頭にきつつも笑っちゃう、「サーカズム」について思うこと。
サーカズム(Sarcasm=皮肉)は、アメリカ人との会話の中で、日本で育った自分との文化の違いをいちばん実感するポイントでした。
さすがに最近は慣れてきたけれど、最初のうちは「えっ?」「えっ?」と、お互いに顔を見合わせてしまうぐらい、とつぜん会話の流れを見失ってしまう。そんな時は、アメリカ人的サーカズムを、私が理解できていない事がしばしば、でした。
アメリカ人のサーカズムのセンスは、たとえばこんな感じ。
(これは実際に私が体験した会話です)
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とあるオープンエアのレストランでのこと。
お料理があまりに美味しかったので、私はぺろりと完食。そこへ、ウエイターさんがお皿を下げにやってきました。
ウエイターさん「Oh No! Im' so sorry you didn't like this food!」(あらまあ、お口に合わなかったんですね!)
え? どういうこと?
とっさに「Oh no, no, no! I really liked it!」(いやいや、むっちゃ美味しかったですよ!」と言おうとしたところに、夫(アメリカ人)がこう切り込みました。
夫「Yeah, that was so awful so I gave it all to the pigeons!」(いや〜ほんと不味かったんで、全部そこらへんのハトにあげたんですよ!)
で、ha ha ha!と笑い合うふたり。
さらに夫は「まあ、料理をそのまま残しておくと、洗いものが大変だと思うから、キレイにしておいたんですよ」とも付け加えていました。
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……とまあ、こんな感じです。
皮肉は皮肉なんだけれど、それが笑いのセンスになっているんですよね。
なんというか、ノリツッコミの、ツッコミがないバージョンというか。
ボケをボケで返す、初期の笑い飯みたいな感じというか。
こうして字面にしてみると、わかりやすいのですが、会話の中でとっさに言われると、いまでも一瞬わけがわからなくなります。せめて「なんちゃって」とか「んなわけないだろ」とツッコミを入れてくれると、わかりやすいんですけどね……。
このレストランの会話のように、日常的なやりとりでサーカズムが入り込んでくるのですが、楽しい時ばかりではなく、怒っている時、ケンカごしの時にも、もちろん出てきます。
よく使われるのは、
Thank you!(サンキュー!)
嫌なことをしてきた相手に対し、捨てゼリフっぽく言います。
たとえば、駐車場の入り口専用の道なのに、中から出てこようとする車がいて、「おーい、ここは入り口専用だよ」と合図を送っても無視して通り抜けてくる、そのすれ違いざまに「サンキュー!」。Thank you for being asshole!ってな感じです。
ときどき「You're welcome!(どういたしまして!)」と返してくる人もいたりして、さらに憎たらしさが倍増します(笑)。
怒っている時、ちょっと小言をいいたい時にも、サーカズムが発揮されます。
たとえば映画館で、上映が始まっているのにおしゃべりをしている人がいた時に、日本では「しー!しずかにー!」というところを、アメリカ人だったら、こう言います。
「みんなが聞こえるように、もっと大きな声でしゃべってもらえますか?」
イヤミったらしいですよね〜(笑)。この感覚、日本にはない文化だなぁと思います。
これ、嫌いな人だからこんなにイヤミったらしい言い方をするわけじゃなくて、親しい仲でもばしばし使われます。
先日、実際にあった夫とのやりとりでは……。
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仕事が長引いて、オフィスに残っていた時のこと。夫から電話がかかってきました。
夫「あ、電話がつながってよかった!いまから警察に捜索願いを出すところだったんだ」
私「ごめん、ちょっと仕事が長引いてて。でも、もうすぐ帰るから」
夫「君がいう”もうすぐ”って、あと18時間後ぐらい?」
私「いや、あと30分ぐらいだから」
夫「オッケー、じゃあその間に僕は夕食を作ってそれを食べ、お皿を洗って、シャワーも浴びてNETFLIXも観るね、ひとりで」
私「30分でそんなにできないでしょ?」
夫「いやできるよ、君の”あと30分”は僕の3時間だから。時空が歪んでるのかな?」
私「はいはいはい、今すぐ帰るよもう!!」
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頭にくるけど、笑っちゃうというか。これ、アメリカンジョークっぽいですよね。そう考えると、アメリカンジョークって、端々にサーカズムが入っていますね。
というわけで、アメリカ人的なサーカズムのセンスがわかると、会話がおもしろくなってくることは確かですね。最初のうちは「え?これって本気なの?冗談なの?」と戸惑うことも多いのですが、だんだんわかってくるし、やっぱりサーカスティックな人との会話は面白いなって思っちゃいます。
と同時に、日本人ならではのinnocentさも、やっぱりいいな〜、とも思います。皮肉に慣れすぎて、すれた感じになるよりは、日本人は日本人らしく、まっすぐ素直でいるのがいいんじゃないかな、と思っています。