致死量のほぐし水
「これは絶対に映画化か書籍化できるぞ!」と興奮気味に夢から醒めてふかふかのベッドから起き上がった経験は読者の方々にも何度か経験はあるだろう。私自身も、このnoteを書くにあたって、ご多分に漏れずそれであった。しかしこの天から、あるいは内なる才人から授かったものは得てしてすぐ忘却してしまうものである。先月会社をクビになり、安酒を飲むか、世界一時間のムダと言われるゲームセンターでのメダルゲームをするか、あるいは惰眠をむさぼっていた一か月間。本日昼間まで寝ていた際に、恐ろしく面白いコメディ映画が観れたのだ。「商業化したら……」と口角を上げながら、何とか世に出してみようかとPCを開き、キーボードを叩くと同時にあの感動が薄れていく。
そう、何を書くか忘れてしまったのだ。ほぼ全員が経験するあれだ。人の夢と書いて儚いというやつだ。
舞台や朧げな背景はまだ残っているのだが、肝心かなめの面白かった部分は、無い。あるいは思い返したら「あんまりそうでもないな……」というもの、プロットすら書けない状態である。
この世の中、娯楽に溢れている、というのはもはや耳にタコができるくらい聞いたことのある言葉であろう。
それでもなお、このような駄文を読んでくださった方に感謝をし、もう一度あの素晴らしいコメディ映画のパート2を観ることができるように願いながら再度くたびれたマットレスに横になる。映画界ではパート2は駄作という常識がまかり通っているらしい。そんなものは糞くらえだ。吐いた唾は顔に再び付いた。