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【決算メモ】シュッピン(東証PR/3179)_25/3期Q3

 自分が投資している会社や思い入れのある会社など、気になった決算を緩く記事として残していくことにしたこのマガジン。

 本日はシュッピンさん。カメラと時計などの嗜好品の中古EC販売を手掛ける会社さんです。1商材1屋号でECメインで仕入販売を行うビジネスモデルです。筆記具や自転車用品のお店もありますが収益貢献は小さいですね。

 新宿にリアル店舗が1店舗ずつあるわけですが、ECがメインとなります。しかしこのリアル店舗で免税売上がそこそこあって、インバウンド需要に期待が右往左往するというのも恒例となりましたね。

 主軸のカメラは最近の撮影機会が増えていることもあったり、女性ユーザーへの拡がりなんかもあって全般堅調に推移してきていました。一方で時計はロレックス相場の投機的な動きもあって、苦戦しているという状況です。とはいえ、足元でAI活用などにより価格マネジメントを強化したことでようやく最悪期を脱しつつあるというのが今期進行期でありました。

 そして、ここにきて、3Qの繁忙期にやらかしましたね・・・。まぁ同社がやらかすのは長い年月株主として寄り添っている中で、慣れっこなんですが(笑)。まぁこのやらかし、ざっと3点ですね。というかボロボロですね。

①カメラ事業でAIMDのチューニングによって挙動がおかしくなる+ポイント施策の影響で粗利率コントロールが取れなくなった(利益率減少)
②時計事業は市況回復やAIMD効果もあり最悪期は脱したようにみえるものの、計画利益を確保できず
③基幹システム開発において方針変更があり減損損失(特別損失計上)

 これだけの悪材料がありながら、業績予想修正はなく、出尽くしとならないところが辛いですね。こういう時は東証の開示基準云々に関わらず業績予想修正を出した方が賢明だと思うんですけどね。そしてせめて株価的に最後の砦となっている配当予想についても維持するのか減配するのか、明確にした方がよいように思います。四季報とかでは会社予想比強気のニコちゃんマークまで付いちゃってますからね(笑)。むしろ、ダブルの涙マーク?くらいでしょう。ホラーですよね。。。

 とりあえずこの3つの件について順番に見ていきたいと思います。

 まず、①のカメラ事業の粗利低下についてですね。以下のスライドがあります。

 7月よりチューニングを行ったことで不安定になった?と思って、ということは2Qで既に検知出来ていたということになります。実際カメラ事業のセグメント利益をみると、利益率は2Qの時に11.0%と前2Qより▲0.4ptでした。私はこれは軽微なうえ、大型新品の寄与があったことを考えると、新品寄与率の高まりによるものかなと受け止めていました(新品の方が利益率が下がります。そして中古比率が下がっていることも示されていましたので)。加えて挙動がおかしくなったといっても仕入-販売までのリードタイムを考えるとまだこの悪影響が2Qでは限定的だったとみられるので、実際この3Qで顕在化ということだったのでしょう。
 にしても、7月にAIMDのチューニングについては影響が出る事を検知していたのもあるのであれば11月の2Q決算でチューニングを実施したなど、もう少し説明があった方がよかっただろうと思っています。今期中に正常化できる見込みということは、まだ正常化できていないということでもありますし、不安定な挙動の中での3Q仕入分の作用が4Qに残るということで、絶望しますよね(笑)。
 その上、ポイント付与額が大きくて利益率が下がったって、もう何年このビジネスやってるんですか、という感じなんですね。何より、これだけポイント大判振る舞いして売上好調といわれても、特段驚くような売上推移でもありません。むしろポイント施策強化してこの売上ですか、という印象です。

 ②の時計事業については、冒頭のスライドに軽く言及があるだけで、特段計画未達の説明がありません。売上利益が計画を下回ったって一言だけなんですよね。

 しかし先のカメラ事業も含めて事業別のトピックスなるものをみると、順調とか好調というニュアンスなんですよね。あれ、ともに計画アンダーであるはずなんですけどね。しかもカメラについては、ただ左側の数値の説明をしているだけで、全然トピックスじゃないんですよ。

 例えば「カメラの大型新品の投入により単価増による売上増はあったが、利益率はAIMD挙動不安定も重なり弱めとなった。」とかね。システムトラブルの影響もあり一時的な販売抑制も作用とか、書くべきトピックス色々あるでしょ、って思うわけですよ。

 そして、③の基幹システムのリプレイスにおける減損については、もはや決算説明資料において言及すらありません。以下のリリース一枚紙だけですね。

 元々、シグマクシスグループとの資本業務提携により、コンサルやシステム開発力を強化させていく方針も打ち出されていました。実際、4つのしんかの施策の一軸としてこのシステム強化が謳われておりました。
 しかしながら、CTOの退任などもありましたが、更に減損損失ということで、由々しき事態です。
 しかもIR照会したことを踏まえると、最終的な基幹系リプレイスの方針に変更はないながらも、開発資産を減損するに至るプロセスでは懸念が残る内容にも感じられます。
 ECを主軸にする会社として、システム領域になんとなく弱さや課題を感じることはこれまでもそうだったわけですが、更に残念な気持ちになりますね。何が前提から変わり、何が変わらないのかなど、きちんと決算説明資料でも説明した方がいいと思うんですけどね。そして、この件とは別に期中で今年もシステムトラブルで一時期EC販売が止まる、みたいなこともありましたが、システム部門の弱さが綻びになって見えている感じがします。

 一応PLもみておきます。Q3は年末商戦などで同社の繁忙期にあたります。ですので、この期が終わると概ね通期の見通しも確度が高まります。今回でみると、下方ですね。Q1の走り出しで好調な中で、なぜAIMDのチューニングをすることになったのかがよくわかりませんが、Q2こそ持ち堪えたもののQ3で減速感が鮮明になりました。まず売上がYoYで前年比伸長が止まったようにみえます。ほぼ前年並みです。ポイント施策の強化とか、カメラの大型新商品などが寄与していてこれですからね。そして、営業利益率も4%台と低位で23/9期を彷彿とさせる状況です。AIMDのチューニング影響がまだ継続するだろうQ4としてみると、本当にQ4でも営業利益率が低位継続なりそうですね。決算賞与でいつも同社はQ4調整されるのですが、このご時世で出さないというわけにもいかないでしょうしね・・・。

 売上は1月月次がなんとか2桁伸長で、なんとかQ4期間で10%増となれば、Q4売上は136億程度。営業利益率を3-5%程度とみると営業利益は4億-7億程度。そうなると累計で売上532億、営業利益は30-34億で着地と試算できそうですね(まぁQ3の試算も大きく外したので当てにならないですが(笑))。通期業績予想が39億で四季報予想は41億です。破産ですね(笑)。

 冗談はさておき、こうなるとEPS100円、配当は維持するとは思うのですが、方針通りとすると35円くらい。そうなると配当利回りは3%台まで下がることになります。優待価値をどうみるかですが、これだと単元保有だけしておくという株になってしまいそうですね。

 かつてグロースとみられていた時にはPER10倍台後半、20倍台なんてこともありましたが、今では1桁となっています。とはいえ修正後で見ると10倍は超えそうではあります。とはいえ、かつての栄光はどこへやら、ある程度株価には織り込まれていそうですね。いずれにせよ、配当+優待の還元が最後の砦になっていそうではありますね。

 何より、決算説明資料の説明を含めて全体的に誠実さに欠けているな、という印象なんですよね。恐らく私はそれなりに長い株主で株主総会にも比較的出席率が高いのですが、そんな自称ファン株主の私も失望するくらいですからね・・・。

 なお、私はこの決算前に悩ましくありました。ここまでQ3の決算が悪いとは思っていませんでしたが、時計の回復が緩慢、カメラは新品の兼ね合いやシステムトラブルなど総合的に考えてそれなりに数値が出ないだろうなと思っていました。とはいえ、現物をこれ以上売るのも憚られ、結局絶対にやりたくはない空売りを入れて決算を迎えました。現物保有をしながら空売りするなんて正気か?と思いますし、自己矛盾にも相当悩みました。通常このようなことはしないのですが、もう悩みに悩んでの対応です。悲しいです。

 まずは中計ローリングをもう少し現実的な路線にしてもらうとともに、ガバナンスが脆弱である点をなんとかしてもらわないとなりません。もちろんこういう行き届かない所があるからこそ、保有していて楽しいというのもあるのですが、大いにIRさんにもコメントとして意見表明させて頂きました(笑)。出禁になるかもしれませんが、そうなったら、現物もすべて売却してお別れですね。

 私はロレックスのことはわかりませんが、カメラのことはそれなりにわかっているつもりです。多くのカメラ愛好家から好まれているマップカメラ。そこまで高い成長なんて企図しなくていいので、むしろエンゲージメントを高めて堅実な経営を志向してもらってもいいかなと思うようにもなりました。この辺りはまた今後も対話を続けていければいいなと思います。まぁ会社側から忌避されたらもう諦めますが…。
 頑張れ、シュッピン!
 


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