英語で何を話したらいいのか? 「私には意見がない」編
英会話をがんばって習得していくと、わりとぶつかる人が多いのかなと思うのが、「何を話したらいいかわからない」や「言いたいこと(意見)がない」という問題。
問題というと大げさなので、壁とでも言いましょうか。
中級レベルになると出てくる「意見が言えない」の壁
この壁が発生するのは、英会話レベルが中級ぐらいになってから。まだ初級レベルの頃って、自分の自己紹介をしたり、要求を伝えたり相手の要求に答えたりといった一問一答のような感じですが、そこを超えてある程度スラスラと要求が伝えられるようになると、次はフリートークの段階に突入しますよね。そこで明らかになるのが、この壁の存在。
例えば留学していて、ディスカッションの授業で自分だけ意見をなかなか言えないとか、友だち数人と何かの話題について話している時に自分だけ完全に聞き役になってしまっているとか。もちろん、言いたいことはあるのにスラスラと英語が出てこない!といったジレンマもあると思いますが、それとは別で、「言いたいことが思いつかない」という場合も、あるのかなと思うんですね。
で、この時に陥ってしまいがちなのが、「私は自分の意見を持っていないんだ」や「私は話題がない、つまらない人なんだ」といったマイナスな思考。「どうせ私なんか……」の深みにはまっていくだけなので、やめましょう。意見がないわけではなくて、「これまで自分の意見を整理して、人に伝える訓練をしてこなかった」だけ。これは日本の教育の問題としても指摘されるところかと思いますが、その問題提起は置いておいて、ここでは英会話のことにフォーカスしますね。
ちょっとここで、私の体験談になりますが。
私がハワイに語学留学したのは33歳の時で、大学附属のELSに1ヶ月、語学学校に3ヶ月弱通いました。生徒の国籍はさまざまで、ヨーロッパ圏が多く、特にスイスやドイツ、スペインの人が多く在籍していました。アジア圏では台湾や香港、韓国、日本がちらほら……といった感じ。
年齢層はというと、ざっくりと二分していて、高校卒業してすぐの人や大学卒業後に大学院に編入を控えた人といった18〜22歳と、私のように社会人になってから学びに来た30〜40代の人。数字だけ見るとそれほど開きがないようにも感じますが、ディスカッションの授業ではこの年齢差がかなりハッキリと出てくるんですね。特にアジア圏、なかでも日本の若い子たちは、とーっても静かなんです。ディスカッションに入っていかない……というか「入っていけない」という感じで、でも話しはちゃんと聞いている。スピードが早すぎて入っていけないのかなと察した先生が、名指しで意見を求めても「わかりません」となってしまう。
印象的だったのが、ディスカッションの授業で、ほかの生徒が見ている中で一対一の討論を行った時のこと。19歳ぐらいの日本人と私が討論をしたのですが……
33歳の私:Aに対して賛成の意見を言う
19歳の人:Aに対して否定の意見(B)を言う
私:Bに対してカウンターの意見を言う
19歳:……
私:Bを部分的に認めつつ、別角度の意見を言う
19歳:……
と、こういう感じで2往復目ぐらいには、だんまりになってしまったんですね。(この議論でのA、B意見は私達の個人的な意見とは異なり、あくまで授業のロールとして割り当てられたものでした)。
一方、若い層に比べて私のような30〜40代の大人グループは、英語でもわりと意見をしっかりと伝えられる人が多かったんですね。英語はつたなくとも、「言いたいことはある」という人が多い。私もそんな感じで、まだ10個ぐらい言いたいことがあるのに3往復で終わってしまって、肩透かしをくらった感じでした。
でも、だからといって「私は人よりも意見がある」と言いたいわけでも、「大人は若者よりも意見がある」と言いたいわけでもなくて。考えてみれば当然なのですが、仕事でもなんでも、意見を求められる場は大人のほうが格段に多いですし、会議のような「議論の中で思考を転がすこと」にも慣れている。つまりは経験値の違いなんですよね。日本語であっても、普段から論理的思考が身についていたり、議論の場数をふんでいる人のほうが、それが英語になっても自分の意見がスッと出てきやすいと思います。
意見が出てこないからといって、意見がないわけではない。冒頭でも言いましたが、「これまで自分の意見を整理して、人に伝える訓練をしてこなかっただけ」です。
じゃあ英語を学ぶ前に日本語で思考法や議論を身に着けたほうがよいのか?というと、それもちょっと違うんですね。その点について、これからご説明します。
「用意した英語を言うだけマシン」から抜け出す
「自分の意見を整理して、人に伝える訓練」を、これから自主的にやっていくとして、モノになるまでにはやっぱり時間がかかりますが、まずできるのは、人に質問していくこと。誰かの意見に対して「それってどういうこと?もっと詳しく聞かせて」と深堀りしたり、「あなたが言うこの部分って、例えばこういうこと?」とたとえ話に変えたり、「この部分は私も同意するけど、この部分がよくわからないからもっと詳しく教えて」と分解したり。
「私はこういう意見を持つ者です」という話し方ではなくても、議論に参加することができるし、また質問を重ねることで自分の考えも整理されていきます。で、この一連のプロセスを、最初から英語でやっていくんです。
まずは日本語でしっかり考えてから英語に変えたくなってしまいますが、そうではなくて、この「英語で考えて英語で意見をまとめる」というプロセスが、その後の英会話スキルを格段に加速させるので、とってもおすすめです。流暢な英会話を目指すなら、いずれは脳内の日本語←→英語の変換ステップを飛ばして英語のみで思考し発言する段階に行かなければいけないのですから。
またこの質問しながら考えを重ねていくプロセスは、相手がいないとできないことですよね。なので、英会話スクールに通ったりオンラインレッスンを受講している方は、ぜひレッスンでこの点にフォーカスすると良いのではと思います。テキストブックに沿って例題を復唱するといったことは、自分ひとりでもできることなので、もったいないですよね。
たとえば映画について感想を話すとして、友だち同士であれば「よかったよねー」「ねー」というテンションや共感だけで会話が成立してしまうので、レッスンではあえて講師に反対意見に立ってもらうとか。
・思考のプロセス自体を話す(意見がまとまる前に、途中段階を話す)
・話しながら考えをまとめる
これを意識して英語で行うと、英会話がぐっと楽になります。最初はかなり苦しいかもしれませんが、考えながら話せるようになると、「用意した答えだけ言うマシン」の状態から抜け出せるようになるので、自分で英語を操ってる感があるし、会話をもっと楽しめるようになりますよ。