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社会人のための学び直し数学【高校数学文字式編その5】

7.因数分解①

 式の展開について一通り見てきたので,今回は因数分解について考えます。
 以前ふれたように,1 つの多項式を 2 つ以上の多項式の積の形に表すことを因数分解といいます。例えば $${A}$$ という多項式を多項式 $${B}$$ と $${C}$$ の積で表すとき,すなわち $${A=BC}$$ のとき,$${B}$$ や $${C}$$ を $${A}$$ の因数といい,$${A}$$ を因数分解すると $${BC}$$ となるというのです。

 まず,一番初歩的な因数分解の方法として,共通因数でくくるというものがあります。
 例として $${6x^2yz-3xy^2z}$$ を因数分解します。
これは,$${6x^2yz=3xyz×2x,   3xy^2z=3xyz×y}$$ であることに着目します。2 つの式はともに同じ式 $${3xyz}$$ を,それぞれ異なる式 $${2x,   y}$$ にかけてできたもので,この同じ式 $${3xyz}$$ を 2 つの式の共通因数といいます。そして,分配法則を逆に使うと

$$
6x^2yz-3xy^2z=3xyz×2x-3xyz×y=3xyz(2x-y)
$$

と計算できます。この計算を共通因数でくくるといって,これで因数分解が完了です。

 注)$${3xyz,   2x-y}$$ は $${6x^2yz-3xy^2z}$$ の因数です。

 次に,これまで紹介した展開公式を逆に使う因数分解です。
展開公式をもう一度あげてみると
 展開公式1 $${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
 展開公式2 $${(a+b)^2=a^2+2ab+b^2,   (a-b)^2=a^2-2ab+b^2}$$
 展開公式3 $${(a+b)(a-b)=a^2-b^2}$$
 【参考1】 $${(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3}$$
 【参考2】 $${(a-b)(a^2+ab+b^2)=a^3-b^3}$$
 展開公式4 $${(ax+b)(cx+d)=acx^2+(ad+bc)x+bd}$$
となります。
これらを逆にして因数分解公式とします。
 因数分解公式1 $${x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)}$$
 因数分解公式2 $${a^2+2ab+b^2=(a+b)^2,   a^2-2ab+b^2=(a-b)^2}$$
 因数分解公式3 $${a^2-b^2=(a+b)(a-b)}$$
 【参考1】 $${a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)}$$
 【参考2】 $${a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)}$$
 因数分解公式4 $${acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)}$$

 今回は特に因数分解公式4について考えてみます。
 $${3x^2-11x+6}$$ を因数分解しましょう。
これは因数分解公式4において,$${x}$$ の 2 次,1 次,0 次の項の係数にあたる $${ac,   ad+bc,  bd}$$ がそれぞれ 3,   -11,   6 となるように $${a,   b,   c,   d}$$ の 4 つの文字をうまく組み合わせてつくればいいのです。すなわち

$$
ac=3,   ad+bc=-11,   bd=6
$$

となるように $${a,   b,   c,   d}$$ を決定する問題です。ところが $${a,   b,   c,   d}$$ の 4 つの未知数に対して 3 つの方程式しかないので $${a,   b,   c,   d}$$ は一意的に決定できません。(実は $${ad,   bc}$$ に関して対称的な値になるのですが,ここでは深入りしないでおきます。)
そこで,普通 $${a,   b,   c,   d}$$ は整数にする(実は,これが重要です)ことから,まず $${ac=3}$$ より $${a=1,   c=3}$$ と決めてしまいます。
次に $${ad+bc=-11}$$ から $${d+3b=-11}$$ であり,$${bd=6}$$ から($${bd>0}$$ なので,$${b,   d}$$ は同符号になることに注意します。)$${b=-3,   d=-2}$$ と決定します。
ここで,$${bd=6}$$ となる同符号の整数 $${b,   d}$$ の組 $${(b,   d)}$$ は

$$
(b,   d)=(-1,   -6),   (-2,   -3),   (6,   1),   (3,   2),   ・・・
$$

のように複数あるのでは?と疑問が浮かぶかもしれません。
しかし,このような組のうちで $${d+3b=-11}$$ となるものを選ぶので

$$
(b,   d)=(-3,   -2)
$$

を採用するのです。

 このときで紹介したたすきがけが,とても便利です。

図 7-1

まず $${a=1,   c=3}$$ と決めて始めます。当然 ① は 3 となっています。次に ② が 6 となるように $${b,   d}$$ を仮に決めて,③ が -11 となる $${b,   d}$$ の組を成功とするのです。
下のたすきがけの例では,最初の 2 つは失敗で,最後のが成功したものになります。

図 7-2

ある程度の試行錯誤が必要ですが,文字式だけで考えるよりは見通しがよくなります。
結果,$${3x^2-11x+6=(x-3)(3x-2)}$$ と因数分解できます。

練習問題 次の式を因数分解せよ。
(1)$${6a^2b-3ab^2}$$       (2)$${2x^2-5x+2}$$

【答】(1)$${3ab(2a-b)}$$(2)$${(x-2)(2x-1)}$$
【解説】(1)共通因数は $${3ab}$$ です。(2)たすきがけを利用。

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