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雪国(北海道)の暖房費を考えてみる

東京から北海道(札幌市)に移住した最初の1ヶ月で、暖房費が驚愕の5万4000円となり、慌てて電気代の見直しを行いました。同時に、寒冷地の暖房について色々と調べてみたので、まとめていきたいと思います。

この記事を3行でまとめると…

  • 省エネ・低コストの電気プラン・暖房機器・断熱材を組み合わせる

  • 古い暖房機器は使用しない

  • なんだかんだでエアコンは最強

(全 4,314字)

厳冬期(12月)に東京から札幌に引っ越して、最大の懸念は暖房代でした。東京では見たことがない暖房機器も多くあり、最適な使用方法が分からず、最初の1ヶ月の暖房代(電気代)が5万4000円、1,900kWh となりました。せっかく家賃の安い札幌に引っ越したのに、暖房費がこれだけ高ければ意味がありません。色々と調べた内容を備忘録として、そして、第二の被害者(?)を出さないために共有したいと思います。

住宅の設備

まず、私の住んでいる物件のスペックは下記です。

  • 賃貸マンション(2008年築)

  • 1LDK 40㎡

  • オール電化

  • 断熱設備(二重窓、熱交換器形換気など)

大型マンションであり、断熱設備は完備されているため、ここは問題ありません。特に熱交換器形の換気システム(ロスナイ)は、外気を20度程度に暖めた状態で室内に取り入れるため、暖房機器を使用していなくとも、部屋の温度が外気相当に下がることがありません。すべての暖房機器をオフにし、外気がマイナス5度の状態でも、室内温度は一番低い時で最低15度でした。これは優秀なシステムです。
また、陽当りは南向きであるため、晴れていれば昼間の暖房は不要です。

換気扇・換気空清機ロスナイ(三菱電機)

一方、オール電化であり、後述する蓄熱機器が大きな電力を消費します。結論として、この蓄熱機器が元凶であり、使用を停止しました。

電力プラン(ほくでん)

  • 時間帯別電灯ドリーム8

  • 融雪用電力L

私は2つの電力プランに入っております。関東から引っ越してきた私は、2通の電力料金表が見てまず驚きましたが、それぞれ用途が異なります。

ドリーム8は、通常の電力(電灯、調理器具、湯沸かし等)を使用するためのプランであり、融雪用電力Lは名前の通り融雪用(ロードヒーティング、屋根や屋上の融雪設備、セントラルヒーティング等)を使用するためのプランです。私の場合、融雪用電力Lは後述する備え付けの暖房機器専用の電力プランであり、冬季(11月~4月)のみの契約となります。

時間帯別電灯(ドリーム8)(ほくでん)
※現在は新規加入の受付を終了しています。

電気代は kWh(1時間あたりの使用電力)単位で計算されます。(小数点以下は省略)

時間帯別電灯ドリーム8
昼間(~90kWHまで):38円/kWh
昼間(90~210kWH):46円/kWh
昼間(210~kWH):50円/kWh
夜間:25円

https://www.hepco.co.jp/home/price/ratemenu/dream8.html

簡単に言うと、たくさん使えば使うほど、電気代(単価)が上がります。ただし、夜間はとても安くなります。
これは、省エネ促進のため、大量の電力を使用することを抑制することを目的としているためです。一方、夜間は商業・工業施設が停止しており、電力の余剰があるため、家庭用電力が安くなります。
したがって、大きな電力を使用する設備(湯沸かし器、乾燥機)は夜間に使用すると電力を安く済ませることができます。

融雪用電力L
定額 27円/kWh

https://www.hepco.co.jp/home/price/ratemenu/meltingsnow.html

ドリーム8と異なり、融雪用電力は常に一定額です。また、単価も安くなっています。しかし、用途が制限されており、他の一般電気機器には使用できません。また、契約期間も冬季のみに限定されています。

暖房機器

(※多少ディスるため、メーカー名は伏せます。kWh は20度に設定したときのおおよその実測値)
・備え付けの暖房機器
①セントラルヒーティング(蓄熱機器)0.90~1.20 kWh
②パネルヒーター(※①と②は連動して作動。ただし、片方のみを使用することも可)0.80~1.20 kWh
③エアコン(寒冷地仕様ではなく一般仕様)0.5 kWh

・自分で購入した暖房機器
④トイレ用ミニヒーター 0.25~0.6 kWh
⑤電気毛布 0.04 kWh
⑥着る電気毛布 0.04 kWh

①が最も電力消費が大きく、月に2万円程度かかるため、これは電源オフにすべきです。場合によっては融雪用電力Lの契約を切る(つまり、①②が使用できなくなる)ことも検討しても良いかも知れません。
一方、③エアコンや⑤⑥の電気毛布は消費電力が小さく、とても優秀です。

10畳(18㎡)×天井高2.7m の部屋で、暖房機器を20度に設定して1時間使用した場合、①②だとそれぞれ13~15円程度かかります。一方、③エアコンは9円程度です。したがって、エアコンを使用した方が安価になります(ただし、電力プランが異なるため、時間帯によって変わります)
また、エアコンは広範囲に部屋を暖めることができ、速暖性が高く、またスイッチを切ればすぐに停止します。

一方、セントラルヒーティングはスイッチを入れてから部屋が暖まるまでに6~12時間程度かかります。また、スイッチをオフにしてから完全に冷めるまでにも6時間程度かかります。セントラルヒーティングは、小刻みにオンオフを繰り返す使用は想定されておりません。さらに、設定温度を細かく設定することも出来なければ、感熱、自動停止、タイマー等の機能もエアコンに比べて劣り、即効性がありません。

次に電気毛布ですが、布団の中を局所的に温めることを想定しており、1時間に最大1円しか電気代がかからないため、気兼ねなく使用できます。1時間に1円ですから、1日24円、1ヶ月つけていても720円ですので、電気代を気にすることなく使用できます。

暖房機器比較

熱出力(部屋を暖かくするパワー)は、灯油ファンヒーター、ガスファンヒーターが高く、即暖性が高いです。一方、これらは換気、安全性等の問題が伴います。北海道の多くの建物は灯油やガスの配管が設置されていますが、一般的にはメンテナンスや給油の手間があります。

オイルヒーターやパネルヒーターは温風を出さないため即暖性はないものの、ゆっくりと柔らかく暖めるため、快適性が高いです。これらは、断熱性や気密性が高い室内利用を前提としており、主に寒冷地で見られます。

日本は南北に長い地形を持ち、地域ごとに気候が大きく異なります。この多様な気候に対応するため、エアコンは全国的に普及し、2020年代には普及率が90%を超えています。

また、日本には多くのエアコンメーカーが存在し、各社が競争を繰り広げる中で、省エネルギー性能や快適性の向上が進められてきました。特に、インバーター技術の導入や熱交換器の性能向上、コンプレッサの改良などにより、エアコンの効率化が達成されています。

このような背景から、エアコンは日本の多様な気候条件に適応し、効率的な暖房機器として広く利用されています。

https://japan-ac-service.co.jp/2024/11/23/
https://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php

最適な電気プランと使用方法

以上を総合的に考慮して、下記のように電気を使用するようにプランを立て直しました。

昼間(8~24時)

  • 暖房機器は、エアコンと着る電気毛布を併用。日光が出ている時間帯は室内が25度になるため、暖房機器は不使用。

  • その他、調理機器や電灯、パソコン等は普通に使用。

夜間(0~8時)

  • 睡眠時、備え付けパネルヒーターを使用。消費電力は高いものの、融雪用電力L(27円/kWh)であれば高額にならない。また、電気毛布を併用することで、パネルヒーターの設定温度が低く抑えられる(18度)。

  • 夜間に給湯器で湯沸かし。これは 1.8 kWh ×4時間稼働するため、外出時などは湯沸かしをオフにする。

  • 電力食いの諸悪の根源である蓄熱機器は完全にオフにする。

以上の対策を行ったところ、消費電力および料金を半分以下に抑えることができました。

今回の反省点と学び

最大の問題は蓄熱暖房機であり、これは寒冷地にしか存在しないシステムです。関東出身の私は見たことがありませんでした。

私が住んでいるマンションは2008年築であり、東日本大震災が発生する前のオール電化ブームの時に建てられました。札幌のマンションは、電気だけでなく、ガス管(都市ガス、プロパン)、灯油配管が各部屋に分配されています。オール電化であれば、ガス・灯油設備の設置が不要になるため、建設コストが下がり、結果的に家賃も安くなります。

しかし、東日本大震災による原発事故が発生し、暖房設備を電気のみに依存するのでなく、電気・ガス・灯油に分散するのがトレンドになりました。また、昨今の燃油高に伴い、より選択的で省エネ設備が推奨されています。したがって、電力を多く消費する古い暖房機器は電気代に直撃します。

北海道の暖房の歴史を振り返ると、1960年代までは石炭ストーブが主流でした。最盛期には約200の炭鉱が稼働していました。石炭が主要なエネルギー源であった時代、北海道は国内有数の石炭生産地として、自給自足が可能な状況にありました。そのため、暖房をはじめとするエネルギー需要を十分に賄うことができ、特に冬季の厳しい寒さを凌ぐために石炭を多く利用していました。

https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/58_10_05.pdf
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kke/Sekitan211221.html

しかし、1973年と1979年、二度のオイルショックにより、原油価格が急騰し、エネルギー供給の不安定さが露呈しました。これを契機に、省エネルギーの重要性が認識され始めました。建築物の断熱性能向上や高効率な暖房機器の導入が推進されました。北海道でも、寒冷地特有の気候に対応するため、高断熱・高気密住宅の普及が進みました。

高度経済成長期までの北海道は、「冬は暖房を付けて部屋を暖めることが贅沢だ」という時代でした。公共施設、商業施設、地下鉄や地下街はどこに行っても暑過ぎるくらいに暖房を付けています。しかし、現代は「いかに少ない電力で暖めるか」という時代です。

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