社会人のための学び直し数学【高校数学文字式編その2】
3.展開公式1
式を展開するとき分配法則を使って計算してもいいのですが,これから順次示す展開の公式を利用すると,よりスピィーディーに計算できます。
展開公式1 $${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
この公式を分配法則を使って導いてみましょう。前のカッコの中の式の各項 $${x}$$,$${a}$$ を後ろのカッコの中の式の各項 $${x}$$,$${b}$$ にかけます。
最後の等号では $${x}$$ の 1 次の項の前の $${b+a}$$ を $${a+b}$$ としています。和の交換法則を使って位置を入れ替えたのです。
この展開公式1の特徴は,前のカッコの中の式と後ろのカッコの中の式で共通にある $${x}$$ という項について降べきの順(次数の高い順)に整理できること,共通でない項 $${a}$$,$${b}$$ はその和と積がそれぞれ $${x}$$ の 1 次の係数(着目している文字の前にかけている数字や文字を,着目している文字の係数といいます),0 次の係数($${x}$$ に着目すれば定数項)に表れることです。
この展開公式を使って $${(a+2b)(a-5b)}$$ を計算してみましょう。
まず,前後のカッコの中の式で共通な項は $${a}$$ で,共通でない項は $${2b}$$,$${-5b}$$ であることを確認します。すると計算結果は $${a}$$ について 2 次,1 次,0 次の順に整理できます。あとは $${2b}$$,$${-5b}$$ の和 $${2b+(-5b)=(2-5)b=-3b}$$ と積 $${2b×(-5b)=-10b^2}$$ を,それぞれ $${a}$$ について 1 次の係数と 0 次の部分にして
$${(a+2b)(a-5b)=a^2-3ba-10b^2}$$
としますが,中央の項 $${-3ba}$$ は文字をアルファベット順にするのが普通です。したがって,
$${(a+2b)(a-5b)=a^2-3ab-10b^2}$$
となります。
練習問題 次の展開をせよ。
(1)$${(x+4)(x+5)}$$ (2)$${(a+4b)(a+5b)}$$
【答】(1)$${x^2+9x+20}$$(2)$${a^2+9ab+20b^2}$$
【解説】(1)式を展開すると $${x}$$ の次数について 2,1,0 の式として
降べきの順に整理できます。4 と 5 については,和が 4+5=9,積が
4×5=20 となるので,$${x^2+9x+20}$$ と展開できます。
(2)式を展開すると $${a}$$ の次数について 2,1,0 の式として降べきの
順に整理できます。$${4b}$$,$${5b}$$ については,
和が $${4b+5b=9b}$$,
積が $${4b×5b=20b^2}$$
となるので,$${a^2+9ba+20b^2}$$ と展開でき,さらに中央の項をアル
ファベット順に並び替えて $${a^2+9ab+20b^2}$$ となります。
4.展開公式2
$${(a+b)^2}$$ の展開を考えてみます。
まず,$${(a+b)^2=(a+b)(a+b)}$$ です。次に展開公式1を使います。展開公式1は $${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$ でしたが,
ここで $${x}$$ を $${a}$$ に,$${a}$$,$${b}$$ をともに $${b}$$ と置き換えます。
【注】公式化した式の便利なところは,このように公式の文字を任意の文
字に置き換えて考えることができるところです。
すると,$${(a+b)(a+b)=a^2+(b+b)a+b×b=a^2+2ba+b^2}$$
したがって,$${(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}$$ となります。
次に $${(a-b)^2}$$ の展開はどうでしょう。
上述の $${(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}$$ を 1 つの展開公式と考えると,この公式の $${b}$$ を $${-b}$$ で置き換えたものになっています。したがって,
$${(a-b)^2=a^2+2a×(-b)+(-b)^2=a^2-2ab+b^2}$$ となります。
これらを展開公式2とします。
展開公式2 $${(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}$$,$${(a-b)^2=a^2-2ab+b^2}$$
練習問題 次の式を展開せよ。
(1)$${(2x+3)^2}$$ (2)$${(2x-3y)^2}$$
【答】(1)$${4x^2+12x+9)}$$(2)$${4x^2-12xy+9y^2}$$
【解説】(1)$${(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}$$ において $${a→2x}$$,$${b→3}$$ と置き換えます。
(2)$${(a-b)^2=a^2-2ab+b^2}$$ において $${a→2x}$$,$${b→3y}$$ と置き換えます。