空気の外堀
大人になったら結婚して母になる。そう言われ育った。
子ども頃、それが条件なら大人とはとても辛いんだな…と思っていた。
どんなに好きでも自分以外の人間とずっと一緒は気が休まらず疲れる。
私は全方位に勝手に空気を察し、自分の意思を素直に伝えられず、歩み寄り他者と共生する経験値をうまく積めなかった。その代わりにできたのは他者に対して自分の周囲を取り囲む空気の外堀だった。
傷ついた事を気づかれぬよう勝手に装い勝手に疲弊し、漠然とした怒りのようなものを沈殿させ、ふと向けられた悪意に底意地の悪い攻撃する。年齢が上がると防御としての自虐も加わった。
そんなことを積み重ねた結果、空気の外堀はなかなかに複雑で強固なものになってしまった。
だからずっと結婚し家族が倍になるのは恐ろしく、ましてや子どもを産み育てるなんてとてもじゃないけど務まらないとずっと思ってきた。
思い込んでいるだけだとも思う。
でも出来てしまった空気の外堀を埋める術はわからないので、透明なおばさんとして暮らしている。
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