【企業分析】57年黒字継続企業の強み
「57年黒字継続」
2000年代に入ってからでも9・11テロやサブプライムローン問題をはじめとしたリーマンショックなど世界的に景気が悪化している時期があったり、最近ではコロナによる景気のダメージから回復できていない企業が多くあったりする中で、57年間もの長期にわたって黒字を継続しているという「オリックス」。
とんでもないことだと思いませんか?
自社の努力だけではどうすることもできない世界的な情勢による影響が大きく働く中で57年間黒字を継続するということは並大抵の企業ではできません。
オリックスって名前は聞いたことがあるけど、そんなにすごい会社なんだっけ?と思いませんでしたか?
僕は初めそう思いました、、、
この記事ではなぜオリックスグループが黒字を57年間も維持できているのか、その強さの秘訣を解説したいと思います。
多角的な事業ポートフォリオ
黒字を継続できる一番の要因はリスクヘッジをかなりの規模で行っていることです。
オリックスが何をやっている会社かって知ってますか?
野球の球団を持っているので、チーム名のオリックスという名前が印象に残っている人も多いと思います。その運営もグループ会社がおこなっています。
あとはリースやレンタカー、不動産に事業投資、環境エネルギーに保険や銀行などの金融業と書いていってはキリがないほどに様々な事業をグループで運営しています。
有価証券報告書を見ると連結子会社だけでも1,006社と恐ろしい数になっています。
事業ごとに利益を見ていくと、もちろん全部が全部常に黒字を継続しているわけではありません。
赤字を出している事業があったとしても他の事業から出る黒字で補填することで57年間黒字を継続しています。
その数字を見ているとよっぽどのことがない限りオリックスの黒字継続年数は伸びそうだなと個人的に思います。
その理由はオリックスが抱えている事業すべてが不調になるということが考えにくいほど業種があまりにも多種多様だからです。
(2022年3月期 有価証券報告書)
有価証券報告書にセグメントごとの売上(収益)を記載する注記があります。
それを見ていて、あまりイメージのなかった(僕だけかもしれませんが)銀行・クレジット事業が848億円もの売上があるということに、そんなにあるんだと驚きました。
(2022年3月期 有価証券報告書)
事業自体もリースに不動産、保険や銀行と多岐にわたっていますが、さらにオリックスは海外にも展開しているということがこのセグメント注記から分かります。
セグメント分類の最後3つのORIX USA、ORIX Europe、アジア・豪州が海外での現地法人による売上の合計です。
ORIX USAは主にクレジットや不動産、事業投資をしていて、1,613億円の売上を計上。
ORIX Europeは2013年にオランダに本社を置く資産運用会社を買収して、その会社をトップとしたグループ会社で欧州や米州を中心としたアセットマネジメントを行うことで2,211億円の売上を計上しています。
アジア・豪州にも現地法人を設立し、リースやカーローンなどを展開して1,480億円の売上を計上しています。
海外セグメント合計で5,305億円を超える売上を計上しています。
日本国内でも多種多様な業種での事業を行い、日本で行っている事業を様々な組み合わせで海外にも展開することで安定した売上を獲得しているという状態にあります。
日本国内だけでも多種多様な事業展開でリスクヘッジしている上に、海外展開も十分に行っている。
もう安定感しかないですね。
関連事業の買収と成長
オリックスグループの中に大京という会社があります。
オリックスが一部資本を入れていた分譲マンションを中心とした不動産の開発を行っている会社なのですが、今では分譲マンション累計供給戸数第一位を獲得するまでに成長しました。
その後オリックスが大京の株を全て取得し、完全子会社化をしていて、今では利益を200億も生むほどに成長しています。
オリックスはそれまでにも不動産事業を行っていましたが、大京の事業内容がオリックスの手がける不動産事業と相互補完関係にあり、統合を進めることで不動産機能を強化できるという判断からグループ会社に組み込まれることとなりました。
新規事業を展開する場合や既存事業の拡大を図るにはM&Aによりノウハウのある会社を買ってくるというのはよく行われることですが、オリックスには事業投資の部門もあり資本を一部投入してからその会社の経営にも関与し、自社グループとのシナジーが生めるのかを検討してから完全子会社化するかどうかを選べるというのは、M&A失敗のリスクを下げるとても良い方法なのではないかと思います。
上手く行っている事業で資金を貯めて、既存事業の拡大や更なる経営の多角化を目指すためのM&Aを行うの資金に充てるという一番いい循環で進んでいるのではないでしょうか。
成長分野を見極める力
オリックスには事業投資の部門や金融関連の部門があるので、成長する企業かどうかの目利きがよく、また、実際に資金の投入も行うことができるため、自社の判断で成長戦略を推進することができます。
直近の実績で言うと弥生会計などの業務ソフトウェアを扱っている弥生株式会社が大きな利益を生んでいます。
2014年12月に弥生株式会社を買収し、2014年9月末時点で125万人だったユーザー数を2021年9月末までに250万人まで拡大させました。
ユーザー数の増加に応じて業績が上がったことと、弥生のクラウド型サービスに関する潜在的な競争力の高まりを期待して弥生株式会社の企業価値は大幅に上昇しました。
2014年にオリックスが弥生株式会社を買収した当時の価格が約800億円で、オリックスが2022年3月に事業譲渡を行ったときの価格は約2,400億円と価格は3倍にはね上がり1,630億円の売却利益を計上しました。
10年にも満たない期間で買収した企業を成長させて価値を3倍にするって凄すぎるなというのが正直な感想です。
これも投資や金融のプロ人材をグループ内に抱えているオリックスの強みだと思います。
まとめ
経営のリスク分散をするためには多角化経営が望ましいということから中途半端にいろいろなことに手を出して業績が悪化した企業が多くある中で、オリックスは多角化経営に成功したお手本のような事例だと思います。
いきなり全株式を取得するだけでなく、一部資本を投下して企業価値の増大が見込めるかどうか、グループ会社となった際にシナジーが発揮できるかの慎重な判断を行えることや、企業価値の推移を正確に見極め、売却すべきと判断した場合には企業価値が高い段階で売却して売却益を得る。
更には日本国内で成功している事業モデルを海外に展開、もしくは海外にある既存企業を買収して世界での事業展開を行うというリスクヘッジ能力こそがオリックスが成長し続け、黒字を継続できている秘訣ではないかと思います。