ゲ謎を見てきてもう一回見たくなってるだけの感想文(ネタバレなし)
12月16日ナイトショーにて念願の「ゲ謎」を観てきました。ネット上でゲゲゲの鬼太郎のすごい映画が上映されている、そして心を乱されている方がたくさんいるという雰囲気をビシバシ感じていたのでどうしても今!映画館でみたい!と観てきました。
ちなみにアニメ鬼太郎の知識はほぼありません。原作は幼少期読んでいて、墓場鬼太郎などルーツの話はなんとなくわかるかも程度の知識で挑みました。それでもよい、見に行けという意見を見ていたのでためらわず行けました。
事前情報は
・鬼太郎のお父さんのビジュアルが大変良い ※ポスターを見ての感想
・エグいらしい ほんとうにR12か?とまで言われてる
・なんか村 田舎の闇の描写があるらしい
みたいな感じでした。
ちなみにホラーは大好きで、特に閉鎖空間で人の悪意と狂気が滲むようなものは大好物なので「いいじゃないか、どんとこい!」の勢いでした。その結果、凄まじいものを見ることができました。抑えきれない思いを吐き出したく、ネタバレなしで内容以外のところにさっくり触れていきます。
なんだこの「昭和」感は!?
もはや記憶が薄れてきているのでもう一回みたいところなのですが、冒頭の雨の中、記者が廃村を歩くシーンの廃材にあたる「トシトシ」みたいな雨の音がめちゃくちゃ良くてもうここで心を掴まれてました。
オフィスの場面になって、水木って呼ばれるキャラクターが出てきて、あ、これがしげる氏の~などと思いながら話を聞いて、なるほど田舎の相続争いに乱入するのか、犬神家とか横溝正史的なあれか~とわくわく。
で、一気に引き込まれたのは、水木が村に向かう電車の中の描写ですね。狭い木造の社内でみんなバカスカ喫煙して空気が白く煙ってる。子供が咳き込み、親に背を撫でてもらっている。その姿と声を映したうえで、主人公の水木は火のついていないタバコ(銘柄はピース)を指に挟み、タバコの箱にトントンと何度も叩きつける。そして子供の声に「うるさいな」などと反応することは一切なく、表情も変えず無言でマッチを取り出し擦ってタバコに火をつける。えっ、なんだこれ、めちゃくちゃいい描写がいきなり来たぞ。
当時は禁煙も分煙も存在すらしてない時代なのでみんな喫煙しているのはわかる~なのですが、あえて咳き込む子供も映すことで令和に生きる私はちょっとかわいそうだなとか思うのですが、主人公はなんの反応もなく、ものすごくこなれた仕草で喫煙しようとする。「そういう時代」に生きているキャラクターだというのがバシッとシンプルに描写されていて、ここで一気に引き込まれました。ちなみにトントンすると煙の味が良くなるらしいですね。
そのあとも、白熱電球が切れる瞬間のジジッみたいな音だとか、畳を踏んだ時の柔らかいストストとした足音とか、着物の衣擦れの音だとか、障子を開けるときの木と木が擦れる音とか、吹いて消す枕もとの行燈だとか、駄菓子屋のカラフルな細いアイスだとか全部全部、匂い立つような「昭和」感がすごくて圧倒されっぱなしでした。ほんとにすごい。
アクションすごい
アクション良いよ、というのもなんとなく聞いていました。へー、みたいな。鬼太郎父の外見は公開されているし、鬼太郎の戦い方も知ってるし、スタイリッシュな感じかね!と楽しみにしていました。全然違ったよね。
(↑見た直後の熱が冷めやらないまま書いた感想)
めちゃくちゃ肉体派だったよね。そして「人間の姿をしているのに明らかに人間ではない尋常ではない動き」が描写されている物凄く好きなタイプのアクションでした。刃先を歯で割るところと手摺を引き剝がすところ好きすぎるのでもう一回見たいです。
えげつない、どころではない
サラッと内容に触れます。エグイ、闇、えげつない、とかは聞いてました。が、それ以前に、人間が「そういうホラー映画」でしか見ない死に方してた。これはちょっと予想外でした。
私はホラーが好きなのでエンタメとして飲み込むことできますが、これ、ダメな人はダメなんじゃないかと後半に行くにつれエスカレートする死に方見ながら思いました。というか、ビックリ演出もあるので全然子供向けじゃないです。すごく真っ当にホラー映画です。
さらに、そういう死にざまだとかわかりやすいホラー演出だけでなく、しっかり精神攻撃もしてくるホラー映画でした。腐敗した一家の因習が本編中サラッと触れられていき、これがえげつないと言われてたやつか!と理解すると同時に、そのたった一言で頭の中で想像される光景や過去が、めちゃくちゃキツイものでした。えげつな~じゃなくて、吐き気がするような(実際、話を聞いた登場人物が吐いてる)、胸やけがするような、そしてそれが過去から今まで繰り返されてきたという事実がドンと横たわっていて、眩暈がするような話でした。ホラーといえどこの火力の「ひどい」話はなかなか見ないかもしれないという怒涛の嫌な話でした。
私はエンタメとしてホラーを楽しめるので、ぐあー!とんでもなく嫌な話だ!と思いながらその描き方に物凄く感動しています。ものすごい重い話をわりと、サラッと触れていくんですよ。泣きわめくのではなく、内心をぐちゃくちゃにさせながら、そうやって生きてきた、というのが圧倒的な説得力でわかるキャラクター造形も凄まじくて大好きです。
酒と煙草と友情と
もう既に忘れかけているのですが、煙草と酒の描写もめちゃくちゃ良かったんです。
(↑見た直後の熱が以下略)
飲んでる酒やタバコでその人の人物像を描写する粋の塊みたいな演出があるんですよ。私は酒も煙草もしないのですが、ああこの酒は美味しそうだし、この二人で煙草を吸うと美味しいだろうな、と映像でわかるような、そういうやつです。逆パターンの、高級そうで上質なものなんだろうけど付き合いでやってるだけだな、とわかるのもあったりとか。ちょっともう一回見て確認したいですね。
もう一回見たい
もう一回見たい。ネットを見てると何回も観に行かれている方を観測できるのですが、気持ちがわかります。怒涛の展開で、無駄がなく、サクサクと特濃の展開が流れ込んでくるのでちょっと、もう一回、もう一回みせて……という気持ちになっています。理解が深まるとさらに気になるところがでてくるのかもしれないですね。
今年の最後の月にこのような最高の映画体験ができてネットで布教してくださっていた方に感謝しかありません。ありがとうございます。凄まじい映画でした。
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