銘柄分析②エヌ・シー・エヌ(7057)
今回は関西勉強会で発表するはずだった銘柄について、まとめておきます。せっかくpptも作成してたのに、親子でインフル罹患でまさかの欠席・・
初めての勉強会も懇親会も楽しみにしてたのに😢
ここで資料を発表することで、成仏させておこうと思います。
1.企業情報
業種:サービス業
時価総額:40億(株価1250円)
PER17.85、PBR1.93、配当利回り2.32%
ぱっと見、注文住宅を作る会社(工務店)かな?と思うところですが、そうではありません。
木造住宅の中でも耐震性が高い「SE構法」を開発し、その構造計算・SE構法のノウハウ代、構造計算された木材等の構造加工品の販売を行っています。SE構法の登録施工店ネットワークを築き、登録施工店から登録料・月会費・各種手数料の徴収も行います。当社が開発したSE構法の仕組みを販売し、SE構法を取り扱う工務店の総本山(?)です。
以下、FISCO企業調査レポートからの抜粋
木造建築の耐震性を確保するため、高度な構造計算を事業化し、構造計算された耐震性の高い木造建築を実現するため、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート構造)で主流だったラーメン構造(骨組み(部材)の各接合各所を剛接合したもの)を木造住宅に取り入れたNCN独自の建築システムであるSE構法を、工務店を中心としたSE構法登録施工店ネットワークを通じて提供。さらに木造建築の耐震設計ノウハウを、幼稚園や老人介護施設、店舗やオフィスなど住宅以外(非住宅)の大規模木造建築へ転用し、事業拡大を推進している
現在、2階建以下の木造家屋に構造計算・審査は必要ありません(建築基準法4号特例)。
このため、多くの工務店やハウスメーカーでは簡易的な壁量計算で耐震性を確認しているそうです(IR談)
1995年に田鎖社長は阪神大震災で倒壊した家屋を見て、2階建て以下の木造住宅には構造計算や審査されていない事実を知り、この課題を解決するため木造建築用の建築システム「SE構法」の開発に乗り出したそうです。
このSE構法を登録施工店ネットワーク(全国約当600社)を通じて提供しています。当社では全棟構造計算を実施、強度がわかる集成材を使い、強度を計算可能なSE金物を使って、高い耐震性と設計の自由度の両立を可能としています。
構造計算から部材供給が主な業務。登録施工店から登録費、月会費の徴収も行う。ハウスメーカーのOEMも(大きな取引先はアールシーコアとMUJI HOUSE)。
無印良品の家「MUJI HOUSE」は子会社にあたります。
2.ビッグチェンジ
2025年に建築基準法の一部改正
①すべての新築に省エネルギー基準の適合が義務化されるため、当社の小エネルギー設計のニーズが拡大
②これまで2階建ての木造住宅は建築確認も審査も不要でした(4号特例)
今回の法改正により4号特例は廃止されることになります。
住宅の平均的な広さは100m2程度なので、多くは審査対象となります。300m2以上の広い注文住宅は構造計算義務が発生しますが、これは全住宅の数%程度で業績に影響はなさそう(IR確認)。業績に影響がありそうな部分は、法改正により新たに審査対象となるゾーンです。
③木造建築の仕様規定(壁量計算)が厳格化(施行令46条)されます
在来工法ではこれまでの壁量1.5倍必要となります。壁量が増えるということは部屋が狭くなるということです。当然部材が増えれば建築費用も高くなるでしょう。
また、在来工法では必要なかった構造計算費用や省エネ計算費用も必要になってきます。これまでSE構法は構造計算費用(1棟あたり20万くらい)、省エネ計算費用がかかり、在来工法よりも費用が高いことがネックでした(この他にもSE構法使用料がかかり、部材価格も高い)。これらの価格差が埋まれば、設計の自由度が高いSE構法が採用される確率は高まると予想できます。
3.ビジネスの強み
①省エネ計算書の発行数、構造計算出荷数の実績が多く、この規模で省エネ計算・構造計算を行っている企業は存在しない。競合会社はない(FISCO TVでの対談より)
②SE構法はオープン工法で広く開示されているが、強度計算可能な集成材(部材)やSE金物、構造計算知識(計算ソフト)が必要となるため他社がまねするのは難しい
SE構法に関して、似たようなビジネスをしている企業がいるのかと探してみましたが、見つけられませんでした(ハウスメーカーでSE構法っぽい家を売っているところはある)
実際の競合は在来工法や2×4工法など他の工法になると思います。
4.セグメント
当社は単一セグメント(木造耐震設計事業)のため、詳細は記載されていませんが、以下のように分けることができます
①住宅分野(売上高61.1%)
②大規模建築(非住宅)(34.4%)
③環境設計分野(3.1%)
④DX、その他分野(1.28%)
売上高も営業利益も大部分が①、②を占めているため、①、②だけ調べました。
5.ビジネスモデル-住宅分野-
住宅分野の売り上げは2パターンあります
①登録施工店加入料等
②SE構法の販売
①登録施工店の加入料等とは以下のようなものです
・登録料等(登録料100万+預り金200万)
・月会費(2万×12か月×登録施工店数)
登録料はフロー収入、月会費はストック収入にあたるかと思います。売上高に占める割合は小さい(月会費として、615店で1億4760万くらい?)。預り金は退会するときに返却するので、資産には入るけど、売上高には入らないのかな?
②SE構法の販売による売上高とは以下のようなものです
・1棟あたりの単価(構造加工品等仕入代金+構造計算料+各種手数料)×SE構法出荷数
構造計算出荷数が先行指標になります。
構造計算書が出荷されて、約3か月後にSE構法が出荷されこの時点でSE構法出荷数となります。
構造計算出荷数≒SE構法出荷数
2024年4Qを底とし、2025年1Qから構造計算出荷数がV字回復しています。
こちらも先行指標となる受付数です(2024決算説明資料のみ記載)
これはSE構法で設計してほしいという施主からの受付数です。ここから設計を行い、施主が費用等を含めて検討→注文(構造計算出荷)の流れになります。引き合い数と構造計算出荷数を比べると、約半分になっています。
何故なのかIRに問い合わせてみました。
注文住宅の場合
・施主から要望をだす(間取りや希望構法、内装、キッチン等のスペック)
→要望通り設計する
→予定費用を超える
→費用で削る部分を検討する(キッチン等のスペックを下げるのか?、SE構法から安い在来工法にして間取りを変更するか・・等)
上記のような検討を行うため、SE構法ではなく、費用問題でほかの工法を選ばれ、構造計算出荷数が下がるそうです(歩留まり)
この歩留まり率を改善するため、当社では設計段階で設計者が入るといった取り組みを始めたそうです。
(おそらく全部ではなく、一部かなと思います。設計者は30-40人しかいないそうなので、1Qあたり600件となると一人当たり20件は担当しないといけないし・・。これから設計者を新卒含めて採用していくと考えてます)
法改正により、在来工法とSE構法との価格差は小さくなるはずなので、SE構法が選択される可能性は高まるかと思います。
この受付数も重要な先行指標となるため、今後資料に載せてもらえませんか?とIRに聞いてみたものの、微妙な反応だったので記載されないかもしれません。
6.ビジネスモデル-非住宅分野-
2021年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物における木材の利用の促進に利用の促進に関する法律」が施行されました。
これまで「公共建築物」であったものが「建築物一般」へと拡大されます。補助金とかがあるわけではないものの、法律が整備されつつあるといった感じでしょうか。
当社の大規模建築物(非住宅分野)にも追い風になっているようです。
大規模建築分野を伸ばしていこう!ということで、2022年には木造の大規模建築を得意とする「翠豊」を子会社化しています。
7.中期経営計画
2023年の決算発表資料の中で、中期経営計画を発表しています。
しかし、早速2024年決算で決算に関し下方修正を出しています。
大規模建築は想定通りであったものの、住宅分野で下方修正が必要であったためです。
以下の2つが原因です。
①SE構法出荷数の減少:大口取引先(MUJI HOUSE、アールシーコア)の受注減少
後に市況についても触れますが、新設住宅着工件数の中でも持ち家(注文住宅)の落ち込みが大きかったものと考えられます。
②販売価格の下落:木材価格がウッドショックのピーク時から下落
この中期経営計画を策定したのは、改正案が確定しておらず見込みで作成したそうです。
これまで建築確認申請は7日間程度で終了していましたが、改正により建築確認申請に時間がかかる(審査件数も項目も増える)ため30日程度に伸びる可能性があるそうです。また、改正前に建築確認が不要なものを通してしまおうと駆け込み需要があることも想定される。このため、これらのことを織り込んだ中期経営計画を2025年2月か5月に改めて出す予定とのこと。
8.市場環境
2023年の新設住宅着工件数は前年比4.6%減の81万9623戸。その中でも持ち家(注文住宅)は前年比11.4%減の22万4352戸と大きく落ち込んでいます。
2021年から2022年にかけて木材価格が高騰するウッドショックが起こりました。ほかの原料高の影響も受けて工事原価高騰はある程度続くと予想されます。SE構法の採用が増えても、そもそもの市場影響を受けて、微増または受注減少になるかもしれません。市場環境はリスクですね。
9.チャート
チャートはこんな感じ。
2019年に上場しています。2024年11月までの出来高は1000株以下/日と非常に出来高が少ないです。
2024年11月に発表された2Q決算後に出来高が20000~50000株/日と急増しています。12月の中頃に急増しているのは、Xで煽り屋に煽られたからです(私もこのツイートで知りました💦この煽り屋さん、ファンダはすごく見てると思うけど、煽り方がな・・内容は参考にしてます💦)
時価総額40億程度ですが、12月下旬に豪マッコーリ銀行が買い増ししています。59900株なので、12月中旬以降の出来高はこれが影響したのかなと。
10.大株主
大株主は田杉総行(田鎖氏の資産管理会社)、田鎖氏(代表取締役社長)、杉山氏(会長)、藤井氏(取締役)、双日建材(取引先)、山河氏(取締役)、伊東氏(SE構法の開発者)と関係者ばかりです。
大株主に関係者ばかりなのは好印象ですね。
11.業績予想と目標株価
業績予想として3パターン考えました
①控え目予想:SE構法出荷数が住宅5%伸長、非住宅20%伸長
②通常予想:SE構法出荷数が住宅10%伸長、非住宅25%伸長
③期待予想:SE構法出荷数が住宅15%伸長、非住宅30%伸び
2025年は改正前の駆け込み年でもあるため、会社予想よりも下目に想定しています(住宅のSE構法出荷数を1035まで戻すとなっていましたが、それより下の969にしました。2Qまでの進捗をみると1000くらいはいきそうですが、保守的に設定)。
非住宅は前年で35%伸長であったため、それよりもさらに低い数値で設定
上記の各KPIから売上高を算出し、人件費やら加工費について、各想定を織り込んで原価率やら販管費率を算出して、目標株価を算出しました。
上場来のPERヒストリカルからPER15と設定し、2027年度の目標株価を算出すると。。
控え目予想:1496円(+19%)
通常予想:2056円(+64%)
期待予想:2627円(+210%)
まぁ控え目予想であっても損はしないんじゃない?くらいでしょうか。
改正により、SE構法の採用率が増えたとしても、新設住宅着工件数がさらに落ち込めば控え目予想よりも下目になるかもしれません。
これは決算で確認しないとわからないですね(何でもそうですが)
12.銘柄調査を行ってみて
改めて中期経営計画を出すとなっていますので、それを確認して業績予想を作成したいと思います😊
通常予想で2年持ったとして、上値余地+64%はまぁ悪くないものの良くもないかなくらいでしょうか。時価総額も低いので2倍はとれるといいなと期待してます。
市況によっては下も十分ありえますが・・
私は中長期(1~2年)持ち、且つ1銘柄を調べるのに時間がかかるため、①ビジネスモデルが理解できるところ、②経済的な堀があること(ニッチトップ)、③2-3年で2倍取れそうなところ、④カタリストがあること、⑤カタリストがいつ発現するかわかりそうなところ、を中心に銘柄調査を行います。
今回のエヌ・シー・エヌは上記に該当する銘柄だったため、銘柄調査を行いました。新高値銘柄にもなりそうだったので、関西勉強会の題材に取り上げさせていただこうとは思ったのですが・・・😢
1銘柄調べるのに100時間くらいかかるので、幼児を抱えている兼業投資家だと1か月に1銘柄調べるのが限界ですね・・
億達成したら、専業投資家になって片っ端から会社説明会に出席できる身分になりたいものです😊