冬の星・・・大嶽 創太郎

文章や絵画や芸術に、どのような力があるだろうか?
“なくても生きていける”と、答える人がいる一方で
少なくとも”その力を信じている”と答える人も少なからず居るだろう。
私が考察するに、文章とは、
誰かを勇気付けることが出来る一方
誰かをひどく不快にする事が出来る不思議な力を備えていると思う。
そして不思議なことに、言葉は毎回同じように作用しない。
涙を流すように、心を鷲掴みにされるような一文に辿り着いたとしても、読む度に同じ想いが出来るかは、保証されていない。


しかし、人は文章を探す。孤独な時に、一人の時に、寂しい時にこそ文章を探す。
さて、私がこの原稿に向かい合っているのは2020年の8月15日で本稿には約5000文字のスペースが用意されている。


海に出る船の先端に立ち、行き先を思案する様に。
不思議と勇気をあなたに。
生きることは美しい。



−ダイヤモンドを貰った男

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遠い場所とはいったい何処なのだろうか?
宗教的に文化的に遠く、肌の色や髪や目の色が違う。
 
憧れの地、憧れの国、憧れた光景。
 
旅をしていると様々な日本人と交差する。
西から来た者。北から来た者。
僕は海外生活の多くの時間を、南アフリカの港街 ダーバンで過ごしてきた。
一つの場所に滞在している為、何人もの旅人が来ては去り
僕の目の前を通過していった。
 
挨拶をし、名前を交換し、どんな旅をしているか
一応の身の上話を交わすが、あまり込み入った話はしない。
 
どこが素晴らしかった?各々の旅自慢になるのも厄介だし
特別な観光地でもないダーバンの魅力を語る事もあまりない。
彼等の多くは一日二日で街を去って行く。
しかし、中にはとんでもない尺度 経験を持つ者もいる。
一般旅行者とは掛け離れた経験を持つ Aの不思議な物語を紹介しよう。

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