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<情報の窓口>

*この記事は「脱サラをする前に」というサイトから転載したものです。

日曜朝に放映されている「サンデーモーニング」という番組で長年MCを務めていらっしゃいました関口宏さんが今週で番組を卒業することになりました。36年あまり出演していたそうですが、僕がこの番組を見ていた期間は半分くらいでしょうか。僕は社会人になってからは日曜日に働く業種に就いていることが多かったので、半分くらいの計算になります。

僕の社会人のはじまりはスーパーでしたが、それは単純にそこしか受からなかったからです。そもそも就活にあまり熱心ではありませんでしたが、「採用されればどこでもいい」という気持ちでいました。スーパーも含めた小売業がほかの業種と最も異なる点は「日曜日が休めない」ことです。言うまでもありませんが、日曜・祭日は一番の稼ぎ時ですので「休む」のはご法度です。

僕は学生時代デパートでアルバイトをしていた期間が長かったことも関係しているのかもしれませんが、それ以前に「日曜日に働くこと」を苦に思っていませんでした。僕の周りには「日曜は絶対休みたい」という友人もいましたが、そうしたこだわりはまったくありませんでした。

反対、「みんなが休んでいるときに働いている人がいるからこそ、休んでいる人たちが休日を楽しめる」と思っていて、「自分はそちら側にいたい」と考えていました。ですので社会人になって43年ですが、半分以上は日曜日に働く仕事に就いていました。その結果、「サンデーモーニング」を見ることができたのが半分くらいになります。

関口さんの思い出といいますと、「クイズ100人に聞きました」や「東京フレンドパーク」をよく見ていました。前者の司会では「回答者のテーブルに肘をついて話す」姿がとても印象に残っていますが、どうしてわざわざあのような姿勢になって話すのかが不思議でした。よくはわかりませんが、テレビ界において司会者のあり方・やり方が変わる過渡期でそれを意識した振る舞いだったのかもしれません。

昔は俳優さんが司会をやることはなかったはずですので、その意味で言いますと俳優が司会をする草分けだったのではないでしょうか。今回調べていく中で、関口さんが「スター千一夜」という対談番組もやっていたことを思い出しました。この番組は芸能人を招いて近況などを話す15分くらいの番組でしたが、なぜか僕が一番記憶に残っているのは、この番組に旭化成の「中興の祖」と言われていた宮崎輝さんが出演していたことです。

この番組は旭化成がスポンサーでしたので、それが関係していたのかもしれませんが、旬な有名芸能人が出演している中で、よりによって畑違いの旭化成社長の宮崎さんを一番憶えているのは自分でも不思議です。宮崎さんは「ダボハゼ経営」が有名な経営者でしたが、わかりやすく説明しますと「多角化」のことです。一つの業種に絞るのではなくいろいろな業種を展開することでリスクの分散を図るというわけです。

しかし、企業の「多角化」もうまくいっているうちはいいですが、一つ間違えますと非難の嵐になります。「多角化」は見方を変えるなら、専門がないことですのでそれが不安要因になり、逆に「リスクが増える」ことでもあるからです。あまりに手を広げすぎますと、全体的に薄っぺらくなり、それぞれの事業において他社に引けを取ることになります。

「多角化」で僕が思い出すのは、オリックスの宮内義彦さんです。先ほど旭化成の宮崎さんの話を書きましたが、「ダボハゼ経営」を知ったことで僕はビジネスというか経営に関心を持つようになりました。そうした下地があった中でオリックスの「多角化」に出会ったのですが、宮内さんの実行する「多角化」は他社の「多角化」とは違っていました。

宮内さんの「多角化」は、いたずらに手を広げるのではなく基本とする業種の隣の業種にのみ事業を展開する「多角化」でした。この発想の肝は「隣の業種」です。まったく畑違いの業種と違い、隣の業種ですのである程度知見を身に着けています。その業界のメリットも問題点も熟知していますので失敗のリスクが「低くなる」といういう発想です。オリックスは元々はリース会社だったのですが、現在皆さんが知っているのは金融会社としてのオリックスでしょう。唯一畑違いといえるのは「野球」でしょうか。しかし、もしかしたなら「野球」もリース業の隣の業種と考えていたのかもしれません。

今週は旭化成・宮崎さん、オリックスの宮内さんと経営者について書いてきましたが、ここまできますと次に書きたくなるのは「ヤマトの経営者・小倉昌男さん」です。小倉さんは業種こそ変えていませんが、「配達」というものの概念を広げました。その意味では「隣の業種」となるかもしれません。単に荷物を運ぶだけではなく、荷物の幅を広げ、機能を増やし、利便性を強化しました。配達のサービスを向上させたことも大きな功績です。

前に書いたことがありますが、昔の配達はそれはそれはひどいものでした。例えば、どこかから荷物が届いたとき、留守にしていたなら自分で駅まで取りに行くしか方法はありませんでした。しかも、荷物を受け取りに行ったときの対応もぞんざいで、ときには面倒くさそうに対応されることさえありました。それほどサービスという概念がなく、顧客精神が欠けているのが当たり前の業界でした。それを変えるきっかけを作ったのが小倉さんです。

僕は本屋さんに行くのを趣味にしているのですが、そのときに必ず立ち寄るのがビジネス書コーナーです。巷間マスコミでは「本が売れない時代」といわれていますが、実は本自体は1日に200冊~300冊出版されています。1ヶ月に換算しますと7000冊以上となりますが、そうした状況では店頭に本を並べてもらうことさえ困難です。ですが、僕が行く本屋さんでは小倉さんの本が本棚に並んでいます。

「小倉昌男 経営学」という本なのですが、この本が出版されたのは20年以上前の1999年です。1年に7000冊以上出版される中で今もなお店頭に並んでいるのです。僕はそれがうれしくて仕方ありません。この書店の選眼力に感心しています。現代は情報があふれているといいますが、情報がありすぎると困ることもあります。それは本当に知りたい、もしくは届かなければいけない情報にたどり着くまでに時間がかかることです。下手をすると、ほかの情報に埋もれてしまい、真に必要な情報にたどり着けないこともあります。

そうしたときに手助けとなるのが正確な情報をフィルターしてくれる機能です。それぞれの人に適した情報を選別してくれる機能です。そして、それを担ってくれなければいけないのは、人々の情報の窓口となる各種メディアです。

メディアは人々が情報に接する窓口です。例えば、テレビもそうですし、ラジオもそうですし、インターネットだってそうです。それらが、どのような情報を選ぶかによって人々が接する情報が決まってきます。ロシアはウクライナに侵攻していますが、ロシア国民の多くは正確な情報に接することができていないように見えます。もちろん個人的に「都合の悪い情報を避けている」人もいるでしょうが、そうした人は論外として一般の人はプーチン大統領にとって都合の悪い情報を流さないメディアから情報を得ています。これでは正しい判断ができるはずがありません。ロシアの国営放送は本来の「フィルターの役割」を放棄しています。

ロシアの現状を見ていますと、日本においても「情報の窓口」がだれかによって管理・支配されることがないように、国民が注視している必要性を感じます。かつての日本も「大本営発表」という欺瞞が行われていました。そうした事態にならないように国民は「情報の窓口」の管理に敏感でいなければなりません。もし、どこかの国のだれか偉い人がメディアをコントロールしようとしたときは、言ってやりましょう。

「不適切にもほどがある!」

じゃ、また。

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