次世代の観光地づくり
執筆を依頼された、福島民報「民報サロン」の記事をアーカイブとして、noteにも残すことにしました。2020年8月1日分です。一部段落構成は記事から変更しています。
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仕事の話をする際に、キーワードとなる単語がいくつかあると思います。地域おこし協力隊の私の場合、それは「地域づくり」「移住定住」「観光」の三つです。
一見、これらは別物に見えるかもしれませんが、地方創生の文脈においては、切っても切れない関係にあります。特に「地域おこし」と「地域づくり」は区別されずに使われることがありますが、「地域づくり」は地元の人を中心にした、持続的に地域を活性化させるための活動を指すのに対し、「地域おこし」は地域を盛り上げるきっかけを作る起爆剤のような意味合いが強いと思います。
地域おこしはイベントや企画ができれば、誰にでも実現できる可能性がありますが、「地域づくり」はその土地の歴史や文化を理解し、地元住民とコミュニケーションを取ることが不可欠で、「地域おこし」は長い期間をかける「地域づくり」の一部となるものではないかと私は考えています。
そして地方において「地域づくり」を行う過程で注目されているのが「移住定住」です。
地域づくりについて情報収集していると、取り上げられる事例の多くに移住者が登場します。観光振興と情報発信を目的に活動を始めた当初、私は移住者としての自覚がなく、二本松市の移住定住事業に関わるのも、なぜ自分なのだろうと思っていましたが、活動一年目の秋に二本松市の移住・定住促進事業研修会で、西会津国際芸術村を訪れたときに、その考えが大きく変わりました。
廃校を活用した施設だけでなく、周りに点在する地域の移住者が運営するゲストハウスやコミュニティスペースを視察し、地域づくりにおいて移住者が担う役割をこのとき初めて理解し、目の当たりにしたのでした。
さらにその時、移住までのプロセスに関して、移住者の多くは観光で初めてその土地を訪れ、気に入った人がリピーターとなり、最終的にその一部が移住に結び付きやすいという話がありました。
それはまさに私が二本松市へ移住した過程そのもので、「移住定住」と「観光」の深い結びつきを実感しました。以来、岳温泉での活動も単なる観光振興ではなく、地域づくりに繋げるものにしたいと考えるようになりました。
ただ、一つ気をつけなければならないのは、地域づくりに繋がる「観光」は従来の観光と性質が異なるということです。過疎化した地域に人を呼ぶためには、地域の良いところや非日常感をアピールするだけでなく、地域の課題を見せることが必要だと言われています。
なぜなら、移住者は地域における自分の役割や存在意義を見つけた時に、本気で自分事として地域について考え始めるからです。
地域にとって、課題やマイナス部分を見せることは受け入れ難いことかもしれませんが、私自身の経験からも、これからの人口減少社会を生き抜くためには必要な方針転換なのではないかと感じます。
このように「地域づくり」において「移住定住」と、その入り口としての「観光」は密接に繋がってきています。地域を次世代に残していくためにも、それぞれが未来に向けた地域のあり方を考え直す時機に来ているのではないでしょうか。
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