イオンディライト(東1/9787) 2020/2 Q3決算精査

イオンディライトの2020/2月期Q3決算が開示されました。
当記事では定点観測で決算の内容を精査します。あくまで個人的見解に基づき記載しておりますので、誤認等もあるかと思います。お気づきの点などございましたら、ぜひツイッターブログよりご指摘を頂ければ幸いです。※IR照会は完了次第、可能であれば記事に追加します。

1.サマリ

決算精査に当たり、自作の銘柄分析シートをPDFとしています。また前回のQ2決算についても当方ブログの方で記事にしています。

通期業績予想比からみると売上、利益共にやはり若干弱い印象もありますが、様々な取り組みについては各方面に面白い活動があるなと思います。清掃ロボットや施設管理の自動化システムの稼働開始などIT活用の芽が出てきています。海外についても中国やインドネシアなどASEAN地域で戦略も遂行されているようですしね。セグメント毎に成果や課題がありますので、この後、各セグメント毎に状況を見ていきたいと思います。

2.設備管理セグメント

売上全体の約2割を占める設備管理セグメントです。Q3単でみると増収減益となっています。増収ペースが落ち、利益率が悪化した事で同セグメントで過去にない四半期単位の減益となっています。

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決算短信によると、以下のように解説があります。なお、仕入原価の上昇については、Q2までは明文化されておらず、今回新たに追加されています。

経年劣化の進む昇降機のリニューアルや修繕提案を積極化し受託を拡大し
ました。しかしながら、仕入原価の上昇が影響し、減益となりました。

そして、この後、以下のように続きます。つまり労働集約型による外注費の高騰は認識しており、対策は打っているよということですね。しかしながら、この取り組み自体はまだイオンSCの1店舗に試験的に導入されているものであり、これを横展開するには時間も初期コストもかかるものですから、足元では外注費の高騰には対策を進めなければなりませんね。この辺りをどのように認識しているかは確認しておきたい所です。

こうした中、省力化や収益性の改善に向けた業務プロセスの抜本的な改革を目指し、オープンネットワークシステムによる統合型施設管理サービスを開発し、イオン藤井寺SCに初導入しました。

3.警備セグメント

売上全体の15%程度を占める警備セグメントです。主にイオンモール内の警備に係る事業となります。Q3単では減収増益となっています。通期では売上はぎりぎりプラスとなっています。

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決算短信には以下のように解説されています。こちらは価格転嫁等が奏功していることと、システム化による原価削減効果が出ているとあります。先ほどの設備管理セグメントと違い状況はいいようです。一方、システム化等リソースの省力化が進むことで、トップラインの上昇余地がないか期待したいのですが、どうでしょうかね。

労働需給の逼迫感が強まる中、同事業では、価格交渉を通じた単価の適正化と収益性の改善に取り組むとともに、入退店管理や閉店業務のシステム化を進めました。

4.清掃

売上全体の20%程度を占める清掃セグメントです。Q3単では増収増益となっています。主にモール内の清掃に関する事業領域でイオンモールが国内外に進出するにつれて、お仕事が増えていくため、過去も安定的に増収増益が継続しているセグメントとなっています。今期はインドネシアの清掃会社のM&A寄与分が乗ってきています。

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決算短信には以下のように解説されています。

新規の顧客開拓に加え、2018年12月に連結子会社化したインドネシアの清掃事業会社SJS社の業績が寄与しました。また、省力化を目的に前期に開発した自動走行型床清掃ロボットの導入、販売を促進しました。

新規顧客によるトップラインの成長とロボット導入による原価削減効果が相まっており状況としてはよさそうですね。インドネシアのM&Aについても今のところ懸念は感じません。ただ、海外のM&A案件というのは急に状況が悪化することもありますので、実績ある会社ではあるものの注視していかないとなりません。そして同社の買収は現地でのプレゼンス向上も目的となっているため、イオン外の仕事受託のためのブランド構築の活動も頑張って頂きたいですね。

5.建設施工セグメント

売上全体の15%弱を占める建設施工セグメントです。Q3単では減収減益となっています。各種建設の工事のお仕事ですので、イオンディライト社としては自販機事業と同様に凹凸が激しいセグメントです。

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Q3累計では増収減益ですが、この増収要素としては本体での地域密着によるサービス提供が寄与したようです。九州地域では支社体制を変えたことでルートでの対応が機能しているとありましたが、改装工事需要をうまく取り込めたようです。一方で子会社では逆に取り込みがうまくいかず、昨年に災害復旧の押し上げの反動もあり減益となっていると説明があります。セグメント利益率が7.5%と利益率も下がっており、かつ需要が取り込めていないということで要因及び今後の見通しについてはチェックしておきたいです。

各エリアにおける需要に対して、地域密着でサービスを提供できる体制を整備したことにより改装工事の受託を拡大することができました。しかしながら、連結子会社による工事需要の取り込みが十分でなかったことや昨年、国内で発生した自然災害に伴う復旧工事の影響により減益となりました。

6.資材関連セグメント

売上全体の15%強を占める資材関連セグメントです。Q3単では減収減益となっています。イオングループが扱う資材を包括的に提供する事業で、各種軽装品やPB用品の包装包材を提供する事業です。売上は安定している事業ですが、利益は結構凹凸があります。

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Q2で利益率がかなり下がってそれは物流コストの増加による影響と説明がありました。今回の決算短信でも以下のように解説されており、引き続き部注コストの削減の対応をしている状況のようです。若干Q2から比較すると改善した気もしますが、まだまだ利益率は低く推移しており対応が要されます。加えて、前回のIR照会時にもあった通り、イオンPBの包装包材については自主調達もされつつあるところから、イオン外の受託拡大も課題とありましたが、この辺りの感覚もトレースしておきたいです。

イオングループが扱う資材を包括的に提供できるサプライヤーを目指しています。こうした中、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」の包装包材の受託拡大に注力しました。また、課題とする収益性の改善に向けて、物流コストの削減に取り組みました。

7.自販機セグメント

売上全体の10%程度を占める自販機セグメントです。Q3単では増収増益となっています。ここ最近迷走した結果、収益が低下していましたが、とりあえず底打ちしたでしょうかね。サイネージ型や電子マネー対応の自販機へのリプレイスを続けてきましたが、収益モデルを改善する取り組みに目途がついたとなっています。

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ハード主体でサイネージによる広告収入等を目算して取り組んできましたが、もう少しシンプルな方針に転換したようですね。立地場所を再検討するとともに、量を展開すると飲料の入れ替え等の管理コストも上がることから、量を追わずに設置することにしています。その上、中身についてもかたくなに自社製品を並べるのではなく、メーカ―混合させ利用者へ訴求力のあるラインナップにすることで対策しています。決算短信には以下のように解説されています。

一台当たりの収益力を高めるために、各飲料メーカーの商品を取り揃えた自社混合機の設置拡大を進めるとともに、自動販売機の立地環境の見直しに取り組みました。

加えて、ハードの耐用年数を実情に合わせることにしたことから、償却期間が長くなり、その分、その年の利益を若干押し上げることになっています。これは実力値があがったというより会計上の見た目がよくなるだけですので、その分は留意しないとなりませんね。

自社混合機の入替期間実績および物理的寿命などを総合的に勘案し、その耐用年数を見直した結果、減価償却費が減少し、業績に寄与しました。

8.サポートセグメント

サポート事業はカジタクの不正会計の問題が絡み、前期比や過去推移の比較の意義が薄いため、キャプチャは割愛します。カジタクを除く業績としては増収減益ですが、売上全体の5%程度となり影響は軽微です。(カジタクの不正会計は雪だるま式に費用が嵩みイオン本体にすら影響を与えてしまいましたけどね)

9定量進捗のチェック

PLの各推移をチェックしていきます。セグメント毎に見てきたとおり、やや売上が弱く販管費率も上がり、営業利益は増益幅こそ大きいものの、カジタク影響除くと渋い増収増益です。ですが、同社の場合、グロースではない捉え方をしているので高望みをするものではありません。安定業績で配当を出してくれればいいですね。

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通期業績予想は売上3,150億、営業利益は180億となっていますから、黄色の4Qが業績予想達成に必要な数値となります。会社から開示されている決算説明資料にもこの達成に向けた取り組みとして言及がありますが、すぐに数値になりそうなものというより、もう少し長い時間で楽しみにしていくような内容にも取れます。数値面でみると、ハードルが高い気もしますし、実際未達になるリスクもありますが、それもまた致し方かなと思います。

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なお、配当の事に言及しましたが、同社の配当の推移は以下です。

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10.IR照会

現在照会中ですので、改めて可能な範囲で追記します。(2010/1/11)

11.さいごに

IR照会前ですが、各セグメントでは成果として期待が出来るものや課題がみられるところなどまちまちです。足元の状況はこんな調子ですが、不正会計で信頼も失墜したわけでもありますから、これからまた着実な業績で信頼回復をしていって欲しいと思います。今期は未達リスクも台頭する決算となり株価の反応も気掛かりな部分もありますが、長い目で見てどうなるか楽しみです。株価はこんな調子なので、また戻ってしまいますかね・・・。

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12.参考データ

各種データの詳細について重複する部分もありますが、ここに貼付しておきます。

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