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「児童虐待防止法」これにより強権力を持った児童相談所。

児童虐待防止法はもともと浮浪児に対する治安維持を目的に制定された、児童福祉法をより権力的なものに変質させて、国家により強力的な行政措置を取れる法となっています。

第一条 この法律は、児童虐待が児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、我が国における将来の世代の育成にも懸念を及ぼすことにかんがみ、児童に対する虐待の禁止、児童虐待の予防及び早期発見その他の児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援のための措置等を定めることにより、児童虐待の防止等に関する施策を促進し、もって児童の権利利益の擁護に資することを目的とする。

(児童虐待の定義)

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

(児童に対する虐待の禁止)

第三条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。

児童虐待防止法より

この法律の奇妙なところは、第二条では虐待は親がするものと限定しているのに対し、第三条では何人も児童に対し虐待をしてはならないとあります。そしてこの親と限定したところに民法822条にある親の懲戒権と整合性が取れていません。民法822条が容認している体罰を含む懲戒権の態様及び躾と児虐法がいう暴行ないし児童虐待とはどのように区別されるのか?この基準を曖昧にしたまま、児相に判断は丸投げされています。

(児童虐待に係る通告)

第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

2 前項の規定による通告は、児童福祉法第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

(通告又は送致を受けた場合の措置)

第八条 市町村又は都道府県の設置する福祉事務所が第六条第一項の規定による通告を受けたときは、市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする。

一 児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号又は第二十五条の八第一号の規定により当該児童を児童相談所に送致すること。

二 当該児童のうち次条第一項の規定による出頭の求め及び調査若しくは質問、第九条第一項の規定による立入り及び調査若しくは質問又は児童福祉法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による一時保護の実施が適当であると認めるものを都道府県知事又は児童相談所長へ通知すること。

2 児童相談所が第六条第一項の規定による通告又は児童福祉法第二十五条の七第一項第一号若しくは第二項第一号若しくは第二十五条の八第一号の規定による送致を受けたときは、児童相談所長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする。

一 児童福祉法第三十三条第一項の規定により当該児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせること。

二 児童福祉法第二十六条第一項第三号の規定により当該児童のうち第六条第一項の規定による通告を受けたものを市町村に送致すること。

三 当該児童のうち児童福祉法第二十五条の八第三号に規定する保育の利用等(以下この号において「保育の利用等」という。)が適当であると認めるものをその保育の利用等に係る都道府県又は市町村の長へ報告し、又は通知すること。

四 当該児童のうち児童福祉法第六条の三第二項に規定する放課後児童健全育成事業、同条第三項に規定する子育て短期支援事業、同条第五項に規定する養育支援訪問事業、同条第六項に規定する地域子育て支援拠点事業、同条第十四項に規定する子育て援助活動支援事業、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第五十九条第一号に掲げる事業その他市町村が実施する児童の健全な育成に資する事業の実施が適当であると認めるものをその事業の実施に係る市町村の長へ通知すること。

3 前二項の児童の安全の確認を行うための措置、市町村若しくは児童相談所への送致又は一時保護を行う者は、速やかにこれを行うものとする。

児童虐待防止法より

子供の権利条約第9条1項は「締約国は児童が、その父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」と定め、また同条但書は「権限のある当局が司法の審査に従う事を条件として、適用のある法律及び手続に従い、その分離が児童の最善のため利益のために必要であると決定する場合はこの限りでない。」としています。これは「原則的に統治権力による親子分離は」禁止されており、例外措置として親子分離を認めるための司法審査を要求しているという意味です。しかし、この第八条には親の同意がなくても子供を一時保護しても良いと、親子分離を司法審査なく認めている事になります。

(立入調査等)

第九条 都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させ、関係者の請求があったときは、これを提示させなければならない。

2 前項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り及び調査又は質問は、児童福祉法第二十九条の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り及び調査又は質問とみなして、同法第六十一条の五の規定を適用する。

(再出頭要求等)

第九条の二 都道府県知事は、第八条の二第一項の保護者又は前条第一項の児童の保護者が正当な理由なく同項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り又は調査を拒み、妨げ、又は忌避した場合において、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、当該保護者に対し、当該児童を同伴して出頭することを求め、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、必要な調査又は質問をさせることができる。この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させ、関係者の請求があったときは、これを提示させなければならない。

2 第八条の二第二項の規定は、前項の規定による出頭の求めについて準用する。

(臨検、捜索等)

第九条の三 都道府県知事は、第八条の二第一項の保護者又は第九条第一項の児童の保護者が正当な理由なく同項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り又は調査を拒み、妨げ、又は忌避した場合において、児童虐待が行われている疑いがあるときは、当該児童の安全の確認を行い、又はその安全を確保するため、児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該児童の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、当該児童の住所若しくは居所に臨検させ、又は当該児童を捜索させることができる。

児童虐待防止法より

この条文は立入調査、臨検に関わる規定ですが

  • 児童虐待が行われているおそれがあると児相が認めれば「一時保護」の場合と同様、裁判所の家宅捜索令状なしの立入の権限が認められる。

  • これを保護者が拒否した場合は「当該保護者に対して、当該児童を同伴して出頭」を求めて児相が所内で児童とともに必要な調査又は質問をなす。

  • この出頭を保護者が拒否した場合は家宅への強制的立ち入りとなるがこの場合には、裁判所の令状が必要とされる。

つまり、虐待の疑いがある家庭に児相の職員が赴いて、警察が犯罪容疑者を拘束・逮捕する強制処分と事実上同一の仕事をしても良い、しなければならないと規定している訳です。果たしてそれは本当に可能でしょうか?児相の職員は警察官と同等の訓練も受けていませんし、司法捜査も出来ない機関です。そもそも文字通りの虐待は傷害事件、もしくは殺人未遂ともいえる犯罪です。そうした行為が行われている可能性が高い家庭に行き保護者と対峙し、場合によっては暴行や恫喝をされるかもしれない。つまり児相の職員に身の危険が及ぶ事態もあるわけです。そんな危険を冒しても家宅捜索をし、虐待児童を救おうとする職員が全国に何人いるでしょうか?心情的にそういった家庭はなるべく避けたい、より軽微な事案ないし虚偽の通告の対処をしている方がはるかに楽であると考える職員がいても自明の理であるでしょう。
統計的にも子供の数は減っているのに、児相による一時保護の数は鰻登りです。しかし、虐待死は減る事も増える事もなく横ばいです。
児童虐待防止法によって、強権力を手に入れた児相ですが司法捜査機関でもないのに、こうした危険な仕事を押し付けられて相談所という意味合いは既に無くなっています。こうした組織に児童虐待の基準や捜査が本当に出来ているのでしょうか?
次回はこうした児童虐待問題に家庭裁判所がどう関わってくるのかを、お伝えしたいと思います。

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