愛着と執着
執着を手放せば幸せになると誰かが言った。
「○○がなくちゃ嫌だ」
「どうしても○○が欲しい」という執着を捨て、
愛着のある本当に大切なものだけ残して暮らすと
心が満たされるよ…と。
でも
私が苦しいのは執着のせいじゃない、と気がついてた。
私にジワジワと遅効性の毒を与えてくるのは
執着ではない。…「愛着」のほう、だ。
長く付き合っていたバディAへの「愛着」が、私を苦しめている。
……
S君との飲み会はあっけなく終わりました。
ほとんど世間話で、唯一の収穫は彼の育った環境が聞けたくらい。S君がちょっとフェミニンな弟キャラである理由がわかりました。2人のお姉さん(従姉妹)と2人の妹に挟まれて育った男の子。お母さんも2人(片方は母の妹)。物心ついた時には、女性6人に囲まれて。
当たり障りのない世間話と、1ヶ月後に始まる新しい職場でのタスク、そんな話で終始して。
お互いに穏やかに駅の改札でバイバイした後、S君と反対方向の電車に乗って…
…私は途方に暮れました。
これは求めていた結果じゃない。
でも、どうすれば…
私は納得するの?
答えを探そうとする私に、答えを出すまいとする私が、攻撃してきます。
(…Aをどうしよう…)
疑いもなく13年も愛していたものが、破壊される。
怖い。心臓が痛くなる。
ネットの書き込みに
「ずっと支えてくれた彼氏のことが大好きだったのに、他の人を好きになってしまい、眠れないくらい辛い」
というのを見たことがあります。
そこへ寄せられたコメントは
「ひでえ女だな」。
いま、その言葉が、矢となって自分に刺さります。
…苦しんでるの。ねえ、その子は、苦しんでるんだって。
自分が求めているものを、自分の意思で手に入れようとした、
そんな普通のことに、血を流して苦しんでいるんだよ。
S君と飲むまでの何日か、眠りの浅い状態が続いていましたが、そんなのは、まだまだ序の口でした。
その夜から、ほんとうに眠れなくなり…。
布団の中で寝返りを打ちながら、時計ばかり気にして。身体と脳は疲労困ぱいなのに、自分のスイッチが切れない。
つらくて辛くて…
頭がおかしくなりそうで…
朝、30分くらい意識を失いますが、目覚ましがなる前に目覚めてしまいます。
仕事に行くための身支度をしながら、
私の全身が「もう無理だよ!死んじゃうよ!」と
叫びます…
もう、いいや、て。
もうこうするしかない、て。
頭の中で、ギリギリの私が、なぐさめるように、つぶやきました。
6日後、私はS君にLINEを送りました。
「お泊まりしませんか」。