社会人のための学び直し数学【中学数学関数編その5】
5.グラフと方程式
1 次関数は $${y=ax+b}$$($${a≠0}$$) と書け,2 次関数は $${y=ax^2}$$($${a≠0}$$)と書けることはすでに説明しました。ところで $${y=ax+b}$$ を 1 次関数の,$${y=ax^2}$$ を 2 次関数の方程式といいます。方程式は等式なので変数(ここでは $${x}$$,$${y}$$)に数を当てはめて,すなわち変数に値を代入して,それが成り立つか成り立たないかの議論ができます。
例えば,$${y=x+1}$$ の $${x}$$ に $${1}$$,$${y}$$ に $${2}$$ を代入すると方程式が成り立ちますが,$${x}$$ に $${1}$$,$${y}$$ に $${3}$$ を代入しても方程式は成り立ちません。
それでは,関数の方程式に値を代入して成り立つとはどういうことなのでしょうか。
中学数学関数編その3とその4で,グラフを描くために変数 $${x}$$,$${y}$$ の値を並べて表を書きましたが,そのときの $${x}$$,$${y}$$ は方程式が成り立つ $${x}$$,$${y}$$ です。よって,方程式が成り立つ $${x}$$,$${y}$$ は,それを座標平面上の $${(x,y)}$$ と考えると,グラフ上の点としてとることができるということです。
[注]1 次関数のグラフを説明するとき(中学数学関数編その3)に,この 概念を使って説明している部分があるので確認してみてください。
言い換えると,$${y=x+1}$$ のグラフは点 $${(1,2)}$$ を通ると言え,点 $${(1,3)}$$ は通らないと言えます。
ここで,連立方方程式
$$
\left\{
\begin{array}{l}
y=x+1\\
y=-x+3
\end{array}
\right.
$$
を解いてみましょう。
連立方程式の解は,2 つの式のどちらも成り立つような $${x}$$,$${y}$$ ですから
$${y=x+1}$$ の $${y}$$ と $${y=-x+3}$$ の $${y}$$ は同じ値でなければならないので
$${x+1=-x+3}$$ ―(☆)
が成り立ちます。
[注]連立方程式の解法として代入法を使っています。すなわち,第 1 式の $${y}$$ と等しい $${x+1}$$ を第 2 式の $${y}$$ に代入した式が上の (☆) 式です。
(☆) より $${2x=2}$$ よって,$${x=1}$$ となる。
これを $${y=x+1}$$ の $${x}$$ に代入して $${y=1+1=2}$$
したがって,連立方程式の解は $${x=1}$$,$${y=2}$$ です。
ところで,$${y=x+1}$$ も $${y=-x+3}$$ も 1 次関数の方程式なので,それを連立させて解いたときの解 $${x=1}$$,$${y=2}$$ を座標平面上の点 $${(1,2)}$$ とできて,この点は $${y=x+1}$$ のグラフ上の点でもあり,$${y=-x+3}$$ のグラフ上の点でもあるので,それぞれのグラフの交点になっています。下の図 5-1 でこの関係を確認してください。
次に $${y=x+2}$$ のグラフと $${y=x+5}$$ のグラフはどうなるか考えてみましょう。
交点があるとすれば上述のとおり,連立方程式
$$
\left\{
\begin{array}{l}
y=x+2\\
y=x+5
\end{array}
\right.
$$
の解になるはずです。
すると $${x+2=x+5}$$ となり $${0・x=3}$$ ですが,これを満たす $${x}$$ は存在しません。($${0}$$ をかけるとどんな数も $${0}$$ になってしまうので,この等式を満たす $${x}$$ は存在しません。)
これはどういうことでしょうか。
連立方程式の解が交点の $${x}$$ 座標,$${y}$$ 座標を与えるのであるから,解が存在しないので,交点が存在しない[交点を持たない]ということになるのです。
一般に 2 つの 1 次関数 $${y=ax+b}$$,$${y=cx+d}$$ で,そのグラフである直線の傾きが等しい($${a=c}$$ の)とき交点が存在しません。そして,傾きが等しい直線は,その位置関係が平行なので,平行な(切片は異なる)直線は交わらない,言い換えれば交点を持たないことが,その方程式から説明できたということです。
最後に 2 次関数 $${y=x^2}$$ のグラフ(放物線)と 1 次関数 $${y=x+2}$$ のグラフ(直線)の交点の座標を求めておきましょう。連立方程式
$$
\left\{
\begin{array}{l}
y=x^2\\
y=x+2
\end{array}
\right.
$$
を解けばいいわけです。
すると $${x^2=x+2}$$ より $${x^2-x-2=0}$$
よって $${(x+1)(x-2)=0}$$ から $${x=-1,x=2}$$
$${x=-1}$$ を $${y=x+2}$$ に代入して $${y=1}$$
$${x=2}$$ を $${y=x+2}$$ に代入して $${y=4}$$
したがって,交点の座標は $${(-1,1)}$$,$${(2,4)}$$ となります。
ここで注目すべきは,連立方程式を解く際に 2 次方程式を解くことになり,2 次方程式はふつう解を 2 つもつため,交点の個数が 2 個になることです。
このように,連立方程式の解の個数が交点の個数を決めるということがとても重要です。
[注]2 次方程式の解はふつう 2 つ考えられますが,場合によって解が 1 つだけであったり,解が存在しなかったりすることもあります。これらの場合の交点の個数については,高校数学での重要なテーマの 1 つです。
【練習問題】2 次関数 $${y=x^2}$$ のグラフと,1 次関数 $${y=-x+2}$$ のグラフの交点を求めなさい。
【答】$${(-2,4)}$$,$${(1,1)}$$