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じゃがたら小話【vol.2】汎用性が高く私たちを魅了するヨーロッパ品種Agria(アグリア)

オランダで栽培される品種の紹介!まずは、目にする機会が多かったAgria(アグリア)から。

オランダのフライドポテト屋に行くと「Agriaです!」と書いてあることもある。日本で言う「男爵」や「コシヒカリ」なのだろうか。ただし、オランダ人の友人たちは誰一人としてAgriaの「ア」の字も知らない(笑)

それなのに、なぜAgriaは私たち(私)を魅了するのだろうか。その謎に迫る。

ヨーロッパを中心に世界中を席巻するAgria

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Agriaは、1980年代にドイツで開発された品種だが、育成者権が切れてからは、栽培のしやすさ、調理・加工のしやすさからヨーロッパ中をはじめ全世界で栽培されている。

種イモ生産が盛んなオランダでは、輸出用としてAgriaの種イモをガンガン作っている。ジャガイモ農家に配布する前、特に輸出前に種イモの検査をするNAKという機関が1年間に検査をした量を見ても、Agriaは3本の指に入っている。

参考:Feiten en cijfers 2014| NAO

なぜAgriaは私たちを虜にするのか?

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なぜAgriaは人を惹きつけるのか?

Agriaは、栽培する生産者、流通や加工する業者、食する消費者にとって魅力ある三方よしの品種だからだ。

そして、フライドポテト、ポテトチップス、フレークなどの加工用に適した晩生品種でありながら、生食用でも愛されているのがAgriaのすごさ。

そしてヨーロッパでは「肉色が黄色」であることが必須!この条件もAgriaは満たしている。

加工業者は言う
「Agriaは黒くならず貯蔵しやすい」

加工業者がAgriaを選ぶ理由は何だろうか。

Agriaは水分量や糖度が低い品種だ。そう聞くと、「糖度が高い方がおいしいのでは?」と考えるかもしれない。でも、加工用ジャガイモにとって、糖度は必ずしもポジティブポイントではない。

・水分量が低い→油で揚げたときにカリッと仕上がる
・糖度が低い→油で揚げたときに黒くなりにくい、焦げにくい

家庭では焦げもおいしさのシンボルだけれど、商品は別だと考える人が多いので、焦げにくいことはメリットになる。また、水分量が少ないとべたつきにくいので、ニョッキにも使われているとか。

...ほら、ポテトチップスやフライドポテトに最適!

あとは、休眠が長く長期貯蔵に適していることも加工業者を魅了するポイント。収穫後のジャガイモを貯蔵施設で大切に保管しながら、商品をずっと切らさないように作っていく。だから、私たちはいつでもポテトチップスもフライドポテトも食べられる。

消費者は「Agriaは何でも使える」
...とは言わない

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スーパーマーケットでも、普通に手に入るAgriaは、食する消費者にとっても汎用性が高い品種だ。

それが消費者を虜にする理由だ!、と言いたいところだが、オランダの場合は、スーパーマーケットで品種名を強調することはなく、調理別にパッケージングされているので、知らずに食べているケースがほとんど。

Agriaは「焼く用パッケージ」、「揚げる用パッケージ」に忍び込んでいるのは見たことがある。「マッシュポテト用パッケージ」は、ほかに選手が控えているので入り込めなかったのではないだろうか。

Agriaは...
焼く!
マッシュ!
揚げ!
ロースト!
チップス!
ボイル!
...なんでもOK!

「Agriaは、ピーマン、タマネギ、サーモン、ディル、ミント、赤身肉などとよく合う」という情報を得たが、その理由は不明。

家庭の貯蔵でも、冷暗所なら最長1か月間保管できるそうだ。と、いっても高温多湿の日本だとそこまで持つのだろうか。

生産者は言う
「売り先がある」

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では、作る側のジャガイモ生産者がなぜAgriaを選ぶのか。「加工会社や流通業者に頼まれたから」というのが一番大きいと思う。加工会社から種イモを供給され、その収穫したジャガイモをそこへ出荷する契約栽培のケースが多いからだ。

それでも栽培が難しければ、生産者はやはり作りたくないだろう。Agriaにはこんな良さがある。(AGRICO社サイトより)

・イモのサイズが大きいこと
・イモのサイズや形がまあまあ揃いやすいこと
・相対的に収量もよいこと
※オランダにおけるAgriaの平均収量は、1haあたり45トン(2019年)
・オーガニック栽培にも適していること
※なぜ有機栽培に適しているのか...理由見つけられず!
・ジャガイモシストセンチュウ耐性がある

貯蔵庫を自前で持ちバラ貯蔵や木箱貯蔵をするオランダでは、貯蔵性がいいこともポイントだ。

しかし、気になることもある。

・収穫時の打撲に弱い
・疫病や黒あざ病に弱い

このあたりは、新しい品種には敵わないのだろう。

※生産者向けの情報として播種(植栽)密度も
(だから何だという感じだが、個人的に言いたい)

28-35mm(種イモサイズ): 25 cm (54,000 plants/ha)
35-55mm(種イモサイズ): 30 cm (45,000 plants/ha)
50-55mm(種イモサイズ): 40 cm (33,000 plants/ha)
※切らずに使用
種イモがサイズ別に供給されるのは魅力的!

参考:Average production per hectare of Agria potatoes in the Netherlands 2016-2019
その他、さまざまな育種会社、販売会社のサイト

日本でAgriaを食べるには

日本にいながら、Agriaを食べたい場合はどうすればいいのだろうか。

ミニストップでAgriaを使用した「X(エックス)フライドポテト」が販売されている。(ドイツ栽培だが...)

また、ヨーロッパ産冷凍フライドポテトを国内でも販売しているAviko社やFarmfrites社がAgriaを使って加工した商品を外食産業向け卸したり、スーパーマーケットなどで販売をしたりしているはずだが、詳細は不明。

あなたもすでにAgriaを口にしている可能性は十分にある。


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