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シュッピン(東証プライム/3179) 株主総会レポート 2023/6/22

 東証プライム上場のシュッピンの株主総会に出席しました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。ご指摘、コメント等ございましたら、ぜひ私のツイッターアカウントより頂ければ幸いです。


0.参考記事

 まず同社に関連する記事をご紹介しておきます。ここでは、直近決算の内容と昨年の株主総会レポートの記事を再掲しておきます。

1.基礎情報

 まずは、総会の全体の流れを整理しておきます。時間は手元での時間ですので、誤差があると思いますので、イメージで捉えて頂ければと思います。

  10:00 開会 (小野社長)
  10:01 業績下方修正のお詫び(小野社長)
  10:02 議決権数の確認(事務局)
     ■今年
      8,759人/21,373人(41.0%)
      147,265個/210,241個(70.0%)
     ■昨年
      4,874人/12,122人(40.2%)
      146,457個/209,705個(69.8%)
  10:03 監査報告(米田氏)
  10:04 報告事項・今後の取り組み施策(小野社長)
  10:10 対処すべき課題 (小野社長)
  10:15 議案上呈(小野社長)
  10:16 質疑応答
  11:07 決議
  11:08 閉会
     ~休憩~
  11:20 中計説明会
  11:45 質疑応答
  12:20 説明会終了

 まず今年は株主総会と中計説明会と2部に分けての運営でした。元々コロナ禍前までは、同社の株主総会は2部制で運営されておりましたので、ようやく通常モードに戻った形になります。昨年の株主総会や日常のIRさんとのコミュニケーションにおいて、こういった丁寧な対話機会を設けてもらえるよう、お願いしておりましたので、こういう姿勢に回帰して下さったことはありがたいですね。
 それから昨年より議事の進みが早く、20分程度前倒しで進み、しかし質疑の時間は昨年より若干多く50分程度の時間を充当して下さっています。ただ、この2部制というのは事前の案内がなかったこともあり、私も株主総会の方でも細かい質問を投じてしまった事もあり、来年以降は2部制である、という事を事前に共有頂けるといいですね(会社側にもお伝えしました)。

 また、株主数の増加が顕著です。昨年が1万2千人から今年は2万1千人と急増しています。これはなんでしょうね。株主優待コストも増加しそうですが、一方でこのチケットをきっかけにカメラ等を購入される方が増えれば、それはいい機会にはなるのかもしれません。ただ、額面近い金額で消耗品等を求めるという使われ方も多い気がしますし、ちょっとよくわかりませんね。クロス対策も含めて最低保有期間を設けるなどしてもよいのかもしれませんね。同社の時価総額相当で、B2Cであるという事を考慮してもちょっと株主数が多すぎる弊害もあるような気がしますからね。

 所用時間も昨年から1時間程延びました。2部制としたことによりコミュニケーションもより深まったためですね。この後の質問でも取り上げておりますが、より個人投資家向けのIRも充実してくるといいですね。

 参加者ですが、純粋な個人株主は20人程度でしょうか。昨年よりはだいぶ増えた印象です。また、後ろの席には金融機関系の方が数名いらしたでしょうか。全体でも25人程度ではないでしょうか。第二部の中計説明会では社外取締役及び監査役の方は退席しておりましたが、後席で一緒に参加されていましたね。

2.議事について

 議事については、特に目新しさはありませんが、同社の特徴はナレーションを用いず、全て小野社長がPPTを使ってプレゼンをされます。相変わらずの早口で、情熱が前面に出た感じですね。正直、内容把握という点だけでみればナレーションの方が入りはいい気がしますが、まぁ私はここはいつもスルーするところなので、むしろ小野社長がご自身でプレゼンされる事は大変歓迎している所です。
 そして説明もまずは前期の下方修正の要因ともなった時計の部分から入り、かなり丁寧に釈明をされていたように感じました。ロレックス(116500LNホワイト)の値段推移と共に、どの時点で業績予想を策定し、各地点でどういう意志決定を行ってきたのか、結果的に下方修正に至るまでのプロセスも丁寧な説明がありました。なんにせよ、結果責任が求められるわけではありますが、小野社長の言葉からも、投機的な動きをどのように受け止めつつ、チャレンジする部分と抑制する部分とのバランスについて、様々な学びもあったと仰っておられたので、こういう失敗も糧にしてくれるだろうという感触も得られる事が出来ました。もちろん、今後も水物のようなトレンドを形成するものであるため、完全なる回避は難しいと思いますが、その中にあってもリスク対処については学びがあったようですからね。
 この後は決算の状況等を淡々と説明されましたし、対処すべき課題についても、第二部でもまた説明するという事でかなり割愛しての説明でした。(この時点で第二部があるのかも明瞭ではなく、時間が許せば、的な言い回しでしたからね)
 議案についても取締役任期が2年ということもあり、今回は剰余金処分のみです。ですので上程の説明も配当性向25-35%程度を目安とする中での上程であり、簡単な説明で質疑に入ります。

3.質疑応答(株主総会)

 質疑応答に入ります。昨年は1人1問と記されていつつ、結局複数の質問を受けて頂きましたが、今年はその表記が招集通知にはありませんでした。どういう運営になるのかなと思っておりましたが、今回は1人1回2問までということでした。まぁこれ位がバランスがいいですよね。2巡目も受けてくれますしね。
 以下、質疑の様子を私の主観で脚色を加えて表記していきます。交わされた内容を忠実に再現しているものではありませんので、ご参考程度にお読み頂ければと思います。また、悪意なく誤認等している可能性を含みますため、投資判断にご活用される際には、ご自身でIRへの確認等を含めて確認頂くようお願いいたします。
 なお、私が発言した内容には冒頭に★印をつけております。

★Q 時計のマーケットについて
昨年の総会の場で、時計マーケットの変調時のリスク対応について心配の声をあげた。当時はまだマーケットが高位であったこともあり、攻めの姿勢を堅持され、相場が大きく崩れるとしたら、ロレックス自体の戦略が変わる時であり、その顕在化の可能性は低いという趣旨を仰られていたと記憶している。結果論ではあるが、前期において市況変化の影響を大きく受け、中計の見通し自体も下げることにもなっている。結局のところ、一連のマーケット変調をどう見ているのか。ロレックスは変わったのか。そうだとすると当社の今後の歩み方も変わってくると思うがいかがか。
 また、この変化への対応として、金融工学を活用したAI対処をされていく方針を出されている。金融工学を活かした手法は株式、コモディティ、債権、為替等様々なシーンで取り入れられているが、再現性と継続性を持った仕組みというものは想像より遥かに困難であると考えている。カメラのAI活用は需要と供給のハンドリングが比較的見通し易く上手くいってると思うが、投機的な部分も含めてバラメーターが多岐に渡る状況に対して優位性を示せると考える論拠を教えてほしい。
A
 前年にロレックスの在庫の日本一を目指すという事で積極的な姿勢でチャレンジをした。全社を挙げて取り組んできたが、これはロレックスで優位に立てなければ、時計全体としての訴求力には限度があるということで、積極化してきたという経緯がある。結果として在庫は大きく増やす事が出来た。
 しかしながら、相場の変調の影響もあり、収益面では反落することになった。しかし長い目で見た時に、リユースで最も重要だと言われる在庫の仕入力が高まったというのは成果でもあると思っている。他店ライバルがレッドオーシャンな中にあってもこういう状況をつくれたことは今後に繋がるもの。前期ガイダンスを示した際には相場は高位だったが、その後反落してくる局面では回転率でカバーしてなんとか凌いできたという状況だが秋以降に償却の必要性により下方修正に至ったというのが詳細な経緯。
 昨年の総会で確かにロレックスの暴落はないだろうという趣旨の発言をしたのは記憶している。ただ、ロレックスのブランドとしてのやり方は変わっておらず、決して薄利多売になったとかいうわけではない。
 やはり単純に投機的な買い物の動向をきちんとフォロー出来ていなかったという点が大きな反省であると思っている。長期トレンドで見ると線形になっているということもあり、行き過ぎた水準訂正が入ったとみており、足元ではその状況落ち着いたものと理解している。そのため、修正後の動向としては想定より落ち着いた取引が出来ており、減益幅も抑制出来た。
 今後の対応としては、やはり人間の感覚だけに頼らず、短期的な騰落の状況把握のサポートとして金融工学手法を取り入れた機能を活用していきたいということである。あくまでサポートであるが、多くのデータを時系列で評価するには人間の記憶だけでは浅くなる部分をDWH(データウェアハウス)に格納していく中で補完していきたい。
 昨年は大きく変えたという成果があったからこそ、大きく損失を被ることになった。タイミングの捉え方など含めて様々な反省と悩みを持つことができたため、サポートツールも活用しながら、今後は他社により優位性をもって対応していきたい。
◇追加コメント
 
金融工学的な部分で、様々なパラメータをDWH(データウェアハウス)に蓄積していくというお話があった。こういったトレンド分析を行う上で、何よりパラメータとなるデータを多岐に蓄積する事は大事であるが、これはあくまでスタートラインであると捉えている。DWHから如何に目的別にDM(データマート)化していくのか、ここにデータを活用するためのノウハウがあるわけだし難しさだと認識している。DWHでデータを蓄積していくという事の先にDM化、更にそのDM化したデータを有機的にアレンジして優位なデータ分析を行うためのAIが期待される所。ぜひ頑張って頂きたい。
■考察
 まぁわかってはいたことですが、やはり市況の投機的な動きを含めてやや油断をしたということでしょうかね。昨年には総会閉会後に、直々に立ち話で危惧を示していた中で、まだまだ対話が足りなかったと私自身も反省しています。
 とはいえ、これは結果論的な部分も大きいです。答弁にもある通り、仕入で圧倒的な地位を構築するという命題もありました。そういう中でやや強気が行き過ぎたという所もあります。大きな反省と成果があったと仰っていますので、これを糧にまた前を向いて進んでいってもらいたいですね。
 ただ、やはり同じように相場の急変があった時、どのような対応を取りえるのか、特にガバナンスの部分については大変興味がありますね。

★Q 情報セキュリティ対策について
 昨今ランサムウェアによる被害等、個人情報の流出やBCPの観点で課題となるケースが散見されている。当社は主軸をECとしている事から情報セキュリティ対策はより重要性が高いと認識しているが、どのような対策をしているか。役員の取締役のスキルマトリックスでは澤田さんと草島さんが有識者となっているため、それぞれの方から当社の取り組みをご披露頂きたい。
 また、澤田さんは管理部門全体所掌という点や、草島さんはご経歴上も大規模開発PMや人材開発等を歩まれているわけだが、有事の際を考慮した時の対応としては十分なのか、小野社長の見解をお伺いしたい。
A
 まず指摘のような脅威が増えている中で、当社としては堅牢なシステムという所をまずは大事にしている。セキュリティについて具体的なツールなどは公開できないが、グローバルで信頼のある製品を選定し適用している。もちろん100%とはいえないものの、これまでもPマーク取得後の事故もなく安定して運用出来ている。(澤田取締役)
 一般論として完璧なことはない、ソフト、ハード、ネットワークの各所については十分堅牢性は確保されていると認識している。また、人材面でいうと、将来的なインフラ構築のTOBEを議論してきたが、十分に見識を持って対応されていると感じた。(草島社外取締役)
 EC事業者を行う上で、リアル店舗と結び付けて議論をするようにしている。つまりECサイトが閉鎖するということは、リアルでいえば停電等で店舗が運営出来ない状況と同じである、というような具合で。ECだけで物事を捉えず、リアルならどういう影響があるか、という視点で複合的に影響調査を行いながら対策について議論している。(小野社長)
◇追加コメント
 セキュアな環境構築のためのツール導入や、人材教育等に力を入れられセキュリティ対策を講じられているという答弁があった。もうひとつお願いしたいのは、サーバー攻撃や情報流出等の不測の事態が生じた際のアクションプランというものも当然のことながら用意されている事と思うが、ぜひ定期的に手順の確認やアクションプランの点検等を行って頂きたい。どうしても不測の事態となると混乱を招きやすくもなり、対応が後手になるというケースもあろうかと思う。そういう事にならぬよう、平時の時から手順のリハなど万全を尽くして頂きたい。
■考察

 この質問はやはり同社のBCPの観点で影響が甚大が故に、改めて危機管理を伺っておきたかったというのと、社外取締役にも発言の機会をという想いでした。ちょっと心配だったのは、システム構成として堅牢さが実現できているという色彩が強かった所です。残念ながら、現状のサーバ犯罪は、この合間をすり抜けてくることが多いわけです。今危機に晒されている被害企業も、当然無策ではなかったはずなのです。何かしらのツールを入れていたでしょうし、ベンダーもついていたことでしょう。しかしそういう事態になると大変な影響を受けてしまうわけです。ですので追加コメントもした通り、むしろ大前提として堅牢さは担保しているものの、ケース毎にアクションプランを制定し、定期的に訓練までしておくという事を提案したかったのです。完全にゼロにはできないという事を再三発言されていましたが、本当にその通りなので、顕在化した際のリリースの出し方、データの保全方法、APの改修に係る手順、バッチ処理等の回復運用等ですね。

Q カメラ事業の市況変化のリスク
 時計事業のような市況の変化が、カメラ事業でも顕在化した場合、より財務的にも影響度も大きいものと思われる。カメラ事業ではそういったリスクはないと仰られるかもしれないが、時計事業であっても昨年はそういう趣旨だった所からの市況変化による影響を受けた事を鑑みれば、カメラ事業にだってそういうリスクを孕んでいるのではないかとも思えるがリスク認識をどのように持たれているか。
A
 時計と違い、カメラは新品の値段を基本的に超えない(つまりプレミアがつかない)という構造上、リスクは低いと思っている。
■考察
 まぁカメラは時計と違い基本的にプレミアムがつかない商材ですからね。あとは気になる所といえば、ミラーレス化が進んできている中で、一眼のボディやレンズの動きが悪くなってくるという事も念頭に置いておく必要がありそうかなと思います。今はまだ一眼が一定程度の存在感を示しているところですが、メーカーサポートの終了目途が順次提供されていることもあり、この辺りのモデルの扱いについては、急激な後退がないように、うまく在庫管理を今から進めておくべきなのでしょうね。

Q 主軸事業以外の状況について
 筆記具や自転車といった事業を長年取り組まれてきている。しかしながら、その寄与度といえばごく小さいという状況であり、経営資源の活用という点からしても課題があるのではないか。より大きな事業に育っていれば、今回の時計の状況ももう少し全社で吸収出来たのではないかとも思える。これだけ低位な事業を続けていく必要性や、むしろより違った商材で新規の柱を創るという事には取り組まれないのか。
A
 筆記具、自転車と数値があまり伸びておらず申し訳ないと思っている、この事業はこれまであまり積極投資をしてこなかったが、そもそも低コスト構造が実現出来ており、黒字が定着出来てきている。黒字であれば存続も可能と思っている。
 それ以外の新規商材については、マーケットサイズ等も踏まえながら検討ということになるが、やはり声掛け頂く機会も多いM&Aなどで良いご縁があればという程度のものにまずはなろうかと思う。
■考察
 まぁコロナ禍前には毎年のように新規商材の話が出ていましたよね。個人的にはカメラと時計を深堀りしてより収益化を図って頂いた方がいいように考えています。M&Aあたりに含みがあったのは気のせいのかどうか。。。

Q 役員選任のオペレーションについて
 今回議案に役員選任が含まれていない。つまり任期が2年以上という事かと思う。しかしながら、結果論とはいえ釈明もされていながら下方修正に至るという事で、役員の責任を含めた成果という部分を毎年選任という形で承認を経るという方がよいのではないかとも思えるが、任期を1年にするようなことは考えられないか。
A
 結果論とはいえ、予算未達という部分で責任は痛感している所。しかしながら、我々の事業というのは各商材に対してECを主軸とした販売形態を開発し、継続的に様々な施策を導入して成長を企図しているものである。この一連の開発には一定期間の時間的猶予(少なくても2-3年程度)が必要という状況もあり、1年単位というより、もう少し長い時間軸で成果を見据えて活動をしている所である。そういう意味合いからも任期を2年としているため、ご理解を頂きたい。なお、各年度の成果に応じた取締役の報酬委員会では、社外取締役らの議論を通して、成果に加えて市場サーベイによる時価総額基準の報酬水準を加味して決定していることから、成果や時価総額ベースを意識した評価制度になっていることから、マインドとしては成果を求めて邁進していく所存であり、これを応援して頂きたい。
■考察
 私もIRさんとのコミュニケーションの中で、役員報酬への対応については問合せの上、対話を行ってきておりました。ですので、この質問者さんの意図もよく理解できますし、また答弁の内容もとてもしっくりくるものでもありました。答弁の中で、例えばの話としてこのような話をされていました。
AIを活用した施策は導入検討当初、これがすぐに成果に繋がる事は難しい中で、目先の成果のためには例えば大阪に店舗を出せば売上は作れる、だからそうすれば立場も一定の成果も保全されるはずだよね、という議論があったようです。しかし、これは中長期的な目線に立っていないし、創業者でもある鈴木前会長時代からのDNAにもそぐわないということで、やはりある程度の期間を投じて担わせて欲しいということです。
 チャレンジをしたこと(そもそもロレックスの投機市況への対応がこういう趣旨のチャレンジといっていいのかはまた別問題かもしれませんが)に対して我々付託する立場からは成果を出して欲しいと願っていますが、それがうまくいかなかったら、そく責任論をかざすようでは閉塞感が漂います。この質問者さんも責任追及という事が趣旨ではなく、承認を経るというプロセスが大事なのではないかという提起だったものと思います。こういう質問を通して、改めてボードメンバーの皆様も前を向いて邁進してもらいたいなと感じました。

Q プライム上場基準の充足について
 当社株式はプライム市場に上場しているが、現状、形式条件を充足していない、あるいは改善に向けた取り組み中であるというような状況があれば教えて頂きたい。
A
 現状では全ての項目を充足しており、特に問題は生じていない。東証からは株主数であったり、PBR1倍割れの問題、環境問題への対応等を各社に求める動きが鮮明になっているものの、当社においてはいずれも対応をとってきていることもあり、こういった新たな動きに対してもきちんと対応をしてきている所。
■考察
 株主数はむしろ、この時価総額にしては増えすぎではないかと思える程、多い水準にありますからね。他形式要件についても問題がない点は先の開示の通りですね。

Q 金券の取り扱いについて
 新宿に来ると、金券屋が多くあるが、当社においても新宿に店舗を持っている中で、こういった金券も扱うとよいのではないか。
A
 金券屋をやることはないと思う。我々の定款上から、価値ある商材を安心安全にという所を大切にしている所がある。この柱から外れるような事に手を出してしまうと、様々な弊害を生むことにもなりえる。
■考察
 金券屋とはびっくりしました(笑)。確かに新宿には金券屋多いですからね。しかし、答弁の中でしっかり自分達の戦略に基づき、はっきりとやらない事はやらないと仰られていたのはいいですね。私も含めて外からみていると、ああいうの扱ったらいいんじゃないかとか、こういう風にしたらいいんじゃないかとか色々考えが浮かぶものですが、中々難しいですよね。

Q ロレックスの足元の売れ行きについて
 財産税等の税制面の動きも踏まえて、ロレックスのような商材が売れていると思料するが、足元のロレックスの売上状況はどのような状況か。
A
 足元の状況はこのような場で安易に申し上げるべきではないので、申し訳ないがコメントを差し控える。当社は小売業として月次売上を開示していることから、この中で分かりやすい開示に努めていくため、こちらを確認頂き、末永く応援頂きたい。
■考察
 足元の状況はどうか、と正面突破しても、まぁお答えはしませんよね。逆にここで口が滑るようであれば危ういですかね。こういう対応でよいと思います。せっかく税制面などの話も出されたので、足元の売上という聞き方ではなく、需要の背景として実需以外のトレンドをどのように認識しているか、とか聞いてみたら面白かったんじゃないですかね。

★Q 数値目標の位置付け
 前期は外部要因が大きいとはいえ業績予想を下方修正され、中期計画の数値目標も引き下げられた。当社は成長志向が高いため、野心的な目標を掲げる事と、開示の保守性という狭間で悩ましさもあると理解する。今回中計数値目標を改めて掲げる上で、この野心的部分と保守性の部分はどのようにバランスをさせて策定されたものか。
 また期待感が高まることで株価のPERも上がるわけだが、その分失望による作用も出やすくなる。そのため期待感とは上手く付き合っていく必要があると思うが、現状の当社のPERは10倍程度と過去の20倍水準からすると切り下がってる中で、現状をどのように認識され今後のマーケット発信をなされていくのか。
A
 中計の数値としては、マーケットの取り方と戦略的な施策に基づく投資の成果として、概ね売上2桁成長を志向出来るのではないかという所が原点。そして当社のビジネスモデルは固定費を必要としないモデルであることから、一定のマージンを確保していければ、自ずと利益はそれ以上の伸長を志向出来るという立場である。この後中計の説明の場でも詳細を共有させて頂きたい。
 PERについては、まず株価水準についてコメントすべきではないという前提はあれど、元々20倍程度あった評価が10倍程度にあるという現状は微力さを感じており納得していない。カメラ市場が縮小していくという中で当社のシェアとの兼ね合いで成長余地の問題等であったり、現在AI活用等の投資を更に増勢していこうという中で、その成果が財務面でいつどういう形で成果に表れてくるのかの説明が足りていないという側面もあろうかと思う。結果をみてもらえれば、(前期の時計の粗相はさておき)順調に伸ばしてきている中で、今後の余地という部分もより積極的に投資家に理解をしてもらえるような活動を強化していきたい。
■考察
 中計説明会があるという事をこの時点できちんと把握できていなかったこともあり、ここで質問をしてしまいました。これは第二部で質問すればよかったです。そして私は質問を通して、数値目標の組み立て方はさておき、むしろ保守性と野心的姿勢の狭間での悩ましさを引き出しつつ、案にもう少し信憑性を高めてくれるような発信をすべきではないかという趣旨で申し上げたつもりです。つまり、中計の数値が1年経つと結構は乖離が出て上下に振れるということは、外部環境の変化故の事であるとはいえ、マーケットの信頼を低下させる事にも繋がります。そしてそれだけ不安定な環境にある、つまり資本コストが高くなるという事を示していることにもなります。もちろん、安定的である事が絶対ではないわけですが、私個人の投資先選定においては、この安定的であったり、信憑性が一定程度担保されているという所を大切にしているところもあります。この辺りをもう少しコミュニケーションを取りたいなと感じました。
 中計の組み立て方そのものはまぁ答弁の通りなのでしょうね。ビジネスモデルとして固定費を抑えられるという所が素晴らしい事ですので、今後も無駄なことはせずに本流で行って欲しいですね。
 それからPERの件は忸怩たる思いがあるようですが、時計事業の特需離れにより成長鈍化が疑われている小売業としてはPER10ちょいというのは妥当な水準ではあるのかなと思います。むしろ無用に期待感を高めてPERをあげる事への弊害も示したつもりです。つまり数値目標の位置付けとして質問したということは、あまりに野心的な数値を置きにいって、PERを高めていく事だけが良い事だとは思っていないという事を間接的に申し上げたつもりです。もちろん、これは投資家によって意見は様々で、私の言っている事が意味わかんねーってなる方も多いかもしれません。正解はないわけですが、その中で、居心地の良い所に落ち着いていてくれるといいなと思っています。

★Q IR対応について
 当社の魅力を投資家に正しく理解され、資本コストを下げる観点からも、財務IRの役割は大切だと認識している。前期においてはCFOやIR担当の方が何度も変わったりしており、対マーケットの窓口でもあることから、体制面でも心配をしている。この辺りの状況を踏まえて、人材の定着やエンゲージメント形成にどのような課題を持ち対処されてるか。
 また昨年の総会の場で個人投資家との対話機会について質問をし、機関投資家のみに傾注するのではなく個人投資家に向け、WEBチャネル活用を含めた方策を検討すると仰られていた。しかし、残念ながら、前期においては具体的な対話機会を得ることはなかったものと残念に思ってるが、何がボトルネックとなり前に進まないのか。現状のIRについてどのように考えられているか、今後の見通しと共に教えて頂きたい。
A
 ここ2年でCFOも2度変わり、心配をかけている点申し訳ない。退任した経緯の詳細はこの場では控えるが、いずれも個人的な諸事情によるものということで、会社側の体制やガバナンスに問題があるというわけではない。会社としての対応としては、採用においてより良い人材を迎え入れていける、「よい機会」だと捉えてパワーアップを図っている所。
 こういった退職等の体制面での整備が続く中で、指摘のあったような個人投資家向けへの発信機会が前期に適わなかったことは残念に思っている。今回IRの体制としても澤田CFOを筆頭に経営企画室長やIR担当の方もアサインして、これまでのシュッピンの中でももっとも厚い人数をかけての体制構築を図る事が出来た。このことから、今期こそはIR発信を対個人に向けても強化して参りたい。
■考察
 まず退任の経緯については、私も聞き及んでおることから大きな疑義は抱いていません。とはいえ、CFOやIR所掌の責任者が相次いで変わるということは、株主にとっては心配になります。株主総会という場できちんと言及しておくことが重要だと思い、この質問を敢えてしました。前年の株主総会、そして日頃のIRさんとのコミュニケ―ションをとってきたことを、今年の株主総会でUPDATEし、対話によって正しい発信の姿を一緒に模索していきたいという気持ちです。何より、一連の出来事を「よい機会」と捉えて前向きな姿勢を示してくれましたから、今度こそ、仕切り直しで小野社長筆頭に出てきてくれるものと期待をしたいと思います。

Q 時計の損失の内訳について
 時計の損失について粗利減と評価損がどれだけ出ているのか内訳を知りたい。
A
 非開示情報のため、開示を控えさせていただく。
■考察
 この質問者さんは何か色々持論を展開されていて、正直何を聞きたいのかよくわからなかったんですよね…。時計の損失についてずっと持論を述べられていて、しかも説明のあった時計市況のトレンドの話など、お話をされながら自分の疑問点が次々に五月雨で投じられていました。結局最後は表記の内容を述べられて、非開示情報のため控えるという事で終わりました。
 株主総会で非開示情報を聞いても意味がないと思いますし、持論の展開は私も気を付けなければなりませんが、質問の意図を伝える以外の目的で大講演をするのは控えたいものですね。

 質問は以上で、以降決議を取り、株主総会は閉会となりました。

4.中計説明会の主な論点

 中計説明会は先に開示のあったPPT資料をベースに小野社長がプレゼンをされ、その後に質疑を受けるという形で進行しました。

 中計の説明そのものは既に開示済の情報を把握していることもあり、あまり目新しい情報はありませんが、以下のような話題が印象に残りました。

・中計の数値目標はオーガニックのみで、インバウンド、M&A、海外越境EC等の不確実性なものは一切織り込んでいない。

・要員数は今期伸びてその後はマイルドに。一人当たり売上高を重視し順次伸ばしていく計画。

・カメラはシェア率からして伸長余地は十分。AIMDは日々1350商品をクローリングしてリコメンド発信等を行っている。なお、まだまだ精度向上の余地もあり、より顧客信頼を得ていく。

・時計の失敗は素直に受け止め。ただ、在庫を集められる力が高まったが故の損失拡大でもある。なので良きところはそのままに、しかしトレンドを見極める力を備えていかねばならない点が課題。商品を集める事が出来るという素地は成果だと思っている

・免税のお客様が売却をしにくくなるという今後の状況は注視している。だからこそ、免税に頼らない商品集めができる体制作りは喫緊の課題であり、様々な施策でこの力が高まっていることは手応えとしてある。

・Z世代向けのマーケティング要素としてのコンテンツクリエイトを強化。Z世代に捉われず、エントリー層に刺さるコンテンツ作りが重要。キタムラを競合として意識。導入の更に上流である商材に興味をもってもらう、という所から刺さるコンテンツ作りが大事。

5.質疑応答(中計説明会)

 ここからは中計説明会を踏まえた質疑の時間です。こちらは特に質問数の制限などはありませんが、他の株主さんもいらっしゃいますので、総会の要請を引き継ぎ、2問ずつの質問としました。
 引き続きメモを残しますが、大いに脚色していますのでご留意ください。なお、★印は私からの質問です。

★Q 中計の数値のアップサイド余地について
 中計数値のご説明の中で、オーガニック部分だけを積み上げて開示されているとのことだった。逆に言えば、インバウンドやM&A等織り込まれていないアップサイドがあるという事だと思うが、どういう部分を期待してよいのか。
A
 期待できるところはまずインバウンド。コロナ禍前の爆買いという頃の再来があるのかないのかはわからないし、政府の国策にもよる所ではあるが、今後一定程度期待できるのではないかと思っている。
 また海外越境ECについても年率20%以上の成長を続けており、アップサイド余地があるのではないかと期待している。ただ、中古仕入が国内のみということもあり、特に希少品は国内で回転させていきたいという志向もあり、今後、海外での買取という環境が整えられればと考えている所。
 それから、商品販売という一本打という部分は強みでもあるが弱みでもある。収益をあげるためにはとにかくもモノを売らないといけないという所があるが、ここから収益の多様化を見込んでいく事も考えていかねばならないと思っている。これだけ顧客支持もあることから、物販以外のサブスク型等のバリエーションをもった対応が取れていけるようにするところは経営陣の課題でもあるし、それを発表出来る事を楽しみにしている。
■考察
 インバウンドは想定通りですが、越境ECが二つ目に出てきました。そしてそのボトルネックは仕入ですね。特に海外拠点での仕入れができるようになるとだいぶ景色が変わってくるということなのだと思います。eBAYなどのプラットフォーム上で相応の好評価を受けている中で、今は小さく国内仕入の商材の販売をしているわけですが、こういう信頼感、認知度が醸成されてきたタイミングで海外に仕入拠点の開設、等のニュースが出たら、これは期待できそうなわけですね。
 それから、サブスク型等の収益多様化というところについては、含みがあったように感じました。まだすぐにというわけではないのでしょうが、もう少しすると何かしら出てくるのではないかと思います。カメラの中古品を多数ストックしていることもあり、この貸出ニーズは相応にあるのではないかと思います。サブスクで中古レンズの中からお試しで借り放題になる(当然色々な条件はつけるとして)、というものがあると結構盛り上がるのではないかなと思います。中古商材が故に、レンタルにはさほど問題が生じませんし、なんなら、そのまま気に入ったから購入というオプションとかも用意しておくと商品回転としても良いのではないかなと思います。細かく収益シミュレーションをしていませんし、そうはいっても物販で回転率だけ見てシンプルに、という方がよいのかもしれませんが、そういう難しい部分を含めて頭のいい方々がきちんと評価されている様相が窺えたのはいいですね。
 アップサイドを過度に求めるわけでもありませんし、説明の中でもあった通り、あくまで不確実な要素であるという立場で目標値には入れていない、ということなので、まずはそれをベースに捉えておくべきなのだろうとも思います、

★Q 新たな顧客層獲得に向けたコンテンツ作りについて
 Z世代向けのマーケティングとして、コンテンツクリエイト部を新設し、様々な魅力的なコンテンツを通して、エントリーユーザーの裾野を広げる活動をされているとのこと。但し、現状のコンテンツを拝見していると、私のようなカメラ愛好家のおじさんが見れば楽しめるものだが、エントリー者、それもZ世代のような若者が見た時の訴求力という点ではギャップがあるのかなとも感じる。具体的にどういう年齢層の社員の方がコンテンツ制作に関わっているのか。そしてこういったギャップがあるとしたらどのようにこれを埋めていくのか方策を伺いたい。
A
 コンテンツクリエイト部を立ち上げたが、そこに従事するのは20歳-40歳代の社員である。コンテンツとしてはyoutubeを中心に製作をしているという状況。指摘のあったようなちょっと毛色の違うアプローチという部分が求められる一方で、当社のブランディングという部分も大切にしていかねばならない。その意味でやはり砕け過ぎるようなものも適さないと考えている。その狭間の中でそうはいってもZ世代含めた新たな層に訴求していく機会を検討しているという状況。今後はカメラ初心者や使い方としてロケにいったりということで発信していきたい。(齋藤取締役)
 youtubeコンテンツを楽しみにしている。最近ではグーグルの検索だけでなく、youtubeやTikTok等のSNS等も増勢である。ただ、やはり現状のコンテンツはまだ退屈だと課題認識は持っている。ではどうするのかということだが、例えばカメラ系のyoutubeをみていても、個人の方が多く活躍されているものの、機材がどうしても限られてくるという所はある。その意味で、当社はあらゆるメーカーのストックを持っているという強みがあるため、比較や検証といったコンテンツは親和性が高い。もっと面白い魅力あるコンテンツが作れるよう、こういう質問を通して期待してくれているということを現場社員の方にも共有をしていきたい。(小野社長)
■考察
 齋藤さんの答弁の中で、ブランディングという言葉が出てきました。シュッピンは従来中年からシニアの男性が趣味趣向品としてのカメラや時計といった所で使われるプラットフォームであり、故にブランディングも黒を基調にした落ち着いた重厚感のあるイメージです。マーケティングも奇をてらったようなものではありません。
 しかし、既にユーザー比率を見てもわかる通り、昨今のSNSの浸透等もあり、女性の利用者が増えていたり、若年層からの一定の支持というものも拡がっています。そういう中で、既存のブランディングを大切にしていくということと、そこをUPDATEしていく、ということは両方をよくよく見極めてどうリマーケティングしていくかという事を考えねばならないとも考えています。
 ブランディング論は結構奥が深いようで、私は不勉強なのでよくわかっていませんが、破壊的イノベーションが事業成長に求められるように、ブランディングも時に殻を破っていく勇気というものも必要なのかもしれません。少なくても今の中年からシニア、それもも愛好家という前提がある方へ向けられたブランディングを大切にしているばかりだと、フロンティアは進みません。せっかく創造的な若い社員が従事するような組織を作っても、どこかでキャップがはめられているとむしろ残念なものになってしまうかもしれません。
 これまでの蓄積してきたものを捨てるということではなく、それを大切にしつつも変化についていかねばなりません。例えばyoutubeでの発信は従来の素地をベースにその発展系という一方で、TIkTokではもっとライトな発信という両にらみでもいいのではないでしょうか。TikTokなども現状大手の歴史ある会社さんも使われていたりしますが、何も伝統的な屋号が毀損した、なんて話聞きません。むしろ昨今、新たなパーパスを制定みたいな話が多いように、企業のマーケティングも第二、第三の路線を模索するような動きが活発だと理解しています。インフルエンサーマーケティングを上手く活用しながら、若者や新たな層に刺さるようなコンテンツをぜひ量産してもらいたいですね。
 小野社長が述べられていた、自分達の強みを生かしたコンテンツというのも面白いですよね。多くの在庫があるからこそ出来るコンテンツというのもありますし、エブフォトのようなサイトをもっていることから、例えば、映える写真を集めて、その機材や撮影テクニックを共有していくなんてのも面白いと思います。その際も機材や撮影テクニックをメインにするのではなく、あくまで映える景色を色々紹介していくという事に主眼を置くのです。世界観を共有していく事で自然に消費に繋げていくということです。

Q 強盗等の凶悪事件への対応
 昨今凶悪事件として宝石店等の事件が散見されている。まず当社の事業に置いてそういうリスクは発生していないか。また窃盗にあったとしても商品は保険に入られていると思われるため、損失は限定的と出来る一方で社員の安全等の対応が気になる所。現場社員にはどのように安全対策を取られているのか。
A
 従業員教育としては、まずはお客様と自分自身の安全を第一に裏口等から避難をすることを教育している。指摘の通り、商品については保険で対応出来る。やりにくい環境を作っていく事も大事で、店舗のブザーを増設したり、新店舗は甲州街道沿いの目立つ所で警察や店舗も多い界隈である。ブザーを増やすことや階数を上にするなどで、仮に下見をされても、やりにくい、という店作りも大事。
■考察
 ここはどうしても相手が犯罪ですからね。とはいえ、やりにくい店作りをしていくということは様々な例で説明されていました。社員やお客様の安全第一に考えられているということもわかりましたしん。あとは保険で代替できるということも改めて言質を取れたのもよかったですね。

Q 新規事業について
 箱物を作らないのであれば、ある程度リスクは抑えられると思うが、その中で新規商材にもぜひチャレンジして欲しい。スニーカー、ポケモンカードはもちろん、お酒、ビンテージコイン、ビンテージデニムなど考えられるのではないか。
A
 様々な提案に感謝。ひとつ大事なポイントとしては新品と中古の両方を扱える方が望ましいと考えている。商品回転を促せるという意味合いもあるし、認知度向上にも資する。このような観点で頂いた商材も含めて検討を進めて参りたい。
■考察
 かねがね、新たな柱の話は出てきますね。鈴木前会長の時からですね。新品を扱えるという事はポイントですよね。そしてリユース事業者は往々にしてメーカーから嫌われる傾向にもあります。カメラでもメーカーから新品在庫を仕入れにくいといった事も当初はあったようですからね。そういう意味では、メーカーとの信頼構築という所も何気に大きなハードルになるような気がします。特に今ではカメラや時計の初期の頃と違い、ECが大きくスタンダード化していますからね。

Q セキュリティの初動対応について
 セキュリティの話があがっていたが、何か事が起きた時には、初動として顧客対応をきちんとしてもらう体制を期待したい。他社で被害を受けたことがあったが、当の企業からは何日も初動のお知らせもなく、しばらく経ってからようやく通知がくる、みたいなこともあって心証がよくない。ぜひそういう体制作りを目指して欲しい。
A
 セキュリティ面では具体的なシステム構成等はお話できないが、DB検知ツールを使っていることもあり、異常を検知した際には速やかに把握する体制は構築出来ているため、初動も迅速な対応が取れると考えている。(澤田取締役)
 起きてしまったらしょうがないと、どこから腹を決めるしかないという部分もある。とはいえ、我々は常にお客様と向き合い、受注から発送業務までを速やかに行うといった文化は醸成されており、こういった不測の事態においても迅速な対応を取って行けるものと考えている。(小野社長)
■考察
 基本的な姿勢については、何ら違和感はないのですが、やや心配な側面もあります。というのもDB監視ツールなんて、今や通常の顧客データ等を格納しているDBであれば余程の事がない限り、選定されたツールはどの会社さんも導入されているはずです。ネットワーク監視、DB監視等は常に行っていて、異常検知も即座に出来る対応は大前提として存在しているものと思います。その上で、それでも原因の突き止めから、顧客影響の調査等が進まないことで、初動の気を逸してしまうという事が、多くの会社で起こっている事だと思うのです。ですから、私も株主総会で、ツール導入や人材教育に収斂させるだけでなく、イレギュラーな事象が起こった際のアクションプランをシミュレーションとして運用しておくこと、それを定期的に行い避難訓練のように習熟しておくという事が大事だと申し上げたつもりです。
 ITツール上のインフラや人材教育というマインドだけではなく、シンプルに誰がどのタイミングでどの程度の見極め状況であっても初動を取るか、ということはよくよくコンセンサスを取っておくべきだと思います。

Q 貴金属やブランド物などの市場マーケットが大きい市場への進出
 投資家として市場の大きなマーケットで戦って欲しいと考えている。先にあったジーンズ等よりも、よりマーケットが大きい貴金属やブランドバック等の扱いを増やしていかれてはどうか。
A
 女性ものの取り扱いとして宝石やブランドバックを扱うように始めているところ。並行輸入の新品を取り扱えるということで、対応をしているところ。但し、真贋にはまだ自信が持てない部分もあるという所もあり手探り。まずは本物に触れるという事が大事。並行輸入により新品本物に多く触れ、従業員の真贋力を高めて、早期に貢献して良い報告が出来るように頑張りたい。また新規商材には株主によって様々な意見がある事を承知している。様々な声に寄り添いつつ、社内でしっかり議論をして収益化を見込めるものがあれば順次検討を深めていきたい。
■考察
 真贋力を養うために多くの新品に触れるという基本的な積み上げを現状行われているようですね。まだブリエがこの部分で本領を発揮するには時間がかかりそうですね。先の質問で一つの物事を開発していくのに2-3年の年月を要するという趣旨の説明がありましたが、まさにこういうことなのでしょうね。
 新規商材については、様々な意見がありますが、そもそも容易く手を拡げるような局面ではないと私は考えています。カメラと時計だけでも、まだまだなすべき事が沢山あるという理解をしています。そしてマーケットが大きいということはそれだけ競合も多く成熟しているというわけなので、そんなに話は単純ではない気もします。

Q 金融工学手法について
 金融工学のアプローチで移動平均を使われターニングポイントを探るという事だと理解した。しかし移動平均だけではなく、タートルズ投資術というものがあるので、本を読んで勉強してみて欲しい。
A
 貴重なご意見。
■考察
 こういう世界って色々なレシオとかなんちゃら術って出てきますよね(笑)。別にバカにしているわけではないのですが、総じていえることは、個々の投資術やなんちゃら指標というものは往々にして無力だという事だと私は思っています。ですから先の質問であくまでサポートにしかならないという認識を示されている通り、あくまでサポートなのだろうと思っています。ですから、優位性を追求していくというのはそもそも無理があるものと思っていますし、それを追求して見極めのプロになるという事が、同社の本来の目的ではないはずです(もちろん前期のように大きく見誤ると酷い目に遭うわけですが)。

★Q 要員数の今後の計画について
 説明の中で、要員数は今期に大きく増やす計画である一方で、その後はマイルドになるという見立てとなっている。そもそも入社式の写真を拝見し、今春の新卒内定者は2名だったと記憶しており例年と比べても少なかった中で、まず採用サイドとして人材採用において課題はないのか。そして今期に一気に増やすというより、徐々に増やしていかれた方が、育成等の組織マネジメントとしても良いと思うが、特段、今期に一気に増やしたいという意向があるということなのか。
A
 今春入社の新卒については、コロナ明けということもあり、やや採用を控えたという状況。今期の採用においては、本格的に回帰して人材獲得を頑張っていきたい。新卒で10数名、中途採用を入れて20名超の増強が出来るように取り組んでいきたい。
 その後はオーガニックで数値を作っていることもあり、そこまで人数を増やさなくても伸長させていけるというように考えており、そのような計画になっている。
 採用力の強化という面では、処遇改善面も積極化してきたのはいうまでもないが、小売業としての働き方改善を先行している。店舗の営業時間を早めに閉店してもECがあることから差し支えない等の仕組みもあり、働きやすさというものを実現出来ていると考えている。
■考察
 意図したことにより、今春の採用は抑制し、今期は回帰させるということでした。コロナ明けだから様子見で抑制したというのは正直よくわからなかったのですよね。そして、採用力が本当にあるのかは今期の状況を見て判断していく事になると思います。確かに処遇改善等は進めていますし、小売業ながらも働きやすさは一定程度担保されているように思いますしね。
 それから来年以降マイルドになるというお話もちょっとよくわかりません。元々同社は人手をあまりかけずとも成長をしていけるということでしたから、そういう姿になるという事は理解するのですが、だとしたら、なぜ今期だけ20名超の採用計画を掲げないといけないのかということです。もう少し平準化してもいいんじゃない、という点については、直接の回答がありませんでした。今期の状況をみて、今後のIRさん含めた対話用として注視しておきたいと思います。

★Q フクイサービスさんとの協業体制について
 資本提携からだいぶ時間が経っている中で、今回フェーズ1としての取り組みのご説明があったが、そもそもシナジーのスピード感が遅いようにも感じているが、何か上手く勧められないといった背景があるのか。また、フェーズ1のみが中計の説明として書かれているが、フェーズ2,3には言及がないがどういう目論見を持たれているのか。
A
 カメラの4大メーカーのすべてに精通している会社は全国で見ても4社程しかなく、そういった中で、まずファーストステップとしてフクイサービスさんに対して資本を入れてロックするという事が必要だった。その後シナジーを出していこうという中では、先方の方で撮影場所の構築だったり人材集めなどが必要だった中で、それなりに時間を要したこともあり、1年を経ての今の状況となっている。今後様々な施策を一緒にやっていくという段階ではあるが、先方の会社の状況も鑑みて進める必要があり、この辺りの進め方にはまだ課題もあると考えている。
 フェーズ2以降の歩みについては、この場で約束することができないものの、最終的には撮影から発送までも現地で出来るような体制作りを構築していくために必要な事を順次対応していくことになる。その意味でも、先方への設備投資等は今後必要になってくるものと考えている。
■考察
 フクイカメラサービスさんとの資本提携はとても面白いものでした。倉庫から検品、メンテ、発送業務などを地方でも出来るようになれば、運営効率は更に高める事が出来ます。ですが、やはり先方との関係性の部分で課題があるような気がしました。どの程度足繁く足を運んでおられるのかわかりませんが、独立した会社同士ではあるわけですが、もう少し連携色が出てくるといいですね。

Q 資金調達の戦略について
 資金調達をどのように行い、どのようにそれを投下していく考えなのかという事がわからないので説明して欲しい。
A
 まず投下する投資については、システム投資等もあるものの、商品在庫が中心となる。なお、BS上で債務超過に陥るリスク等は低いと考えている。
 また、ビジネスモデル上、キャッシュフローが不利になりやすい構造ではある。営業CFを黒字にするという事は常に念頭をしている。
■考察
 まぁ営業CF積み上げておくことなど基本に忠実な回答だったと思いますね。

Q 株主増加の施策と株価対策について
 今後の株主増加策や、株価をもう少し上げて欲しいと思うが対策は。
A
 コメントは差し控えたいものの、今のPER水準には満足していない。経営陣や管理職を含めた60名程度がホルダーであるということからきちんと評価されたいと思っている。店舗展開による成長ということであればわかりすいものの、AI活用となるとそれがどう成長に繋がるのか捉えにくいという状況もある。そのため、より中計の数値にこれらをフィッティグさせていけるようIRを強化していきたい。また機関投資家が多く入っていることもあり、出来高を確保する事が重要だと思っている。ボラティリティを抑制させるために重要。
 また、エクイティについては考えていない。現状のフローの中で十分賄えているし、固定投資的なものを多く要さないため。
■考察
 株主数ってこれ以上増やす意向があるんですかね。今年だけで1万人強ですからね。むしろ少し抑制した方がいいんじゃないかすら思っています。
 株価対策は聞いても答えませんよね。あとエクイティは考えていないと、はっきり明言されたのはちょっとびっくりしました。

6.さいごに

 時計で失敗し、中計は下方修正し、その数値自体も強気に見える部分もある中で、マーケットから一定の評価を受けて、株価も少し回復局面にあるという状況です。迎えた株主総会、案外あっけらかんとした小野社長の姿をみて、また益々会社のリーダーという感じも出てきておられ、いい感じになっていたなーと感じました。

 中計の数値の信憑性がより高まってくる、ノンオーガニックな部分でどこまで期待を高めていくのか、そしてその高め方もコントロールしながらがよいです。その意味でIRの役割はとても重要です。ぜひ頑張って頂きたいと思います。

 それから、個人投資家向けのIR強化は今年こそは実現してくれると思います。ぜひ、そういう機会があれば、どんどん小野社長に厳しい声を含めて寄せて頂ければいいのかなと思います。

 まだまだ未知数というか見通せない部分も多いです。今回株主数急増に伴い、改めて株主総会についてもあり方を問うメールもさせてもらいました。
 頑張れ、シュッピン!

(2023/6/26追記)

 まず帰宅してから追加でIRさんに照会をしました。
 株主数の増加は今日の有報でも示された通り、やはり個人投資家がほぼ倍増した事によるものとなりました。私の中には、時価総額水準を鑑みた時に、2万人を超える水準まで株主が増え、その主因は倍増した個人投資家ということになると、逆に多すぎる弊害のようなものもあるのかなとも感じていました。ただ、会社側としては、その点懸念は持たれていないようです。まぁお立場的に弊害があるというようなことは、株主の区別にもなりかねないので、そういう姿勢は示されませんよね。

 ただ気になるのはやはり株主優待の権利取りの動きだったりで、無用なコスト増を招いていないかという点です。現状、同社の株主優待は最低保有期間の縛りがないため、ある意味やりたい放題という状況になります。単純に1万人増えると単元保有という事を前提にしても0.5億の増加ということになります。この辺りの事を踏まえてコミュニケーションを取りました。
 長期保有で家族保有ですと枚数が大量になるわけですが、かねてより使い勝手の部分で課題もあると思っており、この辺りも率直な声を届けたつもりです。結局消耗品を小口で分けて頂くという使われ方がメインとなると、本来企図したサービス利用体験という意味合いも薄れてしまいますからね。どういう変化をもたらせるかはわかりませんが、経営サイドに声を届けて頂きぜひより良い形になっていくといいなと思います。

 それから本編では言及出来ておりませんでしたが、閉会後、役員の片がお見送りをして下さいます。これは例年のことですが、実はなかなかそういう会社さんはないので、来場した立場からするととてもありがたいのですよね。多くの会社では閉会後は、速やかに役員は控室にお籠りになられますからね。株主総会という一種形式的な機会の中で、双方が適度な体裁を保ちコミュニケーションをするわけですが、その後に一言くらい感謝の言葉や冗談の一つでも言って、また一年よろしくお願いします、ってやり取りをしたいじゃないですか。早々に籠られてしまうと、何かとても高い壁というか断絶を感じてしまうのですよね。お見送り下さる時にほんの数分かもしれませんが、立ち話を交わす中で何かまた距離を一つ歩み寄れたかなと感じると、来場して良かったなと思うわけです。独りよがりな自己満足なのかもしれませんけどね。


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