#01 ファシリテーションの概念ががらりと変わった、ちびまりさんとの出会い。
「まるもが気になるアノ人」に話を聞く第1弾は、鈴木まり子ファシリテーター事務所の代表を務める、鈴木まり子さん(僕もふくめて皆さんからは、“ちびまりさん”と呼ばれている!)。NPO法人日本ファシリテーション協会の元副会長であり、地域・NPO・行政・学校・医療介護・企業など多様な分野における「困りごと」を、ファシリテーションを通して解決したり、活動を後押ししたりと、全国各地に活躍の場を広げられています。今回は、全5回にわたって、ちびまりさんの考えるファシリテーションのあり方や、これまでの活動についてお伝えしていきます。
目次
[3/6] #01 ファシリテーションの概念ががらりと変わった、ちびまりさんとの出会い。
[3/7] #02 東日本大震災、わたしたちに何ができるのか。3人で立ち上げた、災害復興委員会。
[3/8] #03「被災地ならではのファシリテーションって?」
[3/9] #04 たわいないメールも、ボーリング大会も、ファシリテーションのいちぶ。
[3/10] #05 著書『ソーシャル・ファシリテーション』と、ちびまりさんの、この先。
対談している人:ちびまり、まるも
記事を書いた人:西道紗恵さん(ライター)
オーディエンス:ごっちゃん(2人をつないでくれた人)
鈴木まり子さん(ファシリテーター・研修講師)
子どもの頃、ボランティア活動を通して、ワークショップと出合う。人事労務コンサルタント会社を経て、独立。現在は、地域、NPO、行政、学校、医療介護、企業など多様な分野において、ひとりひとりが「尊重され、存在できる」場づくりを目指して会議やワークショップを進行。また、その手法と考え方「ファシリテーション」を伝える研修を企画・全国で実施している。3.11以降は、特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会の災害復興支援室メンバーとして東日本大震災から要請に応え多様な話し合い、対話の場の進行役を続けている。その経験をもとに、地域の防災リーダーや自治体向けに「災害・防災のためのファシリテーション研修」を展開している。
NPO法人日本ファシリテーション協会の副会長を経てフェロー。Be-Nature School ファシリテーション講座講師。法政大学兼任講師 共著『ファシリテーション〜実践から学ぶスキルとこころ~』岩波書店。静岡県浜松市在住。
web https://mariko-office.com/plofile/
まるも:たしか、ちびまりさんと出会ったのは、僕がNPO法人日本ファシリテーション協会(FAJ)の会員になった2012年頃だったかと思うんです。関西支部イベントの分科会に参加したときに、ちびまりさんがいらっしゃって。そのときの出来事が本当に忘れられなくて、今でも僕にとってファシリテーターのスタンダードは、ちびまりさんなんです。
ちびまり:まるっち、あの時学生だったよね。
まるも:はい、当時は大学院生で、23歳くらいだったと思います。その時のメインファシリテーターがちびまりさんだったんです。今からこのテーマについて話していきましょうと進行された時に、とある女性がテーマに対する想いを話し始めたんですよね。たぶん、ちびまりさんのファンの方だと思うんですけど。最初はみんなその方の話に耳を傾けて、ウンウンと聞いていたんですけど、けっこう話が長くて(笑)。はやくワークに移りたいなあという空気が流れ始めた時に、ちびまりさんが「今お話されたことはとても大事なことですね。今日はこのテーマで話そうと思っていたんですけど、こっちに変えましょうか」と切り出して。もともと用意されていたテーマを捨てて、方向性を変えたんです。僕はそれを見た時に、「すげえなあ」と思って。当時は、ワークのお題を変えてもいいという概念そのものがなかったので、「変えていいんだ」という気づきもあったし、誰も嫌な思いをしない自然な流れをつくって、上手く場を切り替えているのに驚きました。その間、ちびまりさんはずっと相槌を打ちながら、その方の話を笑顔で聞かれていて。その立ち居振る舞いすべてが、「これぞファシリテーションなんだ」と勉強になりましたね。
ちびまり:若いのに、そこまで気がつくんだからすごいよね。
まるも:ちびまりさんはFAJのフェローであり、過去には副会長も務められていましたよね。
ちびまり:私は他にもNPO法人の会員やボランティア団体で活動していますが、FAJの仕組みってすごいと思っているんですよ。FAJは2003年に設立されたNPO法人ですが、NPOとしてのあり方がおもしろいと思っていて。
まるも:くわしく聞かせてください!
ちびまり:NPOなのに、私益から入会する人が多いということ。入り口は一個人のメリットからスタートするけど、少しずつソーシャルな活動に足を踏み入れていって、ボランティアや市民活動にハマっていく。最終的には、公益を生み出す活動に尽力する人が増える流れをつくっているんですよね。
ちびまり:例えば、会社員の人が社内会議のファシリテーションが上手くなりたくて、FAJの基礎セミナーを受講する。もっと実践力を身に着けようとFAJに入会し毎月の定例会に参加する。すると運営側に誘われ、さらなるスキルアップを目指し運営委員やアソシエイツとして活動していくなかで、チームで活動するおもしろさを体験する。そして、もっと実践力をつけたい人は、次は地域社会に出てファシリテーションを実践していく。例えば、マンションの管理組合とか、PTA活動とか。そのような場で、会議の進行をすると出席者にすごく喜ばれるんですよね。「今日は話し合いが上手くいった!よかった!」って。そんなふうに言われると、人の役に立つ喜びを感じて、次はこんなことやってみよう、あんなこともできるかもと、地域活動や市民活動に興味を持つようになるんです。この私益から公益へのプロセスがよくできているな思います。
まるも:だいたい多くの団体は、「社会のために」「公益」が先にきて、じゃあ一人ひとりは何ができるのかという流れで語られがちだと思うんですけど、FAJは逆パターンと言いますか。
ちびまり:そうですね。そこがNPOの裾野が広がりにくい原因かなと。私益から入ってもらって公益に目覚めてもらえば裾野が広がるかなと思います。他にも会員が主体的になるための働きかけもしています。例えば、総会などで会員から「もっとこんな制度がほしい」という意見が出たら、理事は「じゃあつくってみてください」と返す。一般的には、会員から理事会が意見をもらったら「検討します」って返すことが多いと思いますが、FAJの理事は「検討します」とは言わない。「FAJの仕組みはおかしい」と言われたとしても、「そうですか、では、ぜひつくってみてください。応援します」って返す。あくまでも主体は会員なんですよね。
まるも:ある意味、なかなか辞めづらい体制ですよね(笑)。意見を言ったら、自分がやらなきゃいけないし。でも、自分たち次第で、どんどん良くしていける。いい仕組みだなと思います。
ちびまり:私がFAJの会員になって間もない頃、印象に残っている出来事がありました。FAJの総会って、ディスカッションがベースなんです。たしか、私が初めて参加した総会だったと思うんですけど、議長が出席している会員に向けて「質問はありませんか」と投げかけたときに、誰からの質問が出なくてシーンとなったんですね。そうしたら、議長が「皆さんはファシリテーション協会の会員なのに、総会で質問をしないってどういうことですか?では私が質問します」って。その時は、「議長が質問していいのか!?」って私も驚いたんですけど、その勢いでみんなが質問をするようになったんです。その様子を見て、「これもファシリテーションのひとつなんだ。プッシュ型の促進をしたんだな」と。すごくおもしろかったですね。
> #02に続く
「東日本大震災、わたしたちに何ができるのか。3人で立ち上げた、災害復興委員会。」
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(まるもの一言)
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