"移動"ができなくて辛い話
気付いたら2021年になっていました。今年もよろしくお願いいたします。
災害以上に広範囲で世界に影響を与えた、コロナウイルスのパンデミックが起きた2020年は誰にとっても、変化のある1年になったことと思います。
言わずもがな、私の協力隊としての生活も大きく変わることになりました。たとえば、国内外問わず、大好きな旅に行くことができない、家族や友人のいる東京・横浜に遊びに行くことができない、福島から出ることができない... など、とにかく”移動"ができませんでした。 同時に、旅を含めてこれほど"移動すること"が自分の生活の中で大きな意味を持っていたと感じたのは初めてでした。今回は思考整理のためにも、移動制限・自粛により、私自身が受けている影響とそれによる閉塞感を低減するために考えた対策を簡単にまとめてみたいと思います。
影響① 知的好奇心が満たされない
去年何よりも辛かったのが、海外に行けないことでした。社会人になってからというもの、なかなか学生時代のように自由に海外には行けませんでしたが、年に1回は必ず海外に行っていました。昨年も一昨年と同じようにGW過ぎにどこかに行こうと、2月ごろに計画し始めたところでコロナウイルスが世界的に流行することになりました。
結果的に、国外はおろか国内もほとんど旅行することがありませんでした。唯一旅行らしい遠出といえば、去年の8月に行った燧ケ岳くらいでしょう。燧ケ岳は尾瀬国立公園内にある日本百名山ですが、これも福島県の桧枝岐村から入ったため、県内での移動に止まりました。初めて行った場所ではありましたが、やはり同じ日本の福島県。これまでの旅のような衝撃や新しい刺激はありませんでした。むしろ旅先が山登りに温泉と、岳温泉と変わらないコンテンツだったために、仕事のことばかり考えてしまいました。
それと違い、未知の異なる世界への旅は、常に数え切れないほどの新しい発見に溢れていて、私の知的好奇心を刺激します。その土地の文化を知り、歴史に思いを馳せ、海外の場合は外国語を使ってコミュニケーションする... 考えてみればどれも趣味の延長であり、自己満ではあるのですが、それは自分自身の知的好奇心を最大限に満たすことができるものでした。同時に、旅を通じて新たな知見を得ることで、実は福島での仕事の新しいアイデアや企画を生み出す源にもなっていました。コロナ禍で旅ができなくなって、初めて気が付いたことでした。
影響② 偶発的な出会いがない
旅そのものも偶発的な出会いの連続ですが、コロナ以前は岳温泉での仕事の中でもたくさんの出会いがありました。ビジネスの延長の飲み会に地元の人が誘ってくれたり、旅のお客さんと意気投合したり、英語表記が少ない岳温泉で迷っていた外国人客を案内して一緒にご飯を食べたり... 想像以上に日常に偶然の出会が溢れていました。温泉地という旅の目的地、つまり観光地で働いているならではのことなのかもしれません。
そんな旅せずともたくさんの出会いに恵まれた環境も、コロナで一変してしまいました。人の移動が制限され、Gotoトラベルで旅行に来ても、極力人との接触は避ける... 地域としては旅行者に移されては困るというのが本音ではあるのでしょうが、人と話すことが大好きな私にはなかなか厳しい期間が続いています。
仕事の上でもやはり、岳温泉に来たお客さんの声を聞いて企画に生かしたり、今後は流行りそうか探ってみたり... そんなことが多かったので、生の声が聞けない難しさだけでなく、そもそも人を呼ぶことができないという苦難に観光業界は直面しています。
影響③ トレンドのインプットができない
横浜育ちで東京の大学に通った私は、これまでの自分のベースの生活が首都圏にあったため、実はコロナ以前は月に1〜2回ほどのペースで東京に帰っていました。その目的は友人家族に会うこともあれば、気になるお店や美術展に行くこともありましたが、振り返ってみると、仕事絡みでイベントに参加したり、PR営業・打ち合わせで行くこともかなり多かったように思います。
目的は何であれ、必然的に東京駅周辺には毎回行くことになりましたし、親や友人と出かけるなら渋谷・新宿に行くこともしょっ中ありました。そして、新しい商業施設ができれば、どんなデザインやコンセプトの建物なのか、テナントはどんなところか、最新の目玉は何か... そんなことを自然にいつも追っていました。また、渋谷のスクランブル交差点から周りの広告を気をつけて見るだけでも、世の中の流れや変わり目がはっきりと分かります。都会に住む人を岳温泉のPRターゲットに自分なりに設定していたこともあり、敏感に情報は取り入れていました。
そんな世の中のトレンド情報を自然に目で見て、友人から聞いて、頭に入れていた私は地方に留まることになってから、完全にインプット不足で納得のいくアイデアや企画のアウトプットができなくなったと感じています。
都会にあって田舎に足りないものは、やはり世界や日本の最新のトレンドだと思います。田舎や地方でもトレンドを取り入れた企業はあるぞ!と言われるかもしれませんが、その企業は間違いなく地域から出て、様々な情報や流行りをインプットして自分の地域に持って帰ってきているはずです。
影響④ 気持ちの切り替えができない
コロナ禍になってから気づいた一番の驚きは、私は"福島を離れて移動すること"で気持ちの切り替えをしていたということでした。
東北新幹線の車窓から、福島の田園風景を眺め、東京に着くまでの約1時間半。実は私はこの時間がとても好きでした。疲れて寝て過ごしてしまうこともありますが、ちょっとした仕事を片付けたり、ノートを取り出して頭の中のアイデアを形にしてみたり、ケータイにその時考えていることをメモしてみたり... 職場でもなく、家でもなく、誰にも邪魔されないプライベートな一人の時間。それが移動によって確保されていたのだと思います。
郡山からは安達太良連峰、大宮に向かって行く途中で那須連峰。季節の移り変わりを感じさせる美しい山並みの景色がだんだんと街に変化していく、その景色を眺めながら都会から田舎へ、田舎から都会へと2つの全く異なる世界を行き来しては、思考の整理と気持ちの切り替えを知らず知らずのうちに行っていたのでした。
田舎と都会ー言い換えれば福島と東京ーは私にとって性質の異なる2つの別の世界でありながら、どちらも故郷のような場所です。私は横浜が自分の故郷だと人に自慢するほどの愛着はそれほど持っていませんが、育った場所なのでちょっとした郊外のショッピングモールに行ったり、実家の最寄りの路線に乗ると、どこか落ち着く感覚はあります。一方で、岳温泉や二本松、福島県は縁もゆかりもない土地でしたが、自分を育ててくれた第2の故郷だと今では強い愛着を持っています。
この不思議な2つの故郷をバランス良く行き来することで、私は双方のいいとこ取りをしていたのだと思います。それ自体が悪いことだとは全く思っていませんが、想像以上に私の頭の中身はバリバリの都会人なのだと気づかされました。好きだと思っていた山登りも、都会とのコントラストが実は大きな楽しみの1つになっていて、コロナ以降は実は安達太良山にも数回しか登りませんでした。
まとめと対策
つらつらと、昨年ずっと辛い思いをしながら、その気持ちを分析した結果をようやく年が明けてからまとめてみましたが、共感いただける部分はありましたでしょうか。まだ行動が制限されていることで、日々ストレスをどうしても感じてしまいますが、少しばかり思いついた対策も書いておきたいと思います。
対策① コミュニケーションを取る
偶発的な新しい出会いには巡り会うことが難しいコロナ禍ですが、地元の人や既知の人との関係は新しく築いたり、深めることができます。お互い辛いからこそ話し相手になるのも良いのではないでしょうか。これは昨年実施した二本松市地域おこし協力隊の共同プロジェクト「にほんまつ菊手水」を通じて強く感じたことでもあります。自分のアイデアが出てこないなら、人とのコミュニケーションの中で共同で生み出せば良いのです。詳しくはいつか別記事で書きたいと思います。
対策② オンラインで情報を得る
これは平時でも当たり前のことですが、コロナ禍の今、あらゆるものが自宅からオンラインで楽しめるようになっています。動画サービス、本や漫画のサブスクリプション、東京などで行われるイベントの多くもオンラインになっていますよね。自分の目で見て感じて一次情報を得ることが理想ではありますが、それが難しいなら現代の文明の利器を最大限利用しない手はありません。ひとまず、東京に行けない代わりにトレンドを知るため、楽天マガジンを最近契約していみました。Netflixはもちろん、最近は気になる人が登壇するオンラインイベントもこまめにチェックして参加しています。
まだ当たり前なことしか思いついていないのですが、先日東京の友人と話したときに「逆に東京の人は自然や緑を求めている」という話を聞いて、自分だけでなく、街にも自然にもバランス良く触れていないと辛いという人は他にもいるんだということを知って、なぜか少し安心しました。
1日でも早くパンデミックが終息し、国内外を飛び回れる日が来ることを祈って、もうしばらく耐え忍んでいきたいと思います。
コロナにも、コロナで弱った自分にも負けないぞ!