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エイジア(東1/2352) 2021/3 Q4決算精査
エイジアの2021年3月期Q4本決算が開示されました。当記事において決算の内容を精査したいと思います。あくまで個人的見解に基づき記載しておりますので、誤認等もあるかと思います。お気づきの点などございましたら、ぜひツイッターからお気軽にご指摘を頂ければ幸いです。
冒頭に参考記事として直近の決算精査記事と前回の株主総会レポート記事を再掲しておきます。
1.サマリ
21/3期はQ3での業績予想修正内容に準じた着地となりました。ただ、ままちゅの事業毀損による特損を計上し、純利益ベースでは下振れの着地となりました。コロナ禍の影響もあり、特に上期のビハインドを下期で挽回をしましたが、増収減益決算となりました。但し配当は特別損失の影響を反映せず、減益ながら増配基調を維持しています。
中身についても主力のクラウド製品の売上が伸長しています。しかしながら、SaaS型とASP型でそれぞれ課題も含む部分もあり、これは今期以降の施策に期待をしたい所です。またコネクティのM&Aが下期より寄与しており、一段業績数値が持ち上がっています。ただのれんもついているため、EBITDAベースでは増益ですが、営業利益ベースでは減益となっています。
今期ガイダンスは強い数値が出ています。3割の増収、4割の増益を見込みます。このため、中計の数値もローリングをかけています。わざわざ上方とタイトルに入れる位やる気に満ちていますがその分ストレッチが少し強いのではないかというのが気になる所です(笑)。ただ、四季報の予想も同じような水準ですから、どうなんでしょうかね。
定性的な取り組みとしては、顧客満足を高める施策がいよいよ準備も整い、今期から本格始動となります。これまでカスタマーサクセスチームの組成が前面に出ているだけでその活動内容はあまり見聞きできませんでしたが、今回は一歩具体化したような印象があります。クロスセル、アップセルのそれぞれの施策も含めて前期に様々な種まきをしてきたことを実行するフェーズに入ってきます。必要となる成長投資に係る構造の説明も具体化されてきており、まだコロナ禍から社会は脱却しきれていないわけですが、同社はぜひいち早く攻めの姿勢に転じて頑張ってもらいたいと思いますね。
2.数値状況
それでは数値をみていきます。まずはPLからですね。
EBITDAベースでは増益ですが、償却費関連の負担などで営業利益以下では減益です。コロナ禍で利用機会が増えるフォローもあり増収基調が強い状況でした。
四半期単位の数値は以下の通りです。特に下期の増勢ぶりが凄いですね。そして上期においても底堅い推移をみせてくれていました。むしろコロナ禍の影響というより償却費の増加が効いている気がします。償却が増える中で、Q4は営利率も25.8%と過去を遡ってもいい形で利益が出ていますね。
セグメント毎は決算説明資料にわかりやすく記載があります。
主力のアプリケーション事業でクラウドの伸長が続いています。オーダーメイド開発だけが前期比減少していますが、元々個別SIの案件はリスク度合い等を踏まえて既存案件に関連したものだけに絞っており数値も極小のため、影響は無視して良いと思います。EC事業も前期が悪かったため、一旦回復ですね。
クラウド部分が好調ですが、コメントを見るとASPが好調とあります。となるとSaaSは?と気になりますよね。まして、高価格帯のため、全体数値に与える影響は大きくなりますからね。というわけで、その内訳としてARRが開示されているためみてみます。
Saasの伸長がやや頭打ちのようにみえますが、どうでしょうか。ASPが確かに伸びていますし、全体としてはCMSのMA寄与もあり伸びています。継続契約数と解約率もみておきます。継続数は双方共に足元で横ばいにみえます。また、課題であったASPの解約率は高位です。元々2%を1%程度にまでもっていきたいという目論見がありますが、まだまだここは課題が残っているように思います。過去並みを維持という文言はやや無理がありますね(笑)。いずれにせよ会社側も課題認識しているようで、22年3月期の重点施策にも挙げられています。どうしても年賀状の発出など突発的な利用シーンもあったでしょうから、どうしても反動減が出てしまいます。せっかくの顧客接点ですから、継続して利用してもらうシーンの提案がうまく奏功するといいですよね。カスタマーサクセスの本格導入によって注力してもらいたいです。
利益項目についてもみておきます。人件費がしっかり増えているのはいいですね。ここを絞ると人材流出や士気の低下を招きます。しっかり処遇していって欲しいと思います。外注は自社リソースだけでは対応できない一過性の案件が生じた時には止む得ないですね。
そしてEBITDAから償却関連が控除され営業利益になっています。株式報酬費用もあと1年続きますね。結構地味に大きいんですよね。
今回からコネクティのCMSのデータも出てきました。まだ契約数は少ないのはWebページでみればわかっていましたが、単価がここまで高いんですね。エイジア本体のSaaSより遥かに多くでちょっと驚きました。そしてこの水準を付加価値として維持しながらスケール出来るのであれば楽しみですね。営業増員でそれが実現なされることなのか売り方まではまだよくわかりませんが、期待をしたいと思います。
バランスシートもみておきます。資産ではソフトウェアが仮勘定も含めて増えています。M&Aの影響もあると思います。そしてのれんも大きく乗りました。とはいえ5億ですからね。また長年無借金でしたが、エイジアも遂に攻めの姿勢に転じるという事で借入金を入れています。自己資本比率は56%まで下がりましたが、各指標はいずれも全く問題になるような状況ではありません。
キャッシュフロー計算書です。フリーキャッシュフローがマイナスになっています。営業CFも伸びているのですが、それ以上に積極投資ですね。無形固定資産の取得ということで、一時的なものかと思います。
以上、21/3期の数値については、コロナ禍にあって、よく頑張って成果を出してくれたと思います。M&Aの寄与も始まりましたし、ASP型の解約、SaaS型の伸長鈍化などの課題への対処も含めて22/3期の施策に期待したい部分もありますが、決算内容としては総じてうまくフォローの風も活かしており良いと思います。
3.今後の見通し
前期の実績に続き、今期以降の見通しについてみていきます。まずは今期ガイダンスについてみておきます。
売上31.5億、EBITDA8.5億、営利6.0億で純利は前期の特別損失があったこともあり+52.3%の3.4億です。伸長率では強い増収増益率となっています。ただ、同社はまだ絶対値が少ないこともあり、率にすると上も下も大きな数値になりがちですね。
ちょうど1年前に中計数値目標を設定していましたが、本日中計数値のローリングがなされています。中計のローリングなのですが、「上方修正」とタイトルに入れるのはやや煽りっぽいので控えた方が良いと思いますけどね(笑)。前回発表はコロナ禍の真っ最中だったので、どうしても保守的になっていた部分もあろうかと思います。それにしても結構強いですね。
この背景としてまず前期にコネクティ社のM&Aのご縁に恵まれたことによる通期寄与とクラウドの顧客獲得が想定超に推移したということで、ベースが持ち上がったことによるものです。そして今期はカスタマーサクセスの体制強化を通して、このクラウドの伸長を+25%見込むということです。
カスタマーサクセスの取り組みは中長期的にとても大切で、それに沿った活動をしていると評価していますが、一方でそれが思惑通りにいくかは外部環境も含めて容易くはないと思うので、少し強気予想を出すかつての肉食系IRの様相が滲んでいる気もします(笑)。
このカスタマーサクセスの重点施策は今期の肝だと思います。コロナ禍による経済影響等はあまりコントローラブルではないですが、この重点施策は自社の取り組みですからね。そしてその内容が一歩具体的になった印象です。
以下は昨年の新中計発表時の際のカスタマーサクセスに関するスライドです。
SaaSのスタンダード(旧ASP)の解約率は前期は高位だったこともあり、ここは改善余地があるということでまず1個目の効果期待を挙げています。どうしても使用用途が年賀状とか一時的なものもあったことでしょうから、単純に出してしまうとこうなるのはある程度止む得ないのですが、それでも折角の機会を活かせるような取り組みは推進してもらいたいですね。
またこれらの顧客に対してクロスセルを行い、付加価値をより感じられるような提案をしていくということですね。結果として単価が上がることになりますが、まずはカスタマーサクセスを積み上げる事が大切ですから、適切な提案で機会創出を図られることを期待します。
更にSaaSプレミアム(旧SaaS)は幅の拡大よりアップセルに取り組むようです。多くが大手企業でしょうし、プライベートクラウドなので、自由度も高いはずです。ですからニーズを上手く収集し、機能追加を図ることや一種のPoCのように製品力を高める事が出来れば同顧客内のアップセルだけでなく、横展開まで視野に入るのではないかと思います。
いずれにせよ、このカスタマーサクセスの重点施策の取り組みが今期の業績はもちろん、この中計期間の確度を固めるために重要なものですから、頑張ってもらいたいなと思います。
もうひとつの重点施策はM&Aの推進です。といっても今はコネクティを仲間に入れたこともあり、まずはここのシナジー出しを優先した方がいいのではと思うのですが、色々模索は続いているのでしょう。
こちらも昨年の中計の資料では以下のようなイメージだったので、なんか色々動きだしている感がありますね。新株予約権による調達で10億円ですか。時価総額80億円ですからね。というかまだまだ借入できると思うんですけどね。あと株主還元が昨年の資料からみるとだいぶ補足なりましたね(笑)。いやいいんですよ。何なら無配にしてもらってもいいです。それだけ成長するならですけどね。
その配当ですが、以下のようになっています。成長を強く意識している割には還元に積極的な印象です。今期も5円も増配していますね。EPS85.34円なので、配当性向30%なら配当25.5円くらいになるので、配当横ばいが1円増配位でもよかったのではと思うのですけどね。なんだか色々配慮されている気がします。時価総額あげたいんでしょうね。なにせ300億円はみえているわけですからね(笑)。
更にESGの話が挿入されていますね。
一般的な話もありますが、前々から同社の特徴のひとつですが、この業界にあって残業が少ないんですよね。足元ではさらに下がっているようです。ただ人件費は増加しているため、あとは有報等で平均給与などをみて、可処分所得が減っているなど弊害がないかもチェックしておきたいですね。しかし6時間って凄いですよね。サービス残業などがあったらけしからんですが、同社はあまりそういう雰囲気を感じません。
コーポレートガバナンスへの対応もかなりきめ細かく説明されています。
いや、もちろんいいんですけど、プライムを意識しているとしても時価総額が全く足りません(笑)。確かに経営は300億はみえているってことなんで、いずれは、って話なのかもしれませんが、とにかく一歩ずつ頑張って欲しいと思います。いずれにせよこういうものを意識している事は伝わりました。
この他、技術情報の発信機会を増やしたり、集客イベントに取り組んだりと面白そうな活動は色々されています。
あとトピックスとしてままちゅの損失計上でしょうか。少し前に人事異動で代表者が変わったので、あれ?と思ったのですが、こういうことだったんですね。元々子供服のアパレルは季節変動やコロナ禍影響も大きく、西松屋等の一部がとても強い一方でなかなか知名度的にも厳しいですね。ただ、エイジアとしてアパレルをやりたいというより、EC販売サイトを持つことに意味がある(機能実験等のためにも)ため、事業評価はとっとと損失計上して身軽になっておいた方が良いとも思えます。いずれにせよIFRS適用を視野に入れると、もっと厳しくなるでしょうからね。
4.さいごに
(私が保有していることもあり)株価がなかなか伸びてくれませんが、業績面でも定性的な取り組み面でも大変好調だと思います。コロナ禍で様々な利用シーンでビジネス機会が生まれたことと、コネクティとのシナジーが今後期待されることもあり、数値面でもその堅調さが示されています。やや前のめりになってないかとかもちょっと気になる所ですが、重点施策であるカスタマーサクセスがきちんと奏功していってくれればいいなと期待しています。
またIR連絡先の藤田さんの問合せ先がついに03番号から080番号へ変わりました。直通電話でしょうか(笑)。いや、お忙しい方ですし、いつも気が引けるのですよね。まぁ今回は取り立てて今の所気になるところはないので、照会する事はないと思います。
今年は業績も好調ながら、このコロナ禍だと、社内寿司パーティは開催できなかったですかね。皆さんの益々の頑張りを引き続き応援しています。
頑張れ、エイジア!