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知らない人んち:青色編1話

〈あらすじ〉
知らない人の家をシェアハウスと偽り住んでいるアク、キャン、ジェミの3人。YouTuberの主人公キイロは恐怖を感じつつ再生数稼ぎに生配信しようと決意する。動画の視聴者は「自作自演」だと思い、まともに相手をしてくれない。誰かに助けてもらおうと考えていたキイロ、その反応に落ち込む。
しかし、コメントの中に「今、キイロを見ている人」がいる事に気づく。


   ×  ×  ×
「0話」の続き、より
家の異変に気付いた主人公キイロ。
荷物をまとめ出ていこうとするが「面白いモノ、撮れるかも?」と
踏みとどまる。キイロの部屋に誰かがやってくる。
   ×  ×  ×
〇和室・入口
   キャンが入ってくる。
   荷物をまとめている、キイロ。
キャン「どうしたの?あわてて」
   キイロが顔を横に振る。

〇和室・テーブル下
   キイロ、テーブルの下にスマホを隠して撮影を始める。

〇和室・内
   キイロ、作り笑い。
   キャン、テーブルの絵に気づいて取り上げる。
キャン「あーこんなところにあったんだ」
キイロ「あ、ごめんなさい、それは」
   キャン、絵の子供を指さしながら
キャン「これね、私の担任してる子が描いたの」
キイロ「へ?」
キャン「私、保育士」
キイロ「へー意外」
キャン「園で要らないって言われて、持って帰ってきちゃった」
キイロ「家族の絵を?本人に渡せば」
キャン「この子、絵描いた後、事故に合っちゃって」
キイロ「……」
キャン「みんな死んじゃったの」
キイロ「じゃ、ここに描いてあるのって」
キャン「もう、いない家族」
   キイロが絵を見る。

〇女子部屋・外
   キャンがドアをノック。
ジェミの声「いるよ」
   キャンが中に入る。

〇女子部屋・中
   キャンが手に絵を持って入ってくる。
   ジェミが驚く。
ジェミ「え?それ」
キャン「これ、見られた」
ジェミ「……」
   キャンとジェミが無言でうなづく。

〇和室・内
   キイロがふすまを少しだけ開け、スマホのレンズを玄関に向ける。

〇スマホ画面
   無人の玄関

〇玄関
   アクが緑の袋を持って入ってくる。
   階段から降りてきたジェミ、驚く。
ジェミ「そんなモノ、家に入れないで?!」
アク「仕方ないだろ」
   ジェミが両腕を掻き始める。
ジェミ「無理、ほんと無理」
アク「ウチでしか処理出来ないんだから仕方ないだろ」
   ジェミが服の上から全身を掻き始める。
ジェミ「無理、私、ちょっと出てくる」
   ジェミが玄関から出ていく。

〇階段
   アクが袋を持って階段を上る。

〇和室・外
   ふすまの隙間からスマホのレンズが見える

〇和室・内
   キイロがふすまを閉める。
   スマホレンズを自分に向け、真面目な顔。
キイロ「一体この家はなんなのでしょうか?謎は深まるばかりです」
   キイロ、笑顔で
キイロ「次のライブは30分後。では、人生いつも黄信号キイロでした!」
   撮影終了の音。
   キイロ、真顔でため息をつく。

〇暗室・外
   アクが両手に手袋、マスクをつけ中に入る。

〇和室・内
   キイロ、PCを開いて見ている。
   YouTubeでライブ配信のアーカイブを見直している。

〇PC画面
   再生数が増える。
   コメントが付く。
「自演乙www」
「え?これ?マジで他人の家なん?やばくない?」
「それな」
「な、訳ねーだろ?不法侵入じゃんw」
「もっと下から撮らないとレンズ見えてるよ」
「運営に通報しました」


〇暗室・内
   暗くて部屋の中はほとんど見えない。
   アク、テーブルの読書灯をつける。

〇和室・内
   キイロ、PCで周辺の地図を見ている。
   ジェミの居た空地の場所を確認する。

〇暗室・内
   テーブルの手元のみ明るい。
   アクの手袋、指先に青い粉がついている。
   ガラスが割れたような音。
   アクがせき込む声。
  (アクがシャーレを床に落とした)

〇和室・内
   キイロ、PCのコメントを見て首を傾げる。
   2階からガラスが割れたような音。
   キイロ、スマホを持って部屋から出る。

〇階段・下段
   アクがせき込みながら階段を下りてくる。
   キイロと目が合う。
   キイロ、後ろでスマホの録画ボタンを押す。
キイロ「何かありました?」
アク「いいえ、何も」
キイロ「でも、何か割れたような音がしたんですか」
   アクの顔色が変わる。
アク「気のせいじゃないですか?」
キイロ「……」
アク「何かの聞き間違いですよ。ゆっくりしてて下さい」
   アクの笑顔。
   キイロ、納得していない表情。

〈終〉

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