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池袋→新宿間のカーボンフットプリントを計算してみた

なぜカーボンフットプリントを計算したくなったか

みなさん、Yahooの乗り換え案内アプリって使ったことあるでしょうか?

こんなやつです。便利です。
最近、これにCO2排出量が表示されるようになりました。

車と電車ではだいぶCO2排出量が違うようです。
私はそもそも車を持っていませんが、これを見て「コストや安全性に加えて今後も車は常用しない理由が増えたな」と思ったものです。

こうした、商品やサービスの利用で発生するCO2を「カーボンフットプリント(CFP)」と言います。

この例のように、環境適合性を踏まえての消費行動が促進されることが期待されています。

ところが・・「このおにぎり1個のCFPは?」「このゲーム機1台のCFPは?」皆さんご存知でしょうか? 私は知りませんでした。書いてないので・・。

製品・サービスのCFPはあまりにも表示されていなさすぎる。表示して欲しいと思いました。
エコだけど高額、悪質な商品を選ぶことはなくても、「どっちでもいいからエコな方にしておくか」くらいの行動は促されて、需要があるのでは? と思いました。

なんとか計算出来ないか

ということで、あらゆる商品やサービスのCFPを計算したくなりました。が、方法が分かりません。調べました。

GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)は、企業活動全体での排出量、自治体単位での排出量、商品単位での排出量・・それぞれの算出ガイドラインが公開されていて、これがCFP計算の国際標準です。

一部は日本語でも読めるので気合で熟読しました。
また、CDPという単語もよく出てくるので調べました。

CDP(Carbon Disclosure Project:炭素開示プロジェクト)は、企業や自治体の開示したレポートを公開しているNPOです。 レポートはGHGプロトコルに則った質問に回答する形式です。
企業の排出量レポートが閲覧出来て、まぁそこそこ粗い概算です。
「こんな感じでいいなら自分でも計算出来そうだ」と思えてきました。
(これは問題ではなくて、CDPは「粗くてもまずは開示しよう」という方針です)

試しに、最初の「池袋→新宿を山手線で移動」のCFPを計算してみます。
結果が同じ81gに一致すれば同じ方法でいろんな商品のCFPを公開情報から計算出来るはずです!

1.売上当たりの排出量に運賃をかけてみる

企業への支払いはそのまま企業の売上に編入されるものなので、その売上に占める比率は排出量の占める比率とだいたい同じなはずという考えです。

企業の排出量はScope1~3に分けられていて、全部足すと企業活動全体での排出量になります。
JR東日本のレポートでは2020年度で合計7230000tです。
一方、四季報によると同社同年度の売上高は2946639百万円です。
運賃は167円なので・・

410gになりました。5倍に増えた・・。
オーダーはまぁギリギリ合ってるような・・・。

2.運賃に排出原単位をかけてみる

環境省の公開情報を使います。ありがとうセクシー省。

この「排出原単位データベース」には、「こういう用途に何円使うと排出量はこれくらいだよ」という比率( kgCO2/円)がリストアップされています。

これの「11交通費」によると、旅客鉄道の排出原単位は 0.00185 kgCO2/JPYなので、同じく運賃167円をかけて・・

310gになった。
81gとはズレますが、むしろ1.とは大体合ってる・・。

3.輸送量あたりの排出量に輸送量をかける

ええい、一致させる方法はないのか! キレちまったので元々の乗換案内アプリの計算方法を再現してみます。

このページに行き着きました。
輸送量当たりの二酸化炭素の排出量は 25 gCO2/人km・・というのは2021年。コロナ禍で電車利用が極端に減った時の情報です。
そこから更に2019年の情報がリンクされています。

残念ながら東京の電車は満員に戻ってしまったのでこちらが適切でしょう。
17 gCO2/人km に池袋→新宿間の輸送距離4.8kmをかけて・・

82g!一致したーーー!!
どうやらこのデータを使っているようですね。

結局、どう計算するのが良いのか

やってみてよく分かったのは、計算方法次第で結果が大きく異なってしまうということです。
最初の2つはアプリの表示結果を再現出来ませんでしたが、では間違いだったのかというと、そうとも言えないなと。

例えば、アプリの表示結果は計算方法からいって、全国どの鉄道会社でどの路線に乗っても距離だけで排出量が決まりますが、本来は出来るだけ多く人を乗せた電車の方が一人あたりの排出量は小さいはず。
山手線であれば乗車人数は全国平均よりずっと多いですからアプリよりも更に小さい数字が適切とも言えます。
最初に思いついた計算方法はずいぶん適当ですが、アプリの計算方法と比べて企業活動全体での排出量が小さい鉄道会社を選択する消費行動を促す利点があります。

GHGには商品やサービスのCFP算出ガイドラインも示されていますが、おそらくろくに実施されていません。
例に挙げた鉄道輸送を考えても、乗客数の増減をどう反映するか、駅電力や客車調達の何割をある区間の排出として計上すべきかなど、「1つの商品、1つのサービス」は企業全体に比べて排出量算定がとても困難だからです。

それが今の「商品・サービスのCFPはほとんど表示されていない」という現実につながっているのでしょう。

GHGには「今は算定を正確にすることよりも特に排出の多いポイントを見つけ出す段階」と書かれていて、実際、「自家用車、飛行機は良くないらしい」「牛肉は良くないらしい」といったことは知られてきましたね。

その方針には妥当性も感じつつ、たとえ雑でも消費者に向けた網羅的な開示は必要なのでは・・?とはやはり思うところです。

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