逃げるは恥だが(確かに)役に立つ
やればやるほど頭と身体が丈夫になって生活が充実する生活の延長にある仕事を複数持つ、という考え方をざっと「ナリワイをつくる」(2012年/東京書籍)に書いていました。その後も生業を分散するのはリスクヘッジであるとインタビューには答えていましたが、本人としてはそもそも面白いからという志向でもありました。
しかし、やっぱり10年に一度と言わずこれからも頻繁に危機的事件(critical incident クリティカルインシデント)が起きるんやなと実感する中で、実用的にも必要であると言わざるを得ません。もっとも縄文時代から栗だけに依存していたら不作の時に困るので、今に始まった話ではないのですが。
これに加えて政府や自治体ごとの混迷ぶりの差を見ていると、活動場所(分野)を変えられるようにもしていかねばと思う次第です。
中枢まで腐敗した自治体(議会と行政)だと、もちろん民間が頑張ればなんとかなる部分もありますが、どこかの場面では一時的にせよ(その土地から)逃げるが恥だが役立つ、だと思います。
火中にいたら消火できません、水を撒くなら外からです。
そう考えるとできることとしては、荷物を軽く、住まいも軽く、できれば持ち運べるような生業や技能を磨く、などでしょうか。買い物行動もいろんな種類が選べて嬉しいみたいなものよりも、この一点があれば他のものを減らせるというシャープな万能性が求められるようになるんではないかと感じます。鉈とかゲルとか。ゲルは家としては軽いが物としては重い。
腐敗した自治体については、これまで中央から資金が各自治体に分配されて全般的にリッチだったから顕在化してませんが、日本にはシャレにならんレベルのところがあります。
最近では、町議会の過半数が買収で逮捕されたりとか、選挙で実弾(カネ)が飛び交うが有力議員の力で警察が取り締まれない、市有施設の指定管理のコンペで現職市長に選挙協力した事業者のためにプレゼンの場で健全な競合を副市長が面罵する、行政職員の採用面接で「子供何人産む気があるのか?それが地域貢献だ」と女子大学生に何の疑問もなく問う、同じく採用面接で地域にコネのない受験者が筆記テストの自己採点がほぼ満点にもかかわらず落選する、これは全て21世期の日本での出来事です。
ちなみに、こういう自治体では、すでに若手公務員の退職が増えているはずです。田舎で言えば公務員とは安定の象徴で、憧れの職業のはずですが、そこですら有望な若手を保持できなくなりつつあるのは、一つのシグナルと考えていいでしょう。
こういうところで民間が奮闘してもどこかで限界に当たります、限界の範囲で静かに時を待つ、という作戦もありますが、ここはハンガリーの諺に習って、一時的にせよ脱出する、もしくは脱出できる選択肢を持つ、ことが必要なのではと思います。これは、地域に根ざした活動が意味がないということではありません。奮闘せずに、やれることを楽しめる範囲でやる、ぐらいの気持ちがちょうどいいと思います。
ナリワイの本は、わりと地域で何か起こしていこう、という方々に読まれた面もありますが、そこで土地に骨を埋めて頑張ろうとは書いていないものの2020年になって逃げるは恥だが(確かに)役立つ、ということも考える必要があると明確にしたほうがいいなと思っている次第です。そもそも、逃げるは恥ではない。
「あと野となれ山となれ」という投げやり精神でもなく、太極拳的に軸足をスライドさせる身の動きが、防御になるし次の攻めにつながるということをイメージしていただければ幸いであります。
SAGYOに関していうと、国内製造を最重視してやっておりますが腰肚文化を基点にした日本の民族衣服の概念を変容させ具現化するという仕事なので、持ち運びしやすくて可能性があると考えている次第です。
最近考えているのは、将来的には各地の民族衣服を一つ一つ現代化して、民族衣装からいきなりTシャツとジーンズに移行していくのではなく、現状に即した形に適応度の高い突然変異(mutation ミューテーション)を起こしていくような活動ができないかということです。
これは、民族衣装インスパイア商品開発のような文化的盗用にならずにできる形を考える必要がありますから、当事者との対話を通じて、衣装における神聖さのポイントなど様々な要素を考慮する必要があるでしょう。
あんまり日本人は文化圏外の人が着物を着ても違和感を覚えませんが、民族衣装における意味によっては問題になることがあります。衣装とは違いますが、エアーズロックは信仰の対象でアボリジニの方は登らないが、国外の観光客は登りまくる、みたいなことです(2019年に登山禁止)。
私個人の技能としては、瞬時にほぼ元手ゼロ円の小さい仕事を考えるというファジーな技能なので、床張り技術を磨くか、もう少し大きめの事業がはじめられるように資金を貯めるか、書道を習うかなど、いくつか並行して準備を重ねていく所存です。
最後に一句
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