤッニヤしながら「How Do You Sleep?」をジョージに弾いて聴かせていました。
ジョンの亡き後、2000年にオークションにかけられたのですが、競り落としたのがあのワム!の故ジョージ・マイケル。ビートルズはもちろんジョンの大ファンだったそうですね。落札時、ジョージは「このピアノは誰かが所有するものではなく人目に触れられるべき、特にリバプールの人たちに見てもらいたい」と語っていたのだそう。そして2016年ジョージ没後、その遺志をついでジョージ・マイケル運営がピアノの新しい家としてStrawberry Fieldを選び、ジョンが80歳となる2020年10月9日にお披露目となりました。
所有権はまだジョージ・マイケル運営ということで、寄付ではなく貸与という形になると思うのですが、どちらにしても太っ腹ですよね。
ジョージの前の所有者は、リバプールにあるアミューズメント施設(私は博物館とは言いませんよ)The Beatles Storyに期間限定でこのピアノを展示品として貸し出したことがあるそうなのですが、これからはStrawberry Fieldがピアノの終の棲家。他所に貸し出すことがない限りはここで常設展示されているそうです。
ガラスケース越しではあるものの、ここまで近づけるので詳細を見ることができます。よくメンテナンスされていて鍵盤がとても綺麗。
ジョンがつけたというタバコの焦げ跡も目にすることができますよ。スタインウェイってお高いのにけっこうジュインといってる。
繰り返しになりますが、ミュージアム全体はあまりパッとはしません。しかしながら、ジョンのピアノの見物料+Strawberry Fieldを運営している慈善団体への寄付という意味で£10.95払ってみるのもアリかなと思います。ミュージアムへの入場、ぜひご検討ください。
イチゴの歴史とジョン
冒頭より「この施設の運営は慈善団体によるもの」と申しておりますが、具体的にどこの団体かというと、キリスト教が母体の救世軍=Salvation Armyなんですね。ジョンが遊びに来ていた孤児院もこのSalvation Armyが運営していました。
1860年初頭、運輸業を営むジョージ・ウォーレンという裕福な人物がこの地に豪華な邸宅を建設します。これが後のStrawberry Field、Mendipsと同様に住所とは別の愛称として名づけられました。先のSt Peter’s Churchの記事でも触れましたが、1860年~1870年代にかけてWoolton地区に移住してきた裕福な実業家たちの内の1人がジョージ・ウォーレンだった、というわけなのです。
ところで、覚えていますか?冒頭の急なきんに君。
ではここで回収します。
関連が…………あーーーーーーーーーーーーーーーる!
パワー
ハッ(笑顔)
このStrawberry Fieldが建設された当時、この辺りはやはり石の採掘に力を入れていたようです。というのも先述のとおり裕福ピーポーの移住に伴う豪邸の建設、また目障りな教会に代わる新しい教会を建設、という建設ラッシュが続いたため、資材調達のためここでバンバン石を採っていたそうなんですね。Strawberry Fieldのガーデンに設置されているブロックももしかしたらここから採られたものかもしれません。
で、ジョンが通っていたQuarry Bank Highscoolはポールの家があるAllerton地区に位置するものの、この採石場の歴史から名づけられたそうです。Quarry Bank=「採石場の土手」からして、少し高台であるWoolton地区のことを指しているのは間違いないかと。こういうのタモリとかに語らせたら面白そう。
ジョージ・ウォーレンの死後、家主が変わりに変わり1934年、最後となる家主がStrawberry FieldをSalvation Armyに売却します。そして1936年Strawberry Fieldは孤児院としてオープン。孤児だけではなく、様々な理由で親元を離れることになった子供たちも受け入れていたそうです。
Strawberry Fieldを買い取った時期、Salvation Armyの創設者であるウィリアム・ブースが特に力を入れていたのが子供たちへの支援。そんな彼の信念は
Every child should be fed
Every child should be loved
Every child should have a childhood
全ての子供たちに食事を、愛を、そして子供らしい思い出を
だったそうです。子供のための信念を持つブースが支援していた場所に小さいジョンがよく遊びに来ていたというのは、感性の鋭いジョンが感じたシンパシーがそうさせたのかもしれませんね。
幼少のジョンが住んでいたミミおばさんの家MendipsからStrawberry Fieldまでは徒歩10ほど。しかしあらゆる資料やMendipsのツアーガイドさんの話から、Mendipsのすぐ裏Vale Roadに面してStrawberry Fieldの外壁があったことが伺えるので、当時の敷地はもっと広かったのかもしれません。
小さなジョンはミミおばさんに連れて行ってもらうStrawberry Fieldのサマーフェスティバルを毎年楽しみにしていたそうです。恐らくSt Peter’s Churchの例のイベントと同じような一般開放イベントだったのだと思われます。しかし年一では飽きたらず、ジョンは手下を従えてVale Roadの外壁を飛び越え頻繁にStrawberry Fieldに遊びに行くようになるんですね。
そんなジョンはもちろんStrawberry Fieldとっては侵入者。cocky watchman(=リバプール独特の古い表現で「守衛」という意味)との攻防戦も度々あったとか。しかし、施設で暮らす子供たちはジョンを友好的に見ていたそうで、当時そんなジョンを目撃したStrawberry Field出身の女性の証言がYoutubeにありました。
女性の証言を収めた動画はこちら。
Forever Strawberry Field | The Salvation Army(日本語字幕あり)
Strawberry Fieldの大人からは問題児扱い、ミミおばさんからもStrawberry Fieldにはもう行くなと口酸っぱく言われ続けてもジョンは外壁を飛び越えました。飛び越えた先のStrawberry Fieldはジョンにとって、ジョージおじさんがMendipsの裏庭に作ってくれたツリーハウスと同じく、彼だけの空間だったのでしょう。"親と暮らせない" という自分と似た境遇の子供がいる場所という点では、ある意味Mendipsよりも居心地が良かったのかもしれません。
小さなジョンが感じたStrawberry Fieldの広大な庭、古い洋館、青い空、そこで暮らす子供たちの生活はどのようなものだったのか。その断片が「Strawberry Fields Forever」に集約されているのだと思います。あくまでもジョンが感じたジョンの中の「Strawberry Field」であって、決して孤児院そのものについての曲ではないのかなと。
Nothing is real and nothing to get hung about
ほんとのことなんか何もないんだから、何も心配しなくても良いんだよ
特にこのフレーズ、シンプルでとても美しい言い回しだけど、小さなジョンがStrawberry Fieldの庭で色々と思いを巡らせながら、自分のことを自分で守るために言い聞かせているように聞こえるんですよね。初めてStrawberry Fieldのあのゲートを見た時、ツアーのドライバーさんが「Strawberry Fields Forever」をカーステから流してくれたのですが、ゲートを目の前にするとこのフレーズがたまらなかったです。
でもStrawberry Fieldはジョンの楽しいひと時でもあった場所。それも忘れてはいけないファクトですね。今日は守衛のおっさんに見つかるか見つからんか、さぞスリリングだったことしょう。
ジョージ・ウォーレンが建てた邸宅が施設として使用されていたのは1973年まで。その後フラットのような施設が新築され、ジョンの死後ヨーコが莫大な支援金を施設に寄付するなど運営自体に問題はなかったのですが、子供たちの住環境として里親家庭や小さな施設が望ましいという判断のもと、孤児院は2005年に閉鎖されます。以降、あの赤いゲートが閉ざされる状態が12年ほど続き、2017年に現在の福祉・コミュニティー施設の建設が発表され、2019年再オープンに至ったわけです。
"S" の行方
ところで、ここまでで気になった方いますでしょうか?
施設名は「Strawberry Field」
曲名は「Strawberry Fields Forever」
今までSが消えたり出てきてたりしていたのです!
正式名称はSがあるのかないのか。調べていたらビートルズスポットを恐ろしく詳しく調べている個人ブログに行き当たり、そこで回答を得られました。Sあるなしの理由、それはその時の家主が決めていたから。平たく言えば家主の気分でSがあったりなかったり、だったそうです。初代家主ジョージ・ウォーレンはSナシ派、以降Sアリ派期を経て、ジョンが遊びに来ていた1940年代には再びSナシ派に戻っていました。それ以降ずっとSナシで定着しているようです。ということで現在の施設もStrawberry Field、でSはありません。
ではなぜ曲名はSアリとしたのか?きちんとした回答は専門家の方に丸投げするとして、個人的見解としては歌詞としてSがあった方が音的に良かったからではないかと思います。
She's got a ticket to ride
But she don't care
という例もあるので、音優先説は結構ありかも。
いかがでしたでしょうか?
ジョンが見た当時の景色からはだいぶ変貌があるものの、Strawberry Fieldは確かにジョンがいた場所ですので、ぜひ一度ご訪問ください。ジョンも誘っていることですし。
僕と一緒に行かないか?Strawberry Fieldsへ
といったところで、今回の記事を集約したような動画を貼ってStrawberry Fieldレポを〆たいと思います。
Jay visits Strawberry Field Visitor Experience | The Guide Liverpool
これでリクエストをいただいたスポットの半分を回りました。
さて、お次は?
●画像クレジットがないものは筆者撮影
●出典・参考