【研究】グルーピングシステムの開発について
はじめに
グループワーク時のグルーピング方法は,参加者が多い場合,ランダムでグルーピングされる場合が多い.
参加者が少ない場合やシステム化を行う場合,ランダムなグルーピングの他に,グルーピングに年齢や性別など,参加者を外から判断した社会的カテゴリーや,数値化しやすい成績などを使用する傾向がある.
グループワークは,価値観の多様性が尊重されるべきであるが,社会的カテゴリーを使用すれば,参加者はカテゴリー代表の意見を発言する傾向がある.
また,数値化しやすい成績を使用することで,横の関係が重要なグループワークで,縦の関係が生まれやすくなる.
これらの点を考えると,ランダムのグルーピングは,価値観の多様性と横の関係が保たれるグルーピングが期待ができ,使用も容易である.
しかし,ランダムなグルーピングが適さない場合もある.
例えば,強制参加の授業では,テーマや学習目標により,参加者のモチベーションの違いが大きい.グルーピングをコントロールしなければ,教員のサポートが必要なグループが生まれる場合がある.
グループワークの一つに,学習を促す手法として,ワークショップがあるが,山内ほか(2013)は,ワークショップの実施環境の問題点として,自主的に参加するワークショップと強制参加の授業では,参加者の主体性や知識やスキル,学習評価の有無,教師とファシリテーターの違い,真正性の有無に見逃すことができない相違点があると述べている.
このことからも,グルーピングは,実施環境により,テーマや参加者の状況などに応じた対応が必要であることを示唆している.
しかし,これらの対応は容易ではない.
高等教育においてアクティブラーニングが推進され,グループワークを使用した学びが活発に行われている.
しかしながら,グループワークの実践経験が少ない教員も多く,実施環境を考慮したグルーピングにまで,手が回らないのが現状である.
また,実践経験が豊かな教員でも参加者が多い場合,実施環境を考慮した個別の対応は困難である.
本研究では,参加人数や教員の経験に関わらず,様々な実施環境で,参加者も教員も容易に使用することができるグルーピングシステムの開発を目指す.
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テーマに対する興味と自己・他者評価による性格傾向に着目したグルーピングシステムの開発/丸山美紀,中谷祐介,栗延孟(2018年5月 日本教育工学会研究報告集 関西大学)より抜粋
・山内祐平,森玲奈,安斎勇樹(2013)ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ.慶應義塾大学出版会,東京