社会人のための学び直し数学【中学数学関数編その4】
4.2次関数のグラフ
$${y=x^2}$$ という $${x}$$ についての 2 次関数を座標平面上で表すことを考えてみましょう。
まず,$${y=x^2}$$ の $${x}$$ に具体的な数値を代入して,それに対応する $${y}$$ の値を表に書いてみます。
そして,これを座標平面上にとると,図 4-1 のようになります。
表 4-1 は $${x}$$ の間隔が $${0.5}$$ となるように書いたものですが,この間隔をもっと小さくして図 4-1 と同様に点をとっていけば,もとの点と点の間隔が補われて図 4-2 で示した曲線ができあがります。この曲線の形状を放物線といいます。(物体を放り投げたときの,その物体の描く軌跡が,このグラフを逆さに描いた文字通りの放物線です。)
この放物線が 2 次関数のグラフです。
それでは,2 次関数のグラフの特徴を見ていきましょう。
まず,$${y}$$ 軸の左側と右側の曲線が,$${y}$$ 軸を折れ線として折り曲げたときにピッタリ重なることに気付けるでしょう。この $${y}$$ 軸のことを放物線の対称軸または単に軸といいます。そして,軸と放物線の交点がこの放物線の頂点です。$${y=x^2}$$ のグラフの頂点は点 $${(0,0)}$$ ということになります。
一般に $${y=ax^2}$$ と書ける 2 次関数のグラフは,$${a}$$ の値によっていろいろな放物線として描けます(どの放物線も相似形であることはずっとあとの話)が,必ず軸をもち,その軸に関して対称なグラフで,頂点の座標が点 $${(0,0)}$$ になります。
[参考]$${y=ax^2}$$ のグラフが $${y}$$ 軸すなわち $${x=0}$$ に関して対称であることは高校数学の範囲になってしまいますが次のように示せます。
証明 $${f(x)=ax^2(a≠0)}$$ とおくと
$${f(-x)=a×(-x)^2=ax^2=f(x)}$$
よって,$${y=ax^2}$$ のグラフは $${x=0}$$ に関して対称である。終
次に $${y}$$ の値の変化の様子についてです。図 4-2 を見てわかるように,軸の左側では $${x}$$ の増加にともなって $${y}$$ の値は減少し,逆に,軸の右側では $${x}$$ の増加にともなって $${y}$$ の値は増加しています。
このことは以前に述べた変化の割合の式からも確認することができます。
【参考】2 次関数 $${y=ax^2}$$ において,$${x}$$ の値が $${α}$$ から $${β}$$ まで変化するときの $${y}$$ の値の変化の割合は $${a(β+α)}$$ である。
この先の議論では (正の数)×(正の数)=(正の数),(負の数)×(負の数)=(正の数),(正の数)×(負の数)=(負の数),(負の数)×(正の数)=(負の数) という符号の取り方に気を付けながら読んでください。
$${y=x^2}$$ のグラフで頂点より左側(軸の左側)にあるこのグラフ上の 2 点の $${x}$$ 座標を $${α,β(α<β<0)}$$ とすると,この 2 点間の変化の割合は
$${1×(β+α)=β+α<0}$$
ですし,頂点より右側(軸の右側)にあるグラフ上の 2 点の $${x}$$ 座標を $${γ,δ(0<γ<δ)}$$ とすると,この 2 点間の変化の割合
$${1×(δ+γ)=δ+γ>0}$$
となり,$${α,β,γ,δ}$$ はそれぞれの範囲内で任意にとれるので,確かに$${y}$$ の値の変化の様子が式で確認できました。
さらに,$${a>0}$$ のとき $${y=ax^2}$$ について同様な変化の割合を考えてみると,$${x}$$ 座標が $${α<β<0}$$ となる 2 点間の変化の割合は $${a(β+α)<0}$$ で,$${0<γ<δ}$$ となる 2 点間の変化の割合は $${a(δ+γ)>0}$$ となります。すなわち,$${y}$$ の値の変化の様子は $${y=x^2}$$ と同じです。
一方,同じ $${a>0}$$ について,$${y=-ax^2}$$ の変化の割合を考えると,$${x}$$ 座標が $${α<β<0}$$ なら $${-a(β+α)>0}$$,$${0<γ<δ}$$ なら $${-a(δ+γ)<0}$$ となるので,$${y=ax^2}$$ とは逆の結果になることがわかります。すなわち,$${y}$$ の値の変化の様子は,軸の左側で $${x}$$ の増加にともなって $${y}$$ の値は増加し,軸の右側では $${x}$$ の増加にともなって $${y}$$ の値は減少しているのです。しかも $${-a<0}$$ であり $${x^2≧0}$$ であることに注意すると必ず $${y≦0}$$ となります。
以上のことを図で表したのが図 4-3 です。
具体的には,例えば $${y=2x^2}$$ と $${y=-2x^2}$$ のグラフを同じ座標平面上に描けば,図 4-3 のように,$${x}$$ 軸を折れ線にして平面を折り曲げたとき 2 つのグラフが重なるように描けるのです。
最後に,$${y=2x^2}$$ で $${x}$$ の変域が $${-1≦x≦2}$$ のとき,$${y}$$ の変域がどうなるか考えてみます。
ここで,変域とは $${x}$$ や $${y}$$ の値がとり得る範囲をいい,
$${x}$$ の変域が $${-1≦x≦2}$$ であるとは,$${x}$$ が $${-1}$$ 以上 $${2}$$ 以下で変化するということです。
この $${x}$$ の値の変化にともない $${y}$$ の値はどんな範囲で変化するかを考え,$${y}$$ の変域を決定します。
グラフを描いて考えましょう。
図 4-4 では $${x}$$ の変域 $${-1≦x≦2}$$ 内だけでグラフが描かれていることに注意してください。
$${x}$$ の左端の値 $${-1}$$ での $${y}$$ の値は $${1}$$,$${x}$$ の右端の値 $${2}$$ での $${y}$$ の値は $${4}$$ ですが,グラフ全体を眺めると $${y}$$ の一番小さい値,すなわち最小値は $${0}$$ で,$${y}$$ の一番大きな値,すなわち最大値は $${4}$$ となっていることがわかります。よって,$${y}$$ の変域は $${0≦y≦4}$$ です。
1 次関数であれば変化の割合が一定で変化しないので,$${x}$$ の変域の左端や右端の値で $${y}$$ の変域が決定できますが,2 次関数では $${x}$$ の変域によってはそのグラフが,上がり下がりするため,必ずしも $${x}$$ の変域の左端や右端の $${y}$$ の値でその変域が決定できないことが重要です。だからこそ,2 次関数で変域が問われるときは,必ずグラフを描いて確認することが必要になります。
【練習問題】関数 $${y=\frac{1}{2}x^2}$$ で,$${x}$$ の変域が $${-4≦x≦3}$$ のとき,$${y}$$ の変域を求めなさい。
【答】$${0≦y≦8}$$
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