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全国保証(東証プライム/7164) 株主総会レポート 2024/6/14

 東証プライム上場の全国保証の株主総会に出席しました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。


1.参考記事 

 参考として直近UPした新中計に関する所感と、昨年の株主総会のレポート記事を再掲しておきます。よろしければ合わせてお読み下さればと思います。

2.基礎情報

 冒頭、総会全体の流れを共有しておきたい思います。といっても、株主総会の様子はライブ配信もされていましたし、後日録画が公式IRページにUPされると思いますので、こちらの記事では質疑の部分のみ記載をしていきたいと思います。なお、毎年の事ですが、以下運営はほぼ数分の誤差があれど同様の流れで進んでおります。

  10:00 開会 (青木社長)
     ~議決権数の報告、監査報告は割愛~
     ※社長が審議に足る旨と監査適正の旨を一言言及して終了
  10:04 報告事項(動画ナレーション)
  10:16 対処すべき課題 (青木社長)
  10:21 議案上程 (青木社長)
  10:26 質疑応答
  11:15 決議、選任取締役紹介
  11:20 閉会

3.質疑応答

 早速、質疑応答の様子をメモ残していきたいと思います。★印は私が投じた質問です。またここでのメモは、私なりの解釈で大いに脚色しています。従って、実際の質問や答弁の内容と差異がございますので、ご参考程度に留めて頂ければと思います。
 なお、回答者は特に明示化していない場合は、青木社長が答弁されているとご理解下さい。また、質問は1人1回につき1問までという協力の要請がありました。

★Q 社長交代後の状況について
 青木さんが社長のバトンを受け継ぎ、中計の進捗も計画を上回るペースで進捗と表現されてるように、順調なスタートだったと受け止めている。中計1年目として住宅ローンのプラットフォーマーとなるべく様々な種まきもされその芽も出てきている一方で、それが大きな果実になるにはまだ道半ばという部分も多いかと認識している。青木社長は昨年のこの場で「今褒められることをするのではなく、未来に評価される事を起点に行動したい」と抱負を語られた。未来志向で会社をよりよい方向へ導かれているとたと思うが、ご就任後1年が過ぎた今、成果や課題感について率直な手応えを伺いたい。また、石川会長にはバトンを渡した青木さんをどのようにサポートされてきたか、その上で青木さんのリーダーシップの発揮状況をどのように評価され、更なる期待感もあれば併せてお伺いしたい。
A
 昨年4月に就任後、しっかりやっていこうというプレッシャーの中でしっかりやってきたつもり。中計に掲げているオーガニック成長については、新規の伸びをきちんと実現出来た事(+9%)は成果だと認識している。また、インオーガニック成長はこの3年間で1.2兆のポート―フォリオを積み上げる目標を掲げたわけだが、1年目であるこの期間において0.85兆を獲得する事が出来て、千葉興業銀行様の分をMAしたことにより0.5兆の獲得が出来る見込みで1.3兆円を既に具現化出来ている点も大きな成果だと思っている。
 一方で未来志向という観点から、現状の延長線で今後も成長していけるのかという点についてはまだまだ考えていかねばならない課題。温暖化、金融市場の動向、地政学的な動向、AI活用等マクロ環境の前提も大きく変動している中で、当社もマクロ環境に依拠している事は事実であり、この先の未来志向でより大きな絵を描いていく必要性を感じている。そのために社内で「今褒められる仕事ではなく、未来に評価される事をしていく」ということを力強くリーダーシップを発揮してきたつもり。まだ1年目ということもあり、大きな潮流にはまだ至っていないものの、社内の機運も大きな一歩を踏み出せている手応えを感じている。(青木社長)
 端的に申し上げて、業務執行において先頭に立ってよく頑張ってやって頂いている。会議の場などでも自分の主張を出しリーダシップを発揮している。元々青木社長は元々管理畑で営業経験が少ないながらも、精力的に提携金融機関先へも訪問し、TOP会談も含めて営業活動をしていた。特に大手地銀・信金とのリレーション構築も進み、やるな、と思った。会社にとってこういう深化が深められている点は良い事だとも思っている。
 一方、課題という点でいえば、外部接点は深耕してきた中で、地方支店の職員との接点を中心に内向きのコミュニケーションをより図り、特に若手社員とも接点を持ち、社長の想いを伝えていく事で会社がより同じ方向への歩みを加速していけるのではないか。
 私が心掛けてきた事としては、でしゃばり過ぎない事。きちんと託し、そして必要があれば相談を受けるのでそういう時には真摯にアドバイスをする、というような自分の立ち位置をしっかり意識して過ごしてきた。私がこれまでやってきたことで良い事は続けてもらえばいいし、どんどん変化させた方がよいと思うことは良き方向に導いていってもらえればいいかなと思っている。二人のやり方のいい所取りをしていってもらえれば、会社にとってより良くなっているものと考えている。(石川会長)
■考察
 青木社長はまだお若くて、決して弁が立つような方ではないのですが(失礼)、しかし石川さんと同様、まさに真面目さが体からあふれ出すような方なのです。そして冷静沈着な立ち振る舞いの中でも、結構熱い心のようなものが感じられる答弁に感じました。
 正直、この会社に質問で何かを迫る、という必要がない位に優秀な経営をされていますし、株主総会の趣旨で見た時に重箱の隅をつつくような定量的な細かい話を議論しても仕方ありません。ですので、質問としてはこういう抽象的な内容をまず選択しました。
 決算説明資料では中計の進捗でも「計画を上回る推移」と一言で済ませられていることも、インオーガニックの獲得ひとつとっても、定量的かつ自分が手応えをもって取り組めているんだという説明を聴けば、よし、今後も託しておこうと思えるではないですか。
 そして、バトンを託した側の石川さんにお話ししていただいた方よいとなると、こういう質問になるのです。事実、お話頂く事で、よりこの1年の成果や課題のようなものの理解も深められた気がします。管理畑のキャリアである青木さんが、決して雄弁ではないだろう中で(再度失礼)、しかし誠実に真摯に金融機関を行脚し、営業活動を頑張っておられた、それによって、会社の価値を上げるような事に繋がっているんだと、長年この会社でリーダーシップを発揮された青木さんが、こういう場で発言なさる事は素晴らしい事だなとも思いました。
 この会社が一見すると安定した地味な事ばかりに捉われているとも思われがちですが、未来志向で社員のマインドから変えていく活動、そしてその大きな一歩を踏み出し、それが今後の1年、2年で大きな潮流となっていく事を楽しみにしていたいなと思いました。
 実は社外取締役の上條さんにも社外取締役からの目線についてもお話を頂きたいなと思っていたのですが、今年の出席者が多く、流石に冒頭で時間を使いすぎるのもな、と思い自粛しました。結果、この株主総会を通して一度も社外取締役の方がお話されなかったのは残念でした。

★[コメント] 株主急増を踏まえた優待制度について
 株主数が5万人からこの1年で9万人と急増している。これに伴い、株主優待のコストも上がっているものと認識している。当社の優待制度はこれからも楽しみにしていたいと思う一方で、コストが優位となる事への懸念もある。短期株主と長期株主との間での制度設計を含めて最適な方法を模索頂けるようにお願いしたい。
■考察
 クロス対策せいや、までは流石に直接的には平場では発言しませんでしたが、流石に株主数9万人に急増はびっくりでした。もちろん新NISAなどで純粋な株主も増えている事と思いますが、だとしたら、余計に制度設計を改めても良い時期に入っているのではないかなと感じました。

※注記
株主数9万人は総数であり、単元未満株主が約2万人存在しているようで、実際の株主優待対象となる株主は7万人程度となるようです。というか単元未満株主がこれだけ多いということはやはり単元が高過ぎるということですよね。

Q 女性活躍について
 政府の方針に則って女性活用の指針が出されている。当社の女性取締役の比率が低く課題があると思うが、女性活躍の課題認識について比率を含めて欲しい。
A
 当社において女性活躍について重要だと思っている。当社の取締役の登用について企業価値向上に貢献する資質、事業に精通した職務力や倫理観など当社において大切だと思っている選任基準がある。またサクセッションプランにおいて、こういった能力を高めるための教育にも力を入れており、男女の識別なく、教育をしている所。能力や資質をきちんと評価する仕組みを入れており、女性も然るべき方を社内プロパで登用出来る事が望ましいと思っている。今回の選任議案可決後は23.1%となり、望ましい比率として2030年までの30%に届くように、しかし能力と資質をきちんと見定めて対応していきたい。
■考察
 表面的に女性活躍、女性登用積極的に頑張ります、という回答でなかったのがいいですね。あくまで能力や資質等の企業価値向上に資する選任をする事が大切というトーンに聞こえました。そしてその比率を満たすために、形式的に社外取締役などで充足させていくというようなトーンでもなく、バランスがいいなと感じました。女性だからと優遇されたり、逆に冷遇されたりという事はない方がよくて、ニュートラルに進んでいって欲しいですね。

Q 営業費用の増加について
 前期に営業費用が増加しているようにみえる。この理由を教えて欲しい。また今後の経営において収益面を毀損していく懸念を抱いたが、この辺りの見通しも併せて教えて欲しい。
A
 営業費用の増加の主因は与信費用や社員の処遇改善となる。与信関連費用は、コロナ禍で様々な支援策が取られていた事で一時的な代位弁済が低位になっていたものの平常化が背景にある。元々計画の範疇で進んでおり、懸念が高まっているという認識は不要。処遇改善は中長期的な視点で必要な施策。7%→5%とベースアップを継続している。
 いずれの費用もきちんと中長期的な状況を踏まえてコントローラブルなので今後費用先行が続いているという事はないのでご安心頂きたい。(山口専務)
 必要な投資については積極的に行っていきたい。処遇改善に加えて、人の教育という側面で資本投資にもなる。システム投資も成長に必要であれば躊躇なく投資をしていきたい(青木社長)。
■考察
 この辺りは確かにYoYだけをみると増加しているようにみえるので、もう少し丁寧な説明があった方がいいのかもしれませんね。そもそも保証債務残高に沿って、一定の損失率をもって引当金を計上しておく必要があるため、自然体では増加しますからね。
 そしてコロナ禍の政府支援策の作用もあり、むしろここ数年が異常値であったわけですからね。

Q 提携金融機関数の減少について
 提携金融機関数が減少している。これはどのように考えたらいいのか。今後の見込みや目標を教えて欲しい。
A
 JAを中心にして、金融機関の合併等が進んでいる影響によるものであり、金融機関側から解約を申し出を受けることはない。国内機関で未提携は十数行となっており、もう大きな増加は見込んでいないが、ネット銀行については積極的に提携模索していきたい。(浅田取締役)
■考察
 この質問もあるあるなんですよね。行数べースですとミスリードしますよね。せめて資金量ベースでみるとか、もう既に倖っている事を考えると、今後は提携先の利用率を示す方がより有益な気がします。個別行毎の利用率は開示が難しいと思うので、業態別とかですね。メガバンク、信金、JAなど毎に提携先の利用率とかがあると、まだ伸びしろを示せるのではないでしょうかね。

Q 投資について
 未来に向けた投資を志向しているが、どういう方向性での投資を志向されているか。
A
 資本の考え方として、保証を引き受けるビジネスであり、必要資本は留保する必要があり、超過分を余剰資産として投資と還元をバランスを見て投下することしている。我々はこの余剰部分を活用するフェーズに来ている。当社の事業規模を拡大出来る方向での投資が基本。現状積極的に取り組んでいる事としては金融機関の保証債務を受け入れるMAを志向している。
■考察
 インオーガニックを更に枠を広げていくことや、そもそも未来志向とするともう少し業態を超えた先へのアプローチ等も関心があります。

★Q IR活動について
 機関投資家との対話も社長自らも対応されており、1on1も含めて積極的な発信をされている事と思う。IR活動が単なる形式的なセールスではなく、対話を通してなんらかの有益な機会になっている事を期待しているが、当初に対する様々な投資家の声として、どのような将来の期待感や課題感提示を頂いているか。また、最近では様々な投資家とのQAの様子を広く開示し、それを通して会社の理解や魅力を発信するというIRをされている会社さんも増えている。業種的にもどうしても保守的な部分もあるかと思うが、広くIR活動の意義を高めていくためにも発信強化を期待したい。合わせて、個人投資家向けのIRも、最近ではQA等を通して対話が進むような場も増えていることから、そういった新たなフィールドにもチャレンジして頂きたい。
A
 IR活動については精力的に行っている。国内機関投資家、個人投資家、海外投資家など様々。そして大切なのはバランスだと思っている。投資家、株主、従業員、顧客という対話が大切。
 機関投資家から言われる事としては、認知度が足りないというご指摘。IRをやってきた立場からすると悲しい現実だが、指標面でも経営面も優秀なのに、知名度がないという事が課題。積極的なIRとして勉強会などの機会があるのであれば積極的に検討して参りたい。 
■考察
 同社がこれだけ株主数が急増している中でIRに課題があるのか?という想いもありつつ、この質問をしました。この辺りはIR情報や対話機会がもう少し増えたらいいなという想いでした。kabuberryさん、湘南投資勉強会、神戸投資勉強会、リンクスリサーチさんの勉強会等具体名をあげたかったのですが、会場のプレッシャーに負けました(笑)。

Q 金利動向の影響について
 今後の金利動向の変化の影響を教えて欲しい。
A
 金利動向の影響はプラスマイナス双方ある。金利上昇で金利負担による代位弁済増加等の懸念は確かにあるが、現状の上昇程度であれば問題ないし、審査でもその点は考慮出来ている。また住宅購入意欲の低下などもあるかもしれない。一方で、我々の資産運用面での利ザヤ獲得、あるいは金利変化に伴い借換需要による新たな保証機会というものも考えられる。現状をみると、プラスの方の作用の方がつよいのではないかと思っている。
■考察
 この質問ももう沢山出てきますね。決算説明資料に明記されていますが、なかなか情報が伝わるって難しいんだな、と思いました。

Q 少子高齢化の影響
 少子高齢化により住宅購入層が減っていくマクロ環境の中で成長機会に限度はないのではないか。
A
 オーガニックの成長はまだまだできる。確かに少子高齢はあるものの、我々のシェアはまだ8%程度と低い。金融機関も積極的に住宅ローンを扱う中で、シェアを取る事で大きく成長余地があると考えている。また中古リフォームという需要も大きく増えてきている。この扱いは今後空き家問題等もあり高い伸びが予見出来る。このような背景もあり、まだまだオーガニック成長は続けられると考えている。
■考察
 こちらの質問もありますね。この辺りは伝え方、伝わり方の工夫が更に必要なんでしょうね。
 こういうよくある問い、って先に事業報告の中で、1ページに纏めて列挙して予め説明おくといいんじゃないかなと思いますね。

Q 人的資本の増強方針について
 成長のためには、人的資本の方針として、人を増やしていくのか、あるいは生産性向上で1人当たり売上を上げていくのか。またインオーガニックの部分のMAにおける人的資本を含めた採算性はどういう目線なのか。
A
 業務効率化をかねてより進めていることもあり、能力向上の教育も続けていることから、今後の成長を果たしていくために、大幅な人を増やしていくというより、効率を上げて対応していく事が基本方針。新規領域の部分は新規増員も必要だと考えており、人員計画を策定している。(山口専務)
 MAについて利益水準はデューデリを行うが、新規を受ける際と同じ手法で精査をしている。新規と同じリスク査定をしている事もあり、まず利益水準は同等を確保するということになる。その上で、人員構成等を踏まえて人的コストは都度個別事情勘案するが、ROE成長も果たす観点で利益率を落とすような政策は考えていない(青木社長)。
■考察
 この質問はいい質問ですよね。効率があがるなら更に利益率が上がってしまうのか!?って思いつつ、まぁ新規領域などの人員計画もあると思うので、全社でみれば現状維持シナリオなんでしょうね。
 それからMAする際のデューデリの話は、新規引き受けと同等でやっているというのは初耳でした。

4.さいごに

 本当はもう1問、ある方から託して頂いていた質問があったのですが、諸々の状況を踏まえて再度挙手は出来ませんでした。今年は参加者も増えて会場を半分で仕切った50席余りは満席となり、後方側の席も一部オープンになっていたようです。
 当社はストックビジネスそのものである中で、積極的な還元姿勢も堅持しつつ、保守的な会社でありながらも少しずつ新たな領域へのチャレンジに向けた変化も感じられました。金融機関においては、資本コストを意識した経営を志向していくという中で、自行のリスク資産を外出しするような機運も高まるという中で、全国保証の存在価値がより高まるような雰囲気も感じられます。堅実な経営の下で独立系であることや、高格付を取得している事によるバーゼル規制への対応という点でも一定のメリットもある状況を創り出す事が出来ています。また今回の質問でもあったように少子化や金利動向という表面的に見えてくる同社のリスクについても、実はネガティブな話ばかりではない、むしろプラスになるということが少し考えてみると理解されうるという逆説性も有しており、こういう部分でも投資先として魅力を感じています。もちろん、急激なマクロ変化等があった時に、費用先行というリスクは保証会社という性質上なくはないので、この辺りのリスクを見据えながら長期投資を志向する上で、私のようなずぼらな性格の人にはちょうどいいなと感じている所です。
 株価が急騰するような会社でもないですが、その元で安心して見守れる会社だと思っています。青木社長のいよいよ助走期間の1年を終えて、より本格的な始動していけると思い期待を寄せています。
 頑張れ、全国保証!

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