児童虐待防止法はもともと浮浪児に対する治安維持を目的に制定された、児童福祉法をより権力的なものに変質させて、国家により強力的な行政措置を取れる法となっています。
この法律の奇妙なところは、第二条では虐待は親がするものと限定しているのに対し、第三条では何人も児童に対し虐待をしてはならないとあります。そしてこの親と限定したところに民法822条にある親の懲戒権と整合性が取れていません。民法822条が容認している体罰を含む懲戒権の態様及び躾と児虐法がいう暴行ないし児童虐待とはどのように区別されるのか?この基準を曖昧にしたまま、児相に判断は丸投げされています。
子供の権利条約第9条1項は「締約国は児童が、その父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」と定め、また同条但書は「権限のある当局が司法の審査に従う事を条件として、適用のある法律及び手続に従い、その分離が児童の最善のため利益のために必要であると決定する場合はこの限りでない。」としています。これは「原則的に統治権力による親子分離は」禁止されており、例外措置として親子分離を認めるための司法審査を要求しているという意味です。しかし、この第八条には親の同意がなくても子供を一時保護しても良いと、親子分離を司法審査なく認めている事になります。
この条文は立入調査、臨検に関わる規定ですが
児童虐待が行われているおそれがあると児相が認めれば「一時保護」の場合と同様、裁判所の家宅捜索令状なしの立入の権限が認められる。
これを保護者が拒否した場合は「当該保護者に対して、当該児童を同伴して出頭」を求めて児相が所内で児童とともに必要な調査又は質問をなす。
この出頭を保護者が拒否した場合は家宅への強制的立ち入りとなるがこの場合には、裁判所の令状が必要とされる。
つまり、虐待の疑いがある家庭に児相の職員が赴いて、警察が犯罪容疑者を拘束・逮捕する強制処分と事実上同一の仕事をしても良い、しなければならないと規定している訳です。果たしてそれは本当に可能でしょうか?児相の職員は警察官と同等の訓練も受けていませんし、司法捜査も出来ない機関です。そもそも文字通りの虐待は傷害事件、もしくは殺人未遂ともいえる犯罪です。そうした行為が行われている可能性が高い家庭に行き保護者と対峙し、場合によっては暴行や恫喝をされるかもしれない。つまり児相の職員に身の危険が及ぶ事態もあるわけです。そんな危険を冒しても家宅捜索をし、虐待児童を救おうとする職員が全国に何人いるでしょうか?心情的にそういった家庭はなるべく避けたい、より軽微な事案ないし虚偽の通告の対処をしている方がはるかに楽であると考える職員がいても自明の理であるでしょう。
統計的にも子供の数は減っているのに、児相による一時保護の数は鰻登りです。しかし、虐待死は減る事も増える事もなく横ばいです。
児童虐待防止法によって、強権力を手に入れた児相ですが司法捜査機関でもないのに、こうした危険な仕事を押し付けられて相談所という意味合いは既に無くなっています。こうした組織に児童虐待の基準や捜査が本当に出来ているのでしょうか?
次回はこうした児童虐待問題に家庭裁判所がどう関わってくるのかを、お伝えしたいと思います。