アメリカ人と付き合うと英語は上手くなるのか?
タイトル文字数の都合上「アメリカ人」としていますが、「英語圏出身のネイティブ・イングリッシュ・スピーカー(以下ネイティブ)」とみなしてください。
結論からいうと、ないと思うんですね。
英語の上達は、コツコツと積み重ねていくしかないんですよね。語学学習に「ラクして上達」みたいな魔法はないです。効率の良い勉強法などはあると思いますが、基本、努力あるのみ。
「でも、私の友達はアメリカ人と付き合って、英語がペラペラになったんだけど」といった話を聞いたことがある人も多いかもしれません。
私も、留学初期にしょっちゅう「ローカルと付き合いなよ、英語が上手くなるよ」と言われたし、実際にネイティブとデートし始めた時には「英語ペラペラへの道」を期待したりしました。
でも、やっぱり、ないんですね。
英語圏に住むとわりとすぐに判明することなのですが、ネイティブと結婚しているのに英語が堪能ではない日本人というのはザラにいますし、移住して何十年も経つのにブロークンな英語しか話せない日本人もわりといます。そういう人たちと出会うと、つくづく環境が自然と「英語が話せる能力」を高めてくれることはないんだなと思います。
このnoteで私が何を言いたいかというと、「だから一人でコツコツと英語学習を続けているあなたは正しい」ということ。ネイティブをパートナーに持つ人をうらやんだり、ディスアドバンテージを感じる必要はないです。
さて、ここからは、「じゃあなぜネイティブと付き合っても英語力が上がらないのか」について因数分解していきますね。アメリカ東海岸出身のネイティブと結婚している私自身の体験や実感もからめつつ……。
超超ビギナーのベースアップにはなりうる
英語力アップは「ない」と言い切った後でなんですが、たとえば「英語を話すだけで緊張する」とか「外国人と対面すると上がってしまう」といった段階の人にとっては、意味があると思います。ネイティブと英語で話す時間が増えれば、それだけ慣れるスピードが速くなるので。
また、「スタバで注文したり道を聞いたりといった旅行者限定な会話はできるけど、それ以上はできない」といった人にとっても、別の話題が増えるので、意味はあるかと思います。
つまり、超ビギナーレベルの場合、ネイティブと付き合うことで一定の底上げは望めるかもしれません(そもそも超ビギナーがどうやってネイティブと付き合うまでに親睦を深めるのか……という点は置いておいて)。
この「一定のレベルまで」というのがポイント。どれぐらいかというと、ブロークンな英語でなんとか要望を伝えられ、場を乗り切ることができるくらいのレベル。このレベルまでなら、環境が自然と引き上げてくれる可能性は高いです。ただ、仕事で英語を使うとか、特に英語圏に移住して現地企業で働くといった場合には足りないレベルです。
(ブロークンな英語が悪いと言いたいわけではないです。私自身は、英語は伝わればいいと思っているところもあるので、ブロークンで事足りるならそれで十分だと思いますが、流暢で正確ないわゆる「きれいな英語」を目指すなら、継続的な学習が必須です)
ではなぜ、一定レベルのところまでしか行けないのでしょうか。
ふたりのコミュニケーション法が出来上がってしまうから
そうなんです。コミュニケーションって、表情だったり声色だったり、かもし出す空気感だったり”間”だったりと、方法はそりゃもう山ほどあるんですよね。カップルならスキンシップも含まれてきますし。言葉はあくまでその一つでしかない。
angry、upset、madといった単語を知らなくても、怒っていることを伝えることは可能だし、心からの笑顔でthank youと言うことはどんな冗長な感謝の言葉よりも勝ってしまう。特に恋愛初期においてのコミュニケーションはノンバーバルなものの比重が大きいし、だからこそ親密な空気や「相性が合う」といった肌感覚が生まれるわけですよね。
さらに英語が堪能ではない人の場合、カップル間ではノンバーバル・コミュニケーションの補足として言葉が存在するような感じになるので、英語力はブロークンで十分。また、「こう言えばこういう意味」といった二人だけの会話法みたいなものも確立してしまうので、意思疎通はそれで全く問題なく成立してしまうんですね。
実際、国際結婚をした私の友人(女性・日本人)は、旦那さん(欧州出身)との会話で「I feel like...にゃーにゃーにゃー」と言っていましたが、旦那さんには完璧に伝わっていて度肝を抜かれました。このカップルの間では、言葉に詰まると「にゃーにゃーにゃー」と言えば伝わるということになっていたようで……。便利っちゃ便利ですよね。
あと、よく「英語でケンカができれば一人前」と言われることがありますが、カップル間のケンカって感情をぶつけ合うことが主なので、わりと簡単にできてしまうんですよね。仲直りも、しかり。
ただ、こうしたノンバーバルなコミュニケーションに頼りきった意思疎通しかしていないと、いざ言葉でちゃんと話し合って解決しなければいけない問題が生じた時に、苦労することになります。特に結婚となると、経済的なことや両家・親類縁者のこと、子供の進学、病気などなど、さまざまな案件が降ってくるので、言葉でのすり合わせが必要になってきます。そんな時、共通言語が英語にもかかわらず片方が幼児レベルの英語力しかないと、お互いにストレスを抱えることになるし、取り返しのつかない亀裂に発展しかねないと思います。
「それらしく見えているだけ」の可能性
ここまで聞いても、疑念が晴れない人もいるでしょうか。外国人の横で、立て板に水の流暢な英語を繰り出す人を見ると「ほらやっぱり……」と思いたくもなりますよね。
ここでひとつ、私自身の体験談を。
ネイティブの彼(現在の夫)と付き合い始め、数ヶ月経た頃のこと。日本から来た知人と会った時、「わーすごい、英語ペラペラになってる!!」と言われました。しかも、一度ではなく数回、違う人から似たような反応があったんですね。
その頃の私は、英語が話せない自分に自己嫌悪の毎日で、ペラペラなんて何億光年先のことか……というレベル。聞き取れず、伝わらず、悔しくてトイレや自室で一人で泣いたことは数知れず。そんな状態だったので、まさかのペラペラ認定に驚いてしまったのですが。
これ、「英語力が低い人からは、みんなペラペラに見える」ってことだと思うんですよね。堂々と、よどみなく、ネイティブと対等に話しているというその姿をもって「ペラペラな人」と判断される。文法や言い回しが間違っていようが、一発では聞き取れなくてWould you say that again?と聞き返すことすら「おお、なんか会話してるぞ」と思ってもらえている可能性が高いのではと。
なので、もしネイティブと付き合って英語がペラペラになったという人がいたら、「それらしく見えているだけ」な場合もあるんじゃないかなと思ったりします。
ですが、この「それらしく見える」というのが、英会話ではとても大切で、流暢に話せるようになる第一歩だったりします。
焦らずに堂々と、へんな身振り手振りを加えすぎず、表情を加えながら抑揚をつけて話せると、「それらしさ」が格段にアップするのですが、確かにこの部分はネイティブをパートナーに持つことで身につけやすいかもしれません。
大事ではありますが、らしさはらしさ止まりなので、一定以上のレベルを目指すなら、返す返すも継続的な学習が必要です。コツコツやるしかないんですね。
長くなってしまったので、続きは次回。
「でもパートナーが英語ネイティブなら、聞けばいろいろ教えてもらえるでしょ」とか、「ネイティブが一緒にいると発音が良くなるでしょ」という件について書きたいと思います。