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【企業調査(概要)】豆蔵デジタルHD(東証グロース/202A)
ライトに企業を知ろうと続けているこのマガジン記事。
今回は豆蔵デジタルHDさん。
この会社、今年のデジタル系のテーマを全部乗せしたような事業をされています。生成AI、クラウド化、AIロボティックス、モビリティオートメーションなどなど。実際に数値も特殊要因があり抑制されつつも増収増益基調で、還元姿勢も積極的で利回りもそれなりに高い状況になっています。しかし、それでもテーマ性にもてはやされることもなく、公募価格割れの状況になっていますね。
サマリです。
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事業の柱として4本の領域があります。同社はホールディングス会社のため、実際の事業は子会社各々をみていかねばなりません。この辺りは纏めるにも少しわかりづらい所ではあります。実際執行役員も含めると多くの人が活躍されており、IRTVさんにも多くの事業責任者の方が出演されています。結構珍しい気がします。このコンテンツは真面目なやつで、原稿もきちんと精査した上で望まれているような感じがします。「成長の決意」なんて文言が躍っているので、これは社風ですかね。もう少しくだけた内容のコンテンツもみてみたいですね。
それから人材育成とかに注力していそうではあるんですが、OpenWorkなどの口コミを見ていると結構厳しい内容も散見されます。もっともこれも退職者がエントリーしているものなので、バイアスもあるんですけどね…。
時価総額は200億なので、現状の利益水準だけみればそんなに割安でもないように映りますが、過去の成長基軸の状況やMBO期間中の構造改革とその後の再上場後の姿が筋肉質になっているところなどをみるともう少し評価はされてもいいように思います。なにより今後どこまで維持できるかによりますが、高ROEですね。成長していて、テーマ性もあり、指標面からも魅力に見える中で、配当利回り4%台、かつ財務も良好となるとなかなかわくわくさせてくれる感じですかね。
この会社の面白い所は、「内製化」を支援していくという姿勢ですかね。本来SIerさんって、事業会社から受託をしてお仕事をするわけですので、内製化ってある意味対局にある概念です。しかしながら、クラウド化の進展やAI技術などの発達で益々ブラックボックス化していることについて、一定のリスクだという機運があるのは確かで、一部で内製化の回帰のような事が起きているというのは、私も肌感覚が合います。
内製化→プロにお任せするという潮流が定着化してきた中で、この逆流が起きているように思います。そして同社はこの事業会社の持つ危機感のようなものにうまく寄り添い、伴走できる会社になっているということです。ですのでコンサルをしてデザインするだけではなく、それを教育として顧客内にスキルや運用を定着化させていくことで、本筋での不安解消に取り組んでいるように感じます。
多くの会社がコンサルの領域にも入り込んできますが、それは設計工程以降のお仕事を受託してもらうためのエントリーという位置づけが多く、実際に契約も分かれているのが常です。もちろん、同社の場合も同様でしょうが、顧客に真に伴走しようという姿勢があると、それ自体がスイッチングコストにもなりますからね。
ただ、これを一気通貫で実現させていくためには規模が増えれくればなおのこと人材が必要になります。同社の処遇などを新卒、第二新卒、キャリアとしてみると、全体低位のようにも感じており、この辺りが離職率低下で採用も順調という会社側の説明が一過性に留まらないか、今後継続して人を集め教育していけるかという所の確度は注視が必要に思います。成長のための源泉でもありますからね。
リスク要因のところにこの件も記載しましたが、それ以外でみると、大株主の存在は気になりますね。ちょうどロックアップが年末に外れた頃だと思いますので、今後の需給面がどうかなというのは少し気になる所ではあります。
他社比較のところは、それっぽい会社を適当にピックしましたが、ちょっと規模感が違ったり、同社のような多領域という所がなくて、ちょっと比較にならないかもしれませんね。
株価皮算用は適当ですが、増収増益基調が続くものと捉えて、採用も順調というお話なので、順調に四季報予想程度は成長をしてくれるものと思います。実際にはもう少し出るような気もしますけどね。一旦株価の目線としては2,000円程度はみられるかなという事で記載しています。
この手のSIerのような会社のPERとして20倍までみられる世界線となるかはよくわかりません。そもそも同社自身が自社を単なるSIerではないと説明していますからね。コンサル会社としてみると数値が出る事を前提にすれば無理のないPER20だと思いますがどうでしょうかね。
まぁファンダメンタルズ云々というより、当面どこかでテーマ性と還元と成長のバランスというところで順当に是正が入りそうではあります。ちょっと会社自体のイメージが真面目、変にベンチャーっぽい感じがなくてきちっとしている感じを受けますが、若い技術者などが馴染めるような環境になっているかもちょっと気になります。
頑張れ、豆蔵デジタルHD!
(2025/1/26追記)
東京勉強会での登壇の様子をみて、メモを追記しました。
・業界変革に向きあうために近日施策を開示予定。来期は業績維持や増配を念頭に置きつつきちんと投資したい(業績を維持向上を見据えつつそれなりの投資変革を継続するようだ)。
・大学進学時に親の株の儲けに助けられた。株に対しての想いもあって、きちんと還元姿勢を明示している(社長として不義理な事はしなさそうなイメージ)
・新卒採用は処遇改善を来期進める
・ERPは来期盛り上がる。凍結となるような事も未然に影響最小限になるように運営していく。
・AIロボは競合が少ない。クラウドはアクセンチュアなど。
・OpenWorkはみていない。社員満足度調査では概ね良好だが、技術者が居心地よい環境を作っていくこと。処遇改善も悩みながら進める。
・K2TOPのロックアップ解除後の需給問題は、既存個人株主に配慮しながら適宜必要があればケアしていきたい。
・単価は200万超え(人月単価としてはSIではない部類)
・技術者の社員満足度や処遇改善などの抜本策も必要と思われ、これが利益成長の足かせになるかは要注視。
(頂いたコメントへの所感を追記)
フォロワーの方からありがたいコメントを頂きました。私なりの所感をメモとして追記しておきたいと思います。
①コンサルにしては粗利が30%ちょっと程度なので低いか。今年だけでなく昨年もそんな感じ。
→確かにコンサル特化型としてみると粗利30%はさみしい水準ですね。そして会社側は上流コンサルを志向していて、そういうメッセージを出しておられますが、実態はSI要素を多分に含んだ会社なのだと思っています。会社側は我々はSIではないと明言して否定していますが、各プロジェクトをみてもコンサル領域だけでなく実際の導入までを伴走している姿が見て取れます。内製化支援とかいってますしね。とはいえ、上流コンサルとしてBD工程からプライム案件で取り組む中で、志向・主張する方向性は理解できます。実際に単金が200万を超えているという話もありましたので、少なくても上流工程でのお仕事ではSIの単金ではない(だからといって超トップのコンサルの単金でもないですが)ことから、結局導入工程やそれこそライセンス費(AWS)などについて高原価率になるため、これがミックスして30%となっているのだろうと思います。
SIとして見るときに私は営業利益率10%を一つの目線でおいていますが、20%近く出ていることもあり、一定の強みがあるのではないかと認識しています。
むしろコンサル特化でおいしい上澄み部分だけをとっていく形態よりは、顧客との関係性などからみると健全なのではないかと感じました。
②DXコンサルとかAIとか言ってるコンサル会社(MSOL、LTS、タナベなど)は良いか悪いかここ数年で人員数を爆増させている中、当社はMBO後減らして最近ゆっくりと増やしている動きは特異。上場前で利益重視の姿勢だった故か。今後変わっていくのか。
→コンサル特化の場合、結局人月ビジネスに収れんする中で、単金×稼働時間(稼働人員)で決まるため、DXとかAIという先駆的な言葉を並べた一種の不安ビジネスのようなものだと理解しています。冒頭のシートに他社比較にベイカレントのような会社を敢えて入れなかったのも、同社が会社の主張や志向性はともかく実態として顧客とのより良い関係を大切にしていくという姿を継続していく時に比較するべきではないと感じたためです。これらのコンサル特化型ですと営業利益ベースで30%を超えています。冒頭のご指摘にもある通り、そこに対して収益率で見劣りするというのはその通りですが、それは健全であるという認識です。
一方でご指摘の通り、MBO後にリストラをしたのは、むしろコングロマリット化した部分への対処であったと思っています。コンサル領域を主軸とした導入支援のコアを残しつつ、人材派遣など非注力分野をリストラしたということなので、表面上の人員減は、コンサル領域などで減らしたということではないと理解しています。採用が足元で好調、離職も少なくなっているという説明もあり、今後どこまでアクセルを踏むのかはよくわかりませんが、社長の話ぶりからすると、もう少し働きやすさの充実させていく事の方が優先度が高いようにも感じました。その意味で爆増とは違う路線で進んで欲しいなと個人的には思っています。その方が歪みが大きくならずに済むとも思いますので。
③AIコンサルとかロボティクスのところは不勉強で良くわかっていないのですが、実際にどこまでLLMをカスタマイズしてプロダクトとして収益を上げているのかが不明。伴走型はどうしてもSIerの延長と見えなくもない。そうなると高いバリュエーションもつけにくい。実際に利益率も高くない。それでも比較的安いと思うけど。
→私も解像度高くAIコンサルとかロボティックスを捉えられていません。こんなふざけた表面的なシート1枚紙で所感を述べているくらいですからね(笑)。ただ、LLMの活用策やハード的なロボ筐体が今後進出してくる中で、それを顧客の業務にどのようにフィットさせるのか問題が出てくるものと認識しています。カオスになるのではないかと思うのです。これまでのハードウェア/ソフトウェアの構造に似た構造になるのだと思います。そうなった時に各業界に実績を伴い、既存SI領域を発展させ(連携させ)てこれらの要素技術を取り込みたいということになるのだと思います。そういう意味では私は伴走型としてSIerの延長なのだと思っています(会社側に怒られそうですが)。なのでご指摘の通り、瞬間風速は別としてシートにも記載した通り、バリュエーションはPER20倍程度ではないかと思います。配当部分にも社長の青年期からの想いなどの拘りがあるようなので、比較的高位なものが継続する前提で見たときにも、営利率の水準などからこの程度までは妥当かなと感じています。逆にコンサル特化の高収益のようなPER30超えは期待できないとみています。今がIPO後のまだ不明瞭であることや、大株主の需給面の懸念等から割り引かれているのではないかと感じています。