貝のふたは良い。
貝のふたは良いなあ。貝のふたは良いのです。丸いし白っぽい。この形と色が好き。海に行くと必ず拾う。というのは大袈裟だけど、海水浴目的以外のときは砂浜を歩いて貝のふたを探す。どんなに美しい貝殻もシーグラスも拾って眺めるだけで持って帰らない。とにかく貝のふた。これを書いている横でこどもたちが「おもちだ!」と貝のふたでおもち屋さんごっこを始めている。確かにもちみたいだ。少し焼き目がついてるもち。言われてみれば丸もちのフォルムも好きだ。
貝のふたの裏は渦を巻いていてそれも良いと思う。なんの貝のふたなのかと言うと、夜光貝のふた。夜光貝はサザエの仲間で、奄美地方や沖縄に生息してる……とWikipediaに書いてあった。美味しいらしい。食べた記憶が無い。
居酒屋さんや料理屋さんに行くと、店の駐車場や軒先に夜光貝の殻が飾ってあったりする。食べられるサイズの大きな夜光貝のふたも、たまにそういう店に飾られていたりする。大きくて白くて丸い。綺麗だ。でも夜光貝のふたは大きくなると裏が茶色くなってしまう。それが個人的には残念。白くて大きな貝のふたに絵や文字を書いてお土産として売ってあるのも見たことがある。もちろん悪くはないのだけど貝のふたはそのまんまが好きだ。
貝のふたは良い。
小さな貝のふたを見たこどもに、「赤ちゃんの頃に死んでしまったということでしょ?」と聞かれた。その通りです。貝のふたも貝殻も珊瑚も星砂も砂浜で拾うものはみーんなみんな死骸だよ。言ってみればシーグラスだってガラス製品の死骸。でも美しい。夜光貝の殻は内側が虹色に光っていて綺麗だし。
ペンネームを貝のふたにしたことを忘れて貝のふたを良い良い言いまくってしまった。ペンネームを貝のふたにしちゃうくらい貝のふたが好きだと言いたかったのだから、仕方のないことだ。
貝のふたが好きだ。また拾いに行く。探すのも楽しい。行き道で見つからなかったのに同じ道を反対側から辿り直すと良いふたが見つかったりする。宝探しだ。楽しい。