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冷たい頬/謝々!
というのを見て、私は書き残したいと思った。音楽室で聴いたあの時間を。
長方形の形をした8センチのスピッツのCDだった。スピッツは中学校時代の私を、そして大人になっても支えてくれている。
最初はCDジャケットが気になった。
薄いピンクのワンピース?ネグリジェみたいな服を着た人の写真。この姿に私はすごく惹かれて、手に取った。
当時流行っていたジャニーズやSPEED、安室ちゃんを聞いて育っていた私。言葉よりもどちらかと言えばダンスパフォーマンスも含めた歌たちをよく聴いていた。
だから、びっくりした。歌うトーンが変わらず、穏やか。ゆったり流れるサウンド、(のちに楽曲によってロックな歌を聴いて驚く未来)一度聴いただけではよくわからない歌詞。すぐに歌詞カードを手に持って文字を、言葉を、草野正宗さんの紡いだ歌詞を、目で追った。
「あなたのことを深く愛せるかしら?」
風に吹かれた君の冷たい頬に ふれてみた小さな午後
(ふれてみた小さな午後?)
草野正宗さんの世界に吸い込まれた。
サウンドの雰囲気が変わって
ふざけすぎて恋が幻でも構わないといつしか思っていた
壊れながら 君を 追いかけていく
近づいても 遠くても 知っていた
それが全てで 何もないこと 時のシャワーの中で
詩のような言葉たち。美しいなぁ。時のシャワーだって。それからは学校の放送でも流したし、家に帰って何度も聞いた。家では眠る前に聴くことが多かった。いろんな出来事で疲れちゃった私も、この静かな世界に浸ると落ち着けた。そしてもう1曲の謝々といういう曲は人間関係に対しての自分の方針を決める1曲にもなった。
終わることなど無いのだと 強く思い込んでれば
誰かのせいにしなくても どうにかやっていけます
旅立ち?生まれる?前向きな歌?なのか、全然わからん。
でもこの言葉たちで綴られ歌が私を救ってくれた。中学校での友人との諍いも、部活動で燃焼した自分の心も。
15歳の私はこの2つの歌を、私以外誰もいない音楽室できいた。少しだけ不安定になっていた私は、音楽の先生の計らいで、自由にこの歌を聞く時間がもてた。窓際に座って足が伸ばせるような場所で足を伸ばして、休み時間や部活がなくなった放課後。初めて買ったCDをこっそり鞄に入れて、ひっそり聴いた。そして時に泣いた。
思春期特有なのかもしれない「自分とは?」「家族とは?」「友人とは?」「生きるって?」を考えてぐるぐる酔っていた私は、冷たい頬を聞くことで想像の世界に行けたし、謝々!のおかげで「わかんないけど、わかんないまま、どうにかなるかな」と涙を拭いて顔を上げて帰路に着くことができた。
このCDと出会ってもうすぐ20年が経とうとする。そしてこの20年間、スピッツの好きな歌がどんどん増えた。ライブに行くこともできた。
偶然、「あ、気になる」と手にとったCD。音楽室で一人で聴いた時間。振り返ればこの出来事は幸運だった。どんな気分の時も私を呼吸させてくれた歌たちだった。