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PR TIMES(東証プライム/3922) 株主総会レポート 2022/5/25

 東証プライム上場のPR TIMESの株主総会に出席しました。当記事では、株主総会の様子についてご紹介したいと思います。なお、当記事は私の個人的な心証に基づき脚色した表記となっているため内容の正確性は保証出来ない点はご了承頂ければと思います。
 以下画像より私のツイッターアカウントへリンクを張っています。記事の内容についてのご指摘、ご質問、感想などがございましたら、お気軽にコンタクト頂けますと幸いです。頂いた内容は、私の学びにもなりますのでぜひお願いできればと思います。
 なお、当記事は同社の株式の売買を推奨するものではありません。ご自身の投資判断に基づき対応頂けますようお願いいたします。

1.はじめに

 総会のレポートに入る前に、同社に関連する記事を再掲しておきます。なお、同社の株主総会への参加は初めてとなるため、昨年以前のレポート記事は残念ながらございません。

2.株主総会の流れ

 それでは、株主総会の中身について触れていきたいと思います。まずは全体の流れについて時系列でご紹介したいと思います。なお、時間は手元でのざっくりとした時間ですので、雰囲気となります(笑)。

10:00 開会 (山口社長)
10:03 議決権個数の確認(事務局)
 1,135人/4,066人(27.9%)
 11万1,794個/13万4,183個(83.3%)
10:04 監査報告 (向川監査役)
10:06 報告事項・対処すべき課題・連携財務諸表 (ナレーション)
10:16 議案上呈 (山口社長)
10:43 質疑応答 
10:17 事前質問への回答
10:24 会場での質疑応答
11:35 議案の決議
11:37 新任役員の紹介
11:38 閉会

・開会までの過ごし方

 まずは会場にはいつも通り30分前以上前に到着しました。朝の電車遅延等を考慮していつも余裕をもって参上することとしています。多くの会社では受付開始は9:00ですが、PR TIMESは9:30受付開始でしたので、1階のロビーでのんびり待ちます。つい先日訪れた際の個人投資家向け説明会の時と同じ、新本社の入居する赤坂のハイグレードビルですね。先日は夕方でしたが、朝にくるとまた違ったフレッシュな印象でした。

 受付開始後に8Fのオフィスフロアにあがると、受付で検温と消毒を行いまして会場に進みます。当株主総会はオンライン視聴が可能となっているため、後方には自社の動画作成チーム?が大掛かりな機材をセットして慌ただしくされていました。そしてその後方の一角にノベルティグッズコーナーがありました。

 株主総会は先日の個人投資家向け説明会と同様にオープン共用スペースでの実施だったため、ガラス壁を隔てて隣では普通に社員の皆さんが執務室で業務をされているといった不思議な会場です(笑)。なんなら、社員株主の方が、さらっと執務室から出てきて、後方の席に座られ一緒に総会に参加するといった具合でした。私もそれなりに株主総会には色々出席していますが、これだけ社員の皆さんが身近に株主総会を感じられるような運営はとても珍しいのではないでしょうか。確かに本社オフィス内での総会も参加したことはありますが、構造的にも執務室スペースから離れたスペースでしたからね。横目で執務室の様子を見ながら総会が進んでいくわけです。別に特段支障もないし、社員の皆さんが株主総会を身近に感じられるというのは寧ろ良い事だとも思いますからね。

 席は30席位用意されていたかと思います。そして前方の席には大きなデスクも配置して下さっていて、メモやPCの操作に大変便利でした。よく椅子だけのケースがあるのですが、メモやPC操作等がやりにくいため、些細な事ですが今後も続けて頂きたいなと思いました。

 本日は全部で8問の質問を用意してきました。これでもそれなりに質問を端折ってきました。一方で株主総会という趣旨に鑑み、実はそこまで取り立てる必要のない事でも確認のために挙げたものもありました。私は口下手で緊張しがちな不器用さんですので、基本的に質問事項は原稿とまでいわないのですが、予め作文はしておくため、それを読み返しつつ、開会を待ちます。なお、私が質問を考えているなんとなくのプロセスは以下のツイートの通りです。

・議事運営について

 開会の10時の直前に役員の方が前方ひな壇に登壇され開会します。
 特徴的だったのは、報告事項の箇所です。多くの会社でナレーションによるPPTで説明がなされますが、PR TIMESでもそのような運営でした。しかし、対処すべき課題は、社長自らの口で説明をなさる事が多い中で、この部分もナレーションでの解説でした。また、報告事項→対処すべき課題という流れで終わる所、敢えて連結財務諸表の解説だけ最後に切り出されていました。通常、報告事項の中で連結財務諸表の説明もなされるのですが、財務諸表だけ切り出されての説明は珍しかったですね。
 個人的には連結財務諸表の部分はあまり違和感を感じなかったのですが、対処すべき課題の箇所は、特に今回は大変大事な説明になる所ですし、社長自身の言葉でご説明でもよかったのかなと感じました。合理主義で見れば別に誰が語るかより、語る内容が大事だしナレーションの方が聞き取りやすい等の背景もあるのでしょうが、そういった合理性を排除しても、社長自身の言葉でプレゼン(表現)される方が、こういう種のメッセージは伝わりやすいのかなとも思います。そういう背景もあり、多くの会社で敢えてナレーションを途中で切って、社長自身の言葉で説明しているのでしょうしね。

 それからオンライン視聴の方への配慮として事前質問が投稿可能でした。実際には会場参加された方が投じたものでした(直前までリアル参加できるか不透明だったため、事前質問に投稿された模様)。この質問を取り上げた上で会場の質問ということでしたので、そういう意味では事前に投稿しておいた方が、会社側でも十分に準備ができるでしょうから、今後はこういうものも活用した方がいいなと思いました。
 なお、この事前質問フォームでの質問は前述の方1人が投じられたとのことでしたが、逆をいえば他の方からの事前投稿はなかった模様です。そして、Tayoriのフォームが上手く機能していたかも含めて、もう少し盛り上がるといいなとも感じました。ただ、会場では積極的に質問が多くの株主の方から投げかけられていたので、そういう意味で株主の質という面では高いなと感じました。

 それから会場での質問についてですが、「時間の許す限り答えていきたい」という意向が冒頭に社長からも示されていました。もちろん、時間は有限ですし、長々と付き合って下さるとも思っていませんが、質疑の時間は1時間程度と他の会社の質疑の時間と比べてもさほど充実したというものではなく、むしろ、株主総会と説明会のパートを分けて2部構成で対応されている会社さんからみれば総量としてはやや時間が足りなかった印象もあります。もちろん、限られた中で十分真摯に対応頂いたと思うので、取り立てて不満が残ったというわけでもないのですけどね。ただ、やはり株主を大事にしようと思って下さっている、シェアホルダーであるという認識を抱いて下さっている中にあっては、株主総会とQA会のような2部構成にしてもう少し対話を拡充してもよいのかなとも思いました。もちろん、今回は直近で個人投資家向け説明を開催され、十分に時間を取って下さった背景を考えると十分にリソースを傾けて下さっているという認識なのですけどね。そして、何より、我々株主がもっと思考を深めて、建設的な意見や時に叱咤激励するような質疑、あるいは敢えて議論を呼ぶテーマで対峙するような議論があってもいいと思うのですが、いずれにしても、会社側がもっと株主の声を聞きたいと思って下さるように我々株主層も底上げをしないといけないのだなと思いました(もちろん、私自身も含めてのことです)。
 それから、基本的に質問へのご答弁はすべて山口社長がなされていました。これは良し悪しですし、スタイルの問題もありますが、もう少し他の役員の方からのご発言が欲しかったというのが正直な印象です。当然、質問する側ももっと様々な方にご発言を促せるような質問の仕方をすればよかったですし、私自身もそのように原稿を書いていたので、肝心の部分を飛ばしてしまい機を逸してしまいました。例えば後述しますが、鎌田さんへの質問がある程度出ていたのですが、やはり鎌田さんのキャラクターもとても魅力ですし、様々なお考えがあると思うので、ぜひ披露して頂きたかったです。そして人材育成の関連でも組織作りの側面では三島さんのお考えも伺ってみたかったです。もちろん、会社としての回答であるため、誰が語るかということは必ずしも重要ではないのかもしれませんが、ボードメンバーと株主との間でのリレーション構築の場でもあるわけですので、そういう面に配慮して我々も質問する時に促し、関係性を深められるようにありたいなと思いました。

 最後に新任役員の紹介があったのはよかったのですが、ご本人が一言も発せず、前に出てこられて一礼するだけというシンプルなものでした。これももう少し丁寧な対応があってもいいのではないかと感じました。もちろん、形式的な経歴や選任理由は招集通知にも記載されていますし、それに目は通してきているわけですが、ソニーという大企業でどういう経験をなされ、とりわけPR TIMESでどういう貢献をされようとされているか豊富などは直接ご本人から伺いたかったですよね。あの一礼だけであれば、写真の投影だけでもさほど温度感は変わりません。もっと人となりの一片だけでも温度を感じられ、何なら来年の総会で一年を振り返って新たな風として参画された中での目線の意見なども豊富を踏まえて質問すればより有機的だと思うわけです。そういう関係性の始まりという中にあり、一礼だけで済ませてしまうのはもったいないですし、何なら他社では、本人の抱負が溢れ過ぎてまきが入る位の事もありますし、それくらいウエットな感じの方が伝わるもの、期待を寄せる気持ち、そして本人が今日ここに立ってよかった感が増すのではないかと思うのです。

・閉会後について

 閉会後、何人かの方からお声がけを頂きました。なんで私がまるのんであるとバレてしまうのか、自分としては謎なのですよね。通常、株主総会等の投資イベントに出席する際には、事前にはそういう行動を示すような事はツイッターでも言及していないはずなんですよね。まぁ私のようなしがないおじさんにお声がけを頂けることは大変ありがたいことなのですけどね。
 そして、リンクスリサーチの小野さんがいらっしゃっていたようでしたが、閉会後、ご挨拶しようと思っていたら、機を逸してしまいました。とはいえ、これまでツイッターでやり取りさせてもらった方はもちろん、はじめましての方ともリアルで繋がりを持てた事はありがたいことでした。株主オフ会が出来たらいいですね♪

3.質疑の内容

 それでは、質疑応答の内容について記載をしていきたいと思います。重ねて申し上げますが、ここに記載する内容は全て実際のやり取りを受けてとったメモを更に私の主観に基づき脚色を加えているため、実際のやり取り内容から悪意なく誤認している可能性がありますのでご参考程度に留めて頂ければと思います。また、私が質問した内容には冒頭に★印をつけています。
 なお、質問に当たっては、ライブ中継をされていたこともあり、出席番号のみでよいということになっていました。この辺りは配慮がある運営だと感じます。

事前Q 米国進出の見通し
 米国では大手3社で寡占化した市場があり、2億程度の投資で構造を大きく変えるには相当ハードルが高いと思うが、一方で山口社長は大いなるチャンスがあるともご説明されている。具体的にどのような取り組みを行うことで、異文化でもある米国で確度高く成功される手応えのある道筋を見据えておられるのか。
A
 確実性が高いかというとそんなに高いとは思っていない。あくまで期待収益が大きいという点でチャンスがあると思っており、確度はそこまで高くなくとも、成功した時に享受できるものの大きさが米国市場という規模を考えた時に計り知れない大きさであるということ。資本力の大きい3社が長年イノベーションのジレンマの中で確立してきた経緯であると思っており、これはかつて日本でもあったものでもあり、そこから、メディア、生活者、発信者全てがプレスリリースの価値を享受して豊かになったという世界を創ってきた。それが米国でもできるのではないかという発想である。
 PR TIMESは豊かで平和であったからこそ育んでこられた経緯があり、そういう魅力的なマーケットだからこそ、多くの外資企業が日本へ投資をしてくれているわけで、そういう外資の企業がPR TIMESを日本で使ってくれて、そこで価値を見出してくれている。このような日本で育ててくれた外資企業の方々に対して、今後は彼らの本邦で恩返しをするという発想を抱いているいるともいえる。中々現状の開示の中では株主の方に全てを理解してもらう事は難しい事と承知しているが、今後の進捗を適宜開示していくし、それをPR TIMESを通して示していきたいと思うので、IRとして説明したいと思うので見守り応援頂きたい。
■考察
 米国進出の件は、M&Aを駆使するのか、オーガニックで進出していくのかも含めて様々な憶測はありますし、その進め方についても見方は色々あります。少なくても今のマーケットがこの不確実性の中で株価を割引している事は事実だと思います。しかし、一方で会社側はこの高いハードルに対して、粛々と準備を進めている様子は伝わってきますし、チャレンジしたいということですので、私はもう見守ることを決意しています。
 いや、素人目ながらにあれ大丈夫?これは?とか気になる所は色々ありますし、実際にネット関連での海外進出が成功確率が低いと言われている事も事実ですからね。しかし、我々投資家がその細部の手腕を知った所で何かに安心できるとういうこともなく、またその進め方にボードメンバーに対して有効な提言が出来ることもまたごく限られるわけで、今は見守るしかできないと考えています。新しい進捗を、例えば株主総会だからリップサービスでちょっと理解促進のために説明しますね、という発想も微塵もないでしょう(そしてそうあるべきではありません)。
 むしろ、確実性は高くない(正確には低い)とまで仰ってしまっていますからね(笑)。この辺りは山口さんの人となりですよね、と思いました。普通、株主総会で、新たなチャレンジに対しては大きな事を言いたくなるものです。よく孫さんがホラ吹きばかりしていたとかありますよね。経営者ってどこかそういうものだと思っていましたが、山口社長はその逆をいっていますからね。ただ、確度が高くないという姿勢は決して消極的なものではなく、むしろ静かな野心を抱いておられ、しかし冷静にメッセージを発信されているのだろうなと思います。
 米国の件は何を聞いても現時点でこれ以上の回答はなかなか難しいでしょうし、何か「答え」があるわけではないので、根掘り葉掘り伺ったとしても、結局わからないってことになるでしょうしね。

事前Q 国内プレスリリースの伸長余地
 中期目標では国内で15万社の利用で月間1.1億PVを目指すとあるが、国内の市場規模として、アッパーでどの程度を見込んでいるのか。単価上昇等を踏まえてもらってもよいので、利用社数だったり売上の上限の水準感をお示し頂きたい。
A
 日本国内には現状で約400万社あるといわれているが、今後のシュリンクを見た時には300万社程度まで減る見込みが出てきている。ただ、今の400万社においてDX等を活用しているのはせいぜい数十万社と言われている中で、今後の時代の流れの中で、その比率があがっていくことで、仮に会社数が漸減したとしても我々のマーケット余地というのはまだ広がるものと捉えている。
 また、我々は利用企業数も大事ではあるが、同時にプレスリリースの機会をより創造していくことで、報道する側の方々へ向けたものが重要になってくるとも思っている。従ってプレスリリースを創る機会を拡大していく事が意味を成してくるとも思っている。
 そして、我々は売上‐原価が利益という考えではない。あくまで付加価値がどれだけ作れたかという点での利益であるし、その利益を使って投資を行う事で付加価値を高めていけるというスパイラルであるとも思っている。その意味からも売上の最大化という部分へのアプローチで志向はしていかないし、それをやるなら、様々な売上を創る機会をつくっていけばいいわけであるが、付加価値を蔑ろにすると結局は利益が作れない、ひいては投資ができないというじり貧組織になってしまうともいえる。従って利益をきちんと出せるような、つまり付加価値を発揮できるような指標をもってモニタリングしていきたいと考えている。
■考察
 この辺りの答弁は流れるようにお話をされるので、多くの定量目標的な質問を受ける事も多く、こういう語り方をされているのだろうと思います。売上の最大化というより、売上と利益のバランスが重要ということは有報でも語られているので、恐らく質問の「最大売上」という所が引っかかってしまったんだと思います。ただ、聞き方によっては売上は求めないとも聞こえてしまいますが、実際にはバランスだという事かと思います。注視している経営目標指標は有報において「中長期的な視点で、事業成長と利益向上の両方を目指しており、売上高、営業利益、及び売上高成長率と営業利益率のバランスを注視」とあります。ですから別に売上そのものやその成長率を軽視しているというわけではなく、当然利益の源泉は売上でもあるわけですが、そこの目線も持ちつつも付加価値を向上させることにより生まれる利益が大切だということであるし、売上の「最大化」は企図していないということなのでしょうね。あくまでバランスですよ、って事なのだろうと思います。

★Q 組織拡大における人材手当について
 今後の成長のため人材獲得・育成・定着が課題であり、今期も人員自体は増えているかと思う。この体制拡大においては、成長志向に沿った量的な拡大と、ミッションへの共感/カルチャーの醸成を重んじた質的側面の双方をバランスさせながら、オーナーシップマインドを持った人材手当が必要と思うがその対策や見通しを教えて欲しい。また、社内では「野心的目標」を勧奨し、パフォーマンスの最大化を企図されているが、人材の多様性が進んでいく中で、モチベーション発揮のスタイルも様々と思うが、評価制度を含めこの辺りで人材の多様性への対応として工夫されている事や今後の課題感があれば教えて欲しい。
A
 画一的な人材を求めているわけではない。ライフイベントも様々である中で、性別、国籍、価値観も様々な中ではそれぞれの個々の事情に寄り添う寛容さを持ち合わせているべきだと考えている。そのため、正社員と派遣社員というだけでなく、副業や勤務形態に制限があるような方も活躍できる限定的な社員という位置づけも用意している。正社員と同じ条件で働けない事情があっても、限られたリソース枠の中で活躍頂けるフィールドを用意していく事が大事だと思っている。個性ある人材がPR TIMESの事業に関わる事を大事にしている。
 カルチャーという面では、様々な捉われ方があると思うが、再現性であると思っている。多くの人がPR TIMESに関わることで同じような志向をもち価値観が自然と似通ってくる。当然全てがいいことではないかもしれない。日本の多くではヒエラルキーはあるが、合議制であるといわれる。しかしPR TIMESでは上下のヒエラルキーを出来るだけ作らず、多くの人が重要な意思決定に関わり、周囲はそれに意見をしたり貢献をしていくという文化を創っていきたい。これは日本の伝統的な構造とは必ずしも一致しないが、こういう文化を創っていきたいと日々活動をしていればそのような文化は醸成されると思っている。いずれにしても、組織作りもこのような地道な行動が少しずつ芽生えてくるものなので、事業展開と同様に時間をかけてじっくり取り組んでいきたい。
■考察
 人材の在り方に多様性を考慮した設計になっている事は改めてよく理解できました。そしてあとはその多様性の違いから生まれてくる個々人のパフォーマンス量の差異をチームとしてどのように補完し合っていけるかというのも重要になってきそうだなとも思います。組織の統一ということだけをとってみたら、時間軸でも価値観でも合致している方が手っ取り早い側面は間違いなくあると思いますが、PR TIMESのためにも多様性に寛容である事は有意義だという事です。ベンチャースピリットが高く結果を出していくために個の力の発揮が結局のところ重要になってくるという現実と、その中でも多様性から生まれる幅出しのようなイメージのものが勝っていくということを、チームで補完し合える関係性という所が次の捉えるべきテーマになるような気がします。大企業のようにマネジャーがいて、余りあるリソースがあると多様性が生む歪みを上手く吸収しながらもそこから生まれる厚みのようなものが比較的形成しやすいと思いますが、PR TIMESのようにまだ少数精鋭のような組織下で多様性を真に発揮するために制度としてだけではなく、実際に各個人がそれぞれの個性を活かして納得感をもってチーム力を発揮するために邁進していただきたいなと感じました。
 それから重要な意思決定に多くの人が実際に携われるようにしていく、周囲はそれをサポートしていくという構造は素敵ですね。これも見方によっては縦割り文化のようなものを生みやすいと思うのですが、そういう方向性にいかず、うまく個と組織の在り方の最適解のようなものが見出せるといいなと思います。タレントマネジメントを機能させて、それが会社側の文化と個々人の個性(多様性)とのバランスの中で今後もよき組織を創って頂きたいなと思いました。

★Q (社外)取締役のガバナンス発揮について
 取締役会では、予算承認プロセスで様々な議論があったなど、その様子からも有益な議論の場としてのガバナンスが保たれているものと信じている。とりわけ、違った視点から当社に有益な助言や牽制を頂ける社外取締役の方には期待をしているのだが、社外取締役の方の取締役会の出席率が低いのはどういう理由によるものなのか。また、社外取締役の報酬が1人当たりで平均400万円程度であり、上場企業の平均は600万円台ともいわれるなかでやや低い水準である気もする。理想としては、より付加価値の高い活動でのガバナンス向上を期待したいと思うが現状認識を教えて欲しい。
A
 出席率が低いケースがあった。これは単純にスケジュール調整ミスがあった。今後はこのような事がないように対応したい。また社外取締役の役割は大きく経営の監督とアドバイスであると思うが、PR TIMESではあくまで取締役会では経営の監督にフォーカスをして対応頂いている。アドバイザリーはその時々で然るべき外部の人材にも頼りながら物事の検討を深め、進めて、その上で、取締役会では監督目線で社外取締役からのご意見を重要に捉えるようにしている。
 また、そもそも社外取締役になろうという方は報酬体系で可否を決めているというのは少数派であると思っている。責任の重さとの天秤が合わないから。だけど、少数株主の利益を守るためにわざわざ対応して下さっていると思っている。従って今すぐに報酬を上げて役割を与えていくというより、彼らの一種利他的な言動に助けてもらいつつ、然るべき体系を模索していくということは継続検討していきたいとは考えている。 
■考察
 出席率が低いという事への牽制はきちんと利かせるべきだと思い、今回重箱の隅のような話ではありますが指摘をしました。多忙の中で様々な事情で1回欠席くらいはたまに目にしますし、昨今のコロナ禍の情勢下ではやむ得ない事情もありますからね。ただ、率直にそういう言い訳をせずにスケジュール調整ミスという事を認められていました。これは該当する鎌田さんだけが議決権の賛成率も低かったことからも、相応に懸念は伝わったものと思います。
 本来、鎌田さんと山口さんの関係性からみても、今回の予算承認プロセスからみても、鎌田さんはきちんとPR TIMESの事を考えて行動をしてくれているものと私は認識をしています。だからこそ、こういう見え方をしてしまうのは残念だなと思うわけです。取締役会を改めて調整して参加できるようにするという事は出来たとも思いますし、これが一度だけでなく何度かあったとなると危機感を含めた体制面での課題はありますからね。
 そして期待する役割はわかりやすい仕切りではあるなと思います。アドバイザリーはきちんと個々にアドバイスしていくれる専門家に意見を求めて、合意形成プロセスや最終意思決定における牽制という点での監督にフォーカスを当てているということですからね。確かに個々の案件の細かな専門性発揮という中ではもちろん士業の方のように杓子定規な見解を述べる事をアドバイスとして説明する事も出来ると思いますが、同社では士業メンバーではなく、経営者経験を重視しているということからも、その目線での最終的な監督機能を期待しているというのはわかりやすいと思います。

Q 社外取締役選任の基準について
 鎌田さんはオープンハウスで要職にあり大変お忙しい方だと思う。だからこそ、出席率が低い状態となっていると推察している。このような状態である中で、社外取締役の方に何を求めておられるのか、また出席されるのが難しい方なのであれば、選任をしないという考え方もあると思う。どのような基準で選任をされ期待をされているのかお伺いしたい。
A
 もちろん就任時には予め先々の予定までスケジュールを行い、出席が叶うような体制を構築してきた。しかしながら前期においてはそのスケジュールの調整に齟齬が生じてしまい、このような結果となってしまっている。当然、鎌田さんは要職にあられ大変お忙しい方だとも承知している。しかし、だからこそ経営の監督という観点でサポートを頂きたいとも思っている。
 社外取締役の役割というのは様々な意見があるが、上場企業の経営経験があり、今でも一線で経営をされている方が、当社の経営を監督してもらうことに意味がありかけがえのない価値ある事だと思っている。であるから、選任の基準としてはとにかく経営経験を有している事が最も重要であると考えている。確かに士業や学者の方が社外取締役に就かれているケースも承知しているが、当社ではそういう方の目線は監査としての役割として参画してもらうものだと捉えている。
 鎌田さんにあっては、上場企業の経営者であることはもちろん、上場をさせてきた経験や社長としての経験も有しておられるので、そういう方に監督を頂けることは大変ありがたい事だと考えている。
■考察
 他の方からもやはり出席率に関する言及がありましたね。スケジュール調整等で不手際があったということで、事務方のミスなのでしょうが、その現場の方に責任転嫁するようなトーンではない説明だったのは良かったと思います。ただ、やはり重要なスケジュール調整となるため、今後の再発防止はぜひきちんと対応頂いた方がよいですし、こういう部分でせっかくの鎌田さんのような人材が誤解を受けることはハッピーではないですからね。
 社外取締役には多くの企業が士業の方や、なんならいわゆる社外取締役屋さんみたいな方にお願いしているケースも散見されます。あくまで形式的に選任しておくという姿勢ですね。そういう部分からみれば意思のある人選であると思いますし、今回の答弁を伺っても、明確に経営経験に基づく経営監督機能を求めている姿が鮮明だったのは良いと思います。いわゆる形式論ではないということですからね。
 それから、私は敢えて「鎌田さん」というバイネームは出さずに質問したのですが、この方はバイネームで指摘をされたわけですし、ここは鎌田さん自身からも何らかの発言があった方がよかったかなと思いました。欠席となってしまった際に、自らがPR TIMESの監督を担われている中でどういう想いをもたれたのか、あるいは代替行動としてどういう対応をなされたのか、とか色々お話出来ることもあったと思うのです。山口社長からこのような期待を受けておられる中で、どうやってその期待に応えていくのか、補足的に発言があってもよいように思いました。確かに質問は選任基準とかの話ではありましたが、当人でもあり、色々想いのある方だと思いますからね。

Q 海外での経験・ノウハウの充足感について
 これから米国進出を図ろうとしている中で、スキルマトリックス上でのグローバルで戦い抜いた経験という所では社外取締役の鈴木さんと新任の社外取締役の小澤さんの2人のみとなっている。そして、このお二方の経歴をみたときに、このスキルが十分なのかなと不安になる部分もあるがノウハウの充足感という観点での見解を伺いたい。
A
 スキルマトリックそのものの意義を否定するものではないが、あくまで開示を求められているから開示しているという色彩がある事も事実。この枠を埋めていくために人選をするというのは本末転倒でもっと複合的にスキルやノウハウは入り組んでいるものであると考えている。またそもそも海外展開における実績を踏まえた有識者にアドバイスを求める機会があるとしたら、それは取締役としてではなく、アドバイザリー業務として的確な方に求めていけばいいことであるとも思っている。この限られた取締役メンバーをマトリックスに敢えて照らすとこういう形になるものの、実際には外部からの様々な知見を得ながら進めていく事になる。限りある知見を得ていくために形式に捉われずに必要なアドバイスを受けながら進めていくという事が大事で、スキルマトリックスの充足のために奔走するというのは見誤るとも思う。
 鈴木さんはサッカーの日本代表として、世界で戦ってきた中でのグローバルな目線と、自身でビジネス創業され経営されている手腕から、監督的な位置を期待しているし、経営者人材が集まることを是とする中で、自らがそういう経験を持たれていることで良い風をもたらせてくれるということもあり、グローバルの経験だけで価値が決まるわけではなく、もっと複層的なもので捉えるべきではないかと思っている。小澤さんにおいても、グローバルでの経験はもとより、社内のダイバシティ―、インクルージョン等の観点でも知見を持たれており、まだまだ課題が多い中で、PR TIMESへの監督機能の
発揮に加えてこのような課題への助言という側面でも期待をしている。
■考察
 スキルマトリックスで表現できるのは単一面での網羅的なものであるが、各自に求めるもの、バックグラウンドはもっと有機的だし複層的なものであるということですね。確かにグローバルというもののフラグのON/OFFだけでは表現できない広域の活躍を期待されているというのは良い事だと思います。仰っている趣旨もとても共感をします。
 一方で質問者さんは、米国進出という高いハードルに向かっていく中で、重要な意思決定を行う取締役会での議論としてこの部分のバックグランドが必ずしも岩盤ではないという点での懸念を示されたのだとも思います。確かに意思決定に向けた議論は何も取締役会だけで行われるものではなく、むしろ現場で揉んで高めていくプロセスがとても重要ですし、そのプロセスの中で、その時々にもっとも合致した方にアドバイザリーとして参画してもらい、その議論の質を高めていく事は重要だと思います。ただ、そこで揉まれてきた内容を最終的に意思決定を行うのはやはり取締役会であるわけで、そこでの意思決定が一種の既定路線化してしまい形式的なものとならないのかという点は気になる所です。優秀なアドバイザリーの下で積まれてきたものはきっと最適解に近いものとなるとは思うのですが、それを取締役会で意思決定する際に、そのアドバイザリーの立場の視線に依存とまでいわないまでも実質的に頼ってしまうような形になるとすると、取締役会での意思決定が形式的なものになってしまう事も懸念される気がします。そういう目線でみると、やはり取締役の中で当然グローバルに特化する必要はないと思いますし、多角的なバックグラウンドやナレッジへの期待は答弁の通り素晴らしいと思うのですが、米国へ本気で臨むという事であればアドバイザリーのアサインは当然のこととして、取締役会でのグローバル知見の担保は一つ大きな要素になるのではないかとは感じます。スキルマトリックスに〇がいくつあるとか表面的なことではなくてですね。

Q 米国進出の具体的な展望
 先ほども米国進出の件で、恩返しがしたいという趣旨の説明があったが、これが恩返しではなく仇で返すようなことにならないかという心配もしてします。2億円という金額で何が出来るのかという所も見通せず、もう少し具体的な展望や材料をお示し頂けないか。
A
 2億円というのはあくまでPLへの影響額である。それだけではなかなか判断がつかない乏しい情報発信であると認識しているが、元々この期に進出を計画している事は示してきた中で、現時点で出せる情報に限りがあること、そしてそういった新しい情報はPR TIMESを使って発信をしたいというポリシーもあり現状のわかりづらさになっていると思っている。
 米国進出に当たり今後の進捗などは適宜PR TIMESで平等に周知を図っていきたいと思っているので、ぜひ株主の方もPR TIMESを通してその推移を見守って頂きたい。
 今後のグローバルを見据えた時には、日本国内は人口減少が進む中で生産性向上がより注目されてくることになる。労働に対する付加価値を高める事を先行していかねばならない中で、世界を見渡すと人口は増加をしている。だからこそ、グローバルで生産性向上を図れるツールを日本発でPR TIMESが提供できることはとても意味のある事だと捉えている。
 株主目線でいえば、海外の株主もいるが多くが日本の株主の方である。持続的な成長は会社の利益、ひいては株主の利益になる。我々もIPO以後時価総額を高めてきたが、本当にマーケットで飛躍する会社というのは何十倍、何百倍と卓越してくる企業である。そういう企業になっていくためには、持続的成長を遂げていくためにマーケットを開拓し、グローバルに出ることは不可避であると考えている。
 かつで日系企業が海外に進出をしても厳しいという声があった中でも大成してきた日本の先輩企業に続けるように邁進していきたい。
■考察
 米国案件については具体的な話は何も出てきません(笑)。再三指摘している通り、会社側は新たな情報はPR TIMESを介してアナウンスしていくとしています。そして情報不足ではないか、けしからんっ!っていっても、そのことを自認されているため、そういった議論も平行線になります。なので究極的なことをいえば、この件は手掛かりがない中で信じて待つか、懸念やその姿勢に失望したと離れるかの二択しかないような気がします。
 ただ、PL費用としての2億という事はいつも強調されているので、実際には資産計上される形を企図していると思われます。そして費用2億ということから、地道に現地法人を設立して、様々な立ち上げコストを払ってみたいな進め方ではなく、提携や買収といった進め方になるのではないかなと推測しています。まぁいずれにしてもこんなの想像して予測が出来たとしても何も判断がつかないところですからね。一方、日本国内のマクロの話とグローバルへ出ていくモチベーションみたいな話がありましたね。元々、PR TIMESを日本の国内だけのインフラにするというだけでなく世界を志向しているということは、経営目標のひとつに「世界で有数のインターネットサービスにする」と掲げられていますからね。遅かれ早かれ、前に進まないといけなかったわけですからね。

Q 離職率の状況
 先日の個人投資家向け説明会では、当社の離職率が低いというお話があったかと思うがそれをどのように分析されているか教えて欲しい。
A
 離職率に関しては、説明会でどう伝わったか定かではないのだが、離職率が低いということない。そもそも離職といっても様々なケースがある中で、次のキャリアへ旅立つ人を応援したいというスタンスも当然ある。ただ、やはりそうはいってもPR TIMESでその能力を活かして欲しいとは思っている。つまり、離職を0にするというのは中々現実的ではない。
 大切なことは、能力発揮の機会を広げていく事、会社として様々な成長余地があるフィールドを用意出来る事、すなわち機会の創出が大切であると思っている。その点にまだ至らなさがあるからこそ、異なるフィールドに出ていかれてしまうケースがあるのも事実であるため、そういう様々な方が活躍できるフィールドをより多面的に創っていく事、報酬面はもとよりオーナシップを抱けるような組織作りをしていきたい。
 この会場には任意で社員株主や元社員株主の方もおられる。そういったステークホルダーであるところのシェアホルダを増やしていきたい。
■考察
 私も離職率が低位という話あったかなと思って自分の記事を読み返してみたのですが、そういう記載はありませんでした。私、瞬間寝て意識飛んでなんですかね(笑)。まぁいずれにせよそういう実情ではないということでした。
 PR TIMESに集っている社員さんはいわゆる意識が高い人ばかりですから、当然そういうマインドを持った方の集団であれば、自らのキャリアというものにも意欲的な方が多いわけです。そういう中で、どうしても全員が最大限自分の志向のあるキャリア展望を目指せるかというとそういうわけでもないでしょう。そうなれば一定程度離職が生じるのは止む得ないのではないかと思います。ただ、経営サイドとして、そういうフィールドを増やし、野心的な活動が出来る環境を創っていく事が重要という認識の下、そういうマネジメントをされていればまずはいいのかなと思います。私の投資先企業でもあるHameeさん当たりも同じようなマインドを持った社員の方がが集まっているので、外に出ていくという事も多いようですが、一方で外に出て経験を積んで出戻ってくるという方もおられるようです。ですからPR TIMESさんでも敢えて外に出て行かれる方も、そこで経験を更に積んで戻って来てくれることが組織の活性化のためにもその方のためにもよいのかもしれません。そういう寛容な組織であって欲しいなと思いますね。むしろ外での活躍を時には残念と思いつつも後押しする中で、出戻りをウェルカムするような施策とかがあるといいですね。まぁまだ顔の見える小さな会社ですし、そういう制度がなくても、機会があれば適宜そういう対応もしているのかもしれませんけどね。
 Hameeでの出戻りやカルチャーの醸成の中でそういう再集結みたいな流れを創ったというような記事をここで参考に2本あげておきます。

Q 決算書類における重要観点
 山口社長は決算書を読まれるのが好きだということだが、決算書において財務諸表のどの部分を重要だと捉えられているか。またROEや利益率など様々な指標がある中で、どういう指標を目指されているか。また様々な企業の決算を見ている中で、この会社の決算書がいいなと思う会社があれば教えて頂きたい。
A
 財務諸表として重要視している点としては、開示しているものはすべてということになる。売上高と営業損益のバランスという点が上場以後から一貫して大事にしている。それは規律を持った投資を行っていくためでもある。一方で、個人的にはBSが重要でその中でも現金以外の資産科目の変動、利益に対しての比率推移を注目している。BSは経営者の志向が色濃く出てくると思っている。
■考察
 山口社長が上場企業の様々な決算書を読まれているというのは有名なお話なのですが、そういう関連での質問でした。ちょっと答えにくそうでしたかね…。個社については当然の事ながらスルーされましたね(笑)。何ならグッドパッチ推しとかでもよかったと思いますけどね~。
 それはそうと、まぁ重要視しているものと言われればそれは開示したものとなるし、その中で指標は?と言われれば有報にそのまま書いてありますからね。そういうお答えになるんだろうと思います。

有報より抜粋

 私が質問するとしたら、有報に記載のある経営指標はいずれもPL要素ですが、元来BSに経営の色が出るとも言われる中で資本効率、あるいはROICのような投資効率を図るような指標を複合的に設定されるようなことは考えないのかという感じでしょうか。
 加えていえばPR TIMESにおける利益は付加価値の産物であるし、それは投資原資でもあるという捉え方をされています。そしてそこにはミッションの実現に歩んでいくという大前提があるわけです。そうなった時にPL要素のみを経営指標として掲げている点についての意図や真意とかはもう少し聞いてみたいなとは思うんですよね。
 今回の山口社長の回答の中でも、あくまで個人的関心事としてBSの中での資産科目の推移を重要視されているというお話がありましたが、では現状のBSをみて、その目指す自身の色合いは滲んでいるように思われるか、あるいはどういう部分が自身の経営らしさか、なんて客観視をして頂くような質問も面白いのではないかなと思いました。

Q 米国での成功イメージについて
 米国での取り組みで成功した際に、どういう成功イメージを持たれているか。どんな取り組みをするのか、どんな会社を作っていきたいと思っているかなど展望を聞かせて欲しい。
A
 中国への展開での反省を受けて、数十年という時間軸では外の国からインターネットを活かした事業というもので参画するのは難しいということがわかった。一方でそれ以外の地域ではすべての国にチャンスがあると思っているし、そこに歩みを進める事が我々に課せられた事項であるとも思っている。日本を中心にというより、国境や言語の壁なく、ボーダレスでPR TIMESの機能が広報だけでなくビジネスパーソン全体が利用するインフラサービスになるだけのポテンシャルがあると信じている。
 株主の方にとっては、売上や利益、成長率というものが関心事であるかもしれないが、他のステークホルダーの方からするとこのサービスのロイヤリティが高まる事が大事であったりする。生活者目線で自分が知りたい情報がインプット出来るという意味でのありがたさや、事業活動をされる際にPRという機能を実現出来る仕組みとしてのエンゲージメントのようなものを創っていける事が重要だと思っている。
 また時にメディア側と相反するようなことがあるかもしれない。ただ、PR TIMESはいわゆる一次情報の発信が主であるのに対して、メディアの付加価値はそこに主観を入れていくことでもあり、双方が連携することで相反するようなことはないと思っている。
■考察
 流石に米国の事から離れた答弁になっていましたね(笑)。もう米国について語れることがないといった所だと思います。元々いくらこの件でドアノックしても今はまだ閉ざされているということですからね。ただ、米国の質問に対して、一見一般論のようなあり方を解説下さっていますが、これがヒントなのかもしれません。
 米国では寡占状態にあるプレスリリースのマーケット。長年のやり方が染みついて、いわゆるプレスリリースも報道向けに特化した事実を淡々と発信するにとどまるような無機的なもののようです。
 そんな中で、生活者やメディア側のそれぞれが、ロイヤリティを抱けるような仕組みを構想していくということこそ、破壊的イノベーションの取っ掛かりとして捉えられているのではないかなと思いまして。先日の個人投資家説明会での説明のトーンと合わせて考えてみると、よりそれが鮮明になった感じもします。ブレークスルーは「人の心を揺さぶる時代」へと繋がる情熱なのではないかと。粛々と垂れ流していくASISに対して、もっと生活者がワクワクする、行動者がキラキラする、そしてそれを繋げるメディアの付加価値が見直される世界にTOBEをみているとしたら、やはりそれがどううまくいくのかというのはまだ未知数なのですが、楽しい感じになってきますね。
 米国の文化としてストーリーを大切にするという傾向も追い風な気がします。日本人以上に情熱的な感情を持ち、様々な文化圏が集う中でストーリーのあるPRというものが潜在力があるとしたら…この辺りがひとつのヒントを与えてくれていそうな気がします。まぁいずれにせよ、色々な事を検討されているでしょうし、今は何を聞いてもオープンにはなりませんので、待つだけですね(笑)。

Q 米国進出のアプローチについて
 先輩企業として日系企業が欧米に進出をしていくというのは悲願でもある。多くの先輩企業が頑張っている中で、進め方もM&Aを主体にやっていく企業もあれば、まずは社内体制をグローバル化志向させていく会社さんもある。PR TIMESさんもこの費用感触からいって、まずはPR TIMES USやUKといったサイトが立ち上がってスモールスタートしていくようなイメージなのかなとも思うがアプローチ方法について伺いたい。
A
 海外展開の具体的な話は、PR TIMESで最初にアナウンスしていきたいため、ここでは具体的なアプローチに関するコメントは差し控えたい。一方で多くの先輩企業が海外に出ていく姿を我々もみている。そしてもっと以前では日本の製造業が国内で卓越した製造技術でもって、部品や世界の誰しもが知る製造物を世界に生み出していく、場合によっては現地工場を創り展開していくような成功をみてきた。我々は自らのインフラをそういうイメージで世界へ波及させていきたいという志向をもっている。まだPR TIMESはIPO期の企業には一定の認知度があるが、それ以外の会社、まして世界レベルでみれば全く認知されていない。そういう認知を拡げていくことから、かつての製造業が世界で成功したように我々も展開していきたいと考えている。
■考察
 再び米国についてですね。私自身も興味はあるのですが、これだけ関心が高いということの証左でもありますね。元々日本の製造業というものつくりが世界で成功したわけですが、今度は敢えて後塵を拝すネットでこれを実現しようとしているわけです。インフラとしてそれが通用するのかは当然未知数ですが、そこにチャレンジしたいということですね。

Q 新オフィス移転における定性効果について
 アメリカ大使館横に移転するなんて素敵だと思う。この新オフィスに移転してきたことで定性的な部分で効果を感じられている点があれば教えて頂きたい。
A
 まだ移転後まもないため、まだ慣れてないという所からようやくフリースペースの利用等が徐々に立ち上がってきているという所で、具体的な成果などを感じるのはもう少し時間がかかるのではないかと思う。導線にも工夫があり、少しずつコミュニケーションが随所で生まれるような形となった点は良かったと思っている。サテライトオフィスとの分断もなくなったのでそういう面でもよかったと思っている。
■考察
 先日の個人投資家説明会でもこの新オフィスの件は話題になっていましたね。コミュニケーションが増えたとか会議室が利用しやすくなったといったまぁ当たり前の効果という部分がまずは大きい気がしますね。
 私が興味があるのは、このオフィス移転で、敢えて購買集中を避け、様々な顧客企業から什器等を調達したわけですが、そういう対応に対して、逆に顧客からはどういう声があったのかという辺りも興味があります。特段何の反応もないということなのか、あるいはそういう部分まで含めた配慮に対してなんらかの反応があったのかとかですね。
 あとはこの手の質問は社員さんに聞くとまた違った目線の回答があるような気もしますね。ランチ事情とか(笑)。

Q 海外進出のその後の展望
 米国の進出のその先で欧州への展開やアジア圏での再チャレンジなどその先の見通しがあれば教えて欲しい。
A
 グローバル展開の段階としては、米国から欧州へ拡げていくパターンと、南米に拡げてオセアニアルートというパターンが大きくあるものと認識している。米国の成功の後にどちらの定石パターンに乗るかは見定める必要があると思うが、今はまずは米国に集中したい。
■考察
 米国のその先までもが質問に出るのは面白いですね。素直に考えると米国→欧州という流れな気もしますが、そもそも米国での成功とその基盤確立までに相応の年月がかかると思うため、超長期の話になりますね。しかし、世界で有数になるという経営目標の目線では的確な質問でもあると思いました。

★Q 中計の利益推移イメージについて
 中期経営目標は定性面・定量面で様々な取り組みが掲げられており期待をしている。そんな中で、定量目標は現時点では不確実性の中であくまで目標として設定されているものであるし、各種施策や更にその先を見据えた定性面の活動をより重んじているものだと捉えている。そんな中で、マーケットとのコミュニケーション不足への反省から次回の決算説明会では各年度の営利推移イメージを示すとされているが、各年度の定量面の情報のコミットメントを強化することが、不確実性へのチャレンジや長期目線での定性部分の強化といった点が相対的に弱まり近視眼的となってしまう懸念はないのか。
A
 元々25年の利益目標のみを開示したのは、23-24年に一定の自由度をもって対応をしていく期間として猶予を頂きたいという想いがあった事は事実。元来、社内で試行錯誤を重ねる期間として5年という期間を見てきた中で、その途中途中の推移を示すということは、その活動を縛ってしまうかもしれないという指摘はその通りであるとも思っていた。しかし、一方でその姿勢は会社の理念に反することではないかとも感じるようになった。私たちの理念の中にはOne’s commitment, Public firstというものがあり、広く社会のために尽くしていくという姿勢と、目の前の目標を着実にこなしていくという双方の価値観を大切にしているわけである。そんな中で、足元の減益予想で厳しい評価をされているという事は承知しているが、この中計目標が22年にのみならず23-24年も投資を重ねて25年さえよければいいという見立手をされている疑念があり、それは目の前の目標を着実にこなしていくという価値観とは馴染まない受け止められ方をしているかもしれないと考えた。
 当社の立場でみれば自由度を持つという事であっても、株式市場が25年までは株式を長く保有するというマインドを削ぐようなメッセージになっているとしたらその点は是正が必要だろうとも思っている。大切にしている株主の立場に立った時に、我々の自由度というだけに固執するのではなく、バランスをみての発信の重要性を再認識した結果としてこのような対応をとることとした。
■考察
 ここはだいぶ突っ込んだ回答がありましたね。実質的に23-24年まで掘り続けることはないよ、という表明でもあった気がします(いや勝手にそう私が感じただけですけどね)。むしろ個人的には本当に機会があるのなら、もっと掘ってもらってもいいと思っていますけどね。投資家も様々ですが、25年に目標が設定されているから、それまではスルーでいいや、ってほど、単純でもないと私は信じたいのですが、まぁ今の値付けをみるとそういう部分も少なからずあるのかもしれません。
 長期株主に配慮をもって理念に基づき開示されることにした意思決定は尊重したいと思いますが、やはり認められていたように自由度が損なわれる側面は少なからずあるとも思います。特に社内から見た時に25年に向けて全社一丸で付加価値を高めていくぞ、といった中で、単年度の数値のキャップがはめこまれていることが、なにかしらの障壁になってしまわないといいなと思います。マーケットからの期待値を上げ過ぎないようにという言動も大切にされている山口社長ですから、この説明においても過度に期待を持たせるような物言いはされないと思いますが、それでも数値を出すとそれが独り歩きする事もまた事実です。コミュニケーションの難しさを感じるわけですが、うまくバランスをさせながら運営されていく事を期待したいですね。
 ちなみに再度質問に当たり、時間も迫っているので付議事項に関わることなどでどうしてもこの場で質問したい方は、という事でかなりハードルが挙げられた所で、空気を読まず再度質問しました。もちろん付議事項に関連しなかったのですが、7月にこの説明をなさるというところで、この点を伺う機会がここしかなかったという言い訳を最後につけておきます(笑)。

★Q 経営トップ層への広報PRの意義の啓蒙について
 コロナ禍を通して、PR TIMESカレッジを開催され、多くの既存顧客様の広報パーソンにエンゲージメントを与えられた事は大変誇りに思うし、これが巡り巡ってPR TIMESの益々の強さにも寄与されていくものと信じている。一方で広報パーソンのプレゼンス向上が課題であるとも考えている。このイベントを通して広報パーソンのマインドを高め、それぞれに熱意をもって横の繋がりも持ちながら活動されていく事を後押しするきっかけになれるものと感じるが、各企業や団体において彼らのプレゼンスがより高まっていく事も重要であると思う。そのためによりトップレイヤーに広報PRの重要性を発信する機会等も求められると思うが、より高い視座に立った時に広報パーソンのプレゼンス向上への課題認識や対応について見解を伺いたい。
A
 PR TIMESカレッジはコロナ禍という情勢を踏まえ、1社1人という制約の下で開催したが、中には広報PRの現場の方ではなく、トップレイヤーの方にもご参加頂けるケースがあった。つまり広報の重要性は経営に十分浸透しているケースも多く、特にスタートアップなど新興系の企業ではこの重要性はより高く受け止められているものと考えている。経営者自身が活用しているというケースも出てきており、驚く程この数年で認知が拡がったと考えている。一方で指摘のような認知がまだ大企業等では進んでいない点もあるかもしれない。その点は課題と認識し、中長期的にそういう啓蒙に寄り添えるような施策(広報PRの現場の方だけでなく、トップレイヤーを含めた全体が顧客だという認識のもとで)を検討していきたい。
■考察
 トップレイヤーへの施策も併せてきちんと目線をもっていらっしゃるのはいい事だなと思いました。PR TIMESカレッジに参加された方の声をみていると、一様に学びになったとか、横の繋がりが持てて励みになるといったポジティブな反応が支配的でした。そして広報PRという会社の中では事業部からは離れた特殊な環境下で、やりたい施策がなかなか意に反して進められない的な悩みもあるのかなと思うのです。理想と現実のギャップのようなものですね。回答にもあった通りスタートアップやIPO間際のような企業にとっては広報PRが如何に効果的に施策を打てるかが関心事である事も多く、経営者自らが発信に使われるといったこともありそうですからね。ただ、このレイヤーはPR TIMESの認知度からしても利用頻度からしても比較的占有率が高くなっている所なわけです。
 大企業ももちろんですが、例えば地方の展開を強化するといった時に、地方の中小企業のような方にも使ってもらおうと思った時、広報PRを任されている担当者が、このようなイベントを通して如何に高いモチベーションを抱いたとしても、その会社の社内でプレゼンスがないと、なかなか思う施策を遂行できないといったジレンマに陥ることがありそうだなと思うわけです。ですから、現場の担当者のレイヤーに如何にPR TIMESが効果的でいいプラットフォームであるかを伝わる機会はこれまで通り普及活動を続けるとして、今後は広報PRへの正しい理解がないようなトップレイヤーにもその効果を啓蒙できるような機会が提供できることも大事になってくるのではないかなと思います。
 これまでの成長で取り込まれてきた企業さんと、これから地方を中心に広げようとしている企業層とでは、良くも悪くも性質の違うものだと思います。ですから、こういった質問をしました。
 まぁもう一つはPR TIMESカレッジという大きなイベントを担当された方も社内に多くおられる中で、自分自身が携われたものがこういう場で言及され話題に上がる事で、彼らの活動の報いになればいいなと思ったのもあります。本当はAprilDreamやJooto/Tayoriについても言及したかったのですけどね。この総会ではこの辺りへの言及は一切なかったことは、これらの従事する社員の立場の方からするとやや残念に思われたりしないかが私は心配になりました。決して関心がないわけではなく、限られた時間の中でどうしても話題にすることができませんでした。せめてひとつだけでも直近のイベントについて取り上げてみました。このまま終わると、具体的な個々のサービスやイベントで社員の方が様々なに活動なされていた件で一つも言及なく閉会してしまう事になるのだけは避けたかったのです。これもごり押しKYな質問をした言い訳です(笑)。

Q 海外展開でのスキル発揮について
 社長から期待されている点は説明があったが、鈴木社外取締役本人から海外展開でのスキル発揮について伺いたい。
A
 私自身がサッカー日本代表選手であったことは、企業価値向上には直接関連することではないと思っている。経験の部分でいえば日の丸を背負って戦ってきたマインドや、そこから経営をしてみた時にスポーツでの経験と通ずるチャレンジしていく重要性みたいな所を大切にしていく事で貢献できるのではないかと考えている。また自分自身がベンチャー企業を創業経営する中で、答えのないものに向かっていく姿勢のようなものもPR TIMESさんと共に知恵を絞っていければと考えている。経営スキル的には足りない部分があるかもしれないが、一緒に荒波に向かって取り組んでいける姿勢をみせていきたい。
■考察
 鈴木さんはダンディーでしたね。こういう言い方をするとまた差別だとか面倒なことになりそうですが、女性の株主の方は特に注目だと思うんですよね(笑)。冗談はさておき、マインド面でのサポートという色彩が強いように感じました。グローバル展開に当たり、実務面ではどういう監督やアドバイスが活きてくるのかはあまりよく理解はできませんでした。また鈴木さんが経営されているAuB(オーブ)社も特段グローバル展開をしているわけでもないですからね。もちろん、メンタル面やなにかしらの表から見えない魅力があっての選任でありご活躍もされているのだと思いますが、そういう姿の一端がもう少し伝わってくるといいなとも思いました。具体的に取締役会でどういう議論をしたか、もっといえば例えば異を唱えたエピソードとか、もしくは取締役会でなくても社員との対話の中で、どういうマインドを醸成を行ってきたか、など具体的な実績をいくつか披露頂くと、より人としての魅力や温度が伝わってくるのかなと感じました。というか、今これを書いている私は何目線何だって感じで失礼しちゃってますね、すみません。。。

4.さいごに

 社員株主や元社員株主の方も参加されていて、暗黙のルールで彼らは質問することはありませんでしたが、むしろこういう場で彼らの目線で質問が出るのは面白いことだなとも思います。特に元社員の立場からの質問は興味深いですよね。
 そういう意味ではやはり株主総会こそ、総会と対話の機会の2部制にしてもっとざっくばらんな交流を図る機会があってもいいように感じました。総会は本当に付議に係る内容で早々に厳粛に執り行い、その上で対話を行うという形ですね。そのためにも我々投資家がより理解を深めて、対話をしたいと思ってもらえる存在になる事が大事ですね。
 コロナ前ではよく軽食を伴う懇親会ののようなものも各社行われていました。しかし今ではそういう機会も減りました。私は軽食などいらないので、交流の時間があることはいいなと思っていたので、そういう状況が再来するといいなと思っています。
 近しい事業をしているソーシャルワイヤーでは総会後後にエンドレスに質問を受ける会があったりもしました。もちろん限りある時間リソースですからね。

 それから、懇親という意味では社員の皆さんとの交流というのももう少し図れるとよかったなとも思います。一部の社員の方とは少しだけお話をすることが出来ましたが、我々にとっても社員の皆さんにとってもこういう場で期待を伝える事やそれを実感してもらえる機会があるというのはいいことかもしれません。せっかく執務室の横でやっているんですしね。

 後ろに取締役会が迫っているなど、運営上の制約等もあると思うのですが来年に向けてよりよい機会になる事を期待したいと思います。

 頑張れ、PR TIMES!

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