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読書備忘録第6回 大菩薩峠 中里介山 お銀様の巻迄

 大菩薩峠の第14巻「お銀様の巻」迄まで読んだ。

 第15巻「慢心和尚の巻」にこれから入る所である。

 kindleで読んでいるので、本を読むというより、テキストの確認みたいな感じだが、所々、後で気がつけば、おかしな箇所がいくつかあり、しまった、あれはkindleの機能でマークしておけば良かったと思う。

 最初、電子書籍としての大菩薩峠に出会ったのは、2000年代の初め、青空文庫というパブリックドメインの小説を紹介するサイトだった。
パブリックドメイン、無料という事もあって、アホみたいに、当時、購入したばかりのノートパソコン(Windows meだった)に入れたが、文章の語り口の「なのでありました」や体言止めの文体に慣れず、脱落した。

 それがYouTubeで六代目神田伯山の講談を何気に見ていたら、この語り口、何処かで見た事があるぞと思ったら、何のことはない、大菩薩峠の文体だった。

 前はTwitterに感想を流していて、その時、その時の進捗状況が判ったのであるが、この頃の改悪により、昔のtweetが遡れなくなった。

 で、第14巻お銀様の巻までの感想を書き止めて行こうと、noteに移行した。

最初の読書備忘録の初めは大菩薩峠の進捗状況をメモしておく為に始めようと思ったのだが、年末に借りた図書館の15冊に手こづって、先に図書館で借りた本から書き始めた。昔は15冊ぐらいは、2週間で読み切っていたが、読む能力が落ちた。読書って、体力と視力が優先するなとつくづく感じる。

 で、ようやく、大菩薩峠の話である。基本プロットはひとつ。机龍之介という虚無の殺人鬼であり剣士が大菩薩峠で巡礼の老人を殺めて、甲賀一刀流の師範宇津木文之丞を果し合いで倒し、弟の若侍宇津木兵馬が兄の仇を打つために旅に出て追いかける。机龍之介は宇津木文之丞の許嫁お浜を連れて出奔、郁太郎と言う子供を儲ける。

 RPG小説風にいうと、暗黒に落ちた虚無の剣士が城の勇者である剣士を殺し、許嫁をNTRして子供を儲ける。勇者の弟は虚無の剣士を追いかけて、旅に出る、と言う塩梅か。

 基本プロットはひとつと書いたが、作者の中里介山が興に乗って、延ばしに延ばし、登場人物を増やし過ぎて、まとまりがつかなくなった。

 今で言うメディアミックスも盛んで、大正11年に新国劇で澤田正二郎による舞台化、昭和11年には稲垣博監督、大河内伝次郎主演の映画が作られた。小林信彦のエッセイで読んだ事があるが、新国劇の澤田正二郎が主演の時に原作にない立ち回りを入れたことにより、澤田正二郎の舞台が中止になったという。

 一言で言えば、中里介山にとっては「飯のタネ」であり、要らない立ち回りで「物語」を変えられると、非常に困る。

 1913年大正二年~1941年昭和16年まで、28年間、職業作家中里介山の生活の糧だった訳である。

 現代のメディアミックスなら、かなりフレキシブルだし、多少、筋を違えても五月蠅い原作者はいない(いや、いるか、まだ。(;^_^A)

 大体、登場人物が増えて収拾が付かなくなった感があるが、今の小説家なら、机龍之介と宇津木兵馬の敵討ちを10巻ぐらいで纏めてから、その他の登場人物については、「外伝」として出すだろう。

 そういう方法がなかった訳ではない。忠臣蔵における余話、脇役を掘り下げた話はやたらと多い。決闘高田馬場の堀部安兵衛が良い例である。

 でも、中里介山にはその戦略はなかった。多分、人気が上がるつれて、止めれなくなった。何故なら、連載している都新聞の関係者、というか、社員だったのである。新聞の売り上げに協力せねばならないというか、原稿料も自分の言い値だったのではないか。

後に、中里介山は国政選挙に立候補、落選するがその時の選挙費用は殆ど、大菩薩峠の原稿料でまかなかったのではないか。

 と、邪推はここまで。
 お話しを簡単に書き留めておこうと思う。
第5巻龍神の巻までは、机龍之介を追う宇津木兵馬を追跡する話なのだが、第6巻「間の山の巻」から、サンカ(山の民)が出て来てから、賑やかになり、米友というコメディリリーフ、お君という間の山の節歌い手、ムクという忠実な犬が加わる。
 第4巻「三輪の神杉の巻」に藍玉屋の金蔵という今で言うボンクラのオタク青年が出て来るのだが、机龍之介が手にかけて殺めた(机龍之介はこれが多い)お浜に生き写しのお豊に一目惚れ、誘拐、拉致して出奔、叔父の経営する宿屋の主人の納まり、お豊を囲って生活を立てるという枝葉の話が出てくる。
 これが東京都の朝の新聞小説と言うので正直、驚いた。映画でいけば「コレクター」「サイコ」のプロットである。そういうのを混ぜて引っ張るから、お話が終わらなくなってくる。
 囚われたお豊はストックホルム症候群の被害者のそれで、そういう展開がシレっと大正時代のお茶の間で読まれている事に正直、驚く。
 後に、この金蔵、宇津木兵馬に刀を振るい気がふれたと軟禁されたのだが、それをやぶり、行燈を蹴飛ばして大火事になるという。そして山火事となり周辺は騒然となる。
 ここまで来ると怪獣映画のノリなのだが、何度も言うが、大正時代の新聞小説である。
 因みに、このエピソードは第5巻「龍神の巻」で語られる

 と、今日はここまで。

 本当はそれまでのお話、お君、駒井能登守、神尾主膳、芹沢鴨、近藤勇、の事も書きたかったが、藍玉屋の金蔵のエピソードを書くので疲れた。
 デジタルのkindleを手でめくって、遡ったのだ。

 Twitterをメモ代わりにしていたツケが今にして回って来た。

 あそこに置いておけば、メモ代わりになると思っていた自分が馬鹿だった。

 今度から、自分でハイライトを入れたり、手作業の神でメモを取りながら、読んでいく事にしよう。

 神尾主膳なんか岡本喜八版「大菩薩峠」では天本英世が演じた大悪党である。ただし、彼が大悪党に変貌するのは、第11巻「駒井能登守の巻」からである。岡本喜八版は第3巻「壬生島原の乱」までである。

 とりえあず、第15巻「慢心和尚の巻」に入った。十八文を看板する町医者道庵先生、中心の話だろう。

 読み終わったら、また遡って語る事にしよう。(;^_^A


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