“だし合わせ”シリーズについて(1)「だしの多様性」と「ほんもの」
だしの多様性
和食において「だし」が重要であることは、日本人なら誰しも感じることでしょう。「だしが効いてる」と聞いて、ネガティブな印象を受ける人はそういないかと思います。それくらい「だし」の重要性は当たり前のように認識されているのです。
しかしながら、その「だし」がどれほど広がりのある世界なのかを、知っている人は意外と少ないのかもしれません。
例えば、鰹節。
関東では鰹の枯節(表面にカビ付けを施した節)が主に使用されておりますが、関西では鰹の荒節(表面にカビ付けを施さない節)が主に使用されております。だしを直接比べたことがない方にはわかり辛いかもしれませんが、この2つには無視できないレベルの風味の差があります。
また、そもそも関西では鰹節以上に目近(宗田鰹の節)が多く使用されており、京都の割烹料亭などではマグロ節が好んで使用されております。
ところ変わって東海地方に行けばムロ節(ムロアジの節)が使用されることが多く、他にもサバ節を扱う地域、ウルメ節を使用する地域など、実に色々な節が様々な地域で使用されているのです。
さらには、そもそも関西では節以上に昆布だしの重要性が高いことも良く知られております。
このように、どの節(あるいは、どのだしの材料)を使用するかには地域性が関係していることがわかります。
ところが、これに加えてご家庭で代々受け継がれてきた味、いわゆるおふくろの味というものがあります。
例えば、お友だちの家に遊びに行ってご飯をいただいた時に、いつもと違う味噌汁の風味に「ん?」と思った経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
突き詰めると、個人のだしの志向というものは【地域性×ご家庭の味×個人の好み】という大変複雑な方程式の元に成立していることになります。
ほんもの
さて、弊社だし屋のマルサヤをはじめ、多くのだし問屋がこのフレーズを使用しております。
「ほんもの」
鰹節のほんもの、昆布のほんもの、だしのほんもの。これを追究することが私ども「だし業界」に携わるものの使命と感じているところではあります。
しかし、上述の通りだしの志向とは大変複雑なもの。言うなれば、人の数だけだ正解が存在するわけです。
このため、弊社の業務用だし営業の現場では、まず第一にお客様の理想とする風味を入念にヒアリングします。つまり、その店主様にとっての「ほんもの」を探るわけです。
もちろん、それは一朝一夕に出来るものではございません。無数にある商品の中からコレだというものをご提案できた時には、だし屋として格別の喜びがございます。
あなたにとっての「ほんもの」
業務用の現場ではそのように店主様にヒアリングをすることによって「ほんもの」を探ることが出来ますが、これが一般個人の方ともなると、一人一人にご確認さしあげるのも難しくなってまいります(勿論、だし屋のマルサヤまでお問合せいただけましたら何時でもご対応しております)。
飲食店の数と、個人の数。比較するまでもなく個人の数が圧倒的に多い中で、その全員に対して丁寧にヒアリングするには甚だ力不足を痛感する次第でございます(出来るのであればそうしたいところではございますが)。
では、どうすればよいのでしょうか。答えは2つございます。
1つ、なるべく多くの方に「美味しいだし」と言わせるレシピを作り、商品化すること。世に溢れるだしパックは、ほぼ全てこの類いのだしパックです。
つまり、最大公約数的に誰かにとっての「美味しいだし」であることには間違いないのでしょうが、その「美味しいだし」を受け入れられない人が必ず生じてしまうというリスクもございます(当然、その数を限界まで減らせるように圧倒的な企業努力をされた結果、広く利用されているだしパックもございます)。
もちろん、それでご満足いただけるのであれば何も問題ございません。なぜなら、それがその人にとっての「ほんもの」なのですから。
しかしながら、そうではない方、つまり誰かにとっての「美味しいだし」ではなく自分自身にとっての「美味しいだし」を見つけたいという方は、一体どうすればよいのでしょうか?
もう1つの答え、「美味しいだし」を自分自身で見つけてもらう、そのままでは未完成のだし。
これこそが、今回開発した“だし合わせ”シリーズのメインテーマなのです。
(続く)
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