黒い産着に見惚れる
街ですれ違う人のファッションに見惚れてしまうことってあると思うんですが、赤ちゃん相手にそれが起こるとは思わなかった。
自分に子どもができて、「産着(うぶぎ)」というものの存在を知った。
お宮参りの時に子どもに着せる着物のこと。
大人が赤ちゃんを抱っこして、その上から小さな着物を被せる形で着せる。
着せると言うより、着せている“体”だ。
着物は、赤ちゃんを抱っこしている大人の胸元あたりから、膝下まで垂れ下がる。
帯をつけずに被せるだけなので、着物の背中や袖の部分が全て前に垂れる形になる。
着物の美しい柄が、前からよく見える。
着物をこんな形で着るのは、この時しかないだろう。七五三の時は、ちゃんと帯をしめるし。
先日、娘のお宮参りに行ってきた。
神社には、私達以外にも何組かの家族が赤ちゃんを抱いて参列していた。
その中でひときわ目を引いたのが、黒い産着。
柄は、遠いのでよく見えなかったが、鶴と松のように見える。柄の大きさは控えめで、黒地の部分が多い。
シックに見えて地味じゃないのが、着物のすごいところだ。
更に、薄浅葱色(ターコイズブルーのもっと薄い感じの色)の長襦袢が、黒い袖口からちらりとのぞいて、それが春の陽気の下でなびく。
爽やかで美しい。
しばらくその黒が、頭から離れなかった。