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ステップ(東証プライム/9795) 株主総会レポート 2024/12/14
東証プライム上場のステップの株主総会に出席しました。当記事で株主総会の様子をご紹介したいと思います。なお、記載内容は、私の主観で脚色した記載ですので、意図せず齟齬等が混在している可能性がありますので、ご参考程度にご笑覧頂ければと思います。また、当記事は同会社の株式の売買を推奨するものではございません。
今年の株主総会は全体的にライトな内容でしたので、レポートも短文で終えられると思います。
1.参考記事
同社に関連した過去の記事をご紹介しておきます。ここでは、前回の株主総会のレポートを再掲しておきます。
2.さいしょに
株主総会の流れを、手元の時計でのざっくりしたものではありますが列挙していきたいと思います。
13:00 開会 (遠藤社長)
13:02 議決権数確認 (新井取締役)
13:03 監査報告 (木村常勤監査役)
13:04 決算報告 (今野経理部長)
13:12 現状報告<小中学部・キッズ> (遠藤社長)
13:30 現状報告<高校部> (大黒取締役)
13:45 全体総括・自己採点 (龍井会長)
14:00 各役員から一言(役員一同から一言ずつ)
14:15 質疑応答(事前質問)
14:25 質疑応答(会場質問)
15:00 議案上程・議案に係る質疑応答
15:03 閉会
~ 休憩 ~
15:20 株主懇親会
16:15 株主懇親会 終了
議決権行使の状況については以下の通りです(手書きメモなので数値が違っていたらすみません)。
◇2024年(今回)
議決権を有する株主数 6,240人/15,336人 (40.7%)
議決権数 121,706個/157,746個 (77.2%)
◇2023年
議決権を有する株主数 5,600人/13,522人 (41.4%)
議決権数 130,322個/162,933個 (80.0%)
◇2022年
議決権を有する株主数 2,770人/6,870人 (40.3%)
議決権数 134,342個/165,863個 (81.0%)
◇2021年
議決権を有する株主数 2,564人 / 6,133人 (41.8%)
議決権数 139,789個 / 165,008個 (84.7%)
◇2020年
議決権を有する株主数 2,002人 / 5,547人 (36.1%)
議決権数 142,790個 / 165,021個(86.5%)
今年の招集通知の封筒に、議決権行使のお願いと注書きがあったのですが、株主数も増えてきた中で議決権行使率が年々漸減してきた動きは継続していますね。遂に80%を切ってしまいましたね。まぁ、これでも一般的には高位な行使率なのですが、元々9割近い行使率がありましたからね。株主構成も少しずつ変化しているということなのでしょうかね。
今年の会場も昨年に続きステップ本部のある隣の商工会議所での開催です。今年も150席くらいに対して8割は埋まっていたでしょうか。相変わらず盛況ですね。土曜日開催ということもあって今年もお子様連れの株主の方が散見されましたね。また昨年に続き、午後からの開催ということでこれはとてもいいと思います。土曜日の朝一だと辛いですからね。
今年も厳かに役員が演台に登壇、みたいな感じではなく、そもそも役員の方が最初から会場で席に案内したり、株主の方と懇談していたりします。普通の会社ではありえないことです。普通は開会ぎりぎりまで控え室に籠られて、厳かに入室されるのが常ですからね。ニコニコ談笑されながら、前方の席につかれます。もちろん目線も株主と同じ高さです。
それから、先に申し上げてしまいますが、今回の閉会後の株主懇親会はコロナ禍前の状況に回帰し、茶菓子を用意頂き立食形式で、まさに懇親できる機会に戻して頂けました。昨年のレポートでもそろそろあの頃のように戻るといいな、と書いていたので、そういう想いが通じてよかったなと思いました。やはりペットボトルのお茶とお菓子でワイワイお話しするのは本当に貴重なことであり、濃淡様々な話を率直に交わせるというのは今後の目線を共有させてもらうという意味からも貴重なものでした。私も色々なメッセージを託したつもりです。どこまで受け取ってもらえたかは自信がありませんが(笑)。でも手応えは色々ありました。まさに懇親ができたという充足感で会場を後にすることができました。準備などにご尽力いただいたスタッフの方々にこの場を借りて御礼申し上げます。また貴重なお時間を割いてくださった役員の方々にも感謝ですね。
3.報告事項について
報告事項は、冒頭で決算の内容についての説明を経理部長の今野さんがなされ、その後、所掌毎に役員の方が状況を説明してくださいます。今年も大きな変化はなく進行されましたね。全体としてはやや時間が短縮されましたかね。その分、そのあと、役員一同からの一言挨拶が追加されました。これは今年から新たな取り組みですね。私はいつも質問の仕込みの際にできるだけ多くの方にマイクを回したいという事を企図しているのですが、こうやって、予め一言づずつでも一年を振り返って、役員の方にお話しを頂くというのはいいですね。今後もぜひ続けて頂きたいです。
まず決算説明ですが、決算説明資料に沿っての説明です。総会用にスライドも見やすく工夫されていますが、基本的に新しい材料があるものではなく、淡々と実績を踏まえた説明をテンポよく解説頂けていたかと思います。生徒数などの主要指数の状況はもちろんですが、全体財務諸表も順調に推移ており特段大きな話題はありませんからね。
・小中学部+キッズ
小中学部の説明は今年もキッズを含めて遠藤社長が説明されていました。冒頭はもう毎年恒例となっているオリコンの顧客満足度7年連続の3冠の話題ですね。その後は生徒数推移の好調さの解説へと話が進みます。夏期講習での募集の状況も堅調推移していることや開校10年超の校舎の伸長が続き、そのうち28スクールもの校舎で足元の状況が開校後過去最高を更新中ということで、地元にずっと根差して信頼の下で運営されている証左ですね。
また、その後、県内シェア率の話などに話が及び現状の公立中学生のシェアはおおむね11%強という所の中で、横浜や川崎はまだまだ低位(各10%、6%程度とのことです)であり、この地域でのシェア率向上余地がまだある中で、向う10年かけてゆっくり急ぐ方針の下で、出校を進めて最終的に県内シェアを15%程度にまでもっていきたいという方針を示されていました。このシェア率の話は昨年もありましたが、より具体的な数値が出てきた印象ですね。そしてこれを聞くと、県外の余地は?みたいな話は当分議論する必要がないという事がよくわかります。この辺りはよりわかりやすく決算説明資料にも反映していくといいなと思います。
このほか、新しい取り組みとしてZoomを使った授業参観を行ったということで、教室の様子の動画と合わせて紹介頂きました、保護者からも塾での子供の様子が分かって大変好評のようで、これはいい取り組みだなと思いました。先生と生徒の間の信頼関係が何より大事という中での関係性でしたが、保護者の納得感とか共有を図るという事による副次的な効果が大きいのではないかなと感じました。
キッズの話では、今春開校する湘南台教室の説明会などの感触も大変よいようで(元々ステップの創業地に近い開校でブランドもより高い地域ですからね)、大きな手応えがあるようですね。新校舎の様子も写真などで共有下さっていて、ダンスなど多コンテンツに対応していそうで良い感じでした。湘南、辻堂に続き茅ヶ崎の黒字化も果たしてきた中で、湘南台も立ち上がりが良さげで期待できそうですね。一方で綱島の話は出てこず、横浜市下という難しい地域での出校となっているため、ここはもう少し時間がかかるということでしょうかね。
来期に向けてはすでに決算でも開示済であるように出校を抑制させ、人材の更なる強化を含めた組織体制強化期間に入っていくという事です。加えてシステムの全面更改(生徒さんが使う各種システムの完全スマホ対応)を控えているようで、これは前期のPLにも費用先行ヒットします。なので上期の増益率が抑制されます。株価びっくりないといいですね(笑)。
・高校部
次に高校部の説明は大黒先生です。冒頭では高3生が特に好調という話があり、非ステップOB生の比率が高位になってきており、ステップを求める生徒さんがより広範になっている、つまり地域での存在感が増しているという趣旨の説明だったと思います。校舎数が15校舎でここ数年ずっと新校舎を出していないものの、増床などの対応で実質的には2校舎程度の新規積み上げ位の成果をあげているということで、これは効率化という側面でもよいですね。
そして大学入試の動向についての解説もありました。いわゆる一般選抜試験(普通に試験を受けて合否を出す)比率が年々下がっているのは周知の事実ですが、それがとりわけ私立大学で顕著になっているということをデータで解説しながら解説がありました。そしてステップ生の志向性と重ねた分析は納得感があるものでした。ここで細かい説明を記録するのは控えますが、ステップ生にとって一般選抜をメインに考えて受験する層とその志望校の同比率のマッピングをしながら、今取るべきステップの教務の方向性のようなことが繋がった説明で腹に落ちる内容だったと思います。
もちろん推薦方式などを含めた対応もステップでも対応しているようなので、今後よりミックスされてくることがスタンダードになってくる中で、うまく対処されていく事が求められますからね。実際東洋大学のいわゆる年内入試の取り組みなどは今後多くの大学に影響が波及してくるでしょうからね。
ちなみに私立大学における一般選別受験での定員率について会場でクイズがありました。一般選抜の定員は総定員のうちどの程度の比率かということで、①7割以上、②6割程度、③5割未満の三択です。
実は私は答えを③と知っていたのですが、大黒先生から私、当てられてしまいました。まるで授業を受けているような感じで・・・(笑)。
で、ここで知識のままに③と答えてしまっては、その後の説明が盛り上がらないじゃないですか。とはいえ①と答えるのもいかにも仕込みっぽいと思って、やはり場を盛り上げるためには②だなと瞬時に機転を利かせて②と答えました。
知識を答えるというよりも、その後の流れも意識しなければならない大変難しいクイズでしたね(笑)。もちろん、その後、そうですよね、そう思いますよねーって大黒先生が③の答えを披露して、えーそうなの!?という雰囲気醸成に最大限協力できたことは、まさに空気を読む株主として仕事が出来てよかったと思いました。この後、律儀に懇親会で大黒先生が私の所へ急に当ててしまってすみませんとお声がけ頂いたのですが、この種明かしをして大いに笑って話をさせて頂きました。愉快ですよね~
・自己採点/全体総括
最後は龍井会長のお話です。小中学部、キッズ、高校部とそれぞれを自己採点していくというものです。これも恒例になりましたね。ある意味所掌の役員の方などにおいては、オリコンの満足度調査の採点より手厳しく怖いのではないですかね(笑)。
先に結論書いておくと以下のような点数でした。(その点数そのものにどこまで意味があるかは置いておいて)
小中学部 76→84→88点
高校部 88→90→90点
キッズ 80→80→82点
小中学部では、横浜・川崎戦略の状況、多摩高のTOP奪取を射程に捉えてきたこと、生徒数伸長の状況などがポジティブである一方で、横浜翠嵐高校の実績などで独走態勢には道半ば、人材の質的な側面への対応など課題も指摘されていました。
高校部では、地域でのブランド化がより高まっている点、高度人材の採用面の進捗、収益構造の更なる好転など良い面をあげつつ、人材不足への更なる対応を含めた出校対応(未だ入会待ち生徒が多くそこへの対応)が課題とされていました。また具体的な出校候補地にも言及され、物件情報待ってます、と笑いを誘っていました。(ここでは地域名の記載は伏せておきます)
キッズは、黒字化達成の一方で、その黒字化までのスパンが長いという点への対応の課題感を示されていましたね。加えて標準化による横展開余地がまだ効率的に進まない点ですね。尖ったコンテンツを志向すればするほど、相反するわけですから、そのはざまでどうやってコンテンツをラインナップしていけるのかは大きな課題ですね。まだまだ時間をかけていく必要があると思いますが、このネットワーク化が本格始動してくると、まだまだステップの成長余地が拡がっていくわけですから楽しみですよね。
また昨年の総会でも個人的には大きなネタでした、2030年以降を見据えた体制作りの点です。ここは昨年の総会でまだ言語化できるまで整理が追い付かないということを吐露されていましたが、今年もまだ秘密(つまりまだ考えを体系的に言語化できるまでには至っていない)ということでした。それだけ悩ましいところということなのでしょう。もちろん、ここを紐解いて、その課題感や方向感の感触は共有しておきたいですよね。この話を伺って、質問事項を差し替えて、これを質問するというものを決めたわけです。
(実はこの後の質疑の時間で挙手していたものの、ある事情があって、私は議長に指名してもらえず質疑できなかったのですけどね・・・(笑))
最後に人材面においては処遇改善をしっかりしてきているということもアピールされていました。業界としてはTOPになっており、魅力的な水準になったなと感じました。
4.役員一同挨拶
冒頭でも記載しましたが、この後、まだお話されていない役員の方から一言ずつ挨拶をするというイベント?が追加されました。各位が述べられたことを本来であれば一字一句正確に記録するべきなんでしょうが、私の記憶力が曖昧であることもあり、私の受け止めとして表現します。もし各位の述べられた趣旨と異なる点が介在していたとしたら申し訳ありません。先に謝っておきます。。。
・木島社外取締役
20年前に学習塾を経営していて、こういう塾が作りたいなという理想を描いていたが、紆余曲折あって、今まさにこういう形で理想の塾に携わっているという事に感慨深い想いを抱いている。理想がこういう形で実現していることが不思議だが、株主や役員の方やステップにかかわる方々に感謝したい。
・仲野社外取締役
本業では、他県での塾経営やフリースクールの経営や私塾関連の業界団体の理事などを歴任してきている。そんな中、ステップの経営に参画し、その内情を知れば知るほどステップの強さの神髄を見せられている日々。入塾待ちが多くあって、このご時世中々ないという状況がすべてを表していると認識している。様々な形でステップを支えてくれている方々に敬意を抱く一年であった。
・相澤社外取締役
今年度は1年目の取締役であり、上智大学の教育社会学の教員である。教員の立場で各地域の教育格差や受験進学率の状況などを研究する立場において、一企業の経営に参画することへの賛否がある事も事実。しかしそういう声を認識しつつも、ステップという会社にかかわることで、こんなにも素晴らしい環境があるのかと嬉しい驚きであった。今後も正統派の塾として運営していけるよう取り組んでいきたい。
・五十里社外監査役
税理士であり藤沢の税務署所長でもありそういうご縁から招聘頂いた経緯。これまでかかわる中で、オープンな会社であると感じている。他社の株主総会と近距離でオープンに運営している会社は稀有だし、取締役会においてもこの雰囲気でしっかりいうべきことは言いながらよい空気で運営できている。今後も専門領域である税や経理面でしっかり対応していけるように努めていきたい。
・阿部社外監査役
弁護士で今年1年目の役員であったが、印象としては温かい会社であると感じた。就任前はこの株主総会もどこか堅いものだという認識でいたが、ここまで温かな空気で運営されていることにびっくりしている。株主も従業員も規模も増えている中でもこの温かさを保ち、さらに質も向上させていくということは素晴らしいこと。
・新井取締役
管理部門の責任者として労務管理やコンプライアンス遵守の観点での対応を行ってきた。新スクール開設や既存校舎の更改などの対応を行ってきた。今後も様々な需要に対応していきたい。
・森本取締役
ステップHPに掲載されている合格者の声はなかなかみられないと思う。高校生たちは忙しく生活する中で、目標に向けて頑張っている。その姿を後押しするために進路指導力を向上させていく事を役割と認識し、合格実績にもこだわり頑張っていきたい。
・松浦取締役
小中学部の時間割の統括などを通して全体管理を司っている。時間割構成は生徒や教師双方によい循環を作ることができる。人材育成にも強化してきており、一歩ずつ進化していけるよう頑張っていきたい。
・木村常勤監査役
昨年の総会で信任を受け着任してきた。各スクールで監査をしていると教師からの声は生徒、授業、保護者に対する声が多く、まさに現場主義だという事を実感した。
5.質疑応答(事前投稿)
ここでは事前にWebから投稿された質問についてメモを残していきます。繰り返しになりますが、ここでのメモはあくまで私の個人の心証等で脚色していますし、誤認している可能性も多々あるため、参考程度に留めて頂ければと思います。私が投じた事前質問には★印をつけております。
特に記載のないものは遠藤社長が答弁されたものです。
Q Hi-STEPの今後の出校について
横浜線沿線への出校計画について
A
当面は考えていない。現状横浜線沿線は横浜と相模原。長期的には候補地もあるものの、現時点で具体的な検討はない。(※具体的地名の言及がありましたが記載は控えます)
■考察
個別具体的な話ですね(笑)。出校してもらいたいという要望に近い形でしょうかね。
Q 県内主義について
県内のみに注力される方針とのことだが、少子高齢化においてはいずれ業績面でもピークアウトしてしまうのではないか。どういう目線感を持たれているか。
A
小中学部は10年程度をかけて開校予定がある。高校部についてもいくつか予定があるし、キッズはまだ開校が始まったばかり。いずれもまだまだ県内で余地があり、まずはここをきちんとやっていく事が重要と認識している。その後、出校が一巡したのちには、各校舎の質的な強化を深めていく事になると認識しているが、様々な可能性を熟慮していきたい。
■考察
県外になぜでないのか、という文脈の質問はいつも多いですが、少なくても10年はまだ県内に大きなポテンシャルが残されているということですよね。むしろノウハウの薄い県外に出るとなるとその方がリスクでもありますからね。
Q M&Aへの挑戦
キャッシュリッチな状況もあり、川崎戦略などを進められる一方でM&A戦略を成長戦略の一つとして期待したい。
A
人材力勝負なので、M&Aによって人材が取れるのであれば積極的に対応したい。これまでもそういったお声を頂くこともあったが、地理的な制約などもあってなかなかご縁がないというのも実情。優秀な人材を含めて県下でご縁があればぜひ積極的に取り組んでいきたい。
■考察
県外の会社を買うということは管理面でも煩雑になりますから控えた方がいいと思いますが、人材獲得という文脈で現状の枠組みを変えずにアドオン出来る要素があるならいいですよね。なかなかそういう都合の良い話はないでしょうけどね・・・。
Q 値上げ方針について
人件費や光熱費高騰において昨年も値上げせずだったが、今後の方針はどうか。
A
他塾でも値上げした塾も多くある中で、生徒数を減らしているという状況になっている。家庭において価格許容度がまだ高くないという推測の下、まだ値上げは調整範囲として、シェアを伸ばす機会にしていきたい。
■考察
この値上げ問題は不可避な議論ですが、今年も検討はしたものの見送られています。それだけ厳しい状況ということでもあります。家計調査でも校外学習費は厳しい状況にありますからね。とはいえ、やはり横浜、川崎地区の料金テーブルは早々に設定をした方がよいと思います。そのためにも翠嵐の独走が大事ですね。
Q 学校向け研修への参画について
小中学校への教務力向上研修などに参加する大手予備校などもあるが好評を博しているようだ。ステップでもこういう取り組みはしないのか。
A
学校での指導は学習指導以外にも生徒指導などの時間も多く、そもそもステップが志向するような教務力が求められているのかというと必ずしもそうではない。この辺りはすみわけになるのではないかと考えているため、現時点で予定はない。
■考察
まぁそれはそうですよね。大手予備校などがそういう活動をしているのは、実際に学校での教務力を向上させるというモチベーションではなく、広告宣伝のためですからね。流石プロの講師は違うなと生徒に実感させ、自塾というか予備校に来てもらうための活動です。ではステップが既にブランド化が十分達成されている中で、敢えて、学校に出張ってそういう活動をする必要性があるのかというところだと思います。もちろん、通塾機会に恵まれない生徒さんや学習進度に苦戦している方を救うという、一種の福祉的な側面という部分であればいいのかもしれませんが、それを民間一企業が善意だけでやるのは限度があると思いますね。
★Q 人材採用や定着の状況について
ここ数年をかけてyoutubeでの発信強化や抜本的な処遇改善などの施策を進めてこられた。当社にとって、人材確保は成長のために最重要経営課題と認識しているが、これらの施策によって、人材の採用、育成、定着処遇改善等の取り組みにどのような成果があったか。また、課題としてどのようなものが現状あり、今後の更なる強化策を打たれているか。
A
youtubeなどの発信によって、認知度が高まり、教える仕事がしたいという中途採用を中心としたご縁が多く生まれてきている。首都圏以外からも熱い応募者が増えている。他塾の主力メンバーとのご縁もあり、応募のレベルも着実に上がっている。また質の向上は十分成果が出ているので、今後は質を落とさず量を追っていきたい。今後は採用早期化の機運に遅れることなく、対応を加速させていきたい。
課題点としては、男性育児休暇取得も進んでいる中で、授業の質を落とさずに働き方改革の進展とのバランスを見ていく必要がある。オープンワークの中で士気の点数が高いという中で、この士気を落とさずに運営していくための体制作りというのが今後の課題。
■考察
採用問題は常に気に留めておく必要があります。質的には側面には一定の成果がある一方で量はまだまだというところですかね。まぁ常に生徒さんも待たれていて、人材確保はいくらでも進めたいという所だと思いますからね。教える仕事がしたいと応募があるというのは、なんとも複雑な気持ちになりますよね。要するに塾の先生という仕事をされているはずなのに、教えることが仕事ではない先生方が多くこの業界にはおられるということですからね。もちろん、具体的な塾名などは上げずに、上品にご回答をされていました(笑)。
課題のところはST化(学生を含めた講師の確保)の話もありますが、これはインターンの延長のような考え方からすると新卒採用にもよい効果があるような気がします。質を維持しながら人材の囲い込みにも繋げられるようになるといいなと思います。
★Q 減損損失について
前期において6百万強の減損損失を計上されている。主に建物に関しての売却可能性を考慮されているとのことだが、県西地域を中心に老朽化も進んでいる校舎もあろうかと思う。今後、減損損失が重なることで特別損失により収益が押し下げられるといったリスクはどのように見積もられているか。
A
県西地区においては、築20年を超える校舎も多い。今後少子化が進む地域では統廃合などによる影響もある。しかしながら、これらの校舎のほとんどが賃貸物件であり、自社物件であれば駅近校舎であり利便性の高い校舎でもあり地域拠点となっている校舎でもある。こういう状況で昨年、自社物件は立地が多い地域があり、●●校舎などでは簿価を上回って売却益を計上して言うような状況。大きな心配には及ばない。(※注釈:校舎名については明言がありましたらここでは明記せず)
■考察
6百万円の減損について取り上げたいというより、これを呼び水として県西地域を中心とした戦略、あるいは賃貸/自社をを踏まえた説明が聞けるといいなと思っていたのですが、想定していたより丁寧に回答頂けました。しかも過去の売買履歴の例示もあって、こういう丁寧な説明をきちんと用意してくれる当たりがステップらしいですよね。懇親会の場で所掌の新井さんにもそういう趣旨の感謝の意をきちんと伝えさせてもらい、そういう風にとらえてもらえると嬉しいという問答もありいいコミュニケーションのきっかけのひとつになりました。
ここまでは事前質問の取り扱いでした。
まずちょっと驚いたのは事前質問の多さです。昨年は2問でしたからね。そしてやはり個別具体的な質問も多い印象ですね。
これは今後提案してみようと思うのですが、汎用的な質問については、質問フォームに行く前にFAQのように参照できるものがあるといいなと思います。
上記のサイトをよりブラッシュアップすること、例えば値上げ方針、県外進出の考え、M&Aへの意欲といったあたりは、毎回出てくる質問にもなります。そして、こういった質問が良く寄せられていますと、同ページをFAQのような形でリンクを張っておいて見てもらったうえで、質問投稿してもらうといいのではないかなと思います。まぁそれを見ずにこの汎用質問があれば致し方ないのですけどね。(それでも回答はFAQに乗せている通りと思い切って割愛してしまうのも一案かもしれません)実際、よくあるお問い合わせとして実運用できている会社さんもありますからね。
6.質疑応答(会場質問)
ここからは会場の質問についてのメモです。再度申し上げておきますが、あくまで私の個人の心証等で脚色していますし、誤認している可能性も多々あるため、参考程度に留めて頂ければと思います。私が投じた質問には★印をつけておりますっていつもは書いているのですが、冒頭から挙手をしてましたが、ある事情により私は指名を受けられず質問なしです。。。
特に記載のないものは遠藤社長が答弁されたものです。
Q 監視体制について
他塾でかつてあった不祥事を受けてアンケートなどをしたとされているがキッズではなされていない(質問者さんは保護者の立場)。声を聴くようにした方がいいのでは。
A
キッズにおいても検討はしたものの、そもそも小学低学年ということもあり、意思表明などのシーンで難しさもあり現状対応していない。
■考察
キッズだと小学1年生とかにアンケートって実務的に難しいというのはその通りで、質問者さんが何を企図しているのかわかりませんが、それはスクールに直に直訴した方がいいと思いますし、そこでの対応が難しかったのであれば、本部などに問い合わせてみるのがいいと思うのですけどね。株主総会という場での質問としては個人的にはどうなんだろうと感じました。もちろん、何を発言するかは各自の自由なので否定するものではないのですけどね。
Q キッズでの値上げについて
庶民の塾を標ぼうしていることから見合わせているとのことだが、キッズで値上げを検討しないのか。
A
ここまでコンテンツも磨き、安心安全で対応できている学童というのは稀有な存在だと自負しているため、当然ながら値上げの余地はあると考えている。しかしながら、現状ではこのままいきたいと考えている。
■考察
コミュニケーションとしてちょっともったいないなと感じました。回答も余地はあるがこのままにしたいということで、どうも要領を得ない感じがしますね。値上げの余地があるという所は、これまでの議論でもコンセンサスになっている中で、なぜ値上げをしないという判断をしているのか、それがどこからくる制約や懸念からなのかを紐解いてみた方がいいのかなと感じます。私は単純に今の収益モデルを形成していくスタンダートの構築期において、安易に価格に手を入れることで解像度が下がるということと、保護者の方への心証イメージだと思っています。まだ歴史も浅い中で、拙速に値上げという対応をとることによる弊害が大きいという判断だと思うので、それであれば長期的なロードマップとかを共有できるような議論になるといいですよね。
Q 小学校の状況は
小中学生を丸めての説明だったが、小学生の状況はどうなのか。どういう指標となっているかなど詳細説明頂きたい。
A
目標として明確に定めていない。入会の低学年化が進んでいるのは事実っであるが、その状況がより色濃くなっており好調持続している。
■考察
この入会の低学年化の流れの話もよくある文脈ですね。中受の流れも作用しているような気がしますが、まぁ好調ということですからね。
Q 大学入試の合格実績について
一般選抜の比率が下がっているということであったが、合格実績はいわゆる講習などを受けただけで推薦合格をした生徒さんも入っているのか。どういう基準となっているか。
A
業界の自主基準に沿っている。推薦入試など一般選別以外で合格した生徒も、一定期間きちんとステップに通って学ばれた生徒さんの成果は適正に計上している。(大黒取締役)
■考察
基準に沿ってきちんと対応しているということですね。選抜方法によらず、通塾しているという実態に基づき計上されているということですね。答弁のメモではあえて明記していませんが、回答の際に、選抜と推薦の各人数に比率もすぐに数値を即答していたのですが、そっちの方に驚きました。
Q ステップはTOP校重視なのか
ステップはTOP校重視なのか。元から成績の良い生徒に入会してもらって合格実績ができているともいえる(それ自体は素晴らしいことなのだが)が、学力低位層への対応はどういう状況なのか。
A
ステップではあらゆる層の生徒さんに向き合っている。特に各スクールの教室長はもっとも基礎的な学力のクラス(つまり学力低位層ですね)をもつということになっている。通知表の2を撲滅するというような施策もあって、底上げを図るような施策も売っている。
(※低位という言葉は会社側で用いているものではなく、わかりやすく表現するために私が勝手に使っているものです)
■考察
どうしてもアピールのためには上位校実績が目立ちますから、そう映るのも無理はないですよね。この辺りもよく指摘される内容に思うので、よくある質問シリーズに入れておくといいと思いますね。
Q 財務健全性の理由
財務健全性が高く、流動比率など羨ましい水準である。なぜこのような状況を作れているのか。
A
流動比率が高いのは現金を多く保有しているため。災害時などを想定し、内部留保として100億を確保しておきたい意向によるもの。(今野)
1年間は給与や家賃を払える水準を意識したもの。人材が一番の財産であり、これを失うようなことにはしたくない。(遠藤社長)
■考察
質問の意図がわからなかったのですが、これだけキャッシュリッチの状況をある意味放置しているのでは、という問題意識からの質問だったんですかね。それであれば、回答にある通り、方針を理解してください、ということになるんですが、そもそもこれだけの高財務を築いてこられた背景を知りたかったのではないかなとも感じました。結局どっちなのかわかりませんし、仮に後者だとしても着実に無理をせず積み上げてきた成果です、としかいえないとも思いますけどね・・・。
Q 会社理念について
どういう会社理念を持たれているか。
A
子供たちの健全な成長を学習面で支え学力向上で貢献するという理念を持っている。
■考察
ずいぶんシンプルな回答でしたね(笑)
Q 中計策定について
中計策定はされていないのか。中長期目線での投資家を醸成する意味合いからも開示した方がよいのではないか。
A
作成はしているが、外部環境により大きく左右されてしまう部分もあり好評することに慎重になっている。長期課題への対処で経営成績はきちんとついてくるものと考えている。
■考察
中計を策定していると明言されたのは初めてではないですかね。外部環境によらずに安定しているともいえますが、でも確かに直近でも新たな経営方針についての開示をきっかけに下方修正をしてまで思い切った政策をするなどもしてますからね。律儀な会社ですから、なかなか緩いものを出したくないとうことなのでしょうね。私も手元でパラメータ調整したPL項目のシミュレーションはしていますが、まぁその通りになるかどうかなんてわかりませんしね(笑)
----- ここであと2名の質問者で打ち切りとしたい旨の宣告 ------
Q 木島さんからみて遠藤社長について
木島さんからみて遠藤社長はどうか。社長就任当時は不安もあったと思うが、その見立てをUPDATEして頂きたい。
A
とても満足している。素晴らしい。胆力がある。龍井さんの直下で学ぶことはものすごいプレッシャーのはずだが全くへこたれないのは鈍感力なのかもしれない。そして体力もある。社長業だけでなくブロック長、現場の先生もしている。生徒や保護者、教師に対してステークホルダーへの対応も上手にこなしている。龍井会長からも段階的に移譲されており順調に社長をされている。(木島社外取締役)
■考察
木島さんには必ずマイクを回さないといけないですからね。この質問者さんは毎年そう計らっておられますね。まぁ私も木島さんにマイクを回す準備はしていたのですけどね(笑)。遠藤社長がここまで褒めるのは珍しいですね。それだけうまくやられているということなのでしょうね。数年前、社長交代がリリースされたとき、ステップの大きなリスクの一つである世代交代がどうなっていくのかと心配になった(遠藤先生の問題ではなく、あくまで一般論としての世代交代リスクの話です)のですが、見事にステップイズムを継承されつつ、きちんと組織を引っ張っていってくれていますよね。龍井さんからの移譲の話についても興味深く聞きました。これはのちの懇親会ネタですね。
Q FC展開について
FC展開の余地はないのか。
A
考えてない。ステップの良さである教務力が担保できない。
■考察
そうですね。県外進出もそうですが、今とても余裕がないんじゃないですかね。横浜、川崎をどうしていくかだけで精一杯だと思います。それすらも一度止めて、人材体制の強化を優先させるくらいですからね。
----- 次の質問者を最後にする旨の宣告 ------
----- ここで子供の株主が挙手し、指名を受ける ------
Q 社長の夢はなんですか
社長の夢はなんですか。
A
10年後に神奈川県の生徒の15%をステップの生徒にすること
■考察
小さなお子様だったので、15%が多分理解できないかもしれませんが、丁寧に回答されていました。微笑ましい感じでしたね。そしてこの質問で私の質問機会は失われました(笑)。
----- ここで質疑終了アナウンス ------
----- そして古参株主から質問させろの声 ------
----- これに応える形で質疑を受ける ------
Q 横須賀地区への対応
人口減少地域に出校強化をしている競合がある中で、ステップは現状維持の校舎展開の中で、横須賀地域のTOP校の奪取の可能性はあるのか。
A
現状で当地域は4校舎のみで、他塾ではその3倍を展開されている。なかなか現状で明言はできないが、各種分析で競るくらいまでは持っていけると認識している。
■考察
横須賀高校の奪取可否がそんなに重要なものなのか私にはよくわかりませんが、敢えて締め切った後に、株主総会での質問として議事録に残しておきたかったということなんですかね・・・
Q 総合力問題への対応
一部の学校で日本史と世界史を融合させるような深く知識を持っていないと回答できない問題が出題され、その傾向は今後も続く可能性があるが、こういった問題への対応についてはどう対策されるのか。
A
国立の2次に限らず共通テストから融合的な問題がある事は認識している。我々は神奈川県下だけの運営で小回りが利くのですぐに対応していける。敏感に対応していけるように対策をとっている。(大黒取締役)
■考察
複合問題もそうですが、問題の傾向や分析は常にされていると思います。小回りが利くという表現がらしくていいなと思いました。いちいち説明はされていませんでしたが、実際にはつぶさに問題研究を行って教材との連携もすぐにとれるようなところまでを含めて小回りが利くということなんでしょうね。自社で印刷部門も持っているというのはそういう意味でも大きいですね。
7.さいごに
質疑では最後にまさかの小さなお子様の挙手により、私は質問できませんでした(笑)。まさか最後にお子様が挙手されるとは議長も想定していなかったようで、最後に(最初から挙手していた)私を指名しようとしてくださっていたのだと思いますが、まさかの事態になりましたね。
ですが、流石に小さなお子様が挙手して、それを見て見ぬふりはできないという判断ですよね。大人として当然の議長の采配だと思いますし、これでよかったと思っています。その後、古参株主さんが追加質問ゴリ押した時にはさすがにびっくりしましたけどね。まぁこれも含めてまたエンタメとして面白い出来事でした。
まず全体の所感としては、今年は穏やかな総会だったということです。前の前は株主還元とかが大きなテーマになって議論が盛り上がりました。昨年は新たな経営方針として株主還元には答えが出た一方で人材面を見据えた2030年以降の問題に大きな議論が及びました。それぞれの年にそれなりに大きなテーマがあって私自身も色々と考えさせられるものがあったのですが、今回はそういう大きな議論のようなものがなく、これは平和でいいと捉えるべきなのか、昨年の議論を受けての課題進捗がないから議論が盛り上がらなかったとみるべきなのかは正直よくわかりません。
ですが、少なくても足元の会社の状況は好調ですし、株価も堅調推移している状況で、波風もたたないということなのかもしれませんね。懇親会でもいくつかのテーマで各々の方に「メッセージ」を託したつもりです。懇親会では様々なやり取りをしました。
重要な示唆などもいくつかあったのですが、平場でやり取りされたものではなく、あくまで1on1で話した内容も多分にあるため、ここでつまびらかにすることはいたしません(別にインサイダーにあたるような機微な情報のやり取りがあったという事では全然なくて、ただ1on1で話した内容を逐一網羅的に書けばいいということではありませんので)。懇親会は全く時間が足りず、木島さん、遠藤社長、大黒さん、龍井さん、新井さんと一定のお時間お話をさせて頂きました。本当は他にもお話したかった方がいたのですが、タイムアップです。時間は有限なので仕方ないのですが、あともう少しでも時間があると嬉しかったですね。
できれば、懇親もしたいし、質問もしたいのですが、色々提言・提案したいこともあります。株主として応援団でありますから、もっと具体的な提案をしたいとか、そのために状況を確認したいなんて気持ちもあります。このあたりがあふれる気持ちと裏腹に、時間がいつも足りなくなってしまうのは残念ですし、それを伝えきれない自分の無能さもまた残念であります。
とはいえ、今回も年に一度の大きなイベントとして、大変有意義な時間を過ごす事が出来ました。関係者の皆様に御礼を申し上げたいです。
頑張れ、ステップ!
追伸
総会後は、その場に居合わせた株主の方々と食事をして帰りました。せっかく遠路藤沢まで来ているので、こういう交流も含めてありがたい機会ですね。特に私はコミュ障ということもあり、普段なかなかオフ会のような場に出向く勇気がないので、いい機会になります。お付き合いくださった株主の方にも御礼申し上げます。