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読書備忘録第5回 フロリスク8から来た友人 P・K・ディック 大森望訳
「ティモシー・アーチャーの転生」に続いて、今月2冊目のP・K・ディックである。この前の読了が、13日だったから、6日で読んだ訳か。
粗筋は22世紀の地球。高い知能を持つ6千人の〈新人〉、テレパシーや未来予知など能力を持つ四千人の〈異人〉に支配された六十億人の〈旧人〉が強固な支配体制を打倒するべく、トース・ブロヴァーニを外宇宙に旅立たせて太陽系以外の知性体に助けを求めて戻って来る。
お話しとしては「助けてくだせぇ、お代官様」と外宇宙の異星人に直訴する百姓話なのだが、読んでいる内に、いつもの通り、P・K・ディックが世界と物語を語っていくうちに、世界や視点、物語自体が歪んでくる。
翻訳者の大森望さんによると、金を稼ぐためにお決まりのフォーミューラーフィクションを書こうとしても何処かはみ出してしまう、と書き残しているが、読者としては、自分が読んでいるお話は本当に、この読み方で良いのだろうか。人物の動きは捉えられているだろうかと心配になる。
前の「ティモシー・アーチャーの転生」の備忘録でも書いたが、P・K・ディックの小説は迷子になる為の物語群である。
最初に読んだP・K・ディックの小説は「流れよ我が涙と、警官は言った」だが、サスペンス小説として始まった小説が迷宮に入り込み、突然、残り20頁ぐらいでお話しが終息するのだ。
今回の「フロリスク8から来た友人」ではトース・ブロヴァーが「モルゴ・ラーン・ウィルク」を紹介した辺りから、情報戦、攻防戦が始まり、混戦模様となる。
大体、トース・ブロヴァ―が紹介した宇宙人は巨大なミミズで「彼らの中に取り込まれれば、階級制度がなくなるんだよ」と宣ってしまう。
自分で粗筋を書いていて、間違えたのかと思って終盤、読み返してみたが、そうとしか読み取れない。
翻訳解説している大森望さんがフォミューラーフィクションを書こうとして、はみ出してしまう、と言う所以は、ここにあるんだな。
まともじゃないもの。読んでいて、これ、どうまとめて着地するんだよと突っ込みながら、読んでいた。
大昔だけれど、P・K・ディックをモデルにした主人公を映画化した「ディックの奇妙な日々」をビデオで見た。映画の中に出て来る主人公が書いているSF小説が合間、合間に出てきたが、主人公の妄想を肥大化させたような世界観と登場人物でひたすら、混乱していた。
多分、P・K・ディックも混乱しながら、書き上げたのだろう。
読後感は、P・K・ディックの小説を読んだなぁとしか言えない。
面白いとか、面白くないとかじゃなくて、こいつ〈作者〉、オチを付けられるのか?と思いながら、読んでいた。
また、近いうちに、P・K・ディックの小説を読むと思う。何故なら、今回、図書館で借りたが、家にある在庫のP・K・ディックの小説、結構、あるのだ。この「フロリスク8から来た友人」も創元SF文庫で買ったような記憶がある。
正月前に15冊の本を借りて、8冊目の本だった。
後、7冊、読み切ってしまおう。(;^_^A