
<勘違い新年>
*この記事は「脱サラをする前に」というサイトから転載したものです。
奇跡の9連休と世間では言われていますが、みんながみんなそういうことでもなく、小売業とかサービス業に従事している人たちは「奇跡の稼ぎ時」です。ですので、通常通りというかそれ以上に忙しくしているのではないでしょうか。僕は社会人になってから従事した仕事が基本的にそういう系統の仕事ばかりでしたので、ついつい働いている人たちの気持ちに寄り添う気持ちになってしまいます。
社会人になって数年経ってから高校時代の運動部の同窓会に出かけたとき、ある先輩が「俺は人が休んでいるときに働く仕事には就きたくないよ」と話していました。同じクラブに入っていて、クラブでは同じ方向を向いて身体を鍛えていても、クラブから離れてしまいますと、まったく違う考え方になってしまうことはよくあることです。ですので、僕は同窓会というのがどうも苦手なのですが、みなさんは同窓会で違和感を持つことはないのでしょうか。
たまに雑誌などで高校同窓生が数人集まったりする企画があります。あれも高校の同窓会と名乗っていはいますが、結局は同じような最終学歴や社会人層の人たちの集まりで高校同窓生とは関係ないように思います。今の格差社会ではそうした傾向が大きくなっているように思います。
それはともかく、今年のお正月は新年早々、家電製品のトラブルに見舞われました。おそらく10年くらいは経っていると思われる洗濯機が壊れてしまいました。洗濯機を動かしますと、中からガタガタと大きな音がするようになってしまったのです。妻が言うには「一応、洗えてはいるけど不安」ということで3日の金曜日に家電チェーンに買いに行くことにしました。そこはやはり貧乏性の僕たち夫婦ですので、できるだけ安い買い物をすべく、まずamazonで価格を下調べしてからチェーン店巡りをすることにしました。
どんな商品もそうですが、いくつかを比較してから買うのが理想です。ですので、価格だけを見て次のお店に行き、amazonを含めて一番安いものを買うことにしました。ところが、今年の妻は気っ風がよくなったのか、なんと最初に見に行ったお店ですぐに購入を決めたのでした。これは驚きでした。僕への接し方もこれまでと変わってくれるとうれしいのですが…。
最初のお店は日本で一番大きな家電チェーンでしたが、お客さんはそれほど多くはありませんでした。僕の中ではお正月の3日間は「多くの人でごった返している」印象があるのですが、そのような雰囲気はまったくありませんでした。これも「奇跡の9連休」が影響しているのかもしれません。
お店に入りますと、従業員のほうが目立つ感じでしたので、あまり目立たないように見て回ることにしました。暇を持て余している、と言っては失礼ですが、あり余っている従業員の方々ですので、すぐに近づいてくるのが想像できるからです。僕たちはお店の人たちと目を合わさないように洗濯機売り場に向かい、妻と少しばかり離れて商品を見ていました。すると、案の定お店の人が話しかけてきました。
僕は軽く会釈しつつ妻のほうを見ながら笑みを浮かべあいまいに返答をしていました。その従業員が僕の視線の先を見て「ご一緒ですか?」と尋ねてきました。僕は「はい」と答えたのですが、こういうときの接客の基本は「どちらが最終決定権を握っているか」を察することです。僕はできるだけ「僕ではなく妻が決めますよ」という雰囲気を醸しだしていたのですが、その方はなぜか僕にだけ一生懸命商品を勧めてきます。
仕方なく、僕が妻のほうに行き、お店の人が勧める商品について説明したのですが、その従業員は一向に妻に話しかける気配がありません。まるで僕が接客をしているかのようでした。ところが、なんと、僕の接客がうまかったのか、妻はその商品に決めてしまったのです。まだほかのお店を見てもいないのにです。僕は思わず「え、いいの?」と思わず声を出したのですが、「これだったら、ほかのお店とあまり変わらないと思う」と即断したのでした。今年の妻は違います。
しかもうれしいことに配達は翌日にしてもらえることになりました。なんでも早いことはいいことです。早速翌日、配達の人が2人で来たのですが、設置もスムーズに終わり、その人たちも感じがよく、正月早々うれしい気分になった、と満足していました。
ところが、その人たちが帰った夕方のことです。トレイに入りますと、なんとシャワートイレの便座が冷たいのです。この真冬の寒い中、冷たい便座ほど悲しいことはありません。もちろん洗浄のノズルも出てきませんし、シャワーも出てきません。「ああ、なんという正月だ!」と悲嘆にくれました。
この寒い中、冷たい便座に座るのは地獄です。僕は外回りの仕事をしていますので、トイレはいつも公共機関を利用することになります。「公共機関」などというと大げさですが、要はコンビニとか公園です。最近のコンビニはほとんどがシャワートイレになっていますが、たまに普通のトイレのこともあります。普通のトイレはもちろんシャワーが出ないだけでなく便座も冷たいので覚悟が必要です。
冷たい便座に座るときのコツはお尻と便座の間に右手と左手をそれぞれお尻の下に入り込ませることです。手のひらを便座につけその上にお尻を置き、少しずつ手を外していくことでお尻の感じる冷たさを、少しですが和らげることができます。僕の暮らしの知恵です。ちなみに、都心よりも郊外のほうがシャワートイレの割合が高いのですが、昨年あたりから都心ではトイレを開放していないコンビニも増えていて、時代の移り変わりを感じています。
そういえば、お正月に「PRTFECT DAYS」という役所広司さんが主演を務めた映画を観ました。役所さんが淡々とトイレ掃除をするストーリーなのですが、僕自身と通じるものがあり共感することが幾つかありました。僕の場合は「トイレ掃除」はないのですが、見下される立場であるのは同じです。昔からのことわざで「仕事に貴賎なし」などと言いますが、現実はそれほどあまくはありません。
我が家のシャワートイレの話に戻りますと、妻がパートから帰ってきてすぐに買いに出かけました。一晩といえども、冷たい便座に座るのはたまったものではありません。近くのホームセンターに行ったのですが、もちろん事前にamazonで相場を確認していました。すると、運よくamazonと同じ製品が600円高いだけで陳列されていました。速攻で購入したのですが、問題は自分で設置できるかどうか、です。
実は、これまで使っていたシャワートイレも自分で取り付けています。ですが、記憶がまったくなくゼロからはじめるようなものでした。帰宅してからすぐにとりかかろうとしたのですが、説明書を読んだだけでは理解はできませんでした。そこで、Youtubeで検索しますと、同じ製品を取り付けている動画を見つけることができました。それを見て「なんとなくできそう」と楽観する気持ちになりました。
僕には毎年お正月に電話で1時間ほど近況を伝えあう友だちがいるのですが、たまたまその日の夜が約束の日でした。ですので、設置に取り掛かることができたのは夜の10時だったのですが、最初に手間取ったのが今ついているシャワートイレを取り外すことでした。取り外し方がわからないのです。そこで、古い説明書を引っ張り出し、取り外し方を調べたのですが、今一つ要領がわからないまま午後11時となってしまいました。
僕の就寝時間はいつも午後11時と決まっています。仕方なくその日は諦めて日曜朝、つまり本日なのですが、午前からとっかることにしました。壁に突き当たったときは一呼吸置くことで解決の道が見つかるものですが、古いシャワートイレの取り外しも同様でした。スムーズとは言えませんが、なんとかどうにか取り外すことができ、新しいシャワートイレの取り付けも無事に終えることができました。あとは、給水管の接続だけです。
実は作業をしているうちに少しずつコツが思い出されてきて、給水管の接続は本体の設置ほどむずかしく感じないように思っていました。ですので、本体の設置よりも時間がかからずに給水管の接続を完了させることができたのですが、スイッチを入れても緑の電気がまったく点滅しないのです。本当なら緑の電気が点滅して電気が通っていることを知らせてくれるのです。う~ん、なぜだろう。
本体の設置もうまくいきましたし、給水管の接続も完璧なはずです。なのに、作動しないシャワートイレ。そんなわけないよな…、僕は電源コードを差し込んでいるコンセントをジーっと見つめました。…もしかして…。
僕は掃除機で試してみることにしました。我が家の掃除機は電源コードを差し込む方式ですので、掃除機の電源コードを差し込みスイッチを押すことでコンセントが活きているかがわかります。僕は掃除機の電源コードを差し込み、掃除機のスイッチを「エイッ」と押しました。すると、案の定、掃除機は微塵も作動しませんでした。犯人は、なんと、コンセントだったのです。
我が家のトイレのコンセントはあとから増設したものなのですが、電気工事で増設したものではなく、洗濯機が置いてある洗面所から延長コードで引っぱってきて増設したものです。そこで僕は洗面所の大元のコンセントを確認しに行きました。実は、昨年のことですが、東京都から地震対策用として無料で「地震が起きたときに自動で通電を遮断するコンセント」が配布されていました。僕はそのコンセントにトイレの延長コードを挿していたのです。
その地震対策用コンセントは地震の揺れを感じたときに自動的に電気を遮断するシステムらしいのですが、通電しているときは小さな橙色の電球が点灯しています。ところが、見に行ったときその電球が点灯していませんでした。つまり、なんらかの原因でそのコンセントが揺れを感じてしまい、通電を遮断したのだと思います。僕は考えました。
「コンセントの近くで揺れ」。
あっ、昨日の洗濯機の入れ替えです。それほど広くない洗面所ですので、配達の人がぶつかった可能性は十分にあります。少なくとも、二人がかりでないと持てないほど大きく重い洗濯機を動かすのです。それなりに揺れが生じることは十分にあり得ます。思い出してみますと、シャワートイレが使えなくなったのは、洗濯機の交換をしたあとからです。犯人は「洗濯機の交換」でした。
ああ、シャワートイレが壊れたんじゃなかったんだ。だれか、僕の時間と労力を返してくれー!
じゃ、また。今年もよろしくお願いいたします。