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頭文字B 破:人生パンチライン⑤『地下からのデジタル衝撃波』・・・昇竜

あらためて言っておきたいのは、
ヒップホップにはとにかく様々に
色んな種類の流派が存在する。
ニューヨークと言うそもそも

文化の坩堝の様な環境で生まれた
新しい生活文化として誕生している
だけあって、ご存知の様に誕生して
から今現在も全世界に爆発的に拡散。
今では日本の家庭のお茶の間や
スマホで超絶技巧のバトルが観れ、
楽曲売り上げがロックを越え、
地域や国ごとの素晴らしい作品も
星の数の様に存在する。

ただ、今でもこの日本で
あんまりヒップホップに馴染みの
無いような人がまず思い浮かべる
ラッパーのイメージと言えば、
キャップを斜めに被り、
巨大なゴールドを首から下げて
フードを被ってたり、
サングラス姿でイケイケかつ
オラオラな雰囲気だろう。
それはそれであながち間違っては
いない。現にそんな環境の中で
心を刺す言葉を紡いだ真に優れた
アーティストは多数存在する。
かく言う筆者も感化された一人だ。
だが同時に大多数の人の
ヒップホップ観がそれで固定されて
しまったのは確かだとも思う。

この後に及んで筆者は敢えて
こう断言しておきたい。
そんなステレオタイプのイメージの
ラッパーも数多く存在はするが、
それはヒップホップと言う文化全体が辞書と
するならば、その中のほんの
1ページのエピソードに過ぎないと。

だから今回、このコラムで紹介するのはそん
なステレオタイプな王道の
イメージとは完全にかけ離れて
いるが、黒人音楽文化の文脈から
言えば完全に正統派な歩みを辿る
稀有なグループにしてみよう。

筆者がこのグループを初めて見たのは
92年。その一年前に初めて
ヒップホップミュージックに触れ、
怒涛の人生確率変動を経て、
狂った様に毎週出る新譜に
胸をときめかせていた時だ。

きっかけのパブリックエナミーと
ブギ・ダウンプロダクションを同時に初めて
聴いて全身に鳥肌が立ち、
フル勃起しながら鼻血を吹いてクソを
漏らしそうな衝撃を受けたのが言わば
童貞喪失の初体験だとすると、
今回紹介するグループは
とりあえず一通り現在出ている新譜を
聴いて『俺もうオトナだし!』と、
調子をこき始めた矢先に街に出たら
『オイオイ坊や、それで知った気に
なってんぢゃネェよ!』と路地裏に
止めてある車に引きずり込まれ、
そのまま得体の知れないモノを
飲まされて山奥の壮絶乱痴気パーティ
に強制参加させられた様な感じだ。
(何ぢゃソレ!と感じる方もいるとは
思いますがあくまでも例えです!)

今まで類を見ない様なフルバンドに
コーラスまで付いた大所帯で
全員が奇抜過ぎる衣装に身を包み、
音の洪水の様なサウンドの中で
否が応にも煽りまくるサイドラッパー
が二人、その中颯爽と言うより、
飄々とドヤ顔かつ満面の笑みで
登場するメインのラッパーを見て
俺は自分の目を疑った。

どう見てもおかしいのである。

ロシアの特派員が被る様な
毛皮の帽子を被り、膝下までの
ロングコートを羽織って杖を持ち、
顔には酔いどれの野郎の酩酊状態を
決定的なモノとするKING of 浮かれ
アイテム『付け鼻メガネ』を装着。
度肝を抜かれっぱなしの
そのビジュアルでこちら側を
唖然させたイントロが終わった瞬間、
やおらその人物は今まで聴いた事の
無いような高い鼻声とヘラヘラした
口調、さらにあからさまに
インチキ
臭いアクセントつーか、
その路線で成功したスリック・リックとゆー
ラッパーのパチモン同然の、
イヤ、さらにでっち上げ感を増した
インチキイギリス訛り英語スタイルで
こう歌い始める。

『俺の名前はハンプティ~!』

ヒップホップミュージックを聴いて
初めて腹の底から爆笑した瞬間だ。

そんな衝撃を俺に初めて喰らわした
彼らの名前は
『デジタル・アンダーグラウンド』
カルフォルニア州オークランドで結成されたグループだ。(以下DU)

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