「あんたのせいでお母さんもう死ぬわ。」
電話越しに何百回いわれただろうか。
この人は百万回生まれ変わるつもりか。
子供の頃、友達のお母さんが優しくてこんなお母さんがいいなと羨んだことがある。
小学生3年の文集の嫌いなもの欄にお母さんと書いた。嘘、嘘、ほんま、ほんま、嘘、嘘である。
煙草をくゆらせて、こっちを睨む。
お母さんは毎日怒っている。
「何考えとらいね。」
「叩きつけなわからんがか。」
「えーな、いいかげんにせいま。だらぶちが。」
※だら=アホ、バカの意味だらぶちは、だらより強い言い回し。
子供にしたらとてもおっかない。
母親像とは何か考えさせられる。
小学生3年11月。
思春期に入り親の言うことをあまり聞かなくなってきた。
「修司!あんた早よお風呂入りまっしま!」
※入りまっしま=入りなさい。入れ。
午後18時頃、NHKの衛生テレビでアニメが放送されてる時間帯。お母さんの話など耳に入る訳がない。
「あんた、いいかげんにしまっしま。」
※しまっしま=しなさい。しろ。
「はーい。」
空返事をして相変わらずアニメに没頭する。
ついに母が動き出す。
怒り心頭の母に茶の間で無理やり服を脱がされ、
全裸にさせられる。
そのまま風呂にいくと思いきや、
玄関に連れて行かれ全裸のまま外に放り出した。
嘘やろ。外はもう真っ暗だ。
「お前なんか犬でもおばけにでも食べらてしまえ。」
「開けてー、開けてー。」
北陸の秋は寒い。全裸って。おい久美子◯す気か。
玄関外で全裸で号泣する。この恐ろしい時間がどれだけ長く感じたか。
しばらくしてやっと扉を開けてくれたが、たいがいな躾や。
35年たっても忘れられない母と僕との格闘の日々。