「地域おこし」から解放されて、見えた景色
私は地域おこし協力隊として3年間、福島県の岳温泉で活動してきました。協力隊という立場の割には結構頑張って活動して、いくつもプロジェクトを作って走らせて形にしてきました。色んな方に応援していただいて、なんとかここまでやってくることができました。
そんな訳で「まるちゃんすごいね！」と言われる場面も多く、ありがたいなあと思う反面、その裏ではもちろん色んなことがあって、任期が終わった瞬間はもう地域のことを何も考えたくないくらい完全燃焼していたのがリアルです（笑）
着任から3年の月日が経って、協力隊という看板を下ろし、「地域」から解放され、自由になった今。同じ場所にいながらも、目の前に見える景色が変わったような気がしています。
地域おこし協力隊を終えて、どのような人生を歩むかは自由です。3年間を過ごした場所に腰を据えて、住民として暮らしていく人もいれば、別の道を探して地域を離れる人もいます。離れるといっても、3年間の任期を終えた人の多くは、引き続き何かしら関わりを持ち続けている印象です。
私は幸い、仕事も福島県内で続けられる見込みがたったことから、二本松市に引き続き暮らすことを選びました。協力隊の頃から住んでいたアパートに継続して住んでいます。とはいえ、任期中も岳温泉の観光協会に勤めていながら、温泉街ではなく車で15分ほど離れた場所に暮らしていたので、協力隊として活動した地域には住んでいないことになります。
この距離感も自分にとっては切り替えができるという意味で、大事だったのかなと思いますが、職場が岳温泉でなくなったからといって、地域での関わりをやめることはなく、とあるお店の一角をオフィスや自由に出入りできるスペースとして整備することをこっそり計画しています。
ただ、この決断に迷いがなかった訳ではありません。まだ私自身、あとどのくらい二本松に住み続けるか分からないという点で、どこまで責任が持てるのか不透明だということがひとつ。
加えて、どこにでもあることとは思いますが、任期中から見てきた地域のしがらみやその影響を考えると、本当にここで何かしたいのかという迷いが生まれたのも事実です。今だから正直にいうと、地域のことが好きで活動する反面、大変な思いをしたこともたくさんありました。
やっぱり大変な思いをすると、地域で何かするというモチベーションは下がりがちです。実際に任期を終えて完全に地域を離れてみると、地域の悪いところに目がいき、やっぱりもう岳で何かやるのはやめた方がいいかな... と思うようになっていました。
そんな時に南相馬で会った知り合いの方にこんなことを言われました。
「地域づくり、コミュニティなんて言葉を使うことはあまり意味がない。皆んなでまとまってゴチャゴチャ何かするよりも、人と人が繋がって、友達100人作って呼んでくる方がよっぽど面白いし、意味がある」
雑談だったので一言一句、合ってはいませんが、これにはハッとさせられました。「何とかして地域をまとめる潤滑油に、ヨソモノである私がならなければ」「岳温泉全体としてどんな風にまとまっていくのが良いんだろうか」ーそんなことばかりいつも考えていた私は、地域おこし協力隊という看板とミッションに縛られる中で作り出された「皆んなで仲良く行う地域づくり＝目指すべきもの」というマインドセットの中で試行錯誤していたことに気付かされました。
実際に、南相馬の小高ではたくさんの若者が地域に移住し、それぞれがやりたいことを、やりたいやり方で実現しています。野馬追いという伝統文化が残る場所で乗馬体験を始める人がいたり、最近では民家を改装して、haccobaというクラフト日本酒を作るブルワリーも誕生しました。移住者それぞれが人を呼び、活気が生まれ、その中からさらに自分のやりたいことを実現するために、チャレンジしに来る人がいる。無理に足並みを揃えて「地域づくり」を行う必要はないのかもしれないとその時に思いました。
また、話の流れでこんなことも言われました。
「結局まるちゃんのことを "地域おこし協力隊" として見てる人もたくさんいた訳で、これからは "まるちゃん" として見てくれる人とやっていけばいいんじゃない？」
それでいいのだろうなと今、思い返して納得しています。肩書きがなくなってもなお、自分の存在や価値、思いを理解してくれる人と一緒に、自分のやり方で地域と関わっていこうと思いました。
楽しくやれる仲間と、楽しい場所を作りたい。
そして何より、自分も楽しく暮らしたい。
地域に関わる理由は、きっとそれだけでいいんだと思います。事実、これから一緒にやろうとしている人は、ただの地域の人ではなくて、この3年間でできた大切な友達であり、仲間だと思っています。
「地域おこし」という概念から解放されて、初めて見えてきた、どこかシンプルで新しい景色。
来週からまた岳温泉でワイワイ頑張ります。